それでは拙い本文をどうぞ。
あの姿勢制御訓練の日から早くも2年の月日が経過していた。現在は対人格闘術の訓練中であり、エレンとライナーがペアを組んでいた。
「イテテ…ほら、次はお前がならず者をやる番だ。まったく…俺の巨体を投げ飛ばすとは…」
「悪い…力の加減が下手でよ。」
「お前、取っ組み合いに慣れてやがるな?」
「街にいた頃はでかいガキ大将が遊び相手だったからな…」
「へぇ…」
「しかし…どうなんだ?この訓練は?兵士が人なんか相手にしてどうする?」
「教官に聞こえねぇようにな…」
「そもそも得物に素手で対応しようなんてバカがやることだ。」
「じゃあ、どう対処すりゃいい?」
「逃げりゃいいんだ。そんなもん」
「んな無責任な…」
「こんな木剣じゃ何もわかんねぇよ。こんな格闘術…上手くいった所でそりゃ、運が良かっただけだ。実際は…上手くいかずに終わるのがほとんど。ガキの戯れとは違う…」
「…お前の言いたいことはわかった。でもな…それじゃあやっぱり無責任だと思うぞ。俺達は兵士だろ?」
「……」
「いくら不利な状況でも逃げてはいけない時がある。守る対象が脅威に晒された時、その間に入って盾にならなければならない」
「相手が何であろうと、だ。俺達は大砲でも格闘術でも使いこなして力をつけなきやならん…それが…力を持つ兵士としての責任だと思う…俺は…」
エレンとライナーが話をしていると、空から見知った男が降ってきた。
『うわあ!』
「うお!…なんでクマガワが降ってくるんだ!?」
球磨川禊である。
『いやあ、ミカサちゃんに挑戦したんだけどね。また勝てなかったよ』
「お前…アルミンにも勝ったことないのにミカサに勝つなんて無理だろ…」
『あはは、そうなんだけどね。ところで今何を話していたんだい?』
「ああ…ライナーに兵士の責任って奴を教わってたんだ」
「いやいや…偉そうに説教しちまっただけさ。訓練に戻ろうぜ…ん?オイ…アイツ…」
ライナーが指さす先には訓練をサボっている金髪の怖い顔をした少女、アニがいた。
『ああ…アニちゃんか。また教官にバレないようにうまくサボってるね』
「…よーしエレン、クマガワ、アニにも短刀の対処を教えてやるぞ」
「は?」
『え?』
「あの不真面目な奴にも説教だ。兵士とはどうあるべきか…教えてやろうじゃないか」
(『なんで僕も巻き込まれてるんだろ?』)
球磨川がそう思うも、ライナーはアニに話しかける。
「教官の頭突きは嫌か?それ以上身長を縮めたくなかったらここに来た時を思い出してまじめにやるんだな」
「は?なんだその言い草…」
『わあ!アニちゃんっていっつも怖い顔してるなあと思ってたけど本当に怒るともっと怖い顔になるんだね!』
球磨川がそんなことを言っている間にライナーはエレンに木剣を渡した。
「そら!始めるぞエレン!」
対してアニは通常の近接格闘術の構えとは全く違う構えをとる。
「!アニ?これは刃物の対処を形式的に覚える訓練だぞ?やり方はしってるだろ?行くぞ!」
エレンがアニに向かって駆け出すとアニはエレンの脛にむかって勢いよく蹴りを繰り出した。
「!! いッ!?」
「んな…なんだ…足…蹴られたのか?」
「もう行っていいかい?」
アニが去ろうとしエレンは安堵したが、ライナーはそれを阻んだ。
「まだだ!短刀を取り上げるまでが訓練だ!」
「……オイ!ちょっと待てよ!」
ため息をつきながら、去ろうとしていたアニは再びエレンに向き合う。
「まっ…!!待てよアニ!これにはやり方があるんだって!」
アニはエレンの言葉に耳を貸さず、エレンの背後に回り左手で顎を、右手で木剣を持った手をつかむと、バランスを崩しにかかる。
「もがッ!!」
エレンがバランスを崩し、左足を上げたところでアニは、右足の膝裏に蹴りを繰り出す。
「うッ!!」
その結果、エレンは空中で半回転し、ケツを突き出す形で地面に落下した。
『わーお』
「はい」
アニはエレンから取り上げた木剣をライナーへと投げる。
「!」
「次はあんたが私を襲う番だね」
「イ…イヤ…俺は…」
思わず後ずさりし、拒否しようとしたライナーの背中を球磨川が軽く押す。
『やれよライナーちゃん。兵士としての責任を…教えてやるんだろ?』
「……あぁ…兵士には引けない状況がある。今がそうだ」
そして、ライナーもエレンと同じく無様に地面に落下する。
「お前の倍近くあるライナーが宙を舞ったぞ…」
『うん本当に感服したよ。じゃあ僕はこれで…』
言い訳をいいながら逃走しようとした球磨川の足元に木剣が放り投げられる。
「あんたもやんなよ」
『ふっ…いいだろう。だがアニちゃん僕をこの2人と同じにしないことだね!』
『また勝てなかっ…!!』
威勢よく向かっていった球磨川は、空中で一回転半を記録した。
今度こそ去ろうとしたアニにエレンは質問を投げかけた。
「すげぇ技術だな。誰かからおそわったんだろ?」
「…お父さんが…」
「親父さんがこの技術の体現者なのか?」
「…どうでもいい…」
「え?」
「こんなことやったって意味なんか無いよ」
「……この訓練のことか?意味がないってのは…」
アニは顎を使って視線を促す。
「「対人格闘術」なんか点数にならない。私を含め内地志願者はああやって流すもんさ…過酷な訓練の骨休めに使っている。それ以外はあんたらのようなバカ正直な奴らか、単にバカか…」
「マズイ!教官だ!」
エレンとアニが単なるバカ達の元に現れた教官を発見し、アニは木剣をエレンに突きつけ訓練をしている振りをする。
「とにかく…点数の高い立体機動術じゃなきゃやる意味が無い。目指しているのは立派な兵士ではなく内地の特権を得ることだから。なぜかこの世界では巨人に対抗する力を高めた者ほど巨人から離れられる。どうしてこんな茶番になると思う?」
「…さぁ、何でだろうな!」
エレンはアニの腕を引っ張り体制を崩しにいくが、足払いを受け逆に仰向けになり、アニに乗られてしまう。
「それが人の本質だからでは?」
「う…!」
「私の父もあんたらと同じで…何か現実離れした理想に酔いしれてばかりいた…幼い私は心底下らないと思いながらも…この無意味な技の習得を強いる父に逆らえなかった…私はもうこれ以上この下らない世界で、兵士ごっこに興じれるほど、バカになれない」
そういってようやくライナーが起き上がり、アニは立ち去っていく。
「お前は兵士にとことん向かんようだな…」
その頃球磨川はまたもや、あの教室にいた。
「やあ球磨川君、また死んでしまったねえ」
『安心院さん、僕をいつまであの世界に置いておくんだい?まさか2年もあそこで過ごすとは思ってなかったんだけど…』
「おいおい、何を言っているんだい球磨川君。まだ物語はプロローグってところだぜ?あと1,2年はあっちで過ごして貰うよ」
『あと1年って…僕普通だったら20歳だぜ?』
「なあに大丈夫さ。君が事故で死んだあの日から元の世界は1秒だって動いてないんだ。だから君が歳をとる道理もないし、君の
『理屈はよくわからないけど、碌でもないって事だけはわかったよ』
「そうかい。なら、もう行きな。いつまでも起きない君をお友達が待ってるぜ」
『それは大変だね。早く行かなくちゃ。…じゃあね安心院さん』
そう言って球磨川は異世界へと帰っていく。1人残った教室で安心院なじみは呟いた。
「うんうん、そろそろ巨人が攻めてくるころだね。君の活躍を楽しみにしているよ。球磨川君」
次回は先輩の出番を多く書きたいですね。