専業主夫になった比企谷八幡が浮気するお話。   作:ハーミット紫

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お久しぶりです。


一話

高校生の頃に望んでいた馬鹿げた夢がある。専業主夫。

何をどう上手くやったのか。いや、何もかもを間違えたからこそなのかもしれないが、紆余曲折を経て俺こと比企谷八幡は専業主夫として生活をしていた。

『茅ヶ崎いのり』との出会いがなければこうはならなかっただろう。

愛されているという実感は強く感じる。

けれど俺達の夫婦関係は一般的なそれに比べて、些か以上に歪んでいるように思う。

端的に行ってしまうなら重たいのだ。彼女の茅ヶ崎いのりの愛はとても強い。その執着心は過去に身内を失ったことが起因しているのだろう。

まるで幼い子供が大事な物を仕舞い込むように、俺はこのマンションの一室に縛り付けられていた。

 

「はちまん…?」

 

いつもと同じ様に、俺の隣に眠っていたいのりが目を醒ます。

いのりは目を醒ますと必ず俺を探す。1日の始めに俺を見ないと落ち着かないのだそうだ。

 

「おはよう。いのり」

 

「おはよう。八幡」

 

朝の挨拶を交わすと抱きついてきた。

これは日課みたいなものだ。その状態でしばらく過ごすのも日課の延長になる。

新婚当時のことになるのだが、先に目を覚ました俺がいのりを起こさないように寝室から出て朝食を作っていると寝室からいのりが飛び出してきたことがあった。目尻に涙を浮かべ、酷く取り乱していたのを覚えている。

それ以来、いのりが目が覚めるまではなるべく寝室を出ないようにしている。

 

「朝は何にする?」

 

「いつもと一緒で良いよ」

 

「ならそろそろ出るぞ。

あんまりぐうたらしていたら遅刻するぞ。遅刻」

 

「……そうだね。そろそろ準備しようか」

 

養って貰っている身だ。

それを成してくれているいのりの希望は出来るだけ叶えたいと思う。

しかし、彼女は朝は軽く済ませたいようでいつもトーストとコーヒーだけだ。おかげでかなりの楽をさして貰っている。

昼も会社の食堂で食べるので、朝はほとんどすることが無い。

それでも朝の時間は貴重になものでいつまでも彼女の望むままにイチャイチャしている訳にはいかない。

ベッドから出て互いに洗面所に行く。二つある洗面台。右側が俺で、左側がいのり。それぞれの定位置に付く。

いのりより早く済んだ俺は着替えを済ませ、キッチンにて朝食の準備。まだ洗面所のいのりも終われば仕事に行く準備をするだろう。

トーストが焼ける香ばしい匂いが立ち込める。

俺はいのりに合わせているので同じくトーストで済ます、MAXコーヒーとブラックコーヒーの違いはあるが些細な事だ。

出来た朝食をテーブルに並べる。そうこうしている内に準備を終えたいのりがやって来た。

 

「ありがとう八幡。いただきます」

 

「どういたしまして。いただきます」

 

初めの内は目玉焼きかサラダでも用意しようかと提案したが、昔からトーストにコーヒーがお決まりの朝食だったからこれが良いと言われ現在に至っている。

程なくして、互いに朝食を終える。そろそろいのりが出社する時間だ。

朝食に使った食器類をシンクに浸け置き、見送りの為に玄関までついていく。

靴を履く前にいのりが抱きついてきた。

 

「化粧とれるぞ」

 

一応、気をつけているようで頬擦りなどはしてこないがこれも毎朝のことだ。

 

「大丈夫だよ。一応、気をつけてる。

そんなことよりもこれから仕事に出掛ける奥さんに愛してるよって言って欲しいかな」

 

「はいはい、世界で一番愛してるよ」

 

「適当だなぁ。けど、元気は出たよ。

頑張ってくるね。行ってきます八幡」

 

「あぁ、いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りの家事を終え、自室のパソコンを起動する。

最大手のネット通販会社のページを開き、気になっていた本を数点注文する。

これも翌日には届くだろう。大変便利だが、ただでさえ少なかった外出理由もこれのおかげで無くなってしまった。

食材は専属契約している会社から毎週届く。日用品もこの通販サービスのおかげで外出しなくても手に入る。

いのりは俺を外出しなくても良いようにとれる手は全て行った。おかげで望まずともヒッキーになってしまっている。

今では外出する理由など滅多に無く、ネットでの注文を終え、毎日決まった時間に確認するオートロックから数メートル先の郵便ポストを見に行くくらいしか家から出ることが無い。

 

「はぁ」

 

堪らず溜め息が出る。

恵まれた環境にいるのは充分わかっている。この息が詰まるような気持ちも、こんな環境に慣れたからこそ感じる贅沢な悩みなのだろう。

そう考えることにして郵便物を見る。マンションの広告に分譲住宅のチラシが数点。今俺が済んでいるマンションは高級といっても差し支えのないものなのでこういった広告は後を絶たない。

珍しいことにその中に一通だけ、俺に当てたものがあった。

 

「葉山から?

おいおい、結婚するのかあいつ」

 

知人からの結婚式の招待状。どうやってここの住所を…?と思ったが由比ヶ浜あたりから知らされたのだろう。

三浦とか……大学まで追い掛けて、押しに押したとは由比ヶ浜から聞いた情報だ。それが吉となったのか対に結婚まで辿り着いたようだ。

招待状。いのりは面識のない葉山と三浦の結婚式。1人で少し自由になれる時間kが手に入るかもしれない。

 

「2ヶ月後か。出来るなら参加したいが…」

 

果たしていのりは許してくれるのだろうか。

それだけが気持ちを重くさせた。

 

 




もう完結まで書いているので良ければ少しお付き合いください。
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