エロい葉隠れちゃん    作:kurutoSP

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透明人間でも女の子

「まあ、実際朝の健康ランドなんてこんなものだよね」

 

 私は朝風呂を堪能しつつ、水に顔を沈めため息を吐き、水面に泡を立てる。

 

「こんな時間に利用する人なんて健康志向の高い人。老人御用達だよね」

 

 私を見ることが出来るならば、恐らくハイライトの消えた目で元気に話す皺くちゃの肌、垂れた乳、見る影もない尻を眺めていることだろう。

 

 昨日余りにもワクワクし過ぎて遠足前日の小学生状態になった私は、とにかく早く女湯に行きたいばかりに朝早くに営業している銭湯を見つけ、そのまま平日の朝に覗きに行ったのである。

 

 前世の感覚でいたため、危うく男風呂に行きかけ、番台さんに止められ、自分の覗き計画の意味の無さに愕然として落ち込んだこともあったが、それでも桃色広がる桃源郷を前に心を躍らせ女湯に入ったのだ。

 

 その結果がこれとは納得がいかない。

 

 昨日、男湯から女湯が覗ける条件に合う近場の銭湯をあれほど調べたのに………………。

 

 しかし、どんなに見ても周りの景色は変わることがない。

 

 桃源郷?桃色?どこがだ。もう桃は腐って地面に落ちているじゃないか!桃色も変色して茶色も目立つ。

 

 あれだけ期待に胸を膨らませただけに僕の絶望度合いが理解できるのではなかろうか。

 

「あがろ」

 

 ここまできた交通費も地味にかかっただけに、一発逆転にかけて粘って見たが、僕は気づいてしまう。

 

 何が悲しくて金はたいて婆の裸を長いこと眺めているのであろうか。

 

 自分の今していることを冷静になり考えたら無性に悲しくなり風呂から上がり帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銭湯から帰った私は、自分の部屋にばら撒かれた紙くずを見て、更に絶望の淵に落とされた。

 

「そう言えば、女湯に行っている場合じゃなかった」

 

 地面に散らばる昨日塵とした問題のゴミを片付けずに現実逃避をしていたことを認識してしまいどうしようもなく落ち込む私。

 

 欠片を一枚一枚ゴミ箱に捨てるのはせめてもの抵抗だ。時間が無意味に流れる作業だろうが、今私は何も考えたくなかった。

 

「片付け終わっちゃった♡」

 

 元男の僕がキャルンとでも擬音語がつくしぐさをしたのは思いの外気持ち悪く、頭が冷え、冷静になれた。

 

 先ず情報整理。

 

 原作だと、私が渡した情報はカリキュラムだけだと考えられる。これは密接に連絡を取っていなかったということだろうか?

 

 私は携帯を見るがそこには友人たちの名前くらいしか電話帳になく、さらに履歴を長いこと見ても怪しい番号は無かった。

 

 つまりここにある紙の様にアナログチックな方法でのみ情報のやり取りをしていたのだろう。

 

 まあ、これは良い。余り接触が多いと私が変わったとバレる可能性があるしね。

 

 それと誰に情報を渡していたかだね。

 

 死柄木に直接はなさそうだ。流石にまだ成長段階の彼にあのオール・フォー・ワンが任せるはずがない。

 

 なら、黒霧さんか?彼ならワープゲートで直接指示を渡せるし、部屋の中に直接送ればいいだけだ。

 

 流石にオール・フォー・ワンの直属の部下な扱いは流石にないよね。多分駒だろうし、私がオール・フォー・ワンと対面することは絶対ないはず。

 

 ということはつまり、黒霧さんで確定かな?

 

 私は少しほっとした。あの組織の中で一番の常識人の下に恐らくいるであろうと思われるからだ。

 

「兎に角、入学して3日目まで特に私にできることは無いということだよね」

 

 マスコミ襲撃事件までやることが無かったはずの私は、これからの身の振りようを考える。

 

「う~ん。どうしようか」

 

 私はこれ以上考えても何も分からなかったため、机に在ったノートを適当に一冊ほど取り出し、中を見る。

 

「どれどれ。ふ~ん。受験計画やら、日々のトレーニング方法が書いてある。流石に雄英高校に受かっただけのことはあるよね。優等生だ」

 

 彼女が日々どんな風に過ごしてきたのか分かるのでこれはボロを出さない上で非常に参考になる。

 

「なるほど、なるほど」

 

 私は様々なノートを調べてゆく。もしかしたらヴィラン連合とのつながりも出てくることを期待してノートをめくる。

 

「はぁ~。学生としても、女の子としても、スパイとしても優秀過ぎでしょ」

 

 ため息を吐き、私は出したノートを全て片付ける。

 

 私が書いたノートにはスパイ行為をにおわせるものが全く存在しなかった。

 

 いや、葉隠ちゃんが中学生の時に何にもスパイとして活動していなかったとは考えにくい。恐らくこのノートにも走り書きやメモ、計画を書いたページなどがあったとは思うのだが、そういうページは全て消去したのだろう。

 

 私は最後の一冊をしまう前に破れたページを見てまたため息を吐く。

 

「本当に優秀過ぎでしょ………………。でも」

 

 私はノートから得た情報をもとに引き出しを開け、大切にしまってある箱を取り出す。

 

「これはどうなの」

 

 そして私はそれを開き、ノートに書かれてあった手順を思い出しながら、作業をするのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん。女の子なのはわかったし、美への飽くなき探求心も分かったけど、本当に私何でこんなことしてたんだろう」

 

 以前の彼女に問いかけたい。これで満足だったんですか?

 

 鏡の前に立つ私は以前の様に何も映っていないということは無い。

 

 では何がうつっているのかと言うと、つけまつげ、口紅、ファンデーションなどの化粧品で化粧をした浮かび上がる顔が映っていた。

 

「いろいろ頑張っているのも認めるし、流行を取り入れようとしていたのも認めるけど、これはちょっと」

 

 普通に怖かった。

 

 化粧水で肌を整えたりは分かるけど、化粧する意味はないよね。

 

 私は洗面所に化粧を落としに向かう途中、そっと箱を閉じるのであった。

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