クズでもヒーローになれますかねェ?【諸事情により題名変更しました】   作:虚ろな勇者の影

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第2話

 

皆様、お元気ですか?

こちらは特に変わりはありません。

相変わらず、爆豪勝己君は元気に緑谷出久君を虐めています。

 

「おい、流石にやべーんじゃねーか?」

「カツキー、やりすぎだぞー」

 

という声がちらほら上がっている。まぁ、それで止まる彼では無いのだが。

 

「報情ちょっと止めてくれよ!」

「やだよぉ?」

 

何故か私にお鉢が回ってきた。止めるだって?何を言ってるんだ。あれはね、振動のない場所で放置しておくのが1番いいんだよ?

 

「だってお前、あの歩くニトログリセリンを唯一扱える人間じゃねぇか!」

「いやぁ、なんで止めなければいけないのかなぁ?」

 

歩くニトログリセリン……言い得て妙だね。

 

「なんでって、アイツ、うじうじしててムカつくけど、流石に怪我はやべぇだろ」

「いやね、彼はあの多くの挫折と理不尽な暴力によって、鉄壁の精神を持つ主人公になるんだよ?

今は、その土台作り為の避けては通れぬプロセス。むしろ、止める意味がわからないね」

「怪我してもいいってのか?!!」

「それが、主人公のためだからねぇ」

「……お前、前から思ってたけど、地味にクズだよな」

「そうかなぁ?」

 

めちゃくちゃ引かれた。

何が悪いのかねぇ?あの、「かっちゃんによる理不尽な暴力」があったからこそ、彼はあんなにも輝ける、何にも負けない、折れない人間になると言うのに……。

わざわざその汚れ役をやってくれている爆豪勝己に感謝しなければいけないぐらいなんだぞ。君達は!

 

ヒートアップしていく爆発。

もちろん、先生は巻込まれるのを恐れ、手を出すことはない。それでいいのか!相澤先生を見習え!

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

放課後。

あのあと緑谷出久はぶっ飛んだ。でも、普通に生きてる。しかも授業もしっかり受けてた。

凄いね、こうやって痛み耐性つけてきたんだねぇ。本当の意味でのタフネスは彼を指すと思うんだ、私は。

 

「カラオケ行こーよ」

「それっきゃねーな!」

 

がやがやと騒がしい教室。私は相変わらずタブレットで情報収集。

 

「話はまだ済んでねーぞデク!オラ、てめぇもだ!目死に野郎!」

「ん?」

 

目死に野郎というのは、爆豪勝己直々につけて頂いた、渾名。相変わらずセンスないねぇ。

いやぁ、目死んでるのはある意味しょうがないというかね……誰だってあんな「死」を経験したら目のハイライトも消えるって。

タブレットの画面に映る自分の顔を見つめながら思う。

白い肌、黒い目に黒い髪を首の辺りまでで、短く切りそろえてある。客観的に見てもブサイクには絶対見えない、その容姿。情報収集で顔が良いに越したことは無い。そう言う意味でも私は母に感謝である。

 

「なに、シカトしてんだゴラ!」

「あーーーーーー!!!!?」

 

小爆発。緑谷出久のヒーロー分析ノートが爆破された。

緑谷出久の顔が歪む。目からは涙が……相変わらず涙腺ブチ切れてんなぁ。

 

「いいか、よく聞け!

一線級のトップヒーローは大抵学生時代から逸話を残している。

俺はこの平凡な私立中学から、初めて!唯一の!「雄英進学者」っつー”箔”をつけてーのさ。

まー、完璧主義なわけよ」

 

なんて言うか、あれだね。

 

「……相変わらず、みみっちい」

「うっせぇ!死ね!!」

 

うぉ。小声だったのに聞こえたのか。でもまぁ、事実だよね。

 

「つーわけで一応さ、雄英受けるなナードくん」

「…………」

 

「いやいや…流石になんか言い返せよ」

「言ってやんなよ。

かわいそうに中三になってもまだ彼は現実が見えていないのです」

 

よし、よく言った。爆豪勝己!

君なら言えると、緑谷出久のメンタルにランチャー並のダメージを与えると信じていたよ!!

そして、取り巻き君たちの追い打ちも素晴らしい!

……あれ?

 

「私はぁー?受けてもいいのかーい?」

「うっせぇ、黙ってろ!てめぇは後だ!」

「ブーブー」

 

無視された。

緑谷出久は何も言い返せずにいるようだ。そりゃそうだ。それは全て正しい事なんだから。

私は原作を知ってるからその足掻きを、諦めの悪さを主人公の美点として捉える事が出来る。が、客観的な事実として、無個性の緑谷出久はヒーローになれない。

現実から目を背け続け、成れもしない者に中毒の如くのめり込む、言わば狂人だ。

 

「そんなにヒーローになりてんなら効率良い方法があるぜ。

来世は”個性”が宿ると信じて…屋上からのワンチャンダイブ!!」

 

まぁ、間違ってはいないね。私も死んだら転生して個性宿ってたし。

 

「まぁまぁ、そんなに言っちゃ駄目だよ。本当に飛んだら自殺教唆罪だからね?言うならもっと婉曲に言わないと」

「俺の道にいたのが悪い」

「出たよ、カツキニズム」

「言うなとは言わないんだな」

「まぁね。面白…ゲフンゲフンっ!必要な事だからね!

それとそろそろ緑谷出久君は帰りな。

────ノートは1階金魚水槽に浮かんでる、恐らくね」

「えっ?……うっ、うん!ありがとう?」

「バイバーい」

 

とぼとぼと帰っていく緑谷出久君。このあと君は憧れのヒーローに夢をぶっ壊される……頑張れ!!

 

「で、私はなんだい?」

「てめぇは、俺が直々にぶっ倒す」

「うん」

 

 

「……あっそうだ、そこの取り巻き君!」

「えっ?オレ?」

「そうそう。ここから1番近いスーパーの裏、10時。合言葉は「サンタクロース」……そろそろ切れてきた頃だろ?」

「バレてたか。そーなんだよ、よく知ってんなぁ」

「その手の情報収集は得意だからね。あと、帰りは商店街通っちゃ駄目だよ。恐らく、ヒーローが巡回してる」

「毎回助かるわ。ほい、情報料」

「毎度ありぃー」

 

BooooM!!

 

「俺を無視すんなぁ!!」

「えっなんで!うんって言ったじゃん!!」

「あ゙あ゙!!?」

 

あー、これはちょっと怒らせ過ぎたねぇ。冗談抜きで。無視されんの苦手だもんねぇ。ごめんごめん。

でも、だって、「うん」以外に何を言えばいいのさ!?

言っとくけど、サシでやり合ったら私死ぬからね?冗談抜きで!私めっちゃくちゃ弱いからね!!?

 

────と、そんな理由(真実)言ったって無駄だよねぇ。

 

にしても爆発やべぇ。タブレット壊れるって……ちょっと大人しくしてよ!

私は()()()()()()()()()()、爆豪勝己の頭に置く。あくまで自然に。

 

「ほれほれぇ、落ち着け落ち着け、よーしよしよし」

「撫でんな!!犬じゃねェ!!!」

 

 

 

個性────「情報書き換え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────な、()()()()よ?」

 

 

 

個性を使い、干渉。【イライラする】という情報を【落ち着く】に書き換える。

しかして、爆豪勝己は落ち着いた。

 

 

「お前、今何した!!?」

「いや、やっぱ落ち着いてないかも」

 

ただでさえつり上がっている目をさらに釣り上げながら睨んでくる。こいついつもプチプチキレてるからなぁ。

キレてる状態が落ち着いてるって……やべぇぞ!お前!!

 

☆☆☆☆☆

 

【個性】「情報遊び」

・手で触れた物(生物含む)の情報を読み取ったり、書き換えたりできる。また、自分の持つ情報を画像として相手に送ることが出来る。

・書き換え、情報投与の効果時間は、最大24時間(任意で効果時間変更可)。1日何回でも使えるが、使い過ぎるとめちゃくちゃ眠くなるぞ!!

 

☆☆☆☆☆

 

 

「よし、そろそろ帰らないとだね

取り巻き君達と一緒に帰りな───()()()()()()にね?」

 

そう。今日は大事な大事なヘドロ事件の日だ。

弱い緑谷出久が爆豪勝己を助けようとする素晴らしい日だ。……あの爆豪勝己が恐怖に歪む顔。あれは後にも先にもあれだけだろう。是非ともリアルタイムで見て、(弱味として)写真撮って、本人に見せてあげよう(馬鹿にしたい!!)

 

「おい、目死に野郎!今の説明しろやァ!」

「うるさいなぁ。早く帰ってよ一年後ぐらいにするから」

 

 

☆☆☆☆☆

 

やっと帰ってくれた。あんまりにもしつこくてもう1回個性使おうか迷ったよ。まったく。

 

「どーれ。そろそろオールマイトに緑谷出久が夢をバッキバッキにされてるとこかな?

写真撮ってもいいけど、緑谷出久君の泣き顔は、もうストック充分。彼、泣きすぎだよ」

 

プルルル、プルルル。

携帯が鳴り、ポケットから今時では無いガラケーを取り出す。

 

「はいはーい……あっ、土壌様ですか!

はい。もちろんです。今日のレートは28469。3時方向に向かって3回右スマッシュ。見回りルートは栗木15、運送は柿木4ですよォ。……はいそうです。振り込みはいつもの口座に。……女の子は大切にしてくださいねぇ?」

 

プルルル、プルルル。

今度はスマホ2の方か。そう、実は私スマホ3台もってて、ガラケーも合わせれば5台になるんだよね。

いやぁ、前世でもこんなに持てなかったよ。伊達にこの世界ヴィラン湧いてないよね。情報業が売れる捗る!!

最高の世界だ!!……あっ、電話出んと。うぇ、LINEも結構溜まってんなぁ、消化しながらでいっか。

 

「もしもし?……未先ちゃん?どうしたの?……あぁ、物戻直也君ね」

 

また恋愛相談かぁ。最近多いよね。恋多き事は良きことだね。その調子で私にお金を積んでほしいね!

そう思いながら、もう1台(LINEをやってない方)のスマホを取り出し、データベースを開く。

 

「……えっと彼はまだウブな子だね。うん。好みはショートカット、一緒にガンダムのプラモ作ってくれる子。逆に苦手なのは手作りを押し付けてくる人。いつも海岸沿い夕日を見て帰ってるみたいだね。こんなに感じでオケ?

……え?告白が成功するかって?追加情報は3000円だよォ?

……毎度ありぃー。成功しないと思うよ?だって彼、既に甲冑中学2年生の女子と付き合ってるもの!アハッ!!

……聞いてないって?そりゃ、言ってないもの。まぁ、ちゃんと情報渡したんだからお金払ってねぇー。情報は金なり、だよォ?」

 

ブツっ。

いやぁ、やっぱ女の子は恋ですね。あと、ダイエットと美容。これでがっぽりだね。うひょー。

 

「LINEも消化完了。よし、ヘドロ事件の全容、いっちょ見学しますかぁー」

 

 

 

報情(ほうじょう)読気(よむき)、転生人。今日も楽しく情報収集してます。

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
主人公である彼女のクズさを今回は頑張って書き出してみました。
ちゃんとクズでしたかねぇ?……感想待ってます。

【次回予告】
ヘドロ事件勃発!!「これ、言われたくないよねぇ……ウンウンわかるよ。じゃっ、交渉成立!っと!」入試まで行けたら行くぞ!!!

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