もしマーリンが6章でやる気をそれなりに出したら   作:カキツバタ

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遅れました
理由は色々ありますがトリスタンとイゾルデを読んだり、アーサー王物語を久々に読んだり、zeroの初版本を触媒に征服王と英雄王召喚したり、ギル祭を周回したりしておりました。

戦闘描写は全然書けないのでそこはご了承ください。

ではどうぞ



この唄を君へ

「────なぁ、トリスタン。俺が許せないか?」

 

賑わう喧噪から少し離れた草原に、二人の騎士がいた。

 

「………どうなのでしょうか。私にはわからない。確かにあの時、私は燃え上がるような怒りを感じ、貴方へ殺意を込めた槍を向けた」

 

「そりゃそうさ。俺達が戦ったのは地位のためでも名誉のためでもない。

────ただ1人の(イゾルデ)の為に、俺達は命を懸けたんだ」

 

「えぇ、互いに刃を、矛先を向け合った相手とこうして共に同じ夜空を見上げるというのも中々に不思議なものですが」

 

そう言うともう一人の男はそりゃそうさと笑い、

 

「最初は揉め事ばかり起こしていたからな。昨日の敵は今日の友とは言うが、そう簡単にいくものでもない。

………そうだ、トリスタン。何時もの頼む」

 

「えぇ、承知しています。……全く、貴方のせいで私はいつもこうして竪琴を持ち歩くようになってしまった」

 

溜め息をつく男。もう一人の男は言う

 

「俺だけじゃないだろ?愛しの王妃様にもそいつを聴かせてる。竪琴の指導もしてるんだって?」

 

「………貴方とイゾルデは何時の間に仲良くなったのですか…」

 

「いや………流石にまだ仲良くはなれない。王妃様は俺の命の恩人だが、彼女からすれば愛しい人を傷つけた男だからな。ただ、俺がたまたま彼女と出会って君や他の円卓の騎士達との冒険話をしたらそのまま帰らせるのは忍びないと二人の馴れ初めやらを聞かされたに過ぎない。…凄く幸せそうな顔をしていたよ」

 

「………そうですか…

────ところで、貴方は今も?」

 

「勿論、君がもし彼女を手放すようなことがあればだが」

 

「………」

 

「そんな顔をするな。俺を睨む前に王妃様の幸せを考えてやれ。お前は最近どこか暗い………やはり、マルク王のことか?」

 

もう一人の男がそう訊くと、男は少し暗い顔をして、

 

「…えぇ。………その話は良いでしょう。今日は宴なのですから。私達も楽しまなくては」

 

「あぁ、頼んだ。君の竪琴は酒を飲んだ後が一番心地が良い」

 

 

満天の星空に響き渡る旋律

それは、何処までも遠く

苦悩に満ちた、

しかし何処までも美しい愛を唄う

 

────此処にはいない其処にいる貴女へ

 

私の唄は届いていますか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「────さぁ、決断の刻だ。

嘗て私と共に在った円卓の騎士よ、卿らの決断がどのようなものであろうと、私はそれを受け止めよう。

我が最果てへの路に立ち塞がりこれを阻もうとする者、

我が路を共に歩みこれを斬り開かんとする者

どちらも苦悩の果てに到ったものであろう。

────なればこそ、此処で果たさねばならない使命がある。

その剣を、その弓を、その槍を握るが良い

 

卿らの運命は、此処に定まる」

 

こうして嘗ての同胞は互いに刃を向け合う

 

ある者はその刃先を獅子王に向け、

 

ある者はその前に立ち塞がりその刃先を向ける

 

 

こうして

ケイ、パーシヴァル、ガヘリス、パロミデス、ペリノア王、ボールス。6名の騎士達は獅子王を阻む路を、

 

ガヴェイン、ランスロット、トリスタン、ガレス、アグラヴェイン、モードレッド。6名の騎士達は獅子王に従う路を選択した。

 

皮肉なことに6対6。

交わす言葉も無く、辺りを重い沈黙が包む。

 

互いに一歩も動かずにただその刃先を向け合う

 

 

 

 

 

────そして、始まりは突然訪れる。

 

いや、彼等にとってそれは突然ではなく必然。開戦に言葉など不要。誰かがどんなに永遠を望もうともその刻は残酷にも自ずからやって来るのだから。

 

誰かが動く。その瞬間に時の歯車は動き出した。

 

 

こうして黄昏の中、長い戦いは幕を開けたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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「………やはり、貴方は獅子王を誅する路を選んだのですか。パロミデス」

 

トリスタンが悲しそうな表情を浮かべ対峙するのは、パロミデス。

 

「当然だ。君達の騎士道がどのようなものかは知らないが俺は民を見捨てる王に仕えることは出来ない」

 

「王は民を見捨てる訳ではありません。一人でも多くを救う路を選んだだけなのです」

 

「一人でも多く……か。であれば何故聖抜などをやるのだ?本当に民を救うのならば人々を入れるだけ迎えるべきだ。だが王はそれをしない……トリスタン、君もわかっているのだろう?王が救おうとしているのは決して民などではないと」

 

「それでも!!私は王に仕えると決めたのだ………!私は嘗て不遜にも王を見捨てた。その結果、私は王の力になることも出来ず、己の罪の報いを受けて死んだ。だからこそ私は………」

 

溢れだす激情を曝け出すトリスタンに、パロミデスは少し驚いた顔をして、

 

「久しぶりだよ、トリスタンのそんな激情を見るのは。君は情が深すぎる故に、それを見せまいとしていたからな。イゾルデの時以来だろうか」

 

するとトリスタンは顔を俯け、呟く

 

「────私は彼女を愛して良かったのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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────トリスタンという男の生涯は、余りに悲劇的である。

リオネスのメリオダス王はコーンウォールのマルク王の妹エリザベスを王妃に迎え、幸せな日々を送っていた。しかし王に長年思いを寄せていた婦人が、ある日魔法で王を古城に閉じ込めてしまった。

王妃は王を探して森へ向かいその時、森の中で彼女は王との間に出来た子を産むことになる。

 

それがトリスタン(悲しみ)である。

 

王妃は我が子に名を授けるとそのまま息絶え、その後王も亡くなってしまう。従者グーヴァネルとフランスへ渡り、文武ともに優れる若者になっていたトリスタンは父のいないリオネスには帰らず、伯父のマーク王の元へ向かった。

マルク王はアイルランド王の弟マロースに貢ぎ物をするかか一騎討ちするかを迫られていた。そこでやって来たトリスタンを騎士に任命し、マロースと戦わせたのだ。

結果、マロースは頭蓋を斬られ逃走するも死亡。トリスタンも毒を受けてしまう。

一方、アイルランド王妃は頭蓋に在った剣の刃を小箱へ入れ、マロースの仇討ちを誓った。

 

毒を治すためにアイルランドへ行ったトリスタンはそこで1人の少女と出会う。

少女の名はイゾルデ。アイルランド王と王妃の娘であった。

彼女は彼の竪琴に惹かれ、彼を宮廷へ招待する。

彼等からしたら仇にあたるトリスタンは咄嗟にトラムトリストと偽名を名乗り、毒の手当てをしてもらう。

 

二人は次第に惹かれ合い、幸せな日々を送っていた。

 

 

────俺が君と初めて出会ったのもその頃だったか。

 

俺はイゾルデに恋をしていた。遊びなどでは無く、本気の恋だ。俺は彼女へよく贈り物をして、彼女の気を惹こうとしていた。

 

ある日、とある話が俺の耳に入ってくる。それは大馬上槍試合を行い、優勝者はある婦人と三日後に結婚できるというものだった。

俺は直ちに名乗りをあげた。その婦人こそイゾルデであると確信したのだ。仮にも自分は誉れある円卓の騎士。優勝は目に見えていると、そう思っていたのだ。

君に出会うまでは。

 

────気に食わない奴だと思った。

白い馬に乗った白い騎士。白馬の王子様気取りかと馬鹿にこそしたが、その佇まいはこれまで戦ってきた奴らとは比べものにならないほど洗練されていた。

これまでは余裕綽々としていた俺も、今回ばかりは気を引き締めた。決して油断はしなかった。慢心すればその時には俺の眼前に槍が突き付けられるのだと、そう思わせる何かがあったのだ。

 

皮肉なことに俺の恰好はまさに黒い騎士といったところ。

こうして俺達のイゾルデを巡る争いは幕を開けたのだ。

 

俺は槍にも自信はあったが、トリスタンの腕もまた驚嘆に値するものであった。

 

少しでも隙を見せれば互いに槍を振るった。互角にも思える長い戦い。そこに僅かな差があったとすれば俺は焦り憤り、君はただ1人のことを想いその炎を燃え上がらせながらもいたって冷静に動いたその心の差だろうか。

 

気がつけば俺の眼前には槍が突き付けられ、今にも死が迫っていた。

 

『貴方は素晴らしい騎士でした。僅かに選択を誤れば倒れていたのは私の方だったかもしれません。私はそんな未来ある騎士の命を奪いたくはない。彼女───イゾルデのことは諦めてください。それを条件に私は貴方を助けましょう』

 

────冗談じゃない。俺は彼女をこれほどまでに愛しているのに、それを諦めろと。

俺は憤りを感じたが、何故だか頭だけは妙に冷静だった。

愛を貫いて死ぬ。あぁ、それは確かにとても美しいことだろう。しかし、それではただの無駄死にだ。何せ彼女の方は俺に目を向けていないのだから。

 

そして俺はその言葉に頷いた。すると彼は安心したように踵を返す。

 

『………白い騎士よ、最後にその名を教えてはくれないか』

 

『トラムトリスト………いえ、トリスタン。これが私の名です』

 

俺がキャメロットに帰還して少し経った時だ。キャメロットにはある無名の騎士の噂が広がっていた。

曰く、その腕はランスロット卿に並ぶほど

曰く、その美貌たるや多くの女を虜にせしめる

曰く、その騎士はコーンウォールからの使者であり

曰く───ある娘を探しているという

 

そして偶然にもイゾルデの父はアーサー王に対する反逆の疑いがかけられ、その嫌疑を晴らすための一騎討ちに彼は現れたのだ。

 

あの後、トリスタンはイゾルデに仇だと知られてしまい、

アイルランド王は国内へ足を踏み入れない条件で彼の命を救った。

トリスタンはイソルデに生涯の騎士となると誓い、王女も七年間1人でいることを誓い指輪をとりかわすとコーンウォールへ帰ったという。

そしてイゾルデをマルク王の妃として迎えるための使者としてアイルランドへ向かうも暴風でキャメロットに流れ着いたのだという。

 

幸運なことにアイルランド王と再会した彼は王を無罪に導き、アイルランドへ招待される。

そこでトリスタンはイゾルデをマルク王の妃として迎えたいと言った。イゾルデはとても悲しんだという。当然だろう、ようやく会えたと思えば自分をトリスタンでなく彼の主君の妃にと彼自身が言ったのだから。

 

コーンウォールへ向かう道中、二人はある薬酒を飲んでしまう。それは本来マルク王とイゾルデが飲む筈の妙酒。飲んだものを愛のしもべとし、二人は永遠に愛し合うというものだった。

 

長い旅路の末にコーンウォールに着いたが、二人は愛し合っているにも関わらずイゾルデは予定通りマルク王と結婚する。

 

そんなことなど全く知らない俺は、イゾルデがマルク王と結婚したと聞きトリスタンは彼女を諦めたのだと思い込んだ。あの後も決して冷めなかったイゾルデへの恋の炎がさらに燃え上がり、イゾルデを手に入れようとコーンウォールへ向かったのだ。

 

そこでイゾルデの従者ブラグウェインが襲われていたところを偶々救った俺は、これはチャンスとばかりにブラグウェインを尼僧院で養生させ、彼女を探すイゾルデに対してこう言った

 

『王妃よ、私は貴女の従者の行方を知っています。もし、王が一つ私の望みを叶えて下さるのであれば私が彼女を連れて参りますが』

 

イゾルデはこの言葉に頷き、俺はブラグウェインを彼女の元まで連れて行った。その後、王に向かって俺はその望みを告げた

 

『王の妃であるイゾルデ様を貰い受けたく存じます』

 

こうして俺は彼女を連れ出したのだ。自分でも卑怯な手だとは理解していた。しかし、彼女を振り向かせるには無理にでも王妃という立場から降ろし、彼女の視界に俺を入れなくてはならない。

 

トリスタンは幸運なことに狩りに行っていた。しかし、追いかけてきたマルク王の部下を倒している隙にイゾルデは何処かへ逃げてしまった。

ひたすらに彼女を求めて辿り着いたのは森の中の城だった。彼女はアドサープというこの城の城主に匿われていたのだ。

俺は彼女を奪ったが、あくまでもそれは王妃という立場から降ろすため。悪逆非道にもこの城を襲ってまで彼女を今すぐに手にいれようとは思っていなかったので、俺はマルク王の部下がこの城を訪れ、彼女を連れ戻すこと無いように城門のところで眠りについた。

 

何やら妙な夢を見ていたようだが、その時のことはよく覚えていない。俺の眠りは一向に覚めることなく、ようやく目が覚めた時に見えたのは怒りの形相で槍を持つトリスタンだった。後に聞いた話ではなんでも槍で2回も突いてようやく起きたのだという。

 

トリスタンは主君から妃を奪ったこと、そして何よりイゾルデに手を出したことに憤慨していた。だが俺も容易にこの扉を潜らせる訳にもいかない。

 

『そこを退け、パロミデス。貴方は一度は私が救ったその命を無駄にしたいようですね』

 

『俺は退かないさ、トリスタン。マルク王の傍にいてはイゾルデは幸せになれない』

 

こうして二人は激しく争った。その跡は悲惨なもので、彼等が争った場所には草一本すら生えていなかった。まさしく全てを出しきった戦いだった。長い戦いの中で互いに満身創痍、相手の血と自分の血で真っ赤になった躰を懸命に動かそうとするが腕にも脚にも力は入らない。

 

そんな中、何時の間にか城門へやって来たイゾルデがその双眸に涙を溢れさせながら口を開く

 

『どうか試合をやめて。片や私の愛する人。私は貴方にこれ以上傷ついてほしくありません。片や私を愛してくれた人。彼が洗礼を受けずに死ぬのは余りに可哀相です。

パロミデス様、グィネビア王妃へご挨拶の言葉をお伝えしてほしい。

この国には真に愛しあっている者が4人いるのです。

その名はランスロットとグィネビア、そしてトリスタンとイゾルデであると』

 

────俺はこの時確信してしまった。俺はイゾルデの愛をトリスタンから奪うことは出来ないのだと。

 

それほどに二人の愛は深く、美しかったのだ。

 

 

俺とトリスタンはその後、何だかんだで親友となった。それはイゾルデの為に互いに全てを出しきった故の絆であろう。

 

ある槍試合で、「アーサー王の敵方について、優れた円卓の騎士を打ち負かす方が名誉が得られるだろう」という俺の提案に乗り、変装したうえで俺、ガレス卿、ディナダン卿、トリスタンの4人で円卓の騎士達を討ち倒したこともあったか。あぁ、あれは実に楽しかった。

 

しかし、トリスタンには刻一刻と幸せを脅かす存在が迫っていた。マルク王である。彼はトリスタンとイゾルデが愛し合っていることを良く思わず、トリスタンを妬んだ彼はトリスタンを排除しようとしたのだ。

 

その結果二人は逃走を図り、トリスタンが狩りにいっているところをマルク王の部下に見つかり毒矢を受け、さらにイソルデはマルク王に奪い返されてしまう。

 

その後、白い手のイゾルデと結婚したトリスタンはブリタニーの争いで毒槍に突かれてしまったという。

 

美しきイゾルデへの想いを断ち切れないトリスタンは、彼女なら嘗てのように自分を毒から救えるだろうと部下に指輪を託し王妃を連れて来られたならば白い帆を。無理であったなら黒い帆を揚げて欲しいと告げる。

 

『イゾルデよ、帆の色は何色ですか………?白でしょうか、それとも黒でしょうか…』

 

白い手のイゾルデは白い帆を見たが、

 

『────黒です。黒い帆が揚がっています』

 

『そうか……あぁイソルデよ、わたしの愛する人よ────』

 

こうして、トリスタンという男の生涯は終わりを告げた。

 

その後イゾルデは岸に上がるトリスタンの死を知り、その死体を抱いて息絶えたという。

 

 

二人の生涯は余りに切なく、しかしどこまでも深い愛がそこにはあったのだ。

 

 

 

────それを今、君は何と言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

「…思うのです、私では駄目だったのではと。偽りの名を騙ることで私は彼女と共に居られた。故に彼女へ恋心を抱けた。そして本来私が飲むべきではなかった酒を飲んだせいで私とイゾルデは深く愛し合った。そしてその愛に囚われた結果、白い手のイゾルデを愛することが出来ずあのような最期を迎え、二人のイゾルデを不幸にしてしまった。………後悔しているのです。やはり私の生き方は間違っていたのではないかと」

 

「───────ふざけるなよ。君が、それを言うのか!!?」

 

「パロミデス────」

 

「だったら俺が言ってやる。君達の愛は間違ってなどない!!始まりなんて俺は知らないがその愛だけは確かに、本物だった!!!!………なぁ、トリスタン。それだけは言わないでくれ。君達の愛を誰よりも信じたイゾルデを否定しないでくれ!」

 

「………あぁ、私は悲しい。そんな言葉を告げてくれる大切な友がいることが何より嬉しく、そして何より辛い」

 

そうやってトリスタンはその弓をパロミデスへ向ける。

 

「…良いさ。言葉が駄目なら力ずくだ。獅子王への思い共々俺が全部打ち砕く!」

 

そしてパロミデスはその槍の矛先をトリスタンへ向ける。

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

 

妖弦フェイルノートは弓と呼ぶには余りに奇怪な存在である。彼が射つのは物理的威力を持つ音の矢。音速で飛び交うその矢は音であるが故に不可視に等しい。だがパロミデスはその研ぎ澄まされた感覚で飛んでくる矢を全て打ち払う。弓を持つ以上、トリスタンはパロミデスに近づかれては負けてしまう。近距離でも反撃出来なくはないが、それをパロミデスは許さない。それだけ互いの力を理解しあっているのだ。

射つ、払う、射つ、払う

ひたすらにそれを繰り返す。トリスタンの矢は未だ僅かにパロミデスを傷つけるのみ、しかしパロミデスもまた僅かしか前進できていなかった。矢を打ち払い、前進しようとした瞬間に次弾が襲いかかってくることで少しずつしか進めないのだ。このままではいつかトリスタンの矢がパロミデスを貫いてしまう。

そこでパロミデスは────あえて、その矢を受けることにした。

 

「!?」

 

全身を音の矢が切り裂く。だがパロミデスはその速度を落とすことなく近づいてくる。

 

一気に距離は縮まったが、まだその槍は届かない。

 

「いや、これだけ近づけば充分だ。こういう風に使った試しはないがな」

 

パロミデスは槍の矛先をトリスタンに向けて構えを取る

 

(───投擲!?)

 

────やはり、ここで決めるしかないか……!

 

「────痛哭の幻奏(フェイルノート)!!」

 

「────賎陋なるや奇計の紅槍(Anything for Isolde)!!」

 

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

 

「………ぐっ、これは…フェイルノートが…!」

 

トリスタンの全身は血でまみれていた。全身に傷がつき、フェイルノートを持っていた腕は完全に折れてしまっている。もうこの戦いでは使い物にはならないだろう。しかし、()()()()であった。霊核は傷ついてこそいるが未だ破壊されていない。

 

────それもその筈。パロミデスが狙ったのはトリスタン自身ではなくその宝具、そして武装だった。

 

「………俺の宝具の真価は殺すことではなく、敵を無力化することにある」

 

そういって立ち上がったのはパロミデス。しかしトリスタンの宝具をまともに受けた彼は霊核をほとんど破壊され、全身はトリスタンよりもボロボロで。それでも立っているのはパロミデスだった。

 

「…全く、想像以上のダメージを喰らった。お陰でもうボロボロだ」

 

「パロミデス…」

 

「俺の宝具は武具に命中させることでそれを使い物にならなくする。それ以外はただの強い槍さ。つまり、君のフェイルノートは今やただの竪琴で、君を守る防具は存在しない」

 

「……では、私の敗北ですか…」

 

「…残念ながら、俺には俺の騎士道がある」

 

そう言ってパロミデスはトリスタンの足下に槍を転がす

 

「これは…」

 

「戦いの前に偶々見つけたんだ。武器の一つも持たない奴は殺さない。そんなことをしたら獅子王のやろうとしていることと同じになってしまうからな」

 

「……良いのですか?貴方はもう立つことすらままならない状況でしょう?」

 

「アーチャーが槍持って戦うんだ。この程度はハンデにもならないさ」

 

そう言って力強く笑うパロミデス。トリスタンは立ちあがりその槍を握る。

 

「…思えば初めて貴方と戦ったのも槍でしたね。良いでしょう、私も負けるつもりはありません」

 

「行くぞ、トリスタン!」

 

同時に駆け出す。ボロボロの身体を無理矢理に動かす。一歩踏み出す度に筋繊維は千切れ、意識が飛びかける。そして勝負はたった一撃で決着を迎える。

二人は互いに向けて槍を振りかぶり────

 

パロミデスの槍はトリスタンの腕を

 

トリスタンの槍はパロミデスの霊核を貫いた

 

 

「……なぁ、トリスタン。俺が許せないか?」

 

「いいえ。私が許せないのは私自身です。今なら分かる。あの時だって、私が憤ったのはイゾルデ一人守れない私自身でした」

 

「なら、親友の俺は君を許そう。だからトリスタン、自分の路を信じろ。君の人生は確かに後悔だらけだったのかもしれない。けど、君がこの路を通らなければ俺は君とこうして出会えなかった。故に俺が保障しよう。

────君の人生は、それでも美しかった。

そして俺はその路で君と出会い、友となれたことを嬉しく思う」

 

パロミデスの身体が光りを帯びながら崩れていく

彼は最後にいつもの笑みを見せてこう言った。

 

「じゃあな、今度はいつものやつを聴かせてくれ────」

 

 

 

 

 

 

 

────ありがとう、我が友よ

 

 

 

────ですが、私は親友である貴方をこの手で倒してしまった。私の指は悲しみ故にもう…動かないのです

 




ちなみに騎士によって情報量が違うので長さはバラバラになると思います。

円卓の騎士の設定についてはおまけでそのうち載せるかもしれないです。
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