もしマーリンが6章でやる気をそれなりに出したら 作:カキツバタ
───私の中には、悪魔がいる。
一体何故、こうなってしまったのか。
確かに人をこの手で殺した。それも何人もだ。しかし、それはこの身が戦場に立つ以上仕方の無いことであろう。
勿論、そのことに対して何の感情も抱かない訳ではない。
忘れられる筈もない、私が初めて戦場に立ったあの日、襲いかかってくる賊軍を打ち払わんと剣を握り、今にも恐怖で崩れ落ちてしまいそうな震える足を抑え付けながら互いに名も知らない敵と相対した。
幸運だったのは、相手も戦いを未だ知らぬ少年であったことか。僅かに震える剣先を互いに向け合い、少しでもこの恐怖を打ち払おうと相手を睨みつける。
別に、殺してやりたいほど憎かった訳ではない。何せ、私と彼は出会ってから数分も経っていない。言葉すら一言も交わしていないのだから。それでも殺さなくてはいけないのだ。
────この世界が、そうやって廻っているのだから。
結末は、驚くほどあっという間だった。
意を決して襲いかかってくる少年の剣を私の剣で受け止め、振り上げてからがら空きの少年の胴体に一閃。何度も何度も練習したカウンターの流れ。それだけであった。
私はあの時の少年の顔が今でも忘れられない。あの、驚きと恐怖と悲しみと、そしてなにもかも諦めたような顔を。
彼が最期に呟いた名前は誰だったのか、その答えは永遠に解らない。
───世界とは、余りに残酷である
何度も何度もこの手を血で染めていく内に、人を殺すということに対しての忌避感が薄れていった。罪の意識はあれど、それは仕方の無いことだと割り切れるようになるのだ。
しかし、それは戦場に立つ者であれば誰しもがそうであろう。そうでなければ戦場で生き抜くことなど出来ない。割り切れない者は総じて戦場で死ぬか、耐えきれず逃げ帰るのだ。
であれば、この悪魔は何なのだ。私の心を苛み、呪い続けるこの悪夢から、一体どうやって逃げれば良いのだろうか
魔術王?そんなものは知らない、知りたくなどない。
何故私が聖杯に選ばれたのか?わからない、何も、何もわからないのだ。
────あぁ、しかし一つだけ、わかることがあるとすれば
私はただ、生きたかったのだ。
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────アルトリア・ペンドラゴン
アーサー王。円卓の騎士の一人であり、選定の剣を引き抜き、不老の力を得たブリテンを統べる騎士王。
ヴォーティガーンを誅するために概念受胎と言う魔術によって作られた赤い竜の因子を持つ存在。騎士道が花と散った時代、聖剣を手にブリテンにつかの間の平和と最後の繁栄をもたらした。
清廉潔白、滅私奉公を貫いた王。その正しさに騎士たちはかしずき、民たちは貧窮に耐える希望を見た。万人にとって善き生活、善き人生を善しとし、弱きを助け強きをくじく。まさに理想の王。
────あぁ、それが彼の王だ。あいつは昔からそういうやつだった。王になる為に産まれ、王としての努力ってやつをずっと続けてきた奴だ。ずっと。言葉通り、24時間365日だ。
わかるか?朝から晩まで親父達と王になる為の厳しい鍛練を詰み、空いている時間があれば馬の世話やら、街の見回りなんぞをやっていた。
あいつは人々の暮らしを守ろうとしていたが、その人々の暮らしってやつをあいつは知らない。
────気味が悪い
おまけにあれだ。あいつはほんの数時間しかとらない睡眠の間ですら、花の魔術師様と王としての鍛練を続けていたんだと。………全く、極めつけにも程がある。そんな暮らしを10年も続けていたんだ。そりゃあ理想の王にもなるさ。
アーサー王の王道はひとにぎりの強者たちではなく、より多くの、力持たぬものたちを治めるためのものだった。
国よりも人を愛したアーサー王は、その為に人間性と、己の人生を封印したが、王の心は民には伝わることはなかった。
────そりゃあそうだ。あんな夢物語、普通の人間ならば付き合える筈もない。
そういう意味では、俺もあいつらも頭が可笑しかったのかもしれない。何せ、王の理想が夢物語だと、そんなものは叶いなどしないのだと知りながらも彼の王の行為を是としたのだから。
────モードレッド?あぁ、あいつの叛逆は違う。もっと単純明快な話さ。アーサー王もあいつも、結局は理想に裏切られたって訳だ。
『────王には、人の心がわからない』だったか?言い得て妙だな。
──わかる筈がない。あいつに求められたものは王としての在りかたであり、「人の心」なんてものは王には必要無かったのだから。
───彼の王は、「人の心」を誰からも教わらず、王もまたそれを知ろうとはしなかった。
これを悲劇と言わずなんという。アーサー王の理想に欠けていたものが、人間誰しもが持ちうる自己愛だったなど!
王は人間を愛し、人々は己と大切な誰かを愛した。これではこの国が滅びるのも道理だ。
………別に、アーサー王を責め立てるつもりはない。彼の王は愛情ってやつを知らなかっただけだ。
考えてもみろ、ウーサーとマーリンの夢物語。そこに愛があったとでも?
あいつらに一つ失念していた点があるとすれば、
あいつらが作り上げたのは、理想の王ではなく
「理想の王」を遂行する機械だったってことだ。
────あぁ、そうだな。もし、彼の王を心から愛するやつがいて、彼の王がそれに応えることができたのなら───
いや、なんでもない。ただの、独り言だ。
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────此処までか
一つ、重い息をつき、ソラを見つめる。
こんな自分にしては随分と頑張ったのだろうか、などと乾いた笑みを浮かべる。
───もはや頭も可笑しくなってきた私達の前に、あの王は現れた。なんでも街を焼き払った際に見つかった聖遺物とやらで召喚を試したらしい。その王は、遊び半分で召喚した部下達をあっという間に皆殺しにし、私の前に立っていた。
『────貴様が聖杯に選ばれた者か。ふん、腑抜けた面構えだ』
そう言ってあの王は聖杯を奪い取り、何処かへ消えていった。
私はただ逃げ続けた。遠征に出立した際と比べると余りに少ない人々を連れ、ただひたすら。それでも聖地へと向かっていったのは、私の最後の意地だったのかもしれない。
悪魔はいつの間にか消えていた。恐らく聖杯と共に消えていったのだろう。しかし、一度広がった呪いは解くことなど困難だ。一部の部下たちは魔術王の存在を信じ、聖杯を取り戻そうとあの王を追った。憔悴しきっていた私には、彼らを止めることは出来なかった。
────そんな私達に、聖地の奪還など成し遂げられる筈もなかったのだ。
聖地イェルサレムに遂に辿り着いた私達は、そこで待ち構えていた人々の猛攻になすすべもなく勢力を縮めていった。
そして今、私の前には剣先が向けられている。………何語だろうか。私には聞き取れない言語でなにやら罵声を浴びせている。
そうやって罵声を浴び続けて暫くすると、遂に一人の男が前に出て、その眼前に構える剣が私に向かって振り下ろされる。
目の前に迫る死の恐怖。私にはそれが恐ろしくて仕方がない。
────故にこそ、それは生存本能。
彼は願う
──生きたい
それは、この場の誰よりも純粋で。
不可能であるが故に、誰よりも強欲。
最後の希望は奇蹟のみ。
故に────
「────問おう、貴様は其処で死ぬか。それとも──我に従うか」
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────見えた。
その光明が。最果てが。
────ならば、行かねばならない
人理は燃え尽きた。人々に残るは破滅の道のみ。
────ならば、私が成すことは唯一つ
「────私が、人類を救ってみせよう」
───よお、人類最後のマスターさん。
そいつはまだ、ビーストじゃない。成りかけの人類悪ってところだ。……何かがまだ、そいつを繋ぎ止めている。
つまり、今が倒すチャンスってことさ。
人類悪と必要悪ってのは対極に位置する存在だ。人類が倒すべき悪は、人々の無垢なる呪いに弱いってこと。
行くぞ人類悪────出来れば武器の貯蔵は不十分だといいなぁ!
以上、アンリのマスターの他愛ない妄想である。人類悪vs必要悪を誰か書いてくれないかな……。こんな台詞を吐かせたい。
FGOフェス、お疲れ様でした。2日目に行きましたがとても楽しかったです。物販とフードの列は凄まじかったですが、無事アルトリアオルタを入手できたので良かったです。
7章と6章もアニメ化が決まり、今からとても楽しみです。
そして2部2章。実は私のFGO初星5鯖はブリュンヒルデだったので感慨深かったです。シグルドといつまでも幸せでいてほしい。というか、初めての星5がブリュンヒルデってかなり珍しいのではなかろうか。
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