キツネとカミサマ   作:ろんめ

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1-08 くっきん&りーでぃん

カレー作りの始まりだ。

かばんちゃんが一通りの道具と食材を持ってきてくれた。

何回か作って慣れてるみたいだ。

 

かばんちゃんが持ってきた食材を見ると、

見慣れない粉末が数種類あることに気が付いた。

 

 

「かばんちゃん、これは?」

 

「それはスパイスです。これを混ぜてカレーの素を作ります」

 

「スパイスから調合するの……!?」

 

「あ……はい。そうですけど…」

 

 

スパイスから作るカレーなんて見たことない。

いや、見たことがあったとしても忘れているが。

これを当たり前のように言っていることからして最初に作った時から

スパイスから作っていたってことだ。

 

 

「僕は何すればいい?」

 

「サーバルちゃんが野菜を切ってくれてるので、そこで洗ってください」

 

「わかったよ」

 

「はい、全部切ったよ!」

 

「ありがとう、でも随分と多いけど……」

 

「たくさん作るからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、博士と助手はこうざんに着いていた。

 

「わぁぁ、いらっしゃぁい! 紅茶飲みにきてくれたのぉ?」

 

「これを充電しにきたのですが、先にいただくとしましょう」

 

「充電している間はお湯が出ませんからね」

 

 

電池を充電器に入れた後、二人は紅茶をゆっくりと味わっていた。

 

 

「博士、コカムイについてのことなのですが…」

 

「今は様子見でいいのです」

 

「そうではなくて、外から来たコカムイなら、

我々が読めない文字も読めるかもしれないのです」

 

「……! それもそうなのです」

 

「帰ったら片っ端から読ませましょう、博士」 「そうですね、助手」

 

 

二人がそんな話をしているとカフェの扉が開き、トキが入ってきた。

 

 

「いつもの紅茶、淹れてもらえるかしら」

 

「ごめんねぇ、今電池充電してるからもうちょっとだけ待ってほしいなぁ」

 

「そう……あら、博士たちじゃない」

 

 

トキは紅茶がおあずけになり手持ち無沙汰のようだったが、

ふと思い出したように言った。

 

 

「そうだ、博士たちにも練習の成果、聞かせてあげる」

 

「…まあ、聞いてやらないこともないのです」

 

 

博士たちが断れなかったのは、自分たちが電池を充電しているせいで

トキが紅茶を飲めなくなっているからだろう。

 

 

「…わた~しはぁ~~ト~~キ~~! なかま~~をさがし~~てる~~!………」

 

「相変わらずですね、博士」  「ええ、ですがあの諦めない根性だけは褒めてやるのです」

 

 

間もなく充電が終わり、こうざんから飛び立つ博士たち。

少しふらつきながら飛んでいたのはトキの歌のせいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐ博士たちがこうざんに飛んで行ってから一時間がたつ。

……と赤ボスが教えてくれた。

なぜ一時間かというと充電に一時間かかるから、らしい。

今ちょうどほとんど作り終わって盛り付けに入る直前だ。

 

一時間近くかかったのは主に僕が火付けを手こずったり

水をこぼして火を消してしまったり野菜洗いに時間がかかったせいだ。

 

火付けは手こずりすぎて他の作業を終えたかばんちゃんにやってもらった。

火を消してしまったことについては、本当に申し訳ない。

 

 

「冷めないようして、博士さんたちが帰ってきたら盛り付けましょう」

 

「つかれたー!」

 

「ボクが火を見てるので、コカムイさんも休んでていいですよ」

 

「ありがと、かばんちゃん」

 

 

僕が火を見ようかとも言いたかったけど、

消してしまった前科持ちだから言い出しにくい。

 

図書館にあった動物図鑑を読み始めようとしたとき、

博士と助手が電池を持って戻ってきた。

 

 

「この匂い、間違いなくカレーですね」 

 

「すぐに食べられますよ!」

 

「さすがかばんなのです!」 「今すぐいただきますですよ」

 

 

そこからはもうすごい食べっぷりだった。

辛い辛いと言いながらカレーを飲むような勢いで

食らいつくしてしまった。

 

 

「満腹、満足なのです」 「これで、”電池”の分はチャラなのです」

 

 

……なんかやたらと電池を強調していた。嫌な予感がする。

すると博士がおもむろに立ち上がり、こちらにゆっくりと歩いてきた。

 

「コカムイ」

 

「………はい」

 

「お前には、図書館にある本を片っ端から読んでもらうのです」

 

「さあ、さっさとするのです」

 

「うわわっ!?」

 

後ろから助手に持ち上げられ、体が宙に浮いた。

そのまま図書館へと向かっていく。

 

「待って、これぐらい歩けるから!」

 

「逃げられては困るのです」 「暴れると落とすですよ」

 

 

中の椅子に座らせられて、目の前に本の山が積みあがった。

 

「とりあえず今日はこれだけ読むのです」

 

「10冊くらいあるけど……」

 

「読み終わったら本の内容を紙にまとめるのですよ」

 

「そんなぁ……」

 

「ボクも手伝いましょうか?」

 

「ありがとう、助かるよ…」

 

 

本を読み始めると、博士と助手はどこかに行ってしまった。

 

 

 

「ですが博士、一人で十分なのでは?」

 

「分かっていませんね、かばんがここにいれば毎日料理が食べられるのです」

 

「なるほど、名案ですね」 

 

「たくさん読ませて、長くここにいてもらうのです、我々は賢いので」

 

「ええ、そうしましょう、我々は賢いので」

 

 

 

 

 

 

 

博士たちが持ってきた本は動物図鑑などの生き物の本が多かった。

なんで読ませるのか聞いたところ、博士たちでは読めない字があるかららしい。

多分漢字や英語だろう。

 

本を読み終わるころには日が沈んでいた。

明日からも本を読まされるんだろうな……

明日に備えて日記書いて早く寝よう。

 

 

『4日目

図書館に着いた。博士と助手に会った。

ボスがペンキで赤くなった。

かばんちゃんとカレーを作った。

本を読まされることになった。

しばらくここにいることになりそうだ。

 

初めて会ったフレンズ

 

アフリカオオコノハズク (博士)

ワシミミズク      (助手)』

 

 

 

「おやすみ、赤ボス」

 

「オヤスミ、ノリアキ」

 

 

 

 

 

 

 

次の日も本を読むんだけど……どういうことだこれは。

目の前にあるのは昨日よりも高い本の山。

 

「え、これを今日中に読めと……?」

 

「……どうかしたのですか」

 

「どうもこうも……こんないっぱい読めないよ!」

 

「だったら次の日も読めばいいのです」

 

「一体いつまで読ませるつもりなの……!?」

 

「ずっとここにいていいのですよ」

 

 

どういうことだろう、気に入られたのかな……?

 

 

「料理できましたよー!」

 

「待ちくたびれたのです!」 「いただきますですよ……!」

 

博士たちは料理まで文字通り飛んで行ってしまった。

 

「もしかして……料理が目当て……?」

 

 

ガツガツと料理を貪る二人を見ていると、なんだか……

 

「かばんちゃん、僕の分は!?」

 

「ええ!?」

 

 

 

とにかく食べよう、話はそれからだ。

 

 


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