狼娘のヒーローアカデミア   作:三元新

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2話

入学試験後の事である。雄英高校ヒーロー科の会議室では、雄英の校長や教師陣が出席する重要会議が行われていた。

 

「実技総合成績が出ました」

 

 

雄英高校教師陣達は本日行われた試験の結果を見ながらそれぞれ満足そうに頷き合っていた。

 

 

 

「いやー、今年は豊作かもしれませんね」

 

 

 

 前方の大画面に受験生の名前と成績が上位からズラリと並ぶ。それを見た教師陣から感嘆の声が複数上がった。

 

 

「救助ポイント0点で3位とはなあ!」

 

 

「後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

 

「対照的に敵ポイント0点で8位」

 

 

「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

 

「思わず、YEAH!って言っちゃったからなー」

 

 

 

 ワイワイと騒ぎながら講評を行う教師陣。そして話題は次の注目者に移った。

 

 

 

「そして……圧倒的トップで1位、幻獣椛。敵ポイント92点、救助ポイント93点とは過去に類の見ない良い好成績だな」

 

 

「試験開始直後誰よりも動き早々に敵(ヴィラン)ロボを破壊。その前半は移動しつつ会場をあちこち走り回っていた所を見るに会場の大きさと現場の把握をしていたのでしょう。元に中間時点では前半よりも動きが良く効率のいい道でポイント稼ぎをしているぞ。後半なんて前半と比べるとその動きには天と地の差がある程だ」

 

 

「たしかに。仮想敵も受験生もバラけ始めた中盤では、最低限の動きだけで仮想敵(ヴィラン)を倒している。それに最初は仮想敵を狙って破壊していたが、道中ピンチな者や救護者を発見する度に手助けしたり、手持ちの医療道具で助けているな。常に持ち歩いている感じか?」

 

 

 椛の試験の様子がいくつかの画面に映し出される。教師陣は時に頷きながら、時に感心しながらその姿を見る。

 

 

「く~、この時、他の学生がポイント稼ぎに夢中になっている中、自身はそんなのお構い無しに救護に動いている姿を見れば、本当にすごいと思う。しかもその治療法も的確で治療し終わったあとは安全な場所まで運んであげているからな。こんだけすれば救助ポイントだって必然的に上がるさ。まさに自己犠牲の塊だな!ここまでくるとこの救助ポイントのこと知ってるんじゃないかって思うぜ」

 

「確かにな。それにこの子はあの幻獣一族の娘さんだそうだ。知っていてもおかしくはないだろう」

 

「……いや、それはないんじゃないか?特にこの子の父親があのフェンリルじゃないか。彼がそんな不正をすると思うか?」

 

一人の教師の言葉に何人かが頷いていた。 

 

「そんなことより、注目すべきはこの185ポイントという高得点を前半と中盤だけでほぼ稼いでいたという件です。後半は主に救助活動に力を入れている。最後なんか0ポイント仮想敵ヴィランが出てきた際、迎撃した動きが彼女に見られますね」

 

 すると画面が移り変わり、そこに映された映像には巨大ロボットに対して怪我した女子生徒を庇いながらも、仁王立ちする椛が映し出された。彼女は指を指し『あなたをぶっ飛ばす!』と叫ぶと同時に駆け出し、力いっぱいに拳を振り下ろし0ポイント敵(ヴィラン)を一撃の元に粉砕した。轟音と共に頭の無くした敵(ヴィラン)は機能を停止させ崩れ落ちる。それを見た教師の一人プレゼント・マイクは思わず歓声を上げた。

 

 

「YEAH!何度見てもスゲェ力だ!緑谷も相当だがこの嬢ちゃんはそれ以上の力だな! まさかあの大きさの頭部がこうも簡単にぶっ飛ぶなんてな。どういう力をしていやがるんだぜ。どれだけの火力ぶちかましたんだ、コイツ?」

 

 

「確かに緑谷くんが0ポイント仮想敵の頭部を凹ませ破壊したに対し、彼女は頭部を完全に破壊した上でぶっ飛しました…その後、緑谷くんが腕と両足が変色する程の大怪我をして落下していくにたいして、彼女は無傷かつ数十メートルという高さから落ちたのにも関わらず軽々と着地していますね。……いったいどれ程の個性を持っているのやら」

 

 

 画面には会場を疾走する椛の姿が映し出される。正直、どう見ても人体ではありえない程のスピードなのだ。正直、個性だけではない気がしてきた。

 

 

「たしかに、このプロフィールでは個性『白狼天狗』と登録してあるけど、詳しくは書かれていないみたいだね。身体強化型と異形型の複合個性ってだけはわかるみたいだね」

 

 

 ネズミのような、犬のような姿の生物がそう話す。彼こそが雄英高校の校長である。

 

 

 

「また、試験終了後は、そばにいた女子生徒を他の受験生にもやった治療をしリカバリーガールの元へ運んでいます。その後も具合の悪い生徒や大怪我をした生徒の介抱に動いていますね。トリアージ判断も含め治療の腕は凄まじい。リカバリーガールも彼女の事を褒めていましたよ」

 

 

「幻獣一族と言えばもう一人いた入試二位の子……そうそう、この幻獣影狼も凄まじい子だったな。0ポイント敵(ヴィラン)は相手にしていないが、彼女の個性で作られたであろう、影の狼軍団は凄まじい働きをしていた。ポイント稼ぎだけじゃなく他の受験生の救助もやっているあたりすごい個性だな。しかも、彼女自身もしっかり働いてるから好感も持てる…………ただ、彼女自身は凄まじいまでのドジなんだな。なぜ何も無いところであんなにも転けるのだろうか?」

 

「さぁな。確かにそれは謎だな。そういえば、プロフィールでもみたが、彼女達は双子の姉妹らしい。彼女が姉で幻獣椛が妹だそうだ」

 

「ほう。それはそれは……」

 

 

全員がこの二人の資料に視線を向けていた。

 

他にも向ける子はたくさんいるのだけどやはり二人の戦果があまりにも大きいので後回しになってしまっているのは仕方がない事だ。

 

 

そんな教師陣はワイワイと意見を言いながら今後の方針を考えるのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

試験から1週間がたった。私は入試試験には自信があり何も心配ないのだが……私の双子の姉、幻獣影狼はさっきから私の目の前を行ったり来たりとウロウロしていた。

 

 

「――はぁ。……ねぇ、影狼…そんなにソワソワしないでよ。いいかげん鬱陶しいわよ?」

 

「ワウっ!?……うぅ〜、椛ちゃんは冷たいなぁ。なんで椛ちゃんはそんなに落ち着いてるの? 怖くないの?」

 

「何がよ」

 

「合格通知だよ!つ・う・ちッ!」

 

「……あー、それね。ええ、怖くないよ? 頑張ったし、トップは取れなくともそれなりにいい成績ではないのかな? 少なくとも合格の確率のほうが高いと思ってるわ。絶対とは言いきれないけどね?」

 

私だって内心は別にドキドキとしていないわけじゃない。もちろん本当に合格しているかなんて心配だし不安だ。でも、あの時の私は全力の全力でやりきり悔いのない入試試験とした。だからこそ、ここまでの自信がくるのだ。やるべき事はやった。たとえ不合格だったとしてと、悲しくはあれど後悔はない。そんなレベルだ。

 

 

「椛様、影狼様。結果発表が来ました」

 

 

すると、メイドの一人が私たちに封筒を渡してきた。少し重い。一体何が入っているのだろうか。

 

中を確認すると中には丸い機械が入っており、まるで投影機のようだ。

 

私は家族に見守られる中、その機械に触れ起動させる

 

 

『私が投影された!!』

 

 

 

 筋骨隆々な逞しい身体、力強く跳ね上がった二つの前髪、威風堂々とした佇まい、アメコミヒーローのような画風。もちろん誰もが知っているNo.1ヒーロー。

 

 

「あ、オールマイトだ」

 

「オールマイトですね」

 

「あら、オールマイトじゃな」

 

「ふむ。オールマイトか」

 

「にゃ?オールマイトだにゃ」

 

「お〜、オールマイトでござる!」

 

「む、オールマイトか」

 

「お、オールマイトだぁ」

 

「オールマイトさんですか」

 

「おぉ、 おーるまいと!です!」

 

「おーるまいとでしゅ!」

 

家族の面々が様々な反応で機械で投影されたオールマイトを見る。なぜNo.1ヒーローが出てきたのに対しこの反応なのかと言うと、実は私たちはオールマイトと友達なのだ。オールマイトの事なら世間の誰よりも知っていると自負している。オールマイトの個性は勿論、オールマイトの今の現状と何故そうなってしまったのかもしっている。何故かって?それはもちろん全てオールマイト本人から聞いたからだ。ちなみにオールマイトは月三回のペースで家に遊びに来る。その度にお土産を持ってきてくれるので、私たち姉妹はそれが楽しみにだったりする。

 

 

『久しぶりだね幻獣椛くん!何故、私が投影されたのかって?ハハハ!それは私がこの春から雄英に教師として勤めるからさ!さあ早速、君の合否を発表しよう!』

 

 

一瞬画面が暗くなるが、すぐに明るくなりその画面には【合格】の2文字が投影されていた。

 

 

『おめでとう!合格だ!筆記試験は問題なく、実技は185ポイント!合格者の中でもトップクラスの成績だ!』

 

185ポイント?随分と大きな数字ですね。いったい何にそんな点数が……

 

 

『筆記試験は満点だった。パーフェクトだ。

 

さらには実技試験ではヴィランポイントは一番の92ポイント。それに加えてレスキューポイントという隠された項目があるのだが、君は同じ受験生達を助け、最後は女子を救うために0ポイント仮想ヴィランを倒した。それが採点されたために93ポイント。

 

よって合計185ポイント……幻獣ガール!!』

 

オールマイトは1度そこで溜めて大きな声で言う。

 

『君は雄英試験トップ通過だ。おめでとう!!

 

来いよ、幻獣ガール! 雄英高校、ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 

 メッセージはソコまでで、映像は切れた。今度は皆、放心したように映像が消えた空中を見続けていた。だが……

 

 

 

 ――わぁ!と一斉に大きな歓声が上がった。

 

 

「椛!やるじゃないかトップ入学だなんて!影狼は入試二位。二人してトップ合格だなんて私たちは鼻高々だぞ」

 

「うんうん。私たちの妹は優秀だにゃ! お姉ちゃんは嬉しいにゃん♪」

 

「うむ、拙者も嬉しいでござるよ。拙者の妹たちは実に優秀だとクラスで自慢出来るでござる!」

 

「椛様、影狼様、合格おめでとうございます」

 

「影狼姉様、椛姉様、合格おめでとうございます。私もとても嬉しいです」

 

「椛姉さまも影狼姉さまもすごいぞ、です!」

 

「もみじねえしゃま! かげろうねえしゃま! すっごいです!」

 

みんなが私と影狼を取り囲んで頭をわしゃわしゃと撫でてきたりと、私達以上にはしゃいでいる。普段冷静沈着でクールな籃姉様でさえテンションが凄まじい程だ。黒歌姉様と雪風姉様はいつもテンション高いがいつもの倍テンションが高かった。妹の白音、泉奈、橙香もテンションがすごい……ここまでくると逆に恥ずかしいな。

 

「椛、影狼。よく頑張ったな。父さんも嬉しいぞ」

 

「私もですよ。椛、影狼。母さんは安心しました。特に影狼ちゃんがまたやらかしていないかと心配でしたもの」

 

「ありがとうございます。父様、母様」

 

「あははは〜……」

 

隣の影狼は、困ったかのように苦笑して頬をかいている。我が双子の姉はおっちょこちょいでかなりのドジっ娘だ。よく躓いたりして転んだり、しょっちゅう何かしらやらかしているからとても心配だった。でも、私の次の入試二位だった所を見るととても安心したのだ。ちなみに影狼の機械に投影された人は18禁ヒーローミッドナイトだった。

 

 

ガラリと襖の開ける音が聞こえ顔を向けると、そこにはお爺様とお祖母様がたっていた。

 

「椛、影狼、おめでとう。トップクラスで合格だったそうじゃな。すごいぞ、我が孫達よ」

 

「うむ。よく頑張ったな。拙者達も誇りに思うぞ」

 

 お祖母様が私と影狼をギュッと抱きしめた。他の皆もその姿を優しげな目で見守る。

 

 

 

「父様、母様、お爺様、お祖母様……みんなのおかげでこうして合格できました。とても感謝してもしきれないです。本当にありがとうございました…………でも流石にちょっと恥ずかしいのですが…」

 

そう私が言うがいまだ頭を撫でてくる母様とお祖母様。……私の半身たる双子の姉は顔をトマトのように真っ赤にしながらも尻尾は物凄い勢いでブンブンと振っている。

 

「ふふふ、本当によかったのじゃ……さあ、みんな。今日はお祝いじゃ!まずは買い出しに行くとしよう。何人か付いてきてくれ。ああ、主賓はゆっくりしているといい。そうだ、封筒に書類が入っていたじゃろう?それをしっかり確認しておくのじゃ。見落としが無いようにだぞ!」

 

「では紅月狐、拙者もついて行くとしよう。孫のためにも腕をたんと振るわんとな」

 

「ありがとうございますお母様。娘達も喜びますよ!」 

 

 ようやく二人から解放された私は書類を確認するため封筒片手に自室へと戻る。面倒くさそうな入学書類ばかりであったが、それを見ていると本当に合格したんだなぁ〜と思い、ついつい頬が緩んでしまった。こんな顔、ほかのみんなには見せられないね。だってからかわれてしまうから。

 

それにお祝いの夕食がとにかく待ち遠しかった。何せ、お祖母様もお母様も料理の腕は超一級。美味しくないわけがない。特にお祖母様は滅多に料理台に上がらないぶん、その楽しみも二倍なのだ。

 

 

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