まず条件をクリアして、と言うことで闘技場で一戦終えて、そうして元の病院まで戻ってきたところでそいつに合流し、そのまま何が言いたかったのか、と言うことをこちらから聞くことにする。
「実際今回何がしたかったかって? まぁ……それは、簡単に説明すると……君は
「──つまり、俺には天性の才能が備わってる、ってことを単純に知覚させたかっただけってことか?」
「そうなるね。その通りだ。君の実力は抜きん出ている。今、ハンターランクが2であるとは誰も思わないんじゃないかな──私からすればそう思うほどの、流暢な殺し方だったよ」
ふぅん、と口に出す。まぁ、自分の才能ってのは正直気づいていた──気づいていたのだ、その化物じみた戦闘能力と言うのは、とっくの昔に気づいていた。
剣を振るう、と言うことを続けてきた。ただそれだけで──それだけで、敵を殺すに足りる力を身に着けた。それは正直に、怪物的と言って差し支えないだろう。
別に、今まで特別なことを続けてきたわけじゃない。単純に剣を振って、剣を振って、剣を振って──それだけしかしてこなかった。いや、基礎体力づくりは当然やっていたが、それでも目立ったことは剣を振ること以外にしてこなかった。
だから。
つまり、たぶん才能があった──そういうことになる。
「才能がある、ねぇ……別にそんなにいいことでもないと思うんだが」
「ハンター業をしている人からすればすごく羨ましい才能になるわよ。私は別に羨ましくはないけど」
だって、と続け、
「強すぎる才能は厄介を呼ぶもの──君が女性の姿になってるのも、ひょっとしたらその才能のせいかもしれないしね」
それを聞いてしまうとやっぱこの才能要らねぇんじゃねぇの? やっぱ邪魔なだけじゃねぇの? と思ってしまう。たしかし、自分が剣を極めるためにはこの才能か必須になってくることも理解している。
「まぁ、殺しの技術ってやつだよなぁ」
そもそもこの道を歩むものに、才能がないわけがないのだ──才能がないけど好き、と言うのはありえない。この世界、
好きであれば、焦がれるならば日常の部品に組み込まれるのだ──日常的に小説を書くものが他人より書き慣れてるように、日常的に剣を振るうものが他人より剣を綺麗に振れるように、当然好きと思う、から日常になる。それのことを考えてしまうようになる。それがない、と言うのは、
好きを勘違いした愚か者だ。
「殺しの技術に惹かれた自分ってのも中々やばいと思うんだが、まぁそれはいいか。──知ってたことだ」
そもそもこんな世の中でまともな人間がおかしいのだ。常識の統制さえされていない世界だ。そんな世の中である以上、まともの基準が設定されていないため、自分がまともでないことは確実だ──世界規模でみなまともじゃないのだから。
「で、俺の才能が何かを呼ぶって言ってたよな? 例えばどんなことになると思う?」
そうねぇ、と言ってそいつは考える。
「──例えば世界の破滅の危機とか?」
戦闘後と言うのは腹が減る。
戦闘前に飯は食っているのだが、それのぶんの蓄えたエネルギーを狩りで全て使い果たしてしまうのだから腹が減るのも当然だ。しかし今回、そこまで大量に蓄える必要はないので、それぞれ出されている露店で何か軽くものを摘まむようにする。
「やっぱ肉が人には必須だよな……」
と言いつつ、炭で焼いたサイコロ状の肉を口に含む。味から推測してこれはアプトノスの肉だな、と直感しながら更に口に続けて放り込む。
噛むことで味を引き出しながら家に帰るために歩く──龍歴院には隣接されているベルナ村と言うものがあるが、しかしギルドの近くには居住区も用意されている。そこの一つに自分の家は存在した。家と家との感覚が狭いので叫んだりすると簡単にとなりに聞こえてしまうのが欠点だが、しかし全然そんなことをやらかす機会はないので問題ない。
今朝のは不可抗力だ。
別に特に何かがあるとき以外は叫ぶことはないので、それだけの重要な出来事だったのだと思ってほしい。
「はいはいはい──! そこのお嬢さん! ちょっとこっち来なよー! そう、そこの幼女……少女! こっちにきなされ!」
なんかやべーやつがいる、と思いながらだれに向かって言っているのだろうと思って辺りを見回せば、
「──あら、わたしのことかしら? ふふ、人間に誘われたのはいつぶりかしら。誘われたからにはノッてあげないといけないわね……!」
「ちょっと待てやお前ぇ──!!」
その叫び声にその少女に声をかけた男が即座に逃走し、少女はこちらのほうを見る。
「あら、あなたは……体の調子はどうかしら?」
「煽ってんのか! 気分は最悪だわ!!」
その少女──白髪の少女は、間違いなく自分を女に変えたやつだった。
「──で、何がしたいの?」
その言葉に自分を指しながら言った。
「これ、もと、戻せ」
「あらあら、その格好似合ってるじゃない。でも飾り気ないのが残念ね。あいつの服が体格的に合うかしら? ちょっと呼ぶわね」
「聞けよ話をォ!!」
その言葉に真面目にやるわ、とそいつは言った。
「それはそれとして服のデリバリー頼んだからそれがきたらちゃんと着替えなさいよ」
「ふざけんなよお前……戻せよ元に……!」
半ギレで言えば、そいつは漸くまともに取り合ってくれた。軽く頬に手をあて、こちらに視線を合わせながら、そいちはこともなげに言う。
「そうね──その姿は枷よ。あなた、また意気消沈しないとは限らないもの。今戦って剣を極める気になってもまたもとに戻らないとは限らない。その際に干渉する期限をわざわざ守るのは面倒だもの。あなたを今のままで留めておくのは枷、楔──あなたが戦いを続けるためのね」
「……枷? どういう──」
「そうね、どこから説明しようかしら。ええ、百聞は一見にしかずというし、見せたほうがわかりやすいわね」
影、と言って少女は自分の足元を指さした。それを見ていると、段々とそれが変質していく。
人間のものから、
──見たこともない、異形の姿へと。
「──龍か」
「ご明察。よくわかったわね、そう。わたしは龍──だから君の性別を変更することにんて簡単にできるわ。君の性別を元に戻すのも簡単だし、君を殺すのも簡単だし、──世界を壊すのも簡単にできる」
その言葉に剣を構える。敵うことがないと言うのは理解しているが、一瞬で消されるかもしれないが、こいつを見て、言葉を聞いて、そうして理解した
──こいつは殺すべき存在だと。
「話は最後まで聞きなさい。わたしがあなたたちを生かしている理由だって当然あるわけじゃない? そして──
言葉と同時に、心臓が停止しそうなほどの殺気がこちらに向けられた。それを受けて足が停止しつつも、普段通り、完全に体の恐怖を切り離して心は──剣を動かす心は勝手に動き、殺意に反応して刃を振るおうとする。
「そう、あなたはだから面白い──
刃を掴まれ、それは防がれる。手から逃れようと体が反応するが、しかしそれは許されず、微動だにすることなく指に抑えられたままだった。
指が伸びてくる。それに身を引こうとするが、剣を捨てようと言う発想が浮かばなかったために動けず静止したままだった。伸びてきた指が、目を隠していた前髪をかきわけ、こちらの目を露出させる。
「あなたはその程度じゃ視界を失わないって知ってるけど……その瞳、とっても綺麗だし髪の毛避けたほうがいいわよ? 紫の瞳──まるで狂っているようで綺麗じゃない?」
「──ッ、離せ──!」
後ろに引くタイミングで手を離されたため体が後ろに倒れた。そこからすぐに立ち上がり、
人が近くにやってきたことによりそれを中断して刃を鞘に収める。これをギルドのものに見られれば死ぬ──ギルドナイトに殺される。いや、ギルドのものでなくとも報告は届くだろう──そうなると自分は死ぬ。対人戦のプロであるギルドナイトだ。そんなものと戦って、自分が勝てるわけがないのだ。故に警戒して、
「ああ、大丈夫よ? わたしが呼んだの」
その言葉に緊張を解く。
そうしてやってきたのは如何にも女性物と言った服を大量に抱えた女性だった。
「…………あの?」
「オシャレ、しないとね?」
「畜生がぁ──!」
そういえばそんなこと言ってたなぁ! と思い返してその服を見る。自分が着るなど到底ありえないくらいに女の子してる服だ。いや待てあれどう考えてもコスプレだろお前、と思ったところで、
「──逃走!」
「逃げない!」
「ヤメロォ! 死にたくない!!」
「大丈夫! 似合う!!」
「フォローになってないんだよぉ……!」
足を掴まれて転倒する。服の山を担いだそいつはすぐそこまでやってきていた。早く逃げなければ──そう思うが体が動かない。こいつ一体どこからその力出してんだ……! そうキレそうになるが、こいつが龍であることを考えればそれは当然なのだ。そのため口に出さない。
「いや──! 女装させられる──!」
「あなたは今女の子でしょ──!」
「えーと……これどうしましょう?」
ああ、駄目なようだ。体の力を抜き、そのまま地面に這いつくばる。そうして言った。言ってやったのだ。
「死にたいなぁ……」
「残念! だが殺させない!」
「おう! わかったよ! 着替えるよ!!」
全くなんでこうなるんだろうか、さっきまでシリアスしてたのにどうしてこう、ギャグに転身するのだろうか。それがわからなかった。
「えーと、じゃあ適当に一つ寄越せよ」
「えー? ここで着替えるのー?」
「お前らに俺の家を教えるか! 俺はここで着替えるぞ!」
「それを男に見られて脅迫からの」
「やめろ……やめろ。マジでやめろ。やめろ」
「あ、うん。ごめん。人払いするわ。ミラー? この人に服渡してあげて?」
そう言ってそいつが、やってきた女性に声を掛けた。女性はそれを聞いて、適当に服を持っている中から引き抜いてこちらに渡す。
「えーと、こちらがこの服の中では一番マシなものだと思うのですが……」
「ありがとう。俺の中での好感度が天元突破したよ」
「いえ、振り回されるのは大変でしょう? そのうち慣れますから、少しの間の辛抱ですよ」
「あ、うん」
──苦労人なんだなぁ……。
それを伝えてくるそのセリフに、こちらは少し申し訳なくなりながら渡された服を手に取った。そして感じたことは、
──重い。
布で編まれているはずなのにかなりの重さがある──鎧と殆ど変わらないのではないか? と思うほどの重さだった。こんなものをずっと持っていたとは到底信じられない。しかし、推測すればおそらくこの女性も龍だ。ならこのくらいはやって退けれるんだろうなぁ、と思える。
とりあえず、重さからまず服を地面に置いて、次に服を脱ぐ。上、下と服を抜きインナーへと着替える。インナーのままで出歩く習慣と言うのは当然なく、着飾ることが当然である以上、自分もしっかり服を着ていた。性別で差異が少ないシャツを着ていたが、しかしそれを咎められたのだろう。やはりまともな服を着るべきなんだろうなぁ、と思った。
とりあえずそこまで服を脱いで、次に地面に置いた服を身に着けていく。服にしては相当重いが──自分も鎧を着てマラソンをしたくらい、重い装備と言うのは慣れている。故にさくさく、と服を着替えていき、そうして、
完全に換装が完了する──上半身はオレンジのコートのような形をした服で、ボタンで前面を止める形になっている。軽く爪を立ててみたが、相当生地は丈夫に出来ている。それを考えると戦闘にも耐えうる仕様──否、おそらく自分が戦闘者と言うことを踏まえた上で服の組み合わせを考えている。ポケットは相当大きく、簡易ポーチとして扱えるだろう。ハンターとしてかなり戦闘使用にも耐える服だ。
下は暗い緑に黒のチェックが入ったものだ。体の動きを阻害しないように体にくっつくようなもので、ズボンにはポケットは用意されてなかった。それの空間を作ることで隠密性を下げたくなかったのだろう。ともあれ、その装備を着れば、
自分は無難なファッションの大人の女性、と言った印象に変化する──先程とはかなりの違いになる。
「おー、似合ってるわね。スタイルいいし。でもこいつ男だったのよね……男で童貞捨てた気分はどうだ? って言ってほしい感あるわ」
「しねぇからなお前」
そうして、先程から疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「そこの女の人──ミラさんって言ったよな? ミラって、先輩ハンターが話してた、黒龍伝説のものであってるか?」
「あってるわ」
その言葉にまず顔を覆った。
黒龍伝説──たった数日の間でかつて栄えた国、シュレイド
無理だ。
そんなことできるわけがない──殺気だけで人の形を残すことなく消せるような化物だ。そをなものと、戦えるわけがない。ないのだ。
それを抑え込んで、次に問うのは、
「──ミラさんとお前の強さの格差は?」
「んー、それ教えちゃうと戦意喪失しちゃいそうで怖いのだけど……まぁいっか。ミラちやんは農民。わたしは天皇。これくらいの差があるわね」
その言葉に、
「まぁつまりわたしはミラちゃんの頂点って感じなんだけど──」
心の底から、
「──へぇ。それを聞いて、むしろ戦う気になるんだ」
──笑みを浮かべる。
「ああ、ああ、ああ、そうだ──お前が頂点か──なら、頂点なら、お前を超えることができたら、俺の剣は究極へと至るってことか──」
「そうなるわね。ただ、ミラちゃんを剣で屈服させても究極と呼べる強さは誇れるのだけど」
いや、それじゃ、
それじゃ不足だ。
自分が剣一本で最強へと至る──それを成し遂げる。それで漸く、剣の頂点と呼べるだろう。
故に、
「俺は、どんな方法を使ってもお前に勝つよ」
そう宣言した。
「へぇ──わたしを超えると言ったか?ふ、ふふふふふふふふふ──そんなことを言った馬鹿は古代にもいなかったわ」
故に面白い、と、彼女は言った。
「──君、名前は?」
「──ハグモ。お前の名前は?」
「
──目標:ミラルーツの狩猟。
クエストを開始します。
最終目標は早めに提示していくスタイルです。