ナシュミートの視界は紅色に染まっていた。
その恐怖と絶望に、ナシュミートは目をつぶることしかできなかった。
その刹那だった。
誰かが自分に覆い被さったような気がした。
しばらくして視界が晴れた。
自分が生きていると言う驚きや、
「ってぇ」
「………………ぇ……?」
ナシュミートは無傷。
どこにも怪我はない。さっきの瓦礫に埋もれていた時についた傷を覗けば完全な無傷である。
ただし、龍夜は
「何で…………」
「あ?」
「何で私なんかを庇ったのよ!?」
ナシュミートを覆い被さるように抱き締めてナシュミートを庇っていた。
今にも腕はちぎれ落ちそうになり、背中からは血が吹き出し、腹からは大腸が少し飛び出ている。
完全な致命傷だ。
今こうしてナシュミートと喋っていること事態が異常その物。
そのまま龍夜は背中に背負った太刀に手を伸ばす。
それを見たナシュミートは一気に血の気が引いたら。戦意がまだ無くなっていない。戦う気なのだ、この傷で、この激痛の中、いつ死んでもおかしくないと言うのに。
龍夜が立ち上がろうとすると、ナシュミートは龍夜の無事である腕を掴んだ。
「あ、あんた、死ぬ………わよ?」
「で?」
「で?じゃないわよ!早く逃げなさいよ!!今ならまだ逃げ切れるかもしれなのよ!?そんな状態で勝てるわけないじゃない!!」
「で?」
「だからで?じゃないのよ!早く逃げなさいよ!!この馬鹿!!」
ナシュミートは大声で何度も何度も止めようとする、説得しようとする、なのに龍夜から返ってくる言葉は「で?」「だから?」だけで一行に逃げようとしない。
ナシュミートは言い終わったのか、ゼェゼェと息を荒げる。
すると、
「昔いったよな…………」
「え?」
「…………まぁ良いか、そんなことより」
血で紅く染まった顔をナシュミートに近づけて質問する龍夜。
「お前は逃げれるのかよ?」
「ッ!そんなことより貴方の方が!!」
「うるせぇぞクソガキ…………ゴボァ」
「龍夜!?」
今度は口から大量の血が勢いよく流れ出て、ビチャビチャと骨でできた地面に落ちて行く。
明らかにヤバイ。戦えば死んでしまうに違いない。
「俺は逃げねぇ」
「何で………早く逃げてよ!!このままじゃ龍夜が死んじゃうよ!!」
「ヒャハッ、これがあのワガママ女王とは信じがたいぜ」
「馬鹿言ってる場合じゃ無いだろ!!」
とうとうナシュミートは泣き出してしまった。
両目からはビー玉のように大きく円い雫がポロポロポロポロと、両手でそれを拭っても拭っても、その雫が止まることはない。
「泣くんじゃねぇよ、ワガママ女王」
「ヴグッ、だっで、だってぇぇぇ、…………うぅぅ、何で……ゆうごどぎいでくれないのよぉ、にげてよぉ…………」
ガジャッ
その骨と骨がぶつかり合ってなる不気味な音が龍夜とナシュミートの頭の真上でなっていた。
その不気味なオストガロアの触手は躊躇い無くナシュミートと龍夜を潰そうとした。
そして、
「うぜぇんだよ、クソダコ」
次の瞬間だった、骨の断たれる音、その中に隠されるようにある柔らかい触手、そしてその全てを断ち斬ると、その太刀についた青い液体が飛び散る。
ギシャアアァァァァァァ!?!?!?
「だから、うるせぇぞ」
その次は、持っていた太刀をそのまま直線に投げて、オストガロアの右目に命中し、オストガロアはそのまま倒れてもがき苦しむ。
「おい!クソガキ!」
「ウグッ、何よぉ…………」
「いつまでも泣いてんじゃねぇ!!」
「誰のせいだと…………!」
「うるせぇんだよ!!普段ワガママなくせして!俺だけ逃げろだぁ?そんなに震えてるガキが強がってんじゃねぇよ!!」
「うるさい!うるさい!うるさいわよ!」
「何時もみたいに無理難題押し付けてみろよ!わがままいってみろよ!!」
「じゃぁ助けてよ!!あのタコみたいなモンスターを倒してよ!!足がいたい!身体中がいたいから城までつれててってよ!!
生きて貴方と一緒に帰りたい!!!!」
ナシュミートは言い終わったかのように、ゼェセェと肩で息をする。
すると、龍夜はナシュミートを見て、
「まかせろ」
そういってオストガロアに突っ込んでいった。
§一旦現在
私は本当に嘘ばかり。
親の名前も嘘、出身地も嘘、趣味も好きなものも嘘、歳も嘘、口から出る言葉も嘘ばかり、名前だって嘘。
本物の私なんて何一つ無い。
誰も本当の私を知らないはずだ、私の本性はドス黒い。
私を探っていた変なストーカーみたいな男が居たけど、邪魔だから殺した。
殺したことすら嘘をついた。
本物の私なんて誰も見てくれない。
嘘をつくなんて当たり前、何の罪悪感もない、後悔すらなかった。
だからあの時も嘘を付いてしまったんだ。
『んっ………ぁ、やめて…気持ち悪い……無門さん……痛い……!』
あの時も、
無門さんに抱かれた時もそうだった。
もっとシて欲しかった。
もっと無門さんと触れ合って居たかった。
もっと一緒に居たかった。
もっと抱き締めて欲しかった。
初めて人の温もりだった。
すごく気持ち良かった。
もっと無門さんが欲しかった。
物凄く嬉しかった。
この瞳も、傷だらけの体も、髪の毛も、肌も、顔も、全部全部、好きだと言ってくれた。
ドス黒い私を綺麗だと言ってくれた。
初めて、心のそこから嬉しかった。
でも嘘をついてしまった。
あの時初めて後悔した、罪悪感を感じた。
それに、無門さんが好きなのは私じゃない。
無門さんが好きなのは──────。
だったら私の物にすれば良い。
「あら、無門さん、来てたんですね」
嘘を吐く。
………………で
「誰ですか?その子?」
「………………」( Д ) ゚ ゚
嘘ぉ!?何で!何で!?
「何でモミ「その先を言ったら怒ります」はい」
俺は急いでイモウトとカティちゃんに別れを告げてモミジさんが来る前に狩りに出ようとしたが、その前にモミジさんが来ていた。
何故だろう、モミジさんに見つめられるとそれだけで胃に穴が空きそうにな。と言うか変な性癖に目覚めそう。
違う違う。
と言うかなぜかモミジさんはモミジという名前が嫌いなのか、ライラと言わないと怒るのだ
「あ、安心してくださいライラさん、俺これから狩りに」
「えっ?」
「えっ?」
「あなたはこれから3ヶ月、新人ハンターさんの先生になるんですよ?」
「ん?」( -_・)?
「もしかして龍夜さん、なにかご予定でも?」
「あ、これからこのハンターと一緒に狩りに…………」
「安心してください」
どこをどお安心しろと?
二十四時間三百六十日ボッチソロハンターがこれから初めてパーティーで狩りするんだぞ?⬅十五年ソロで狩りしてきた。
そんな俺に先生?
「貴方に拒否権はありません」
「…………」(あ、そっちの安心)
「…………狩り、無理なんですか?」
「あ、そちらもよく見たら新人ハンターの人でしたか。なら一緒に龍夜さんに狩りを教わっては?」
「え?俺の意見は?」
「これは私からのお願いです。もし断るなら…………秘密、バラしますよ」
その笑顔は天使のようにかわいい笑顔だった。
だが、それは悪魔の笑みだった。
この時龍夜は、これから3ヶ月ゴーヤ(イビルジョー)を殺して食ってる方が千倍ましだと考え、もしも死んでしまった兄と、俺を10歳の時に捨てた親と、家出した妹が、俺が酒によってギルド一のアイドルに
兄は生き返って俺を殺しに来るな、親は顔も名前も覚えてないから知らん。
妹にばれたらダイミョウサザミの殻に入りたい。
そしてラージャンに一発殴ってほしい。
つまりどっちにしろ地獄………………詰んだな。
もう嫌だ、【銀終】ちゃんにあいたいよぉ。
…………てかG級ハンターのみんな俺の事嫌いらしいからなぁ…………あのホモも俺が生きて帰ってきたとき舌打ちしてたし、みんな殺気バンバン飛ばしてきやがった。
銀終ちゃんに殺気飛ばされたときはいっそ死にたくなった。
俺嫌われることしたっけ?
「で?その新人ハンターとは?」