剣に生きる   作:moti-

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プロローグ:2

「え!? お前マジで女になってんじゃん! マジか! マジか! よくギルドも認めたなそれ! いやマジか! ──セックスしようぜ!!」

 

「貴様は剣の錆にすると今決めた」

 

 そう言いつつ鞘から剣を引き抜く動作をちらつかせて相手の言葉を止める。実際に抜いたら問題行為なのでそこは自重しつつ、まぁ、と呟き、

 

「正直そこらへんは体験してみたいんだけどなぁー……」

 

「お? やるか? 跡継ぎ欲しいんだよ」

 

「そこらの女でも孕ませてなさい。俺はやんない」

 

 そこで言葉を止めて写真が更新されたギルドカードに目を落とす。ギルド側からは驚かれるかと思ったが、しかしそんなこともなく性別の変更手続きが終了した。

 

「そりゃあお前あれだからな、メゼポルタのほうでは当たり前のように性転換するらしいからな」

 

「俺は! 魔境に! 住んで! ないだろ!」

 

「だからメゼポルタ出身のやつからテロ喰らったんだと思ってる」

 

「くっそ迷惑過ぎる」

 

 と言うかメゼポルタ(魔境)マジ魔境。

 

 自分が所属している龍歴院ギルドにもその名を轟かせているあたりあの地域は伊達じゃない。

 

 主にキチガイ方面で。

 

「あっちは修羅の聖地だから、一回どっかで教導取りに行きたいんだけどなぁ」

 

「スタイルと狩技で充分だろお前。あんなキチガイどもに染まったら俺はお前と縁を切るぞ」

 

 こうまで言われるのだからやはり魔境は魔境だった。

 

 魔境、と呼ばれるメゼポルタ方面が何故魔境と呼ばれ恐れられるのか、それは単純、

 

 人間強度が強すぎるのだ。

 

 モンスターの生物強度のインフレに伴いそれをぶち殺すためにハンターは人間と言う殻を投げ捨てた。残るのは確殺の意思を持った竜殺しだ。機械のように、一撃一撃を全て必殺として竜を殺す以外の全てを削ぎ落としたのがメゼポルタ地方のハンターだ。

 

 尚モンスターのほうも頭がイカれてる。

 

「あっちのこと考えてるとやっぱこっちの環境はぬるいんだろうかね?」

 

「だから魔境と比べんなってんだよ。……あ、すいません、肉持ってきてください。ええ。デカイの。竜頭とか、高いやつ」

 

「ナチュラルに最高ランク頼んでくのヤメロォ!!」

 

 ここの貧富の差を思い知る。経済力の差はこうしたところで如実になってくるなぁ、と思い、正面に座っている人物を見る。

 

 ──アレス・レジストレス。

 

 こいつは貴族出身のハンターだが、しかし品性というものが欠如しているキチガイである。

 

 長男のくせにさりげなく家爆破して逃走してきた真性のキチガイである。

 

 金目のものを軽く持ち出して大タル爆弾を家を取り囲むように用意し、そうして外壁を連鎖爆破して逃走してきた頭のおかしい人間である。

 

「なんでこんなやつと交流持っちゃったんだろうなぁ……」

 

「知らん!」

 

 運ばれてきた肉を自分の前に置いて、こちらの手元を見て、そしてふっ、とアレスは笑った。

 

「マジでぶち殺してやろうか……?」

 

「いやぁ! 悪いなぁ! クソ雑魚庶民と違ってこんな豪勢な食事で悪いなぁ!」

 

「あーこれ駄目だわ。キレちゃったわ。俺これキレちゃったわ。表出ろよ、決闘だ……!」

 

「ベッドの上なら決闘を受けてもいいぞ!」

 

「こんなクソ使えないナイフでもやろうとすれば首切断できるんだよなぁ……」

 

 死ぬからやめろ、と言われたので静止に乗ってやめることにする。目の前のやつの食ってるものと比べれば値段が下がるが、しかしこちらの食ってるものも一般からするとかなり高いほうに入ってくるのだ。だから別になにか言うことはない。

 

 ただ煽ってきたら殺す。これは確実だ。

 

「……ん? どっか行くのか?」

 

「ああ、ちょっと病院に厄介に」

 

「へー、お前が? なんで?」

 

「視覚効果から分かれよクソ雑魚……!」

 

 まぁ、単純、本来それをする必要もないほどのそれ、

 

「──元に戻る見込みがあるかをちょっと探ってくるんだよ」

 

 

 

 

「これは元に戻る気配がないね」

 

 と、女性──アステオはそう言った。そう言って、軽くこちらの体に触れて、感触とこちらの反応を確かめるように触れて、そうして手を離し、言った。

 

「戻る気配ないね──これがっつり体が整形されてるよ。もう諦めてメス堕ちしたら?」

 

「嫌に決まってんだろ!?」

 

 いや? そっかー、とどこか残念そうにするそいつを見て、こんなやつが強いってのはやっぱり人間の才能は不平等だ、と思える。

 

 何せこいつ、

 

 ──元G()()()()()()だ。

 

 G級ハンター──それは竜を殺すことのみに尽力する化物。殺し切ることを確実とする化物──一撃一撃が全て必殺、と言えばそれはメゼポルタ方面と変わらないと思うだろうが、あちらではない一般のG級ハンターでも化物なのは変わりない──その実力は、

 

 下位のモンスター程度なら素手でもどうにかなると言うレベルだ。

 

 そんな化物がわりと真剣な表情でメス堕ちしろと申したので俺はもう駄目かもしれない。

 

「真剣な話、君クラスなら子孫を作ることが半分以上義務になってくるんだよねぇ……」

 

「は? ……俺みたいなやつが? それはメゼポルタのほうの怪物に当てはまる話じゃねぇのか?」

 

「そうかな──私はそう思わないね。()()()()()()()()()()()()()()。君は私を化物と言うけれど、私からしたら君のほうが化物じみてて恐ろしい。だって君は道理をねじ伏せ結果を引き出す──概念と言っても過言ではないと、概念級と言ってもいいと私は思ってる。そんな化物が次世代に続けるのは当然と言っていいほどの義務だと思うよ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そいつは言葉の最後にそう付け加えて──こちらを見る。

 

 そうして無造作に胸に触れた。

 

「…………あの」

 

「ちっ、なによこれ。男だったくせにそこそこあるじゃん。……貧乳な私を煽ってるのかしら? これもいじゃうよ? 安心して、今まで他人のセックスアピールを破壊してきた女として意外にわたし有名だから」

 

「やだよぉ!? なんで唐突に殺意に目覚めるんだよ……!?」

 

「ほら、おっぱいが悪いよね」

 

「そっかー」

 

 そこで理解することを諦める。こいつには話が通用しない。頭イかれてるぜ……と心の底から思う。とりあえず息を吐いて、

 

 自分の体を見下ろす──そこそこの体つきをしていると述べたが、やはりそう思う。そのとおりだ、と思う。これは重心管理、一から慣れ直す必要があるぞぉ? と軽い課題の発生に軽く怒りを覚えながら、しかしそれでも案外なんとかなる可能性があるだけまだマシだよなぁ、と思った。

 

「ところで、俺が化物と言うだけの根拠ってどこからくるんですか?」

 

 そう問いかけた。

 

「ん? 気づいてないの? じゃあどうしようか……そうだ、あそこなら行けるか」

 

 そう言って彼女は適当にポーチから何かの用紙を取り出した。そこに適当にペンで文字を書き入れて、それをぴらりと手に取ってこちらに突きつける。

 

「──今から闘技場行くわよ、君の神髄が理解できるだろうから」

 

 

 

 

 剣を振るう。

 

 闘技場は基本的に武器の扱いになれる、と言う理由と、もう一つ、モンスターとの戦闘経験を積む、と言う存在理由がある。しかしモンスターと戦う以上、殺される可能性も当然あるわけだ──そのことを考えたら、すこし手が震える。手が震える──それを噛み殺し、片手剣を手に取る──盾も付属していたが、それは持たない。理由は単純だ。

 

 感覚が狂うから。

 

 盾を持つとスタイルが変更されることになる──自分の盾無しスタイルと言う戦い方は盾で片手が塞がることをよしとしない。基本的に攻撃に当たったら死ぬことを前提に置いて戦うことを考えているため、そうなれば、

 

 基本的に、回避アタッカーと言うことになる。

 

「よし、慣れた──この剣少しリーチが短いのが問題だよなぁ。まぁそれはいいか。別に普段より距離を詰めるだけだし。あとは……装備も貸し出されるんだっけ? 嫌だなぁ、前に使った人の汗とかでぐっしょりしてたら」

 

 そんなことを言いつつ装備を身に付けてみた──全然ぐっしょりしてるとか、そんなことはなかった。しっかりと整備はされているらしい。まぁ、当たり前だよなぁ、と納得し、抜剣したまま会場へ、

 

 ──闘技場の、場内へと入る。

 

『さぁ──! 野郎共喜びな!! 今回は女子の挑戦者だぁ!! しかも美少女だぞ美少女! 名前!? 知らねぇよバカ野郎!! と言うことで──! ある意味いつもどおりのノリでやってくぜ闘技──!!』

 

 オオォォォ!! と言う歓声が聞こえる。──闘技場と言うのは市民の娯楽だ。時々事故で死ぬやつがいるが、それでもやはり栄えてるのは、この世界、全然娯楽がないからだろうと推測している。ともあれ、

 

 ──視界に怪鳥を捉える。

 

 怪鳥──怪鳥だ。ピンクの甲殻を身に纏っている。それを見て、まぁ、狩れるな、と直感する。剣を強く握り直して──そうして、飛び込もうとする心を抑え、実況の続きを待つ。普通こんなことをしていたら殺されるが──怪鳥のほうも、ある程度はわきまえてるようで、ここでアクションを起こすことはない。それは自分に取ってもありがたいことだった。

 

 気持ちの昂ぶりが気持ちいいくらいに、心臓が口から出てきそうなほど熱狂が凄まじい。これは以前出たときよりすごい熱狂だな? と感じ、そう考えればやっぱり美少女と言うものがみんな好きなんだなぁ、と思う。

 

『さて! 今回のこの美少女は──詳細不明! おかしい! 俺のデータベースにもない!! さっきハンター登録したばっかりの新人らしい!! 新人……新人……? つまり初めての狩りはここ……? つまりこの娘の狩りの処女は俺がもらったも同然……? 最高やな!!』

 

「マジかよお前」

 

 頭おかしい実況だなぁ、と思うと同時、

 

『まぁ待ちくたびれてるっぽいしそれじゃあ始め! 頑張れ!!』

 

 ──その言葉を知覚する。

 

 同時に足を動かした。前方に重心が乗っている──ならばそれを踏まえて動く、と言うかそれを前進する推力に利用する。

 

「ふ──」

 

 そうして接近し、息を吐き出しつつ剣を叩きつける──どうせろくに切る気もない、軽い牽制だ。とりあえずそれを行って、軽く腹の下に潜り込んで流すように斬撃を繰り出す。

 

 それが軽く腹に傷を付けて──そして治った。

 

「まぁ、この程度は再生するよね……」

 

 だからやるべきことは再生できなくなるまで削るか、それか再生を殺す斬撃を打つ必要がある。んー、と少し考え、怪鳥──イャンクックのその場での旋回で振るわれる尻尾を剣で反らしながら結論を出す。

 

 再生を殺すほうを選択する。

 

 とりあえずイャンクックが放つ火を回避し、そうしてなるべく懐に入ってのインファイトを心がける。一撃、二撃、と軽く切り、そうしてなんとなく感覚を掴んだ。よって宣言する。

 

「──貴様はあと二手で殺す」

 

『お──っとぉ!? 殺害宣言だぁ!!』

 

 その言葉に、会場が沸き立つのを感じる──そういえば観衆も存在するんだったなぁ、とふと思い返し、これはなにがなんでも宣言を実行しなければなぁ、と焦る。

 

 とは言えなにか特別なことをする気はない。いつも通り、当たり前のことを当たり前に成し遂げるだけだ。故に宣言は実行できるだろう、と言う確信がある。

 

「斬撃よぉい──」

 

 吐息を洩らして剣の尖端に意識を集中する──達人は大体、武器を自分の一部のように扱うと言うらしい。特に極めた者は単純な斬撃と言うそれだけでも深く相手を引き裂く──それは、切り口が鋭いために血が流れないと聞く。その領域に至るには……まだ遠い。

 

 けれどそれは不可能と言うわけじゃない。故に今、手繰りだすのだ。

 

 この瞬間、切り裂くと言う剣に必要な要素の全てを。

 

 火の玉を回避し、翼で殴ってきたそれを後ろに倒れることで回避する──すぐに起き上がり次は体で潰しにきたイャンクックを横に逃げ回避し、

 

 イャンクックが如何にも大技と言う形で力の溜めに入った。

 

「ま、ここだよな──」

 

 自分がそれを正面から殺したい、と思ったのは別になんのことはない、

 

 相手を、相手の必殺と呼べるものを正面からぶつかって、そして打ち砕きたいと思ったからだ。

 

「勝負……!」

 

 地面を抉りながら鞭のようにしなやかな尻尾が迫ってくる。それを視認して、正面からねじ伏せるにはどうすればいいか、と言うのを考えて体が勝手に最適解を導きだした。故に今、相手の動作より一歩()()()()()()()()()こちらの斬撃が尻尾を切断する。

 

 これで一太刀、と思考をする暇さえなく、体は確殺の予感に導かれて回転して斬撃の体制に入る──どこを狙えばいいか、と言うのも直感的に理解している。剣が自分の筋力を必要とするのは衝撃の一瞬だけ。叩きつけられて、その時に肉に打ち勝てるだけの力があればその時点で、あとは流れるように切断できる。

 

 故に、今、上空へ跳ね上げた剣が墜ちてきたイャンクックの首へとぶつかる。落下の質量に負けないように、剣の歩みを止めぬように力を接触の瞬間だけに限定して、そのまま剣が肉を通り抜けていく。

 

「──らぁッ!」

 

 そうして引き裂いたところから血が溢れ、自分をべったりと汚した。

 

「……」

 

 まぁ、そりゃあこうなるよなぁ、と自業自得の結果についても納得しながら、ともあれ、

 

 ──女になっての第一回戦を、無事に無傷と言う状態で勝利した。




 文字数減らせば投稿速度上がるよ!!(実質二時間で書き上げた人のセリフ)

 あ、わりと真面目に執筆する時間がとれません。そのせいで投稿はこんな風に遅くなります。時々くっそ早いときは時間が取れたんだと思ってください。ともあれ今からラストが楽しみですな。
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