キツネとカミサマ   作:ろんめ

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1-13 目覚め

「火山の噴火、案外早く起きてくれて助かったなぁ……」

 

布団をどけて、服についたゴミを払い落とした。

 

「確かー、アリツさんが見回りしてるから、

 それにさえ気を付ければ、外に出られるね」

 

外にさえ出てしまえば……いや、

ロッジに戻る時がもっと危険かも。

 

「ま、それはその時かな」

 

 

今は外に出ることが先決。

扉に耳を当てて外の音を伺う。見回りは既に終わったのかな?

足音とかは一切聞こえない。

大丈夫そうだからとりあえず部屋から出た。

 

部屋から出たあとは最短ルートで出口に向かう……といきたいけど、

より万全を期して、誰もいない部屋の前を通ることにした。

ロッジの作りはよくわかっている。

 

「誰も、起きてないよね……」

 

誰にも会わず気づかれず、外に出ることができた。

これでしばらく自由に動ける。

……もっとも、これから更なる自由を求めて火山に向かうわけだが。

 

 

 

とはいえ、バスを使うのは音、赤ラッキー、かかる時間と、

あまりいい選択肢ではない。

 

……ヒトの体でも使えるだろうか。

そう思って少し念じたら、体が宙に浮いた。

制御も問題なくできて、スピードも十分に出せそうだ。

 

「……流石、私が見込んだだけのことはあるね」

 

体を勝手に使ってしまって申し訳ないけど、

もうそれもこれで最後だ。恐らくは。

 

火山を目的地として、私は飛んで行った。

 

 

 

 

 

火山への道のりの半分程度に差し掛かったころだろうか。

港の様子が見えるようになってきた。

多分それだけ高くまで飛んでいるのだろう。

 

「あそこが、私たちの……」

 

片方は無理やり連れてこられたようなものだけど、気にしない気にしない。

それにしても、あれは我ながらうまくやったものだと思う。

本来なら後回しにしてもよかったけど、あの二人がいたのは運がよかった。

 

「……行かないと」

 

いつの間にか止まって港を眺めていた。

体を火山に向け、再び動き始めた。

 

 

 

 

 

火山に到着した。

近くから見ると、辺りが暗いことも合わさって本当にきれいだ。

今日は噴火があったからいつもよりも豪華に見える。

存外時間があったから、目的を果たす前にもう少しだけ

火口のまわりを見てまわることにした。

 

「これが四神かぁ……」

 

そっと持ち上げて眺める。これは多分……どれだろう?

あの四人がこれを使ってフィルターを直すところ……

今でも鮮明に思い出すことができる。

 

私も、もうすぐ……!

 

そう考えると、顔が自然とほころぶ。

なんだかいてもたってもいられなくなってしまった。

 

 

「早く……」

 

そんな私の気持ちに応えるように、火口からサンドスターの塊が飛び出した。

 

「……アハ」

 

 

手をかざす、サンドスターに向けて。

念じる、こっちにおいでと。

 

そして私に向かって引き寄せられたそれは、

私の中に入り、光を発した。

その光は私の視界すら奪い、私の体を作り替えてゆく。

 

光が収まった後、私の体は白い髪と同じ色の耳、二本の尻尾、

そして、ルビーのような紅い瞳を持つ狐のフレンズの姿になっていた。

 

生身の体を手に入れたのはいつ以来だろう。

ずっと夢見ていたものに、ついに手が届いた。

 

火山を飛び立つ私は、恍惚としていた。

 

そして、私は来た時と同じようにロッジへと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきた私がすることはたった一つだ。

その気になれば一分もかからないが、

姿が変わっているから下手をすれば怪しまれる。

慎重になってロッジの部屋に戻った。

 

私は再び念じた。

私の体から分離するように眠る彼の体が転げ落ちた。

それを抱え上げ、元のように眠らせる。

 

「本当に感謝してるよ……ありがとう」

 

そして願わくば……これからも。

 

 

久しぶりだ。体を手に入れるのは。

それだけではない、あの時からずっと願っていたものを

手に入れることができたんだ。

 

こんなの、うれしくないわけがない。

 

自分の耳をあやすようになでた。

初めてだよ、こんなこと。

 

鏡は何処にもないけど、目を閉じれば自分の姿が瞼の裏に浮かぶ。

それを隅から隅まで眺めていると、朝まで続けてしまいそうだ。

それも仕方のないことだと思う。

 

 

そんな感じでしばらく一人で楽しんでいたときに、

物が落ちるような音がした。

 

「ッ!?」

 

おかげでしばらく硬直していたけど、

しばらくたっても何も起きない。

 

もし音を聞いてサーバルあたりが起きてきたら面倒だ、

今はここを離れなければいけない。

 

「でも、すぐ戻ってくるからね」

 

眠っている彼にそんな言葉をかけて、私はまたロッジの外に出た。

 

 

 

 

 

 

ロッジの外。

耳と尻尾で感じる風が気持ちいい。

この初めての感覚は今しか味わえない。

だから、しばらくそこに佇んでいた。

 

「……やっと……『友達(フレンズ)』になれた」

 

そんな言葉が、思わず零れ落ちた。

 

 

私は、ロッジを去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼女は気づかなかった。

彼女がロッジに出入りするときに、彼女を見つめていた者の姿に。

 

「……これはまた、面白いことになりそうだねー」

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