今日は雄英高校生として二日目、ぶっちゃけ難関校なだけあってガンガン授業が進む。
ただ何と言うか、ヒーローの無駄遣いと思うのはわたしだけかな?
プレゼントマイクの英語とか聞きやすいを通り越して煩いのだが、そしてここは普通の先生でも問題ないような………………。
まあ、別にいいんだけどね。彼らが真面目過ぎるとスパイする私としては厳しくなるだけだしね。
「はあ、疲れた」
「まあ、仕方ないでしょ。ヒーロー科は午後にヒーローになるための講義を詰め込んでるんだから、午前の一般の授業が他の科よりも少ない分濃密にしなきゃいけないし」
「それでも大変だよ。歴史とか全然違うし」
個性が発動したせいで、近代の歴史が全く異なる。前世の記憶が役に立たない。というか、前世の私頭があまり良くないようだ。
英語、数学ともに初めて受けた気しかしない。
しかし!私は挫けない。何せ今の私は頭いい!すらすらと公式が頭に入っていくのだ。
「でもまあ、英語は声が濃密だった気しかしないけど」
一緒に食堂に食べに来た響香ちゃんもプレゼントマイクの授業は全く同じことを思っていたようだ。
「やっぱりそう思うよね。それよりヒーロー基礎学楽しみだよね」
私は同じことを考えてくれていたことに嬉しく思いながら、話を進める。
「確かに、これぞヒーロー科って感じな授業だもんね。ウチも楽しみ」
そう言い私に笑いかける彼女の表情に思わず見とれる。
「わっ!凄い!雄英高校の食堂すご!」
見惚れている間に先に彼女は食堂に入ったようで感嘆の声を上げている。
さっきまで私に向けられていた笑顔が奪われたことに少しほど嫉妬しつつも、同じように顔を食堂に向け、そのいい匂いに自分のお腹が鳴るのを感じる。
「早く行こう!」
「賛成!午前に頭を使って脳が栄養を欲している気がする」
どうやら恥ずかしい腹の音は聞かれていなかったようだ。
「そうだね。ただ………」
先に行っていた彼女が立ち止まり振り返り、笑いかける。
さっきの純粋な笑顔と異なりそこには何か嫌な予感を感じさせるものがあり、思わず一歩後ずさる。
「えっと、早く並ばないと席が埋まっちゃうよ」
私の問いかけに返事を返さずジリッと近づいてきた彼女は俊敏な動作で私のお腹を両手でつかむと揉みこむように触ってくる。
「脳じゃなくて栄養を欲しているのは透のお腹だろ。誤魔化してもウチは聞いたよ。その可愛らしい腹の音を。うりゃ」
「ちょっくす、くすぐったいよ」
恥ずかしさと、くすぐったさに私は悶える。
ただ、女の子の触れ合いっていいな。
そんな風に思っていた時も在りました。
「そこは駄目!ちょっ、や、あ、ん」
自分の口から艶やかな声が、いや喘ぎが漏れる。
「栄養を欲しているのはこの胸か!」
最初はキャッキャウフフと戯れているだけだった。
それが彼女の手が偶然私の胸に当たった辺りから彼女の目からハイライトが消えた。
彼女の手は容赦なく私を揉む。
彼女は趣味でギターをしているだけはある。
テクニシャンだ。そしてどんどん追い詰められる私。
「オイラ雄英に入ってよかったと思う」
「ああ、俺もそう思うぜ」
最初の夜に頭がショートした感じが来そうになったが、一気に冷静になった。
私たちの百合を覗いている者がいたのだ。その無遠慮な男二人の名は峰田に上鳴だ。
私の痴態を見ていいのは女の子だけだ!野郎は許さん。
特に上鳴、よく響香ちゃんとつるむ貴様だけは許さん!
服に忍ばせていた消しゴムを彼向けて投げようとして、彼ら二人は内から弾けた。
「さっさと食事にしましょ」
誰のせいでここで痴態を演じる羽目になったのか釈然としないながらも、倒れ伏す二人を見て彼女に黙ってついて行く。
見られながらも悪くない。ちょぅっとだけそう思いながらも、女の子のわがままを聞くのも悪くないと自分に言い聞かせ、格安で美味しい食事を食べることにする。
こっそりと盗撮しました。余りにもおいしい食事に悶える響香ちゃんを見てるとつい。
勿論、これは私が欲望のままにこんな行動に出たわけではない!
これはスパイ道具が正常に動くかのチェックだ。それによっては明日の作戦の難易度がガラリと変わってしまう。
つまり、写真映り、そしてブレ、それらを事前に調べておこうということだ。そしてさらには本番も全く誰もいない職員室で情報を盗み出すなど不可能だろう。だからこそ、今、人目がある中でどれだけ違和感なく使えるか、そしていざ使うとなると自分がどんな精神状態になるかを知るうえで重要なのだ。
そう、これは英雄高校が誇る鉄壁のセキュリティを抜くために必要な前準備。
一流とはそう言うモノだと私は思うのだ。
優秀な軍師は戦う前に兵力、士気、地形、天候、その全てを知り、戦う前に勝敗を決しようとし、政治家は根回し、金、イメージ、賄賂、様々な手を駆使して、政治をする前段階に既に勝負をつけるだろう。
こんなのは人間が積み重ねてきた歴史が証明しているはずだ。………………たぶんだけど。歴史って良く知らんが、漫画にはそう描いてあったから大丈夫。漫画は心のバイブルです。
つまり、此処で私が写真を撮ることは必要事項なのです。
そう心の中で言い訳をしつつ、私は授業中から盗撮をし続けて既にデータの半分を圧縮したカメラをそっと懐にしまい、彼女と食事一緒に食べることに専念する。
「うま!」
「でしょ。これをこの値段で毎日食べられるなんて!ウチ幸せ」
「ほんと幸せだよね」
私は彼女の笑顔を毎日見られるのは本当に幸せだと思った。
幸せは長くは続かない。
どんな物事にも上昇と下降が存在するように、人の運にだって幸運と不運が交互に訪れる。
いや、もしかしたら幸運続きの人もいるかもしれない。でもよく考えて欲しい。幸運とは何をもって運が良いと言えるのだろうか。
幸運な人間にはそれが当たり前なら、普通の人がラッキーと感じることでも彼らには当たり前のこととなるのならば、本当の幸運は連続しては訪れないのではなかろうか?
そんな人たちは普通の人々が何気なく起こる事態を不幸に感じるかもしれない。
う~む。此処まで行っておいてなんだが、私の主張はこれで伝わるであろうか?
まあ、つまりだ。数学的に、論理的に説明するとだな。
人の人生を幸運と不運のパラメーターを数値化し、その人の一生を時間とし、グラフを作るとする。
もし、これを作成する上で、全ての人が感じる普通をゼロとするのが先ず間違えであると言いたい。
そんなことをしてしまえば幸運な人のグラフは絶対どんな時でも幸運となり続ける。
だが、人の価値観と人それぞれ、意味もないのに平均をとりたがるのは日本の悪しき風習だと私は思う。
つまりだその人ごとの当たり前をグラフの0にしなければなんの意味も無いのだ。
そうすると、どんな人にも幸運と不幸は絶対に現れる。そこには大雑把に見れば必ず大と谷が出来るはずだ。
どれだけ幸運な人物であろうと必ず不幸になる。
私が言いたいことは最初から変わらないがあえてもう一度言おう。
幸せなど長く続くもんか!幸せだと思っているバカップルが爆発する様など痛快であろうが!どれだけ幸せだろうが、そんなもの簡単に壊れるんだよ!だからこそリア充は死に、魔法使いがこの世に爆誕する。これが真理だ!
私は心の中で熱くそう主張しつつ、自分の下に組み敷かれた私の不幸の象徴たる轟焦凍を、誰も私の顔など見ることが出来ないであろうが、視れたら確実に目が泳ぎまくり、視界の中央に中々入らないながらも見ているのであろう。
どうしてこうなった。スパイなのに目立つって………………。
あえて言おう。
私、メッサ不幸じゃん。
そう、幸せだったからこそ不幸になったに違いない!だから、この次の事態は幸運に恵まれるに違いない!
そうであって、ほしいなぁ。