剣に生きる   作:moti-

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平和フレンズ - 1

 アレス・レジストレスは傑作だ。

 

 アレス・レジストレスと言う男はレジストレスが生んだ傑作だ。倫理観を無視し造り上がられた怪物だ。スペックで言えばまだ勝る相手もいるだろう。しかし、全てを合わせてアレス・レジストレスと言う男の評価と比べるならば、アレスが一歩勝ることになる。それほどまでに最高傑作なのだ。

 

 そんなアレスは解放されるまではマトモにすぎるほどに真人間だったらしい。それはある種の洗脳だと言える。家を爆破すると言うのもとある人物から言われたことを実践しただけで、実際はアレスの意思ではなかった。そのアレスは、とりあえずで教習所に入ってきて、とりあえずのそこそこの成績を取っていき、とりあえずでハンターになるはすの定めだった。それがどうも妙に許せなくて、

 

 ハグモと言う男はそれを斬った。

 

 アレス・レジストレスを斬った。それがきっと、友情のきっかけだった。そこに、名の無い空っぽの少年が参加して、そうしてハグモと、アレスと、その少年とで、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()──それが、この三人の友情だった。

 

 

 

 

 テーブルに座っている。円状のテーブルには一つだけ空席がある。そこは普通に空席だ。だれも座るものがいない。しかしそれがいい。そんなの関係なくここのテーブルは一人を祝うムードにあふれていた。

 

「それでは! アレス君の! 幸先のいい一歩目を祝ってー!」

 

 その声を発したのは自分だ。それに付け加え、

 

「飲め、貴様ら」

 

「はーい! 飲む! 飲むよー!」

 

「おう、お前そこは乾杯しろや」

 

「乾杯とかする必要ある……?」

 

「お? 喧嘩か? 買うぞ?」

 

 アレスとのそんなやりとりをしつつ、それを心地いい、と感じた。

 

 この空間はアレスがハンターランクを上昇させた祝いと言うことになる。俺についで早くもハンターランク上昇かぁ、と思いつつ、しかしあれの弟子である以上アレスが強いのは当然だ。なんせ、元G級ハンターからの指導を受けているのだから。それがアレス・レジストレス──傑作と名高い怪物的な天才なら、当然それくらいは成し遂げられる。

 

 ともあれ、

 

「──これであとはナナシだけだな」

 

「おう、そうだぞナナシ。おらさっさと追いついてこいよ。お前教官の息子だろ、俺たちより全然強かったりするだろ」

 

「アレスに敵うわけないだろぉ!? 僕をなんだと思ってるんだよお前ら!」

 

「うっせぇ、狩技使えるだけお前は俺よりマシだ」

 

 ただ、自分が狩技を使えないのはそちらにリソースを回せるほどの才能の容量がないと言う理由があるのだが。

 

 ──ハグモと言う男は狩技の使用ができない。それは殺傷力に能力のリソースを注ぎ込みすぎたためであり、狩技を利用できるほどの才能の容量が足りないと言うだけだ。しかしスタイルについては全て修めているため、ただ派手な戦いができないと言うだけである。

 

 正直あまりデメリットになっていないが、教習所時代からアレスたちが狩技をド派手に使うのを見てかっこよく感じたりもしたので自分も使ってみたいと思うことはある。

 

 特にラウンドフォースとか。

 

 あとラセンザンとかも。

 

「そういうお前だって殺しの技術ずば抜けてるから人に言えないんだよなぁ……?」

 

「うっせぇ! 狩技は浪漫だろ!」

 

「いや、俺は浪漫より効率を取りたい」

 

 そんな言葉にナナシとそろってドン引きする。

 

「聞きました……? あいつまだ自我喪失の影響あるんじゃ……」

 

「僕の脳はそれはないって言ってるけど……あの真顔を見たらあるかも、あっ、ちょっ、フォークは、フォークはやめろォ!!」

 

 フォークが眼球に突き出されていくのをナナシが必死に回避するのを見て爆笑しつつ、そうして自分を見下ろして軽く悲しくなる。なんで俺は女になっているのか。この馬鹿なノリに、それだけが小骨のように引っかかって少し気分が悪い。

 

 一人だけ、遠ざかったよう感覚。それが幻覚であると理解しているが、しかしそれを拭うことはできない──自分がそう思ってしまっているのだから、自分がそれを吹っ切れない限りはぬぐえない汚れだ。心にくっついた取れない汚れ。

 

「ところで実際ナナシはどうなの? お前ハンターランク1でよくやっていけるな?」

 

「僕は情報を売って収益得てるから……あとちょっと新しい採掘ポイント発見して独占してるから今は採掘で忙しいんだよなぁ」

 

「は? 売れ」

 

「1000万ゼニー」

 

「払う! 即金で! お前だけにぃ……! いい思いさせるかぁ……!」

 

「おいあの元貴族貯金全部切り崩す気だぞ」

 

「と言うより即金で払えるほうに僕びっくりだわ。貴族って実際どれだけ金持ってんだろうね」

 

 お前それはな、とアレスが言って、軽く思い返すように顎に手を当てて酒を一口飲んでから、

 

「──貴族ってのは()()()()()()()()

 

「マジかよお前」

 

 大マジだ、と言ったのでそれは冗談ではないらしい。だが一流のハンターって確かにそんくらい稼いでるよなぁ、と言うことを考えれば、意外に想像を超過はしていない。

 

「そもそも貴族の仕事ってのは大体が()()()()()()()()()()()()()()。それくらいもらってなかったらやってることがやってることだけに釣り合わないんだよ。だからそれくらいはもらえる。それだけもらっても経済を回す必要があるから()()()()使()()()()()()()()()()。だから貴族って金をどばーって使うイメージがあるんだよな」

 

 そうして話の最中で一度、酒を口に含んだ。それで舌を湿らし、

 

「それが嫌味らしくて嫌いってやつもいるっぽいけど貴族が金を使うのは義務になるし、様々なことで視覚的効果ってのは重要になってくる。例えば貴族が金に任せて高い装備を買うことがあるだろ? 良さがわかるやつに売れ、と言うやつはいるが貴族ってのは国の上層部と言うわけでもある。これらが強そうにしていると言うだけで反逆者の抑制にもなるんだ。だから貴族が高い装備を買うと言うことは一つ、重要ではある。まぁ貴族自体はそんなに戦闘力があると言うわけではない。対人戦のプロフェッショナルを多く雇う必要があるのでこう言うところでも出費がすごいことになる──レジストレス家はその点怪物的な貴族だ。何故だと思う?」

 

 その理由は簡単で、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。レジストレス家ってのは非人道的な一族で、代々能力が強化されるように調整されている。その極点にたどり着いたのが俺と言う存在──つまり、だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺の一歩手前の世代だって、経験と言う分野で俺を超える程度の能力を発揮したりする。完成形の俺の能力については、()()()見ただろう? たぶん古龍級の本気の攻撃を喰らうとかじゃない限り一撃で死ねないんじゃないか?」

 

 そう、つまりそういうことだった──アレス・レジストレスと言う男の理不尽さは天性の才能と言った。しかしそれは過去から長く──噂に聞くシュレイド時代から文明が再建されるときからずっと血族として研鑽を続けた一族。

 

 それの極地と言うのだから、アレス・レジストレスと言う男は怪物的なのだ──そんな化物が同期と言うのはかなり恐ろしくもある。正直殺傷力でしか勝ることができてないのだからさらに強くなられると完全に追い越されるなぁ、と言う感じのことがあり、しかしその怪物に勝る点があるとか自分の才能が恐ろしい。

 

 恐ろしい。

 

「真に恐ろしいのは俺の才能……俺が最強だ……!」

 

「なにこのキチガイ」

 

「お前戦った時ナナシに絶対勝てないだろうが」

 

「相性の問題だろそれはぁ!?」

 

 叫んだ。しかしそれにはしっかり理由がある、

 

 このナナシと言う男とこちらの相性が最悪の一言に尽きるのだ。

 

 基本的に自分は相手が対応できない速度で殺すことを得意とする。速剣スタイル、と言うやつだ。それの強みは述べた通り、速く相手を切り、殺す。それだけ。

 

 

 それを相手(ナナシ)は完全に読み切る。

 

 読み切る──そう、読み切る。ナナシと言う男の真骨頂は異常な思考力と、それの無意識な瞬間的発露──即ち勘。その勘だけでこちらの攻撃を完全に封じてしまう怪物的な才能。

 

 正直な話、体力を均一にした状態なら対人戦と言う分野で言えばナナシが最強ではないかと思っている。それだけナナシの異常さは恐ろしい。

 

「で、ナナシに勝てる俺がじゃあ最強だな?」

 

「いや、それはない。ありえない。世界が百回滅んでもない。古龍がドンドルマに全部押し寄せてもそれはない。ない。古龍が千匹ここに押し寄せたとしてもそれはない。ありえないから」

 

「だよね。ないわー。僕の体力が少ない時期に挑んできて勝ったとかそれはないわー。ありえないよね。ありえない」

 

「貴様らを今すぐ縊り殺してやろうか……?」

 

「おっ、こいよ」

 

「あっ、それは反則」

 

 剣を出すと相手は完全に停止した。剣を抜いて出さなければギルドナイトに目はつけられないため問題ない。この程度の悪巫山戯は許してもらえる。

 

 さて、実のところ()()()()()()()()()()()()()。勝ち逃げと言う状態だがレジストレスの最高傑作と言うのは体力も規格外だ。ナナシの伸びも恐ろしいが、レジストレスの現在の当主と言うのは二日間竜と殴り合ったと言う逸話があったくらいなので体力の分野では勝てるわけがない、と言うのが結論だ。なのでもう一回やってもおそらくナナシは負けることになるのだろう。

 

 しかし俺はアレスに勝っている。だから最強。流石のアレスと言えど知覚能力を超えた斬撃には敵わないのであった。

 

「……あれ? 教習所時代を思い返すと涙が……」

 

「やめろ。俺たちの輝いていた灰色の歴史の話はやめろ。やめろ。やってないからな……! 俺らはテロリストの連中と殺し合いとかしてないからな……!」

 

「僕、そういう現実逃避はよくないと思うんだよ。現実を認めようよ。僕たちの教習所時代は伝説だったと思うよ。あー……楽しかったね……あんな創作みたいな展開は……当分いいかな」

 

「だよな。お腹いっぱいだわ。流石に同期の人間と殺し合った経験とか要らねぇわ」

 

 そうまで言ってふと思い返す。同期と言えば、だ。教習所時代の自分らと共闘した彼女は元気でやっているのだろうか。終わったあと全員が医務室に運ばれてから会っていないはずだ。相変わらずの性格なのだろうか? その場合自分が女になったと知ったら爆笑しながら煽ってくるのではないだろうか。

 

「てーか、懐かしいよな。あのラストバトル」

 

「あれはほんとに死ぬかと思ったね。火山の噴火からの逃走劇……普通に死を覚悟したんだけど」

 

「いや、溶岩に突き落としたんだから死ねよ。なんで生きてるんだよあいつ。ナチュラルに人間やめてるんじゃねぇよ」

 

「その前に溶岩に突き落とされたレジストレスと言う男がいるんだけど」

 

 そう言えばあったなそんなの。

 

 そう言えば、確かにこの男も溶岩に突き落とされても生きて帰ってきた。重体ではあったが普通に生きていたのでこいつもこいつで怪物だよなと思う。

 

「いや、俺のあれは単純に殺したグラビモスの甲殻持っててそれで覆ってなんとか凌いだだけだから……」

 

「普通死ぬんだけど……?」

 

「てかお前それでもマグマのなかで様子見る余裕あったの頭おかしいんだが」

 

 そうか? と言うそいつの頭のおかしさを再確認し、懐かしき過去を思い返しつつ思う。ああ、自分は鮮烈に生きていたな、と。そしてこれからもそのように生きていくのだろう。きっとこの三人で、或いは一人増えて。

 

 

 

 

 夜。

 

 場所は移り我が家。

 

 現在は専ら武器と服の保管庫として活躍している我が家だ。寝泊まりするスペースを雑に隙間を作りつつ用意し、ベッドが足りないのでソファーを用意して、そして一人床で寝ることになるだろうのでタオルを用意するために軽く箪笥を開く。

 

「ん? ああ、いいよ。二人ベッド使えばいいじゃん」

 

「ああ、貴様ら二人がベッドに行くのか」

 

「ん? ああ、そう言えばお前今女だったな。完全にいろいろいつも通りで忘れてたわ。すまん。じゃあ俺が床で寝るからナナシがソファー使えよ」

 

「んー……ホームレス経験あるし僕が下でもいいんだけど?」

 

「いや、床だと充分な睡眠取れなかったりするだろ。お前頭使うんだから俺より取っといたほうがいいと思うぜ」

 

「床で寝て体壊しても問題なんだけど……まぁいいか。じゃあお言葉に甘えて」

 

 そうして睡眠の予定だけ用意して、床に全員で座りつつ出してきたテーブルを三人で囲う。教習所の時はこうやって三人で悪巧みしてたなぁ、と懐かしく思いつつ──今日一日でどれだけ懐かしんだのかが疑問になる。

 

「さて、それじゃあ──二次会ってやつを始めますか!」

 

「うい、では飲め皆の衆」

 

 止まらない、終わらない──馬鹿の夜は長いのだ。




 全体的に気に入ってるキャラはナナシくん。主人公以外の過去はしっかり作り込んだので段々と明かしていきたい感じかなぁ

 ともあれしばらくは友人とのコミュになる感じです
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