キツネとカミサマ   作:ろんめ

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1-12 はんたーず

ロッジまで戻ったら、午前にしたことも合わさって思いのほか疲れたので、

その日はもうあまり動かずにオオカミさんと色々お話して

日が暮れたらさっさと寝てしまった。

 

 

 

 

『6日目

 気が付いたら平原にいた。

 ヘラジカと戦いごっこをさせられて、

 その後ライオンの城に行った。 

 平原にはもっとフレンズがいたみたいだけど運悪く会えなかった。

 図書館で本を借りた。

 博士たちの反応からして昨日何かあったのは確実。

 5日目の日記は書いた覚えなし。眠かったから?

 

 初めて出会ったフレンズ

 ヘラジカ ハシビロコウ パンサーカメレオン 

 ライオン オーロックス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日……

 

 

「かばんちゃん、バス借りてもいいかな?」

 

「いいですけど、どこに行くんですか?」

 

「一度港に行って、僕が乗ってきた船を見てみたいんだ」

 

「セルリアンが出たら、危険じゃないですか?」

 

「そうかもしれないけど、早めに確認したいんだ」

 

「……そうですか、気を付けてくださいね」

 

「うん、日暮れまでには戻ってくるよ」

 

 

赤ボスに運転してもらって、僕は港に向かった。

 

バスで移動している間、借りてきた『ジャパリパーク全図』を読んでいた。

すると驚いたことに、ジャパリパークはこの島だけではないみたいだ。

この島はキョウシュウちほーで、一番近いのはゴコクちほー……

少し古いかもしれないけど、それぞれのちほ―の詳しい地図まで載っている。

ただ少し重いから、キョウシュウちほーの部分だけを持ち歩きたい。

 

「それぞれのちほーに住んでるフレンズも書いてある……」

 

図書館の辺りを見ると博士と助手について書いてある。

サーバルはサバンナ、かばんちゃんは……書いてなかった。

ロッジの辺りは……あれ?

 

気づいたら、バスが止まっていた。

 

「赤ボス、どうしたの?」

 

「セルリアンガイルヨ」

 

少し遠く開けたところに青いセルリアンがいた。

バスと同じくらいの高さと大きさだ。

 

あのファイルに書かれてたのは、

音と光に反応して、石が弱点、無機物と反応して生まれることなどなど……

今重要なのは弱点と反応の部分かな。

 

「下手に動けばってことか……赤ボス、振り切れない?」

 

「?コノ辺リハ、スピードガ出シヅライカナ」

 

周りは草木が多く地面も平らじゃない、動きにくいのも納得だ。

まだこっちに気づいてはいないから大丈夫だけど、

やり過ごす方法を考えないと……

 

 

 

「はあっ!」

 

パッカーンとセルリアンが砕け散った。

 

「……あ」

 

セルリアンを退治したフレンズがバスに気づいたようだ。

 

「はじめまして、キンシコウよ」

 

「は、はじめまして、人間のコカムイです」

 

ここに来てからの恒例になっていることだけど、

自己紹介にいちいち「人間の」を付けなきゃいけないのは

なんだかもどかしい気分だ。

 

「……それ、バスよね?」

 

「ああ、今日はかばんちゃんから借りて、

 港の方まで行こうと思って」

 

「そうなのね……そうだ、またセルリアンが出たら危ないから、

 しばらくついて行っていいかしら?」

 

「はい、助かります」

 

 

キンシコウさんも乗せてバスが進みだす。

ジャパリパーク全図にキンシコウさんについて載っているか

調べてみた。

 

……あった。

 

『霊長目オナガザル科シシバナザル属 キンシコウ

 

 

 フレンズとしてのキンシコウはセルリアンハンターとして活動している。

 同じハンターのヒグマ、リカオンと行動を共にすることが多い。

 

 

 

 ……※セルリアンハンターとは

 

  セルリアンを狩ることを専門とするフレンズ。

  高い戦闘能力や連携力を持つ。』

 

 

ざっとした概要だが、大体分かった。

この本は本当に便利だなあ。

このまま返さずに持ち逃げしてしまいたいくらいだ。

 

 

「……セルリアンって、出るときはわらわらと出てくるんですか?」

 

「そうね、たくさん出たときは手を焼いたけど、最近は少ないわ」

 

「前ニ、カバンタチガ火山ノフィルターヲ直シタカラ、

 サンドスター・ロウノ量ガ減ッテイルンダ」

 

「サンドスター・ロウの量の影響が大きいの?」

 

「ソウダヨ」

 

「そういえば、キンシコウさんはなんであの場所に?」

 

「見回りよ、この辺りはセルリアンが他より多いから」

 

それは、サンドスターを出す火山がすぐそばにあるからだろうか。

ふと火山から視線を下にずらすと、二人のフレンズの姿があった。

 

 

「あら、ヒグマにリカオンね」

 

「キンシコウか。 ……そいつは?」

 

「人間のコカムイさんよ」

 

「あ、はじめまして」

 

「これから港に行くから、私がしばらく護衛につくことにしたの」

 

「そうですか、じゃあ私たちも見回り続けますね、

 キンシコウさんも気を付けて」

 

「ええ、またね」

 

あっさりと会話は終わった。

あくまで推測だけど、セルリアンは話し終わるまで待ってくれないから

会話を手短に済ます癖がついているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

その後数分ほどして、バスは港についた。

 

 

 

「ここが、港……」

 

 

ここが、僕が初めてここに降り立った地であるらしいのだが、一切記憶にはない。

景色を眺めるのはすぐにやめ、船を探した。

かばんちゃんの言う通り、船は茂みの中にあった。

 

「ここまで飛ぶってことは、かなりスピード出してたんだね……」

 

記憶をなくす前にしていたであろう危険運転に呆れつつ、

船を観察した。

 

様子を見るとひっくり返ってはいるが、目立つような傷はない。

葉っぱや泥を落とせば、無傷と言って差し支えない。

キンシコウさんに手伝ってもらってひっくり返して見ても、

海に浮かべればすぐに動きそうだ。

 

例のセルリアンが恐ろしいのでそんなことはしないが。

 

せっかくなのでハンターのキンシコウさんにも

例のセルリアンについて聞いてみることにした。

 

「キンシコウさんは、海にいるセルリアンって知ってます?」

 

「海のセルリアン……?見たことも聞いたこともないわ、どうして?」

 

「それは……」

 

かばんちゃんから聞いた海のセルリアンが出た時の状況を

キンシコウさんに話した。

 

「……海にセルリアンはいないものだと思ってたけれど」

 

「僕もかばんちゃんから聞いただけだし、

 多分出てきたのは一回きりですけどね」

 

「でも、そうね……ヒグマたちにも話して気を付けておくべきかも」

 

 

 

「見たいものは見れたから、ロッジに戻ろうと思います」

 

「分かったわ」

 

バスに向かおうとした、その時。

地面が揺れ、唸るような音が響いた。

 

 

「……これは?」

 

「火山ノ噴火ダヨ」

 

そう言われて火山の方を向くと、火山から出るサンドスターが

いつもよりも多く、高く昇っている。

 

「あら、前の噴火からもうかなり経ったのね」

 

「赤ボス、噴火ってどれくらいの間隔で起こるの?」

 

「バラツキガアルケド、短イトキハ1、2ヶ月デ起キルヨ」

 

「火山が噴火すると、フレンズが増えるのよ」

 

「サンドスターが、増えるからか……」

 

 

噴火の光景に若干圧倒されつつも、

なぜか気分が高揚し移動中見える間はずっと眺めていた。

 

 

「今日はありがとうございました」

 

「どういたしまして、じゃあ、またね」

 

セルリアンが出たときはどうしたものかと思ったが、

無事にロッジに戻ってくることができた。

かばんちゃんには日暮れまでに戻るといったけど

もう太陽は半分以上沈んでいる。……まだセーフ?

 

「えーっと……た、ただいま?」

 

「おかえり、コカムイくん!」

 

外が暗くなってもサーバルは元気だ。

……むしろ夜の方が元気か。

 

「かばんから港に行ったって聞いたけど、どうだったんだい?」

 

「ええと、途中でセルリアンが出てハンターのキンシコウさんが……」

 

「ふむふむ、それでその次は!?」

 

昨日もこんな調子でオオカミさんに質問攻めにされた。

どうやら漫画のいい材料になるみたいだ。

覚えてないような細かいところまで聞いてくるから疲れる。

それでも、その後に生き生きとした顔で漫画を描くオオカミさんを見ると

あんまり悪い気はしない。

 

「……そろそろ寝ます」

 

「そうか、おやすみ」

 

「おやすみなさい……」

 

 

 

『7日目

 

 港まで乗ってきた船を見に行った。

 一切見覚えがなかった、あと傷ついてなかった。

 初めてセルリアンを見た。

 ジャパリパーク全図は便利だった。

 火山が噴火した、キンシコウさん曰く

 噴火の日にはフレンズが増えるらしい。

 

 

 初めて出会ったフレンズ

 

 キンシコウ ヒグマ リカオン』

 

 

手帳をしまい、そのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして再び、”彼女”が目を覚ます。

 

 

 

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