エロい葉隠れちゃん    作:kurutoSP

8 / 10
イケメン氏ね!

「凄いね葉隠さん」

 

 尾白が全く動けないながらも顔だけ振り向いて私に賛辞を贈る。

 

 素直に嬉しいが、喜べない。

 

 なんせ、原作では私たち二人は足元を氷漬けにされ身動きが封じられ完封されたはずなのに、今現状、オールマイトが教鞭をとるヒーロー基礎学の最初の授業において、私は対戦相手でかつ、私たちに勝利するはずの轟君を拘束し、無力化したのだ。

 

 これが他の人ならいざ知らず、ナンバー2ヒーローエンデヴァーに鍛えられた彼を授業とは言え捕らえるのは目立ちすぎる。

 

 彼の氷の力は下手なプロヒーローよりもすでに上である。まあ、ヒーローは力だけでなれるものではないから、今働いているヒーローの皆さんが現在の彼に劣っているかと言うと、戦闘面以外は全てにおいて勝利しているから、彼がプロよりも優れているわけではない。と言っても今回は戦闘に重きを置いているため、この弁論は全く意味をなさないどころか、逆に私の異様さを際立たせているだけかもしれない。

 

 つまり、私は戦闘力だけならプロと遜色のない彼に勝ってしまったのだ。

 

 わーい。私マジスゲー。

 

 は、ははははははは。笑えてくる。これで任務に支障をきたしたらどうしよう。

 

「えへへへ、ウレシイナァー」

 

「えっと、前半と後半に激しい寒暖差があるんだけど、どうかしたの」

 

「ううん。ナンデモナイヨー。それよりまだ障子君がいるから気を抜かないでね」

 

 はっ!そうだ。まだ障子君がいるじゃないか。ここから彼がスーパー逆転劇を見せれば少しは印象を薄れさせることが可能か!

 

 そうと決まれば急がなければ!

 

 私はおもいッきし立ち上がる。その下に誰を組み敷いていたのか忘れて。

 

「いい加減放してくれないか?」

 

「え?う、うわ!」

 

「ちょっ葉隠さん!」

 

 今まで黙っていた轟からの声に驚いてしまった私は体勢を崩す。

 

「「あ!」」

 

 私と尾白君の声が重なり合う。

 

 そして滑った足が上手いこと轟君の顎にクリーンヒットし、彼の意識を刈ると、私の伸びた手が尾白君の象徴にクリーンヒットする。

 

 この時不幸なことに尾白君は足を固定されており、衝撃を逃がせない体勢であり、更に私が原作通り全裸であったため、尾白君は私がどのように倒れているかなど分かるわけもなく、そして私の手がどんな軌道を取っているかなど更に分からないため、何の準備も覚悟もなく、そしていくら下半身が上手く動かせなくても、知っていれば体をひねることくらいはできただろう。

 

 だが、それはもしもの話。現実は変わらない。

 

 この寒い中、尾白君は大量の汗を顔面からだらだらと流し一言も言うことなく崩れ落ちる。

 

 足が固定されているため、体を九の字に折り曲げた窮屈の体勢のまま、股間に手と尻尾をやる様は悲壮感が漂う。

 

「………………ヴィラン、ヒーローともに一人ずつ撃破。残り二人だ」

 

 どうしてこうなった。

 

 意識のない二人を視界に収めながら私は対戦の初めを振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしくね尾白君」

 

「ああ、よろしく」

 

 ペアを組むことになった尾白君に無難な挨拶をした私はさっさと作戦会議に入る。

 

「じゃあ、サクッと話し合おうよ。先ず見ての通り私は透明人間。奇襲はお手の物だ!」

 

「僕はこの尻尾。これを利用した近接戦闘が得意かな?」

 

「じゃあ、作戦は簡単だね。向こうは推薦の轟君に障子君はあの大量の手を生かした力は厄介そうだし、2対2は恐らく不利だと思うんだ」

 

「まあ、僕も二人を相手にするのは辛いかな」

 

 野郎、あっさりとこの私を戦力外通告しやがった。まあ、確かに透明になるだけだしね。

 

 それでもムカつく。

 

「え!私邪魔かな」

 

 落ち込んでいる風に見せ、奴の罪悪感を煽る。

 

「え、あ、ゴッゴメン。そんなつもりじゃアなかったんだ」

 

 慌てふためくさまを見て少しは溜飲が下がった私は、彼をおちょくるのを止めさっさと話し合いに戻る。

 

 というか、あいつは犬か猫か。感情をダイレクトにあの尻尾が伝えている。

 

 ちょっとかわいいと思ったのは内緒である。

 

「別にいいよ。気にしてないし。それよりも、作戦会議の続きをしよう」

 

「そう、でもゴメンね」

 

「だから良いって。で、戻るけど。やっぱ私が不意打ちで一人を確保し、その後私の存在を気にしたら、もう自由に尾白君と戦うのは難しいし、核を確保するために強引な手には移れないと思うんだ。この時点で私たちは時間稼ぎでも勝ちなのだから、焦らず戦えばいいことになる。つまり、私はこの部屋で待ち構えるのが一番だと思う。核の存在と尾白君の存在を同時に見て、意識がそれないはずもないし、不意を突くならそれが一番だと思うんだどう?」

 

「それでいいと思う」

 

 あっちなみにだけど、今回の授業はヴィランが室内に仕掛けた時限核爆弾をヒーローが阻止するという想定の下行われるのだ。如何にもオールマイトらしいアメリカンな事態だ。画風が一人違うだけはある。

 

 だからこそ、ヒーロー側は敵戦力全ての無力化か、核の確保が勝利条件で、ヴィラン側はヒーローの撃破、または核を時間内に守り切ることが勝利条件だ。

 

 ちなみに私の作戦は敵側の個性を知らないものとして立てております。

 

 ここで知らないはずの彼らの個性を話すのは明らかにまずいし、彼らに勝つのも目立ってまずいからね。

 

 そして私は原作通りにコスチュームを脱ぐのだが、見えないと言っても恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

 尾白くんが気まずそうに目をそむけるという対応に少しだけだが、彼への高感度がアップした気がする。

 

 まあ、そもそも値はプラスではないので上がっても無意味だし、コスチュームも靴と手袋だけという露出狂真っ青な姿なので今更過ぎる。

 

 なら今更何を恥ずかしがっているんだと思うかもしれないが、それはそれ、これはこれである。やっぱ何もつけていないのは人間として恥ずかしいのだ。

 

 ………なんか自分の感覚が徐々に透明人間の思考に移っている気がする。そう、これは段階を経て生物を環境にならす手法の様な………………。

 

 そんなことをつらつらと考え、自分のたどり着く未来を思い浮かべ、シャレにならんとかんじていた私だが、脱いだコスチュームを持ち、ふと気づく。

 

 あれ?このコスチュームどこに置けばいいんだろう?

 

 床に置けば氷漬けにされるが、けれども、どうせすぐ負けるからと言って、手に持ったままだと敵に居場所がばれるから透明人間としては選択肢に入らない。

 

 私はうんうんと唸りながら、そのコスチュームを胸に抱いて考えこんでいた。

 

「あの葉隠さん?もう始まっているんだけれど」

 

「………………」

 

「葉隠さん?」

 

 尾白君の声が突然聞こえてきた私はばっとそちらを向き、私の位置を私の持つコスチュームだけで判断したのだろうけど、距離が物凄く近い。

 

「きゃ!」

 

 驚きのあまり後ろにジャンプして距離を保ったのだ。

 

 そう、後ろにジャンプしてしまったのだ。開始直後に。

 

「うわ!何だこれ、足が動かせない」

 

「へ?ってちょっと待って!」

 

 原作では二人とも氷に足を捕らわれるはずなのに私は無事だった。

 

 そしてつるつるな地面に足を突き転がりコスチュームをバラまいてしまう。

 

「いたたた」

 

「葉隠さんもしかして氷に捕まっていないのかな」

 

「あっ!避けちゃった!」

 

「よし。僕は動けないけど、そんな僕の姿を見て敵は油断するはず。葉隠さん申し訳ないけど後は任せたよ」

 

 それでも貴様は男かぁぁぁぁぁ!

 

 どうする。転んで悲鳴を上げたせいで捕まってないこともバレたし、こうなると原作もくそもないぞ。

 

 ふざけるな!私が何をしたよ言うんだ。こんなのあんまりだ。

 

 核の傍でうなだれている私だったが、その耳に尾白以外の声が届く。

 

「無理して動かない方がいいぞ。足の裏がはがれて満足に戦えないだろうしな」

 

 声に反応して顔を上げるとそこにはイケメンがいた。

 

 イケメン氏ね!

 

 気づいたら私はイケメン君を拘束及び組み伏せていた。

 

 ………………。

 

 違うんです刑事さん!この手がっ、この手が悪いんです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう。私は悪くないもん!」

 

 そう、あれは事故だった。

 

 ほら!人は目の前に突然何か起きると体が反応して思いもよらない行動をとるなんてよく知られたこと。それは本人の意思によるところで故意ではない。つまり事故だ!

 

 ハイ論破!

 

 よし、これはもう問題ない。問題は事故が起きた際の応急措置がどれだけ迅速かだ。

 

 よーし。障子バッチコーイ!

 

「ヴィランチーム…WIIIIIN!」

 

 あれ?障子君は?あれ?どちらが勝ったって?

 

 ………………。

 

 私はこの後轟君が目覚め、尾白君の氷を溶かすまで動けなかった。

 

 ちなみに、私が期待していた障子君は私の動きが一切聞こえなくなり、警戒して一階から登ったため時間に間に合わなかったのと、彼は轟君の実力に気を抜いていた面があり、轟君がやられたという情報が入るまで音による情報収集を行っていなかったため、あの轟を倒した私の像をあまりに強く見過ぎたのも原因だろう。

 

 バカ騒ぎしてりゃあ良かった。

 

 講評でも、轟君の攻撃を避けたこと、その後の隠密性、奇襲性をとても高く評価されました。

 

 まあ、スパイですし!…………こう開き直れたらどれだけ気分がいいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後イケメン君に勝った影響か、女子のお友達が一気に増えた。

 

 わっ、ワーイ。ウッレシイナ~。

 

 モッテモテ。注目の的だ~。

 

 ………………。明日一人になれるだろうか………………。

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