とある究極のゼロ   作:メソウサ

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第3話 とある研究所の秘密 ③

「残念だけど、ここから先、一般人はお断りって訳よ」

 

金髪碧眼の少女は腕を組みながらふてぶてしくそう言ってゼロの前に立ちふさがる。

 

「それとも、ここに何か用でもある訳?ただの中坊が、こーんな所に?」

「だったらどうする?」

「残念ながらお通し出来ませーん!」

 

そう言うと、金髪碧眼の少女は意地の悪そうな顔をしてみせた。

どうやら、彼女はこの施設の門番のような役割を担っているらしい。

屈強な大男や何らかの達人のような如何にもな人物ではなく、こんな子供と言って差し支えない小柄な少女がそういった役割を担っているのはゼロにも意外であった。

 

「お前、一体何者だ?」

 

ゼロは自らの前に立ちはだかった金髪碧眼の少女に尋ねた。

金髪碧眼の少女は、まだあどけなさを残すその顔を歪ませて笑う。

 

「アハッ。敵かも知れない奴の質問に素直に答える馬鹿がいると思う?アンタ、もしかしてここが足りない訳?」

 

ゼロを小馬鹿にしたように金髪碧眼の少女は自身の頭を指差した。

直情的なゼロはすぐにムッとなったが、相手が異星人ではなく普通の地球人である可能性も考慮し、一旦その苛立ちを飲み込んだ。

この学園都市という街では、一般人でも異星人のような特殊能力が使えるのは実際に自分の目でも確認しているから、いくら見た目が幼い少女とは言え、ゼロは油断をしてはいない。

ただ、普通の地球人にしろ異星人にしろ、こうしてゼロの前に立ちはだかるということは、少なくとも彼女と友好的な関係は望めないだろう。

 

「…どきな。やるとなったら、俺は手加減出来ないぜ?」

「たかが中坊にそう言われて退くと思う訳?何処までおめでたい頭してるのかしら?」

「チッ…」

 

ゼロは舌打ちすると、仕方なさそうに構える。

師匠であるレオ直伝の宇宙空手の構えである。

相手が一般人である可能性を考慮すると、念力といった類の技を易々と使うわけにはいかない。

必然的に徒手空拳での戦いを強いられてしまう。

しかし、ゼロの身体能力だとそれでも相手を危険に晒す可能性は高いので、とても難しい戦いになることは間違い無いだろう。

 

「ったく、面倒くせえな!」

 

ゼロは声に出してそう愚痴った。

 

「それ、もしかしてジャパニーズ・カラテの構えって訳?凄いすごーい!」

 

一方、金髪碧眼の少女はそう言って、わざとらしく拍手して見せる。

常に余裕ぶった態度は自信の表れか。

だが、それも無理はない。

今のゼロの見た目は、ただの女子中学生。

それがこうして構えたところで、相手に与られるプレッシャーなどたかが知れている。

 

「中坊がイキがっちゃって生意気ったらありゃしない」

 

自身の見た目も今のゼロと大して変わらないような女子にそう言われるのは、あまり気分のいいものではない。

 

「ハッ!どっちがガキだか」

 

ゼロはそう言い返した。

ただ、ゼロは一般的な地球人よりは遥かに年上だが、ウルトラ族の中ではまだまだ若輩者。

それこそ地球人で言えば高校生くらいなのだから、そこまで上からものを言える立場ではなかったりする。

 

「ガキにガキって言われたく無いわね。…ま、私は大人だから、今帰るのならば、見逃してあげなくもないけど?」

 

金髪碧眼の少女は優しげな声色でゼロにそう提案した。

しかし、その表情は獲物を見つけた捕食者のそれであった。

言葉とは裏腹に見逃す気などさらさら無いだろう。

 

「帰るつもりは無いな」

 

ゼロはきっぱりと答える。

目的があってここにいるのだから当然の返事だろう。

 

「中で、ちょっと確かめたいことがあるだけだ。素直に通してくれるなら、痛い目見なくても済むぜ?」

「…さっきからホント生意気な中坊ね。いい加減、身の程ってのを弁えたらどうな訳?」

「お前こそ身の程を弁えろ。お前が守ってるその場所にはお前の知らないような怪物が潜んでるかも知れないんだぞ?」

 

ゼロのその言葉に金髪碧眼の少女は僅かに表情を変える。

少しを間を空けてから、彼女は口を開いた。

 

「…例えそうだとしても、退くわけにはいかないのよね」

 

先程までの茶化すような物言いから一転、シリアスに金髪碧眼の少女は言った。

どうやら、遊びや興味本位の類で門番役を務めているわけでは無さそうである。

 

「…なるほど。お前には退けない理由があるんだな」

 

彼女がどんな思いでそこに立っているのか、ゼロには分からない。

だが、こうしてゼロの進行を妨げている以上、彼女を何とかしないと先へは進めない。

 

「なら、容赦はしねえ!」

 

ゼロは言葉での説得を諦め、完全に戦闘態勢へと切り替える。

そうとなれば、百戦錬磨のゼロである。

多少でも本気を出せば、例え見た目が女子中学生であろうとも、その凄みその殺気は先程までと桁違いであった。

金髪碧眼の少女もそれを目の当たりにすると、流石にたじろんでしまう。

 

「…アナタ、ただの中坊じゃないわね?もしかして、何かのプロな訳?」

「おいおい、敵の質問に素直に答える馬鹿なんていないぜ?」

「言ってくれるじゃないの!」

 

金髪碧眼の少女は口の端を持ち上げ、ニヤリと笑う。

 

「アナタ、名前は?面白いから、記念に聞いといたげる」

「…他人に名前を聞く時は自分から名乗る。親からそう教わらなかったのか?」

「自分のこと棚に上げて何言ってんだか。ま、いいわ。私の名前はフレンダよ。で、アナタは?」

「…俺はゼロだ」

「そ。変わった名前…ね!」

 

会話の後、先に動いたのはフレンダと名乗った少女の方であった。

素早く無駄の無い動き出し。

何らかの訓練を受けたか、実戦を何度もこなしている者のそれである。

そして間合いに入るや否や、フレンダは躊躇なく蹴りを放ってきた。

ゼロは上体を反らしてそれを交わそうとする。

と、その時、フレンダの靴がキラリと光ったのがゼロの目に入った。

 

「!」

 

瞬時の判断でゼロが後方へ飛び退くと、そのすぐ後に何かが目の前を横切る。

よく見ると彼女の靴から鋭利な刃物が飛び出していた。

 

「ざーんねん!交わされちゃった!」

 

フレンダはそう言ってペロリと小さく舌を出した。

普通の少女ならば可愛らしい行為なのだろうが、彼女が直前にしたことを考えたら、その行為にはおぞましさしか感じられない。

 

「てめえ…」

「あら?怒っちゃった?意外なリアクションね。まさか、命までは取られないとか思ってた訳?そういう考えが甘ちゃんの中坊な訳よ」

「ふざ…けんな!!」

「そ。これはおふざけじゃなくて、本気な訳!!」

 

フレンダはそう言ってすかさず二撃目を繰り出してきた。

先程と同じシャープなキックである。

ゼロは今度は避ける素振りも見せなかった。

微動だにせず、靴の刃先が自身に触れるか触れないかの所でフレンダの細くしやなかな足をガッと掴むと、もう片方の手を使って彼女の靴から飛び出た刃をスッパリと切断した。

刃の部分だけが空中に高く飛び上がる。

 

「ちょっ!?」

 

フレンダは目を丸くして驚いた。

ただの女子中学生と思っていた相手がまさか自身の蹴りを難なく受け止め、靴に仕込んだ刃すらへし折ったのだ。

例え空手の達人だとしてもそんな芸当はなかなか出来ない。

 

「ハッ!」

 

ゼロはすかさず身を低くしながら体を捻ると、フレンダの支えてる方の足を蹴りで払った。

所謂、水面蹴りである。

フレンダは一瞬、体ごと宙に浮き上がると勢い良く尻餅をついて倒れた。

そんな彼女をゼロはまるでこれが自身と彼女の差だと言わんばかりに悠然と見下ろす。

 

「…なるほど、ただの中坊じゃないって訳ね」

 

フレンダはゼロを見上げながら言った。

 

「…よーく分かったわ」

 

フレンダはそう言いながら、邪気の篭もった笑みを浮かべた。

そして背中のリュックサックから何かを取り出し、それをヒョイとゼロへ投げ渡す。

咄嗟のことに思わずゼロはそれが何かも分からずに受け取ってしまった。

 

「…何だ、コレは?」

 

それは小さい女の子を象ったであろうぬいぐるみであった。

不気味なデザインでお世辞にも可愛いとは言えない。

彼女は何故そんなものを渡してきたのだろうか。

 

「私からのプレゼントよ!有難く受け取りなさーい!」

 

フレンダはそう吐き捨てると、その場から飛び上がってゼロと距離を取る。

そして、右手に隠し持っていた何かのスイッチを押した。

ゼロの手の中のぬいぐるみが微かに振動する。

 

「何っ!?」

 

危険を察知したゼロは瞬時にぬいぐるみを遠くへ投げ飛ばす。

と、次の瞬間、ぬいぐるみが空中で爆発した。

軽い爆風がゼロに吹き付けてくる。

小規模な爆発ではあったが、それでもあのまま持っていれば大怪我をしていたことは間違いない。

 

「惜っし~い!」

 

そう言ってフレンダは指をパチリと鳴らす。

その表情に後悔などの感情は無い。

明らかな殺傷目的で以ってゼロに爆弾入りの人形を渡したのだ。

 

「…………」

 

ゼロは何も言わない。

ただ、拳を強く強く握っていた。

 

「あら?もしかして今のでビビッて何も言えないって訳?」

 

フレンダは少し優位を取り戻したかのように言った。

ゼロは彼女の言葉に答えず、沈黙を保つ。

 

「分かったらとっととここから立ち去りなさい。じゃないと、次はその顔吹き飛ばすわよ?」

 

フレンダはまた一つ人形を取り出し、それをゼロに見せ付けた。

ゼロは顔を下に向けたまま、相変わらず黙っている。

拳は強く握られたままであった。

 

「もしかして、気絶しちゃった訳?なっさけな…」

 

フレンダがそう言おうとした瞬間であった。

距離を取っていた筈のゼロがいきなり目の前に現れる。

まるで瞬間移動のような動きにフレンダも反応が遅れてしまう。

 

「え…?」

「……イヤァッ!!」

 

次の瞬間、ゼロの拳がフレンダの下腹部へめり込んだ。

ドスンと重い一撃。

彼女の内臓が一気に押し上がると、痛みよりも先に胃液が口まで逆流し、悶絶するような苦しみがフレンダの全身を覆い始める。

 

「カ……ハ……ッ」

 

その辛苦から身を守る為、フレンダの意識は自動的に遮断された。

目の色が失なわれ、彼女は体をくの字に折り畳みながら前のめりに倒れていく。

 

「少し、やり過ぎちまったか」

 

ゼロはしまったといった表情で言った。

フレンダから靴に仕込んだナイフやぬいぐるみに仕込んだ爆弾で命を狙われたことで、少々力を入れ過ぎてしまったらしい。

いくら命を狙われたとはいえ、相手は今のゼロよりも小柄な少女なのである。

一歩間違えば、取り返しの付かないことになるところであった。

幸い、微かにフレンダの肩が上下しているのが見えたので、彼女は死んではいないようであった。

ゼロは地面にうつ伏せになっているフレンダを抱きかかえると、すぐ近くの壁に背をもたれ掛けさせる。

 

「…まあ、この程度で気絶するなら、宇宙人とかその類じゃないのは間違いないだろうな。取り敢えず、ここで暫く眠ってろ」

 

だらんと全身から力が抜けているフレンダに向けてゼロはそう自分を納得させた。

そして、すぐに踵を返すと、目の前の研究所らしき施設を見上げる。

ああまでして他者の侵入を阻もうとしたのだ。

逆にこの施設内で人に言えない何かを行っていると暗に言っているようなものである。

それが果たして人の手によるものなのか、それとも異星からの侵略者によるものなのか。

そのことを突き止める為、ゼロは研究所らしき施設の中へと足を踏み入れた。

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