地下空洞にあった元木乃伊、緋衣誓慈は白いスーツを身に纏い、店先で新聞を読んでいた。
「ふむ。私が封印されて50年、朔が失敗に終わって70年経つのか。」
彼は真奈瀬とかかれた蕎麦屋で50年振りの食事をしていた。
「先ずは、あの裏切り者だな。」
彼は逆十字でありながら一人だけ病みより解放された女を思い浮かべた。
「朔であの女がした方法で殺ってやろう。く、く、く。」
その夜、弁財天社
この場所に呼び出された老婆は心配で着いてきた夫と共に、呼び出した本人を待っていた。
そして、そこに近づく足音が聞こえた。
夫の方が文句を言おうと音が聞こえた方に振り返った。瞬間、
二つの銃声が響き渡った。
その場に崩れる旦那。
「信明!」
老婆、否世良南天は彼女の夫である信明に駆け寄った。急所は外れていた。その事に彼女は一瞬安堵した。しかし、
再び聞こえた銃声により、彼女の視覚は一瞬赤く染まった。
撃たれた。そう認識したときには腹部から大量の血が噴出していた。
彼女は元はといえ逆十字この程度の痛みには慣れている。彼女は銃声がした方向を見上げた。
そこには男が立っていた。
弁財天社へと続く橋の上に見覚えがある容姿をした男が立っていた。白いスーツを纏い、握った銃から硝煙を立ち昇らせながらそこに存在していた。
彼の纏うその雰囲気、酷薄で冷厳で威圧的な気配は覚えがあった。
更にこの状況に彼女は既知感を感じていた。
それは全てを不安にさせるような。
近づけばまともではいられなくなるような。
彼女は思い出した。
この状況を彼女は知っている。
何故ならかつては彼女があの男と同じ立場にいたからだ。
だからこそ続きがわかってしまう。彼女は元はといえ逆十字痛みに慣れているから、
「待って!」
響き渡る銃声。
苦痛を叫ぶ夫の声。
銃から吐き出された凶弾は信明の右手を抉り穿った。
そして、男は急所を避けつつ、痛点が集中する部位を正確に撃ち抜き続けた。
苦痛を訴える信明を見てようやく男は口を開いた。
「いい様だ。どうだ?貴様が愛した男が無様に叫ぶ様子は?」
男が近づいてきたことにより南天はその男の容姿を正確に見ることができた。
「えっ?嘘!」
その男はかの緋衣征士郎と髪質は違えど同じ顔をしていたのだ。
男は嘲笑うように笑みを浮かべ、
「やっとわかったか?三代目。私は四代目逆十字だ。」
「幸福なのだろう三代目。なあ!お前だけ病みから解放されて、何故私は、私だけは!こんな理不尽を味わなければならん!羨ましいぞ、許さん!何故だ?何故なのだ!答えろ、答えろ、ーーこたえろおおおぉぉぉォォォオ!」
男の激昂が爆発した。
八つ当たるように彼は信明を打ち続けた。そうして叫び続けていた信明の悲鳴が止んだ。
「死んだか。」
その言葉に南天は激昂した。
痛み?これがこんなものが痛いだと、かつての痛みに比べればこんなものがどうってことない!彼女は立ち上がり、男に向けて走り出した。だが、
「えっ?」
頭部を突き抜ける感覚を感じ彼女は憎悪の中で生き絶えた。
「ああ、それでいいぞ。私達は逆十字。苦痛の中で、憎悪の中で死んで行け!」
たとえ、元逆十字でも逆十字らしく死なせたことに彼自身は満足させていた。
いい忘れていましたが誓慈≠一誠です。