狼娘のヒーローアカデミア   作:三元新

7 / 12
何とか、今年度中には投稿できたな。ふぅ・・・・・・危ない、危ない。なかなかリアルが忙しいこの時期。本当にしんどいのですよ〜。

あと先日がちょうど休みの日でしたので、ヒロアカの映画見に行ってきました・・・・・・・・・一言で申しますと、もう最高ですね。本当に今回の映画はテンションが上がります。それにしても、映画館にいたお客さんの殆どの人の感想が『圧倒的最終回』ですね。でも凄くわかるんですよね、これがww この意味は是非とも映画館に見に行ってください! この伝えたい意味がすぐわかりますので!

てなわけで、最新話を(*ノ・ω・)ノ⌒。ぽーい


それでは皆様、ゆっくりしていってくださいね?


6話

 

打って変わって、4階の核エリア。そこには一人の少女―――影狼が耳をピンと立てながら静かに立っていた。

 

ピクピク

 

「・・・・・・わふ。椛ちゃんが戦闘を始めたみたいだね。――――ねぇ、そこに隠れているのはわかってるの。出ておいでよ、障子くん?」

 

影狼の言葉に続き、階段近くの柱の影から複製腕の個性を持つ障子目蔵が出てくる。彼は肩から生えた2対の触手の先端に、自身の体の器官を複製できるという個性の持ち主であり、見た目以上の力持ちでもあり入学式の時に測った体力測定では握力540kgを記録した程だ。そんな彼と影狼が今まさに激突しようとしていた。

 

 

「わかっていたのか」

 

 

「うん。だって私の個性は影狼――つまり、狼だよ? それぐらいの探知能力ぐらいはあるよ。狼の嗅覚、舐めないで貰えるかな?」

 

 

そう言いながら、影狼は爪を立て構えをとる。

 

 

「さて、妹も頑張ってる。だから―――こっちもやろっか? ヒーロー」

 

 

「・・・・・・!」

 

 

影狼の瞳が怪しく光る。

 

ここに、ヒーローと敵(ヴィラン)の戦いが始まった。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

うって変わって幻獣椛VS轟焦凍。二人の戦いは静かながらも白熱しあっていた。

 

「―――シッ!!」

 

 

シュバッ

 

 

椛の鋭い爪が轟を襲う。

 

 

「・・・・・・ッ」

 

しかし、いとも容易く避けられた。

 

すると彼は、右足より冷気を放出するノーモーションの攻撃で、椛とその周辺を氷結させる。・・・・・・が、椛の脅威的なまでの身体能力から発する脚力で氷を一瞬で砕き爆散させた。そして彼女はその壊れた氷を蹴り砕いた方の足とは別の足で、回し蹴りの要領で脚力に任せて蹴り飛ばす。

 

強靭な脚力で蹴り飛ばされた氷は、鋭利な武器となり轟に向かっていくが、彼はそれを難なく氷の壁で防いだ。

 

轟は右手を振るい、今度は強めの氷結攻撃を仕掛ける。だがそれも一瞬で、殴り砕かれる。しかも氷は先程の蹴られた時よりも細かく粉砕され塵へと変わってしまう。霧のようにキラキラと砕かれた氷が宙に漂う中、『チッ』という轟の舌打ちが椛の耳にも届いた。

 

―――と、同時に氷の軋む音も拾う。

 

 

ピキンッ!

 

 

「よっ・・・と」

 

 

クルクルクルクル――――シュタッ

 

 

「ふぅ・・・・・・流石は推薦組。どうしてなかなか」

 

 

危なげなく回避し、綺麗に着地した椛はそう言いながらも汗ひとつかかず佇んでいる。

 

 

(いや本当、思っていたよりも地力が高い。能力もそうだけど、体術のほうも相当鍛錬を積まれていたようだ。いや・・・積まれたのではなく、積んだのかな?)

 

 

冷静に轟焦凍を観察する椛。

 

 

「お前こそ、やるじゃないか」

 

 

「ふふ、それはそうよ。伊達に鍛えてないわ」

 

 

そう言いながらも、椛は構えをとる。

 

 

 未だ本気では無い2人。対する轟も、自身の氷結攻撃を防がれながらも焦っていない。むしろ、戦いの中で椛の動きを観察していた。

 

 

「じゃぁ・・・・・・いくよ?」

 

 

「・・・・・・こい」

 

 

そんな言葉と同時に二人は激突した。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

あれから数分たち、幻獣影狼と障子目蔵の戦いは派手になっていた。

 

 

「わおーん!『スターファング』ッ!」

 

 

カブッ!

 

 

「クッ・・・・・はぁ!」

 

 

腕に噛み付いた影狼を無理やり剥がし投げ飛ばした障子。しかし、影狼は空中で難なく体勢を立て直し綺麗に着地する。

 

 

「ほら、まだまだ行くよ? 『スターリングパウルス』!!」

 

 

ゴウッ!と音がなり物凄いスピードで突進してくる影狼。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

咄嗟に避けようとしたが一歩遅く、そのままの勢いで轢かれてしまった。

 

 

「ほらほら! そんなんじゃ核を奪うなんて夢のまた夢だよヒーロー!」

 

 

どしんと音がする程の勢いで地面に落ちた障子は、突進攻撃を多少避け受身を取れたものの、突進攻撃の威力は凄まじかったのかとても辛そうな表情をしている。

 

 

「・・・ああ、確かにそうだな。だからこそ、ヒーローを舐めるなよ、敵(ヴィラン)!」

 

 

だが、彼の闘士は消えてないのか、目をギラギラと輝かせている。

 

 

「―――くふ、そうこなくっちゃ」

 

 

対する影狼も舌なめずりをしながら障子を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女達の戦いを、激しい攻防にモニター前からは歓声が上がる。固定カメラでは見にくい箇所もあるが、それでも二組の実力者同士の戦いは見所があり過ぎた。

 

 

「危ねぇ!障子の奴、すげーな。あの突進攻撃を辛うじてとはいえ避けやがった。俺だったら反応出来ずに轢かれてるぜ」

 

 

「椛さんもスッゴーイ!周りの氷を全部壊しているよ!女子チーム頑張れー!」

 

 

「影狼さんは素早さで障子さんを翻弄しながらも、的確に急所へと攻撃していますわね。流石ですわ」

 

 

「轟はスゲーな。ほぼノーモーションで氷を形成してるぜ、流石は推薦組なだけはあるか。つーか、俺のテープの個性じゃ瞬殺間違いなしだな、椛や影狼だからこそここまで戦えてるってわけか」

 

 

 切島は手に汗握ってモニターに熱中し、芦戸は楽しげに椛たちを応援している。他のクラスメイトもモニターを熱心に見つめ、時にコンビや友達と議論を交わす。

 

 

 

 だが、紛れた瓦礫攻撃の攻防に気がついたのは、クラスの中では爆豪のみだった。第1戦で実力では大きく劣る緑谷に負け、八百万の講評に納得してしまった。意気消沈の中に現れた轟&障子と椛&影狼のライバルたちに爆豪は思わず『俺じゃ敵わねぇ』と思ってしまい、そう思ってしまった自分に激しい嫌悪感を抱いていた。

 

 オールマイトはモニターを見ながらも、そんな爆豪を気にかける。肥大化した自尊心の塊であった爆豪。膨れきった自尊心ほど脆いものだとオールマイトは思っている。教師として、爆豪へのカウンセリングをしっかりとしなければならないと考えていた。

 

 

(それにしても、観ないうちに随分と成長していないか? 椛少女に影狼少女。最後に会った時はまだあんな素手で氷を粉砕なんて出来なかったはずなんだが・・・・・・さすがだな、伊達にあの御仁に鍛えられてる訳ではないか。早く、緑谷少年もここまで来る時が来るようにもっと鍛えなければ)

 

 

オールマイトは自分の思ってた以上に、この短期間で急成長していた幻獣姉妹の実力の高さから驚きつつも、いつか自分の後継である緑谷出久がこのレベルに来るよう、彼女たちとその師匠を目標に鍛えてみるのもいいかな?と考え込んでいた。

 

 

 

 

一方、椛は少し攻めあぐねていた。理由は単純に火力不足である。

 

 

(やはり、素手では多少はキツイですね。私のコスチュームは本来この手に盾と刀を持って初めて完成なのですが・・・・・・このコスチュームの製作者である、にとりがこだわりすぎて未だ盾も刀も完成していないのですよね。)

 

 

そんな事を考えながら椛はどう攻めるかけいさんしていた。

 

 

(・・・・・・いえ、攻めあぐねているのは装備のせいではありませんね。単純に私の実力不足。武器がないから勝てませんでした・・・なぁんて、理由になりませんから。そんなんで救えた命を零すのは愚かなことです。もっと鍛えなければ)

 

 

そんな椛の様子に対し、轟も同じように攻めあぐねている。

 

 

(個性が全然あたらねぇ。アイツを捕らえるように個性で周りを凍らせようとも、氷を飛ばして攻撃しようともまるで全て見透かされているように動かれ意味をなさないでいる。下手に凍らしても簡単に砕かれるし、かといってこのフロアごとまた建物全体を凍らそうとすると、奴はまるで察する様に直接攻撃してきて俺は避け無きゃなんねぇ。さすがにあの蹴りやパンチを喰らえばただじゃすまねぇしな。だが、だからと言ってこのままでは埒があかねぇ。・・・・・・右の個性を使えば変わるだろうが、俺は、こんな親父の個性なんかなくても勝てる。いや、勝たなきゃなんねぇ。俺はこんな所で負ける訳にはいかねぇんだ。――だったら)

 

 

轟はあえて氷を地面から突き刺すように生やし、同時に地面も凍らしながら椛に攻撃する。すると椛は読んでたかのように右に飛んで避ける。地面も同時に凍らしているので、当然椛はジャンプし飛んでよける。

 

だが、それが轟の狙いだった。

 

 

「ここだ」

 

 

椛が着地すると同時に右腕ごと地面から生やした氷で凍結させた。

 

 

「動くな」

 

轟は忠告する。

 

 

「その右腕は完全に凍らせた。外側を凍らせたのとは訳が違う。変に腕を動かすと腕ごと氷が割れるぞ。凍らせたまま早くリカバリーガールの所に行って来い、凍傷どころの話じゃ――」

 

 

「――そうね。でも、問題ないわ」

 

 

 しかし、椛は轟の注意を無視して一言呟くと、無造作に左腕に力を入れ、凍った右腕の氷に向けて力いっぱい殴る。

 

 

――バキッ!

 

 

――と、枯れ枝を折ったかのような音と共に氷は砕け散るが、氷から外れた右腕は無惨にも氷の破片やらで傷だらけとなり、痛々しくも血だらけとなりボロボロであった。さすがにこの行為は轟も予想外だったのか驚き目を見開いている。無論、この映像を見ているクラスメイトやオールマイトも驚き固まっていた。

 

 

「おいおいッ!マジかよッ!?」

 

 

「きゃああ!?」

 

 

「う、腕が・・・!」

 

 

「はぁ・・・相変わらず無茶をしますわね、椛さんは」

 

 

男子も女子も顔を青ざめ、悲鳴を上げる。そんな中、八百万は慣れているのか呆れた様に小さく愚痴をこぼす。

 

 

そんなクラスメイトの様子など知るよしもしない椛は血だらけの右腕をぶらんとさせながら無事な左腕を構えながら轟を見る。

 

 

「・・・・・・なぜ」

 

 

そんな椛を見ながら警戒しつつも轟は聞く。

 

 

「なぜ?・・・・・・変な質問ね。むしろ、何故アナタは私がこの程度で止まると思っていたのかしら?」

 

 

椛はおかしな事でも言っているかのようにサラリと答える。

 

 

「私の個性は『白狼天狗』。個性のカテゴリーとしては異形型の個性。それも、ただの異形ではなく、異形は異形でも『妖怪系』つまり、怪異の類の個性だもの。その中でも『天狗』クラスは総じて耐久力が高いし、ましてや私のは狼系の天狗。普通の天狗の個性よりも耐久性は高いわ。だからこそこんな無茶をできるし、そして何より―――」

 

 

椛は轟の顔を見ながらニヤリと笑う。

 

 

「この程度の氷で私の腕を凍らせれるとでも?――ふふ、甘いわね。私の腕を、いや、私を凍らせようだなんて・・・十年早いわよ?」

 

 

すると、椛の血だらけだった腕の傷がみるみる塞がっていき、しばらくして元の白い綺麗な腕がそこにあった。

 

椛は治った右腕を軽く上げ、掌を開いたり握ったりしながら腕の調子を確認していた。

 

 

「・・・うん。いつも通りの調子ね。美鈴さんの気功術は本当に便利ね」

 

 

椛はそう呟きながら、轟に対して構えをとった。

 

 

「・・・チッ。なんつーデタラメだよ、化け物か?」

 

 

轟の言葉に妖艶に笑う椛。

 

 

「ええ、もちろん。私は妖怪、白狼天狗。たかだか人の子に遅れを取るほど弱くわないし、れっきとした化け物よ」

 

 

自嘲気味に笑う椛。

 

 

「・・・・・・っ。すまん」

 

 

「いいえ、謝らなくていいわ。確かに化け物呼ばわりは辛いけど、事実だもの。それに私はこの姿は好きよ? なんたって大好きな家族や幼馴染達と同じだもの。周りになんと言われようとも気にしないわ。だって、私はこの個性と姿に誇りを持っているのだから」

 

 

椛の表情に轟は謝るが、椛は本当に気にしていないのか優しげに微笑みながら轟に言う。

 

 

「・・・・・・お前は強いな」

 

 

そんな椛の表情に少し影を落とす轟。

 

 

「そうでも無いわね。あなたが今何を思っているのかは知らないけれど、私は弱いわよ。所詮は私だってただの小娘でしかないもの」

 

 

そして、空気を変えるようにパンと両手を叩き、そして両手を広げ挑発する椛

 

 

「さぁ、続きを始めましょ?」

 

 

「―――上等っ」

 

 

ここに、椛と轟の最終決戦が始まった。

 

 

「喰らいなさい『狂犬の鉤爪』」

 

 

一瞬で轟の懐に入り、ジャキンと鋭く伸びた爪を振るう椛。

 

 

「っ! ・・・・・・はっ!」

 

 

それを辛うじて避けた轟は、接近している椛の全身を凍らせ閉じ込めようと氷を放つ。

 

 

「おっと、危ないわね。『狂乱蹴り』」

 

 

椛は一瞬で轟の背後に周り、そのまま回転げりで蹴飛ばした。

 

 

「ぐっ――くらえ」

 

 

ビキンッ!と音がなりフロアが氷つくが・・・・・・

 

 

「だから、その程度では私を捉えることは出来ないわよ。舐めないでちょうだい。」

 

 

「これで、終わらせるわ。狂犬『狂乱の型・飛沫』」

 

 

再度、轟の懐に入りこんだ椛は今度は服を掴み、力任せに投げ飛ばす。

 

 

「ガハッ!?」

 

 

地面に叩きつけられた轟は苦しそうにゴホゴホと咳き込む。そして・・・

 

 

「ごめんなさいね、轟焦凍。私の勝ちよ」

 

 

そう言い轟は捕縛テープにより確保されてしまった。

 

 

「さて、こっちは終わりね。・・・・・・影狼は大丈夫かしら?」

 

 

椛と轟の勝負は、椛の勝利へと終わった。

 

――――――――――――――――――――――

 

影狼VS障子のチームも、最後を迎えていた。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

荒く息を吐いている障子。対して影狼は汗ひとつもかかず佇んでいた。

 

 

「そろそろ終わりにしよっか。たぶん、椛ちゃんもそろそろ終わっているだろうし」

 

 

そう言い影狼は四つん這いになりギラりと目を光らせる。

 

 

「――くっ、ここまでか」

 

 

「楽しかったよ?障子くん」

 

 

―――わおーーーーん

 

 

「天狼『ハイスピードパウンズ』!」

 

 

影狼は四つん這いになり走り抜きながら障子を切り刻む・・・・・・と、いうのが本来の技なのだが、流石に本当に切り刻むわけにもいかないのですれ違いざまに軽く殴り飛ばす。

 

 

「ぐはっ・・・・・・」ドサ

 

 

軽くとはいえそれでも助走をつけて、且つ轢くようにすれ違ったので、その分も威力がのり男子の中でも大柄な障子を3mほど飛ばしてしまった。

 

 

『ヴィランチーム、WIN!』

 

 

影狼は殴り飛ばした障子に近づき捕縛テープを巻いて、勝負は椛&影狼ペアの勝利に終わった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

モニタールームに戻ってきた椛達一同。怪我をしていた障子と轟は椛の気功術によって体内の気を活性化させ自然治癒を高め治した。しかし、あくまでも気休めでしかないので、あとで保健室にいきしっかりと治してもらう予定だ。

 

 

「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我も無し!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば。皆は着替えて教室にお戻り!」

 

 

 

 オールマイトはそう言い残して急ぐように走り去っていった。実際、オールマイトの活動時間は授業時間でギリギリであった。落ち込む爆豪を気にしながらもオールマイトは医務室へと急ぐ。

 

 

「わふ。ねぇ、椛ちゃんオールマイト先生大丈夫かな?」

 

 

クラスメイトから離れ小さな声で椛に聞く影狼。椛はその大丈夫か?という言葉の意味を理解し首をふる。

 

 

「大丈夫ではないでしょうね。あの様子だと活動限界が更に狭まっているようね。・・・・影狼、話はここではなく家でしましょう。いまは大丈夫みたいだけど、このクラスの中には、障子くんみたいに耳もいい人もいるから聞こえてしまうわ」

 

 

「わふ。そうだね。うん、ごめん」

 

 

椛は軽く影狼に注意し、影狼も素直に頷く。

 

 

 

 

 

「なあ!放課後は皆で訓練の反省会しねぇか?」

 

 

「あ、それいいじゃん!やろうやろう!」

 

 

「お、いいな。参加するぜ」

 

 

「あ、俺も」

 

 

 下校時間となり皆が帰る準備をする中、切島が大声で呼びかける。すぐに芦戸が諸手を挙げて参加を表明し、多くが参加する事になった。

 

 

「全員参加か?おーい、爆豪。お前はどうする?」

 

 

「……」

 

 

 切島が声をかけるも爆豪は無言のまま教室を出て行った。今日の訓練で緑谷に負けた事がよほど響いているのだろう。あの敗北以降、爆豪は一言も喋らずに押し黙ったままだった。

 

 

「おいって!・・・帰っちまった。まぁいいか、轟はどうすんだ?」

 

 

「・・・すまない、用事があるんだ。帰らせてくれ」

 

 

「そうか、引き留めて悪ぃな。じゃあまた明日な」

 

 

 また、轟もそう言って帰った。しかし、残りのクラスメイトは参加するようで、教室に残っている。

 

 

「椛と影狼はどうだ?」

 

 

すると、椛と影狼にも声をかけた。

 

 

「そうね、せっかくだし参加しようかな?影狼はどうする」

 

 

「うん。せっかくだし参加しようかな! あ、でもご飯の時間もあるし遅くまでは残れないけどいいかな?」

 

 

「おう、そんな長時間はやらないぜ。オールマイト先生から言われた事も踏まえて、皆で話し合ってみたくてよ。何か新しい発見があるかもしれねぇしな。それにまだ言葉を交わして無いクラスメイトも結構いるからよ、交流会みてぇなもんだ」

 

 

 

 そう言って反省会が始まった。立ち話でワイワイと騒いでいるようにみえるが、実際は真面目に訓練を振り返っている。その辺は流石雄英生といったところであろう。

 

 

 

「それにしても凄かったよな!みんな何喋ってんのか分かんなかったけどよ!」

 

 

「緑谷はまだ保健室だしな。大丈夫かよアイツ・・・」

 

 

 緑谷の右腕は自身の個性に耐えきれずにボロボロに、更に左腕は爆豪の『爆破』によって火傷と裂傷を負い、こちらもボロボロになっている。試合後、気を失った緑谷はすぐに保健室へと運ばれたが、未だ戻ってきていない。

 

 クラスメイトとなって日は浅いが、それでも緑谷を心配する生徒は多かった。

 

 

 

「戻ってこなかったら皆で医務室に見舞いにでもいってやろうぜ!それより、轟ペアと椛ペアのバトルが凄ぇアツかったよな。椛が腕ごと氷を砕いた時はビビったけどよ、最悪腕が無くなってもおかしくなかったのに迷わず氷を粉砕するなんてメチャクチャ格好良いじゃねぇか!まさに漢だな!?」

 

 

「私は女なのだけどね。まぁ、私の個性『白狼天狗』は伊達に狼系の天狗ではないわ。それに、私も影狼も幼い頃から特訓してるもの。もちろん、氷系の個性に対する訓練も受けていたからこそ、真の意味で凍ってしまう前に砕いたのよ。腕さえ残れば回復はできるからね」

 

 

切島の言葉に苦笑する椛。

 

 

「椛さん!昔からそうですが、あまり無茶をしないでください!見ているこっちがハラハラして落ち着けないですわ」

 

 

「わふ!そうだよ椛ちゃん!それ聞いた時本当に冷や汗かいたんだからね! 少しは反省してよ」

 

ぷんすこと怒っている八百万と影狼。そんな二人に詰め寄られている椛は非常に申し訳なさそうな顔をしていた。

 

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

 

しゅんと項垂れる椛。耳も尻尾もへなりと垂れており、そんな姿にクラスメイトはキュンと心をときめかせていた。むろん、その姿をまじかで見た二人はズキュンと効果音がなったかのようによろめいていた。

 

 

そんなこんながありしばらくクラスメイトで話し合っていると、八百万と椛と影狼の所に1人の男子生徒がやってきた。

 

 

――飯田天哉だ。

 

 

「やぁ、椛くん、影狼くん。久しぶりだね」

 

 

飯田は椛と影狼にカクカクした動きで手を上げる。

 

 

「うん、久しぶり天哉くん。・・・小学生ぶりかしら? 確か、パーティー以来ね」

 

 

「わふ、久しぶりだね天哉!私達のこと覚えてたんだ」

 

 

そう何を隠そう飯田天哉は実家が代々のヒーロー一家であり、飯田天哉の両親と椛達の両親は同じクラスメイトの繋がりで実家である幻獣家のとあるパーティーに呼ばれており、その時に知り合ったのだ。

 

 

「挨拶が遅れてしまってすまない。なかなかタイミングが掴めなくてね、この日になってしまったよ」

 

 

「ええ、別に気にしていないわ。お兄さんは元気? まぁ、ヒーロー活動を聞いている限り元気そうだけど」

 

 

「ああ、今日も一日いちヒーローとして街をパトロールしているさ。君たちも相変わらずの元気と仲良しで良かったよ。これからは同じクラスメイトとして、そして同じくヒーローを志す者として切磋琢磨していこう! よろしく頼む、三人とも!」

 

 

飯田は元気よく椛と影狼に握手を求める。

 

 

「ええ、こちらこそ」

 

 

「うん!頑張ろうね!」

 

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いしますわ、飯田さん」

 

 

椛と影狼もその手をとり嬉しそうに三人で笑っていた。

 

 

「あ、影狼、黒歌姉さんと藍姉さんが終わったみたい。帰りましょうか」

 

 

「そうなの? わかった!じゃ、また明日ね行こ椛ちゃん!」

 

 

「えぇ、わかったわ影狼。じゃ、二人ともまた明日」

 

 

「ええ、さようなら影狼さん、椛さん」

 

 

「ああ、また明日。影狼くん、椛くん」

 

 

そうして一日が終わるのだった。




ちなみに影狼のハイスピードパウンズは東方キャノンボールをイメージしてます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。