キツネとカミサマ   作:ろんめ

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2-15 キツネ宿とイヅナ

バスに乗り、僕たちは再び雪山に降り立った。

 

「キタキツネ、ギンギツネー、いるー?」

 

二人を呼ぶと、ギンギツネだけが出てきた。

 

「あら、いらっしゃい……今日はたくさん来たわね」

 

今回はイヅナとアライさんとフェネックが加わっているから、6人。

前の二倍の人数になっている。

ここにいるキタキツネとギンギツネを合わせれば8人。

ついでに言えばその半分が狐だ。

 

「キタキツネは、ゲームしてる?」

 

「ええ、朝ご飯食べたら今日もすぐに飛んで行っちゃって……

 ふふ、なんであそこまで夢中になるのかしら?」

 

ギンギツネは不思議に思っているみたいだけど、

僕には分かる。楽しいよね、ゲーム。

……外の世界で僕はどんなゲームをやってたんだろう。

まあ、いくら考えても思い出せないようなことは置いておいて、

早めに本題に入ってしまおう。

 

イヅナの腕を引っ張って、ギンギツネの目の前に連れてきた。

 

「この子、見ての通り狐のフレンズだと思うんだけど、何か知らない?」

 

「うーん……立ち話もなんだし、とりあえず入って」

 

畳の上に座って話を始めた。

 

「私、イヅナっていいます……はじめまして」

 

「私はギンギツネよ、よろしくね」

 

「それで、何かわかる?」

 

「ぱっと見だとキツネってことしか分からないわね……

 お話してみたら何かヒントが出るかもしれないわ」

 

「んーそっか……ちょっと歩き回ってきていいかな?」

 

「え、行っちゃうの?」

 

「ちょっと見て回るだけだから、ギンギツネとおしゃべりしてて」

 

「……わかった」

 

口ではそう言ってたけどなんだか不満気だ。

そんなイヅナをギンギツネに任せて僕は宿の中を探索することにした。

ちょっと見てみたいところがある。

 

「ここかなー?」

 

流石に温泉のすぐ近くにはない。

 

「……ここは」

 

お客さん用の寝室だ。

 

「ここは、ね」

 

キタキツネがゲームをしている。

 

「すごーい! やってみたい!」

 

「だ、ダメ! そんなに引っ張ったらこわれちゃう!」

 

「アライさんにもやらせるのだ!」

 

「そっちのは動かないよ……」

 

サーバルとアライさんに振り回されて大変そうだ。

キタキツネがこっちに気づいた。

 

「……あ、助けて」

 

助けを求めている割には落ち着いている。

ように見えるけど本当は大きな声を出すことも面倒なのかもしれない。

 

適当に二人をなだめた。

そういえばフェネックは何をしているのだろう。

そう思って周りを見回してみると、ギンギツネとイヅナから

少し離れた場所にいた。

 

大きな耳をそばだてて二人の会話を聞いているみたいだ。

……いや、確かに怪しいと思うことはあったけど、

そこまでしてイヅナの発言を聞く必要があるとは思えない。

 

それにフェネックは何かを確信しているような素振りをしている。

何かあったのだろうか。

 

二人を観察しているフェネックを観察しても何もわからないから

自分の探し物を続けることにした。

 

 

 

 

 

……あった、キッチンだ。

宿というからにはこれくらいはあるはずだけど、

見つけるのに時間がかかってしまった。

 

キタキツネたちは一切使っていなかったはずだが、

設備も道具もきれいに揃えられている。

大方ギンギツネが時々手入れしていたのだろう。

 

ただやはりしばらく使われていなかったからか、

食材は見当たらず、かまどに入れる薪なども近くには見えない。

 

「何かあれば作ってもよかったんだけどね」

 

何かあれば大儲け、ていう気持ちでキッチンを探っていると、

見慣れないビンがあることに気づいた。

 

「なにこれ……?」

 

ビンをくるくると回してラベルを見ると、

”Curry Powder”という文字があることに気づいた。

つまりこれはカレー粉だ。

博士たちへのいいお土産になるかもしれない。

 

「どうせ使わないだろうし、もらって……いいよね」

 

カレー粉をこっそりと自分のバッグにしまった。

 

 

 

探し物を終えた僕はイヅナとギンギツネのところに行った。

 

「ギンギツネ、何かわかった?」

 

「それが、正直言ってお手上げよ。

 イヅナちゃんみたいな子のことは聞いたことなくて」

 

「そっか……」

 

「わ、私……どんな動物だったんでしょうか」

 

「こればっかりは博士たちに頼るしかないかな」

 

「すぐに出発するの?」

 

「いや……ゲームする」

 

「え……えっ?」

 

 

意を決し、キタキツネがゲームをしているところまで向かう。

前回のリベンジ、せめて一矢報いたいところだ。

前回の敗北……善戦はできたが、及ばなかった。

今回こそは1度でも勝利を奪い取りたい。

 

「何を熱くなってるのかしら……?」

 

「……ふふ」

 

 

 

 

 

 

少し遡って、イヅナとギンギツネのやり取りを

聞いているフェネックである。

 

 

「イヅナちゃんが目を覚ましたのはどこ?」

 

「えっと、ロッジの近くです」

 

フェネックの知る限り、ロッジの近くに生息しているキツネはいない。

 

「自分の名前以外分からなくて、どうしようか迷ってるときに

 アライさんに見つけてもらって」

 

「なるほどね……」

 

相槌を打ってはいるものの、恐らくギンギツネは何も

分かっていないだろうと思った。

 

「あと……そうね、得意なことってあるかしら」

 

「と、得意なこと……?」

 

答えに困ったイヅナが黙り込み、少し静かになる。

すると少し遠くでゲームをしているキタキツネたちの声や

宿の中を歩き回っているコカムイの足音が聞こえた。

 

「分からないです……」

 

「うーん……それにしても、綺麗な毛並みね」

 

「そうですか?」

 

「真っ白でとっても綺麗、赤い目も素敵よ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

予想外にも褒められ、イヅナは頬を赤らめている。

あの真っ白さと赤い目。フェネックはウサギを思い浮かべた。

 

その後も会話は続いていくが、めぼしい情報が得られなかったため

フェネックの意識は会話から逸れ始めた。

 

 

 

 

 

思考にのめり込み、ピクリとも動かない。

物陰でしゃがみ何も言わずにそこにいる彼女は置物のようだ。

 

「フェネック、こんなところでどうしたの?」

 

「っ……ちょっと考え事だよー」

 

コカムイに声を掛けられ、ビクッと反応した。

 

「そろそろ出発しようと思うんだ」

 

「わかったー、すぐ行くね」

 

ほのぼのとした普通の会話。

だが、互いに心中は穏やかではなかった。

 

 

「(イヅナちゃんが嘘をついてるのは分かるけど、それ以外は全然。

 コカムイさんも気づいてもおかしくないけど……)」

 

 

 

「キタキツネに、また負けた……はぁ」

 

対するコカムイは、ゲームに負けたことで落ち込んでいる。

ただの敗北ならまだ元気はあっただろう。

しかし今回は前回以上の完敗である。

さらに偶然に偶然が重なった結果だ。

 

『な、なんで……?』

 

『ボクの勘、だよ』

 

 

 

「はは、勘ってすごいな……」

 

 

バスで図書館に向かう間彼が落ち込んでいたことを、

イヅナ以外知りうることはなかった。

 

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