キツネとカミサマ   作:ろんめ

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Chapter 001 二人の目覚め
1-01 海のセルリアン


どこまでも青い海に、船が飛行機雲のような波を立てていた。

少し遠くに、虹色の輝きに頭を彩られた山が見える。

そんな船で、少年が一人空を仰いでいた。

 

「……」

 

黒い髪の少し眠たげな彼は、火山の方をチラリと見て、

港にある人影に目を向けた後、

すぐ空に視線を戻した。

 

 

 

 

 

一方ジャパリパークでは、巨大黒セルリアンとの戦いを終えてから

二週間ほど経っていた。

かばんとサーバルは港まで散歩にきていた。

 

 

「あ、あれ見てかばんちゃん!」

 

「え、 どこ?」

 

「あそこだよ! 海の上!」

 

 

水平線に、船が見えた。

よく見るとそれはこちら側に向かっているようだ。

もしかしてヒトがやってきたのか、という期待が

かばんの心を躍らせたころ、腕につけたラッキービーストが

警告を発した。

 

 

 

「注意、注意、海の方向にセルリアンが観測されました」

 

「海にセルリアン…? 」

 

 

頭の上にハテナを浮かべ、かばんは船の方向を見ていた。

 

海の中に蠢くモノに気づくことはなく、ただただ平穏ないつも通りの海に

見えていたことだろう。

 

「ちょっとボス! 海にセルリアンなんている訳ないじゃん!」

 

 

 サーバルちゃんはそう言って船に向かって手を振りながら

「おーい!」と声をかけた。でも残念ながら船に乗っていた人には聞こえなかったみたいだ。

 じっくり船を観察してみた。船って呼んでいるけど、

どちらかというと少し大きめのボートといった感じかな。

 

「キケン、キケン、早く海からはなれて」

 

 

またラッキーさんが警告している。

 

 

「サーバルちゃん、ラッキーさんもこう言ってるし、少し離れてみよう?」

 

「でも……だってあれって船でしょ?だったら誰かが乗ってるかもしれないよね?

セルリアンに襲われたら危ないよ!」

 

「確かにそうだけど、ここからじゃ助けるのは難しいかも。

一旦隠れて様子を見た方がいいと思う」

 

「そっか……うん、わかった、じゃああそこの陰に隠れよう!」

 

 

ボクとサーバルちゃんは近くにあった木の陰に隠れてしばらく様子を

見ることにした。しばらくして船がさらにこっちに近づいたころ、

サーバルちゃんは我慢できなくなったらしく、

「セルリアンなんてどこにもいないじゃん!」

と海辺に近づこうとした。

 

「サーバルちゃん、もう少し待ってみようよ」

 

「だいじょーぶ! ボスが間違えただけだって!」

 

サーバルちゃんは怖がることなく港の水ぎりぎりのところに立って、

なんともないよという風に腕を振って合図した。

ホントにラッキーさんの勘違いだったのかな?

 

「ほら、ボスの勘違いだったでしょ!」

 

と言ってサーバルちゃんは船に向き直った。

ボクももう問題ないかと思ってサーバルちゃんと一緒に

船に向かって声をかけた。

……やっぱり聞こえなかったみたいだ。

 そんな時、海の底から唸るような音が聞こえてきた。

 

「…! かばんちゃん!もしかして……」

 

本当に海にセルリアンがいるのか、

そう思う間もなく、高い波を立てて

海面に青と黒が半端に混ざったセルリアンが顔を出した。

 

「大きい……それに、腕がある」

 

「どうしようかばんちゃん、あんなセルリアン見たことないよ」

 

「さっきの所に隠れよう。見つからないうちに」

 

そそくさと木の陰に隠れ、じっくりとセルリアンを観察した。

色はさっき見た通り黒、そしてとても深い青でよく見ないと

海と間違えてしまいそうだ。

 

「それに黒いってことは…ラッキーさん、あれをここから調べられますか?」

 

「マカセテ」

 

ラッキーさんはピピピと音を立てるとすぐに結果を教えてくれた。

 

「セルリアンから大量のサンドスター・ロウが検出されました」

 

「あれ? 火山からはもう出てこないようにしたはずだよね…」

 

「他のところから出てきたのかもしれない……それと、セルリアンは水に

弱かったはずだよね?」

 

「ホントだ! でも全然へっちゃらみたいだよ?」

 

「だとしたら、あのセルリアンは水に強く進化した可能性があるかもしれない」

 

「ええっと、つまり……もう水は効かないってこと…?」

 

分析すればするほど、今までとのセルリアンとの違いが

はっきりと頭に浮かび、対処法が思いつかない。

 

 

……どうやらセルリアンが船に気づいたみたいだ。

腕を振り上げ、打ち付けて大きな波を起こすつもりらしい。

なんとか、ここからでもボクにできることはないだろうか。

紙飛行機は届く距離じゃないし、セルリアンの意識を

誘導できそうなものも見当たらない。

今できるのは、あの船の人が無事に陸にたどりつくことを

祈ることだけだ。

 

 

 

セルリアンは腕を振り下ろした。

波が起こり、船が大きく揺れた。

その揺れで乗っていた人も危険だと思ったのか

船のスピードがさっきまでよりずっと速くなった。

そんな船の前方にセルリアンの腕が現れた。

海の中を通して回り込んだみたいだ。

 

「もしかしたら、頭もいいのかも……」

 

あの巨大セルリアンだって前足を使って地面を揺らして

バスを吹き飛ばして…

 

……あまり思い出したいことじゃない。

 

船は急旋回してセルリアンから離れ始めた。

セルリアンも腕を使って何とかとらえようとしているけど、

さすがに船の速さにはついてこれないらしい。

諦めたのか腕をすべて海の中に沈めた。

 

 

 

でも、そんなに甘い話じゃなかったみたい。

 

突然船が飛んだ。

セルリアンが腕をすべて使って海の中から投げ飛ばしたようだ。

船が全速力だったこともあって勢いよくこちらに向かって飛びながら

大きくひっくり返りはじめた。

乗っていた人は船から振り落とされて、

船と人は森の中へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう大丈夫みたい。あの人を探そう。」

 

「うん、ケガしてたら大変だもんね」

 

そんな会話をしてから船に乗っていた人を探した。

船は森の中ではとても目立つので船もその人も

すぐに見つかった。

船はさかさまになっていたけど壊れているようには

見えなかった。

乗っていた人も、目立つような切り傷とかは見えなかったけど、

もしものことがあるので二人でロッジまで運ぶことにした。

 

「でも、ロッジに手当てできるフレンズっているのかな?」

 

「昔ヒトがいたはずだから、手当ての道具とかならあるかもしれないよ」

 

「カバン、手当てをするときはボクが手順を教えるよ」

 

「さすがボス! いざというときは頼りになるね!」

 

 

バスがないから着くころには夜になってそうだなあ、と思いながら

歩いていたけど、まさか到着するのが月がてっぺんまで登るころに

なるなんて思ってもいなかった。

 

 

 

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