「二人とも、またねー!」 「またね、キタキツネ!」
「またね、待ってるわ」 「またげぇむしようね」
「それじゃあ、行きますね」
ジャパリバスはみずべちほーの方角に向けて走っている。
ついさっき山を下りて、平坦で暖かい地域に入った。
「この辺りにはたしかPPPってアイドルがいるんだっけ」
「ソウダヨ、5人ノフレンズデ構成サレルアイドルユニットナンダ」
「他にも、マーゲイなどのフレンズが住んでいるよ」
「時々ライブヲシテイルカラ、他ノチホ―カラノフレンズモ多クイルヨ」
「でもここは目的地じゃないから通り抜けるよ」
かばんちゃんのボスと僕のボスの連携プレーでみずべちほーが説明された。
多分ロボットは息をしないけど、同じパークガイドだから息を合わせるのは簡単みたい。
でもその能力はもっと別のことに生かすべきだ。
水辺はロッジの辺りや雪山とは違った景色の美しさがあるいいところだ。
遠目にPPPのライブ会場らしきステージも見えた。
今日はライブがないので閑散としている。
その様子はすぐに見えなくなってしまった。
しばらくして、森が見えてきた。
「そろそろデコボコした道に入るから、気を付けてね」
そうボスが言うとバスがガタガタと揺れ始めた。
それほど大きい揺れじゃないから構わないけど、
景色が見づらいのは少し残念だ。
「あとどれくらいで着く?」
「20分くらいだよ」
「そっか、じゃあもうすぐ………あれ?」
バスが止まってしまった。
「ちょっと、どうしたの?」
「もしかして、電池が切れちゃったんじゃ……」
「ボスー!」
「アワワワワワ……」
「じゃあ、ここから歩くの……?」
「ココカラ歩クト、大体40分クライダヨ」
フリーズしたボスの代わりに僕が捕まえたボスが説明してくれた。
「電池は持っていきましょう。」
「でもとしょかんじゃ充電できないよ?」
「博士たちなら、こうざんまで飛べるから頼んでみるよ」
そんなこんなで歩き始めた。
でも歩いてみるとバスに乗るよりゆっくりと周りを見れる。
速く行けない分こういうところで楽しまないとね!
「しんりんちほーには森にすむフレンズが多いよ。
としょかんにいるフクロウのほかにも見つかるかもね」
フリーズから復帰したボスが説明を始めた。
それからしばらく歩いていると、
まっすぐな道の横に植物のアーチで覆われた脇道があった。
「こっちの道は?」
「そっちはクイズの森だよ。ジャパリパークのアトラクションの一つなんだ」
「へぇ、面白そうだね」
「マッスグ行ッタ方ガハヤイヨ」
「………」
「今回は急ぎましょう、コカムイさん」
「……そうだね」
クイズの森は諦めてまっすぐ行くことにした。
道の端を見ると、標識がまとまって倒れていた。
木の多いところを抜けて、広い場所についた。
奥に図書館らしき建物が見えて、ボスが「到着だよ」と言った。
「博士ー! 助手―! いるー?」
サーバルが二人を呼ぶと、建物の中から
白と茶色のフレンズが出てきた。
「サーバル、図書館では静かにするのです」
「大きな声出さないと気づかないじゃん!」
「それはいいとして、そこにいるのは誰ですか?」
「はじめまして、コカムイです……あ、人です」
「それで、我々に何の用ですか?」
かくかくしかじか……とこの島にきて起こったことを
簡単に博士たちに説明した。
「……詳しいことは中で聞くのです」 「ついてくるのです」
図書館の中に入ると、椅子に座るよう勧められた。
座ると、博士がかばんちゃんとサーバルに話しかけていた。
「まずコカムイにだけ話を聞くので、邪魔しなければ好きにしていいですよ」
「コカムイさんだけに聞くんですか?」
「お前たちしか知らないことについてはその後で聞くのです」
「かばんちゃん、上に登ろうよ!」
それから質問をされた。
自分について覚えてること、持ってる知識、とかいろいろ。
博士が質問して、助手がそれを紙にメモしていた。
「そのラッキービーストは?」
「雪山で捕まえたんだよ」
「そうですか……あとは、料理はできるのですか」
「え、料理?……まあそれなりには」
「博士、こちらも期待できそうですね」 「そうですね助手」
「「……じゅるり」」
見返りに料理を作らされるのだろうか。
「博士ーこれなにー?」
「これ、倉庫にあったんですけど……」
上からサーバルが何か持ってきた。
あれは……ペンキの缶みたい。
「それは”ぺんき”というのです」 「色を塗るときに使うのです」
「そーなんだ! どうやって使うの?」
「はけを使って塗るので「うわぁー!?」
サーバルが階段で缶を持ったまま転んだ。
缶を手放してしまい、ひっくり返った。
「おっとっと……あ」
僕はよけられたけど、足元にいたボスが缶ごと頭からペンキを被った。
缶を持ち上げると、ボスは真っ赤になっていた。
「あ、ごめん!」
「アワワワワワ……」
「サーバル、何をやっているのですか」 「ちゃんときれいにするのですよ」
「と、とりあえず洗わないと、水道ってどこ?」
「”じゃぐち”なら外にあるのですよ」
急いで水で洗ったけどペンキが落としきれなくて、
結局ボスは赤色に染まってしまった。
「えっと、ごめんねボス……」
「大丈夫ダヨ」
「こんなに赤くなっちゃったし、これからは『赤ボス』って呼んであげるよ」
「それなら、かばんちゃんのボスと分けられるね!」
事故だったけど、まあ区別しやすくなったし結果オーライってことで水に流そう。
ペンキは流れなかったけど。
僕が赤ボスの毛を乾かしているうちに、
かばんちゃんが博士の質問に答えていた。
「セルリアンについてはわからないことだらけなので、
海の近くのフレンズに気を付けるよう伝えておくだけにするのです」
「わかりました。ありがとうございます」
「それと、かばん」
「はい?」
「……コカムイには十分気を付けるのですよ」
「…どうしてですか」
「あいつ自身についての記憶だけがきれいになくなっている。
質問の答えからそう考えられるのですが……」
「きれいさっぱりなんて怪しいのです」
「それに、船と一緒に吹っ飛んだだけなのでしょう?
記憶喪失が演技の可能性もあるのです」
「でも、疑うなんて……」
「信じるのは自由なのです。ですが、お前やサーバルに何かあってからでは遅いのですよ」
「…………」
「さて、では電池を充電するためにこうざんまで飛んで行ってやるのです」
「それと、博士が帰ってくるまでに料理を作るのですよ」
「……助手、お前も行くのですよ」
「…………………当然です、私は博士の助手なので」
「………」
「それでは行ってくるのです」 「逃げてはいけませんよ」
「逃げないよ!」
「かばんちゃん、話終わったんだ」
「……あ、はい。これから博士たちのために料理を作ります」
「あれ、かばんちゃん、どうかした?」
「いえ、なんでもありません。コカムイさんも手伝ってくれますか?」
「いいよ、何作るの?」
「いつものカレーにしようと思います」
「おっけー、あそこのキッチンだよね!」
そう言ってコカムイさんはキッチンに向かって走っていった。
ボクは、コカムイさんが嘘をついているなんて思いたくはない。
……外の世界からやってきた『ヒトの仲間』だから。
「かばんちゃん、食材ってどこー?」
「あ、今行きます!」