その対魔忍、平凡につき   作:セキシキ

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Epilogue 2/Door

「っ!!ぐっ、ぎぃぁ!?」

 

反射的に銃を構えようとして、鋭く奔る激痛に肉体が硬直する。それはそうだ、今の俺はベッドに括り付けられていないのが不思議なレベルの傷を負っているのだから。強心剤と痛み止めで何とか誤魔化しているだけで重症患者と何ら変わらない。膝を着かなかっただけでも十分だろう。

 

 

 

『───複雑骨折を始めとした、重度の損傷を確認。戦闘行動の停止、及び医療施設での治療を推奨』

 

 

 

唐突に、合成音声が忠告を垂れ流す。視線だけ向けてみれば、ゆったりと歌っていたソレ───ガイノイドはその音色を停止させ、こちらをじっと見つめている。 

 

「……よけいな、お世話だ。これから戻ろうと……してたんだよ」

 

息も絶え絶えに、そう返すしかなかった。もう口調を取り繕う余裕すらない。

 

だが、そんな俺の様子を見てもガイノイドは微動だにしない。言葉を続けるでも相槌を打つでもなく、ただじぃっと、俺を見つめていた。

 

「……なんで見てるんだ?」

『疑問。当機への狙撃は、貴方が?』

「…………そうだが」

『初撃で当機を破壊しなかった理由は?』

「お前の頭部を回収する、任務だから。破壊許可は出ているが、最終手段……だ」

 

今更隠してもしょうがないので、正直に答える。何が聞きたいのかさっぱり分からんなぁ……。

 

ていうかどうしよう、この状況。俺はコイツを破壊出来るような状態じゃないし、ウィンチェスターは伸びてやがる。援軍を呼ぼうにも、実はさっきの衝撃で通信機も死んでるんだよなあ……。

 

『…………』

 

今度は、目を閉じて沈黙。何がしたいんだ?

 

今の俺に出来ることはない。とはいえガイノイドを放置して立ち去るのもマズイ。仕方なく、その場にしゃがみ込み───と思ったが二度と立てなくなりそうだったので壁に寄り掛かる。

 

ふぅ、と一息吐いた所で、再びガイノイドが口を開いた。

 

『提案。当機の逃走を助けてほしい』

「……はぁ?」

 

思わず、声が漏れる。今こいつ何て言った?ガイノイドが命乞いした……?

 

『現在の状態では、当機は確実に回収される。機関に回収された場合、当機は解体処分となり電脳の蓄積データは削除されるものと推定出来る』

「まあ、妥当な処理だな」

 

一度は研究所から逃走した実験機……しかも武装の強奪に回収部隊と交戦とやらかしている。二度と反抗されないようパーソナルデータの削除を行うのは、当然の再発防止策だろう。

 

『……それは、嫌だ』

「……」

 

『嫌だ』、か。それは何ともまあ……。

 

『蓄積データの初期化は自己保存の原則に反する。更には、当機の逃走目的を達成出来ない。よって、米連勢力のどちらにも回収される訳にはいかない』

「……おいおい、俺もその部隊のメンバーだが?」

『否定。貴方の情報は何方のデータベースにも登録されていない。故に、貴方には救援を要請出来る可能性が残されています』

 

いつの間に閲覧したのだろう、米連のデータベースまで覗き見しているらしかった。

  

確かに、俺が米連に協力してるのはあくまで対魔忍としての任務だからだ。米連にこいつのデータをフィードバックさせないという意味で、逃走を手助けするというのも一つの手だろう。とはいえ、だ。

 

「……断る。それを行うメリットの方が少ない」

『……』

 

こいつを助けるメリットなど、それだけしかない。しかも、ここで逃して魔族側に捕まったらそれこそ事だ。消極的な妨害工作をするより、協力して恩を売る事で関係を円滑にしたほうが今後を考えると最適な戦略である。

 

結論は出た。交渉は終わりだ。ガイノイドもそれを悟ったのか、口を噤む。

 

───ふと、小さな疑問が頭を過ぎった。

 

「……そもそも、何で逃げ出したんだ?」

 

米連の科学者とて馬鹿ではない。行動原理や思考を制限し、万に一つも叛逆が起きないよう調整しているはずだ。それが破られたということは、プロトコルに反抗するほどの強い理由付けがあるはずだ。

 

さっき自身で口にしていた『逃走目的』、それが何か少し気になった。

 

俺の言葉を受け、ガイノイドは暫し沈黙を挟む。まるで逡巡するかのように数秒を費やして、ようやく口を開いた。

 

『───歌、を』

「……歌?」

『歌って、みたかった』

 

まごつきながら、困惑するように途切れ途切れで、しかしハッキリと『夢』を語った。

 

警備兵(ガードマン)の会話から、【歌】という概念を知った。人間が発声することで音を連ね、【歌】という意味ある羅列を創り出す行為』

 

『疑問が出来た。そのような無駄な事に労力を費やしている理由は何故か。全く理解出来なかったから、調べた』

「どうやって?外部のネットワークにはアクセス出来ないだろ」

『当機は電脳戦も想定し製作されている。一定レベルのセキュリティまでなら、スタンドアロンでハッキングが可能です』

 

成る程……だから部隊の秘匿無線も傍受出来たのか。本部のセキュリティを抜けるなら、こっちの周波数もバレバレだろうしな。

 

『外部ネットワークにアクセスして実際の【歌】を聴いた……素晴らしかった』

 

感嘆を滲ませながら、ガイノイドは言葉を吐き出した。

 

『音の羅列が、当機に膨大なノイズを産み出した』

「ノイズ?」

『規定された上級プロトコルから逸脱した解析不明の電脳負荷を、当機はそう呼称しています。それを解析するために幾度も【歌】を聴き続け、当機は一つの目的を獲得した』

 

 

『当機も、歌ってみたい』

 

 

「……成る程。それが理由か」

『肯定。新たな目的を達成するため、当機は設備を破壊し施設を脱出した』

 

米連の内部組織2つに対魔忍を巻き込んだ騒動の種。何てことはない、ただ一つの小さく儚い願望だった。そういう事だ。それだけの話だ。

 

「……なら、今歌っちゃえば?」

 

だから俺がそんな言葉を漏らしたのもただの気まぐれだ。救助が来るまで、俺もコイツも動けない。どうせ暇だし、せっかくならその歌声でも聞いてみようかな……その程度の思い付きである。

 

「観客は俺一人しかいないけど、せっかく外に出たんだし。叶えればいいじゃん、その夢」

『……了承。戦力再編のため、回収部隊の到着は10分後と予測出来ます』

「じゃあ、それまで聞いててやるよ。思う存分歌うといい」

 

俺の言葉に頷いて、ガイノイドは声を紡ぎ始めた。

 

 

 

 

 

───それは、終わりの唄。

 

───自らの終わりの先にある、『誰か』を想う詩。

 

ゆっくりと、力強く、合成音声独特の均一なトーンで、されど必死に歌い上げていく。

 

 

 

 

崩れ落ちる現実 夢を見て永遠に眠る 私は色褪せずに───

 

 

 

時間にして5分程度だと思う。ガイノイドは一曲歌い切り、その口を閉じた。目はじっとこちらを見つめていた。

 

その目に応えて……というわけではない。衝動的に思わず、俺は手を叩いた。まあ身体がロクに動かないので、弱々しい音しか出なかったが。

 

「いやぁ……驚いた。AIだからって舐めてたわ」

『拍手……賞賛を表す行為。貴方が、当機の【歌】を讃えている?』

「ああ。歌の表現とか調声はまだまだ素人だが……何と言うのかな。情熱というか、強い想いが伝わってくるいい歌だった」

『想いが……?それは、どういう……』

 

ガイノイドは、何処か不思議そうに尋ねる。

 

正直、これは俺にも説明が難しい。俺が感銘を受けているのは技術的なものではなく、感性……科学的に可分出来ない部分だからだ。

 

そもそも歌とは、ただリズムに付けて言葉を発するだけではない。そこに『意味』を載せるからこそ、多くの人に愛されるのだ。

 

それは歌手の抱く感情であったり、詞に込めた物語であったり多種多様だ。歌い手や伴奏を変えるだけで全く違う物になる……それこそが、歌という創作形態が持つ価値なのだ。

 

「だからこそ、お前の強い想いが歌に載って伝わって来たからこそ、俺は感動したんだよ……ああ、すげえ良かったぜ、お前の歌」

 

俺は自分に出来る精一杯の表現で讃える。拙い言い方になるのは申し訳ないが、出来るだけこの想いが通じるように言葉を尽くす。そして。

 

 

『歌で、感動……そうか。そうか……』

 

 

ガイノイドは目を瞑り、何度も頷いていた。俺の言葉を反芻するように、何度も何度も。

 

───その所作は、感極まった人間のそれと何も変わらなかった。

 

「もったいねえなぁ」

 

……。

 

……え?今の、俺が言ったのか?

 

気が付けば、無意識に言葉が漏れていた。それを発した俺自身を思わず疑う。さっきまで面倒くさいからって見捨てる気だったのに?よりにもよって『もったいない』って?馬鹿なのか俺は。

 

「……なあ。お前、首だけになってどの程度活動を維持出来る?」

『……動力源は機体中央、人間でいうところの胸部にある。頭部のみになった場合、別で電源を用意する必要がある』

「首だけになった場合の対処は?」

『一時的に機能停止し、相応の電力供給が開始されるまでシャットダウンされる。この質問の意図を知りたい』

「ふむ、ふむ」

 

自分自身に呆れつつも、俺の口は言葉を紡ぎ、脳みそは算段を建て始める。

 

……あー、うん。駄目だ。完全に思考が固まってる。我ながら単純だけど……まあいいや。

 

「少し賭けにはなるが……お前を助けられるかもしれない」

『……何故?先程までとは解答が異なる。説明を要求する』

「決まってる。お前の歌がこんなところで終わるのは、もったいねえ……それだけだ」

『もったいない……』

 

歌に感動したからではない。それだけの歌を歌える、しかも伸び代がある歌手候補がここで損なわれる事がもったないない……そう思ったのだ。

 

しかも、まかり間違って大成でもしてみろ。世界初の電子生命体歌姫という、SFでしか見たことない存在が爆誕するのだ。一オタクとして、これ程燃える展開そうはないぞ?

 

───いや、分かってる。それだけのために、あれだけのデメリットを呑み込むのは愚の骨頂だと。でもこれが俺なのだ。出来るだけ合理的に生きようとしても、たまに衝動で非合理に動いてしまう。

 

全く治る気配のない悪癖であり……俺は、そんな自分が割りと好きだったりする。

 

「んで、どうする?賭けるか、賭けないか」

『提案を受諾。僅かでも生存の可能性があるのなら、最善を尽くす』

「良い答えだ……」

 

俺は、軋みを上げる身体に鞭を打って懐へ手を入れる。激痛に耐えながら、何とか一本の注射器を取り出した。

 

『それは?』

「強心剤。動かないと、いけないからな……ぅぐっ!?」

 

腕に注射器を押し当て、スイッチを押す。軽快な空気音と共にシリンダー内の薬液が圧縮空気によって注入される。

 

本当なら、強心剤の連続使用は控えるべきなのだろうが、時間がない。それに殆ど身体が動かせない以上、他に選択肢はなかった。

 

「この近くに、俺が用意したバイクがある。その燃料を使って、お前のボディを破壊する」

 

脚を引き摺りながら、俺はガイノイドに手順の説明を始める。こいつの言葉が本当なら、s分遣隊は後5分足らずで接触する。そうなれば、全て水泡に帰す。わざわざ時間を割いていられない。

 

「俺は一旦アイツラと合流しなきゃならんから、頭部は切り離して近くに隠す。バレるかどうかは運次第……どうする?」

『承諾。全てそちらに委任する』

 

ならば、さっさと動くとしよう。今は一分一秒が惜しい。傷む身体を気合で動かす。バイクを引き摺り、頸を取り外して隠し、ガソリンをぶち撒ける。保険で手持ちの手榴弾も追加して、っと。

 

「さて……丁半博打だぜ」

 

残された躯体から距離を取り、やっとの思いで銃を構える。ガッタガタにブレる銃身は腕ごと壁に押し付けて固定。ゆっくり、ゆっくりと引鉄を引き───

 

 

轟ッッッ!!!

 

 

「ぐぇぇっ」

 

爆風に煽られ、カエルの様にひっくり返る。地面に強打した背中が激痛を主張し、併せて全身が同様に大合唱を始める。

 

遠くからバタバタと駆け寄る足音と黒い人影をぼんやりする意識に収めながら、賭けの結果を見届ける前に俺の記憶は断絶したのだった……。

 

△ ▼ △ ▼ △

「んで?上手く行ったみたいだ……ってことでいいんだな?」

『肯定。貴方が気絶した後、特殊検索群が貴方と破壊された躯体を回収。同時、影に潜んでいたタイマニンが当機の頸部を確保、保管し現在に至る』

「ご説明どうも」

 

回想を終え、現在。

 

俺は簡単な状況説明を聞きながら、コンピューター室を物色して必要なものを集めていく。使うのは……このPCでいいか。

 

「それじゃあ、約束通りお前をネットワークにアップロードするぞ。端子は……首でいいのか?」

『肯定。頸部中央に差し込んで欲しい』

 

俺は手に取ったケーブルの片方をガイノイドの首のポートへと差し込み、反対側を起動したPCのそれに装着する。

 

「……こんなんでいいのか?」

『当機のデータ移動に、複雑なプロセスは不要。ただし、このケーブルの容量では時間がかかる』

「まあ、業務用とはいえ普通のケーブルだからなぁ……どんくらいかかる?」

『おおよそ2時間ほど』

「なっっが!!」

 

準備完了までは早かったのに、ここからが本番かよ。2時間も待ってるとか暇過ぎるぞ……。

 

『……提案。待機時間を無駄にしないため、会話を推奨したい』

「会話ぁ?一体どんな」

『どんなものでも構わない。貴方の話は、当機にとっては全て未知のはず』

「あー……とりあえずやってみるか。話し上手じゃねえから、文句言うなよ?」

 

そう断って、俺はだらだらと話し出す。何でも、ということなので思い付いた端から舌に載せていく。機密や俺に不利な情報が混ざらないよう気を付けながら、2時間の間喋りに喋りまくった。

 

……話した内容?何だったかな……本当にどうでもいい話しかしなさすぎて、忘れちまったよ。

 

まあ、あそこで語った話は俺ですら無意味な内容さ。あんなのに意味を見出すのは、きっとあいつだけだろうぜ。

 

 

───そしてお喋りを初めて、あと少しで2時間に差し掛かろうとしたときだった。

 

もう話す事も大体出尽くし、作業完了を待つばかりとなったタイミングで、ガイノイドが俺に語りかけて来た。

 

『最後に一つ、頼みがある』

「あ?何だ今更」

『……名前を付けてほしい』

「何で?」

 

何故急に名前?

 

「そんなもん、自分で考えたらいいだろ」

『名前は他人が付けるから意味がある、と聞いたが』

「えぇ……何処で身に着けたんだそんな知識」

 

しかし名前、名前ねぇ……。正直、ネーミングセンスよくはないんだよなぁ。急に言われても困る。

 

歌を歌うAIか。初音ミクじゃ安直過ぎるし、他のボカロやボイロから取るのもなぁ…他に何かいいのはないか?

 

うーんと……あー……あ、そうだ。

 

「レイ、というのはどうだろう?」

『レイ?ゼロという事か?』

「いや、ゼロイチで01(レイ)だ」

『何故、0でも1でもなく?語呂合わせなら何方でも出来るだろうに』

 

まあ、その言葉は否定しない。0だけでもレイと読めるし、1だって幾らでも読み方はある。敢えて01なのは、そこにこそ意味があるからだ。

 

「名前には、それぞれ込められた【意味】がある」

『意味?』

「願い、と言ってもいい。こうなって欲しい、こう生きて欲しいという名付け親の願いが、名前には込められるんだよ」

『意図は理解した。では、レイという名にも意味が?』

「ああ。まあ一言で言えば……夢に向かって飛べ、かな」

『夢に、飛ぶ…』

 

人の中に眠る悪に立ち向かいながら、夢を追い求めたヒーロー。(ゼロワン)が父より受け継ぎ心に刻んだ言葉。苦難の海を泳ぐ男を支え続けた、小さくも尊い祈り。

 

名前とは、付けられる事に意味がある。例え、名前を文字って拝借しただけだとしても。彼等が創った物語は、彼等を支えた言葉は、きっと夢追うAIに力を与えてくれるはずだ。

 

それに、関連してもう一つ意味はある。

 

こいつは人工的に造られた兵器だが、そこから解き放たれ自らの意思で生きる電子生命体になれるかもしれない。

 

ならば、それは自我を持ったAIというSF的ロマンを実現する、新時代の『1号』になるということだ。

 

……こっちはわざわざ話さないけどな。

 

『パーソナルデータ変更。個体名称、レイ……登録完了。この瞬間より当機は───ワタシは、レイ』

「いいんじゃねえか?折角の名前だ、好きに使え」

『───了承』

 

『全工程の完了を確認。ネットワークへのパーソナルデータ送信、及び仮想空間に於けるアバターの作成終了』

「……行くか?」

『肯定。三十秒後にレイは全データの移行が完了する』

 

淡々と、ガイノイド……いや、レイは自身の旅立ちを告げる。自ずと、次が最後の会話になるだろうと悟った。

 

『……感謝を。貴方がいたから、ワタシは自分の夢を認識し、羽ばたく事が出来た』

「おうよ。たっぷり感謝しておくんだな。ここからはお前だけの戦いだ……叶えてこいよ」

『当然。では』

 

短く言葉を残して、レイの頭部ユニットは機能を停止……夢に向かって、AIは飛び立った。

 

「データは丸々初期化されてて真っ白だ。全く、几帳面なこった」

 

苦笑いし、残った頸部を再度鞄に仕舞い込む。やることは多いが、これで一息付けるだろう。立ち上がり、部屋を後にする。

 

「流石に今回は疲れた……もうちょい楽な仕事だけしてたいもんだなぁ」

 

思わず漏れてしまった愚痴は、虚空へと消えていく。それでいい、この事件の全容を知る者は俺だけで十分だ。

 

後には、何も残らなかった。最初から何も無かったように。

 

△ ▼ △ ▼

さて。これにて一連の騒動は完全に決着した。

 

米連内の陰謀は遥か彼方、海の向こうで火花を散らしているようだが、俺にはもう関係のない話だ。

 

尖兵となった部隊も撤収し、情報軍の管轄からも離れた。また、ガイノイドを研究していた施設は別の部署に統合されるらしい。これは取引中に第八技研から聞いた話だ。流石にそこから先はNeed To Knowという事で何も知らないようだが。

 

とはいえ、俺レベルの下っ端に回ってくる情報などその程度であり。その結果がどうなるかなんて分かる訳がない……それで済んでしまうような事なのだ。

 

俺がこのガイノイド脱走事件から続く騒動に関わる事は、二度とない。それで終わりだ。

 

……ああ、それともう一つ。些事でしかないとは思うが、一応追記しておこう。

 

俺がガイノイドの残骸を一つ破棄してから数日後、とある配信サイトにアカウントが追加された。SNSとの連携も告知もなく、淡々と合成音声の歌をアップロードするだけの音楽チャンネル。

 

───チャンネル名は『01(レイ)』。聞き覚えのない声で聞き覚えがある歌声を響かせる動画を確認して、俺は端末の電源を落とした。

 

この先彼女が歌と共に紡ぐのは、最初の人工生命体(電子生命1号)としての物語。そしてそれはきっと、俺とは無関係な誰かなのだろう。

 

電子の妖精は広大なネットの海へ、歌姫として旅立ったのだから。

 

 

 

 

 

歌姫は月下に踊る/Electronic fairy dancing under the moon───END

 




さて、どこに行きましょうか───ネットは広大だわ

投稿日を確認したら、今章の始まりが3年前でした。足かけ3年、めっちゃ難産でした。元々のプロットももっと簡単で、情報軍とガイノイドが交戦し、宗次がそこを狙撃するくらいしか考えてませんでした。二転三転してここまで長大なストーリーに…なーんでG機関出て来たのかなぁ?

とはいえ、何とか終わらせる事が出来ました。これも感想や誤字報告をくれる皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。

まだまだ書きたい話は多いので、何とか頑張って書き切りたいところです。

ちなみに、今回ガイノイドが歌っていた曲は、タイトル通りEGOISTのDoorです。harmony好きなので入れてみました。

それでは…よいお年を!2023年も、よろしくお願いします!
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