ID.in Personality   作:内臓脂肪が多いガリノッポ

1 / 3
完全な自己満小説ですから、不快になったらすぐにブラウザバック推奨です。


古典的なまでのボーイズミーツガール

 流されたくない。自らの意思に従って生きていたい。そんな思いが芽生えたのは一体いつからだっただろう。

 

 僕は幼少期には完全なる自己を確立させていた。3歳のとき、僕は突然何の前触れもなく気付いたんだ。

 

 ーーーーーあぁ、僕は僕なんだ。

 

 その瞬間自分と周りの世界には、明確な境界線が生まれた。そして僕という存在は他を覚えたんだ。きっとそれが僕の起源。そこから僕は始まったのだろう。

 

 ある人は言った。人間は赤子の頃は親の行動を真似したり、言葉をオウム返ししたりと、周りの誰かしらに『流されて』いる。それを繰り返し、少しずつ自己というものを組み立てていく。そしてそれがアイデンティティとなる。つまりは他からの影響無しに自己は生まれない、と。

 

 けど僕はそれが嫌だった。それが無理というのはある程度理解はしているつもりだ。視界に人の姿が。耳に人の声が。それらが情報として入ってくる限り何かしらの影響を人はそこから受けている。故に人が一人で人になることはあり得ない。

 

 しかし、それが僕には堪らなく苦痛で仕方なかった。自分じゃない存在が、自分に染み込んでいく。それは自分の描いている絵に他人の手を入れられる様なものだ。それは自分の部屋の配置や家具を勝手に動かされるようなものだ。不快で、不快で仕方がない。

 

 そんな僕も、初めはきっと疑問を持っていただけだったように思う。どうして他人と同じことをしなければならないのだろう、と。

 

 けれど、そんな疑問を大人に問いかけたところで返ってくるのは怒りや、滞りだ。子供は親や周りの大人の言うことを聞いて情緒を学んでいくものだとも、あの人は言った。そんな一般論に疑問を投げかけた僕は随分と捻くれた幼少期を送り、周りから見ればたいそう問題児だったことだろう。

 

 

 

 親の懸命な教えにより、一応の常識を身につけた僕だったが、未だその呪いとも感じる自我の強さは変わらず、自分が自分であることに強い執着を覚えている。それが、今現在の高校生活に多大な影響を及ぼしているのだが、それを止めることは出来ないのである。我ながら難儀な性質だと理解はしている。だが、どうしようもなく欲求が内より湧き出てくるのだ。

 

 

 

「ーーーーこの問題、答えはaとbどっちだと思いますか。みなさんが合っていると思う方に、手を挙げてください。はい、aだと思う人〜。」

 

 数学の選択問題で先生がクラス全体へ答えを問うとき、このクラスのみんなは簡単な問題ならば手を挙げるのだが、難しい場合はまず周りを見るらしい。そして、頭の良い人が挙げる答え、または大多数が挙げている答えを選択する。人によってはそもそも手を挙げないこともあるようだが。

 

 僕はこの行為がとても嫌いだ。おっと、勘違いしないで欲しいのは僕が嫌いなのであって、この思想を他の人に押しつけるつもりは無いし、他の人がどう選択しようと問題は無い。単に僕が嫌いなだけなのだ。

 

 他の人の答えに肖ったり、選択を放棄する。それは何故か。要するに彼等は間違えるのが怖いんだ。間違えることで周りから揶揄われたり、馬鹿にされるのが嫌なんだ。僕もその気持ちは分かる。僕だって馬鹿にされるのは嫌いだし、失敗を揶揄われたら傷つく。けど、けれど、僕は思うんだ。

 

 ーーーーーーーーーそこに自分は在るのか。

 

 傷つくことから逃げるために、自分を否定されるのを防ぐために、それをしたとして果たしてそこに自己は在るのだろうか。いいや無い。その行動は人が火を怖がる様に、高所を怖がる様に、刃物を怖がる様に自分を守る行動に他ならない。そこに自己の証明は無く、在るのは本能だけだ。そんなことを続けていればいずれ人は自分を見失うだろう。痛みや恐怖から逃げるだけでは獣となんら変わらないだろう。僕はそうはなりたくなかった。

 

 だから、僕はこのとき手を誰よりも早く挙げた。膝を曲げること無く、手の平をしっかりと開きながら天に手を伸ばしたのだ。

 

「ーーーーえっと、bは2人ですか。それでは答えですが、正解は手を挙げた人数は少なかったbです。府露糸さんと、風車さんは良く引っ掛け問題に気づきましたね、これを初見で見抜けるのは凄いことですよ。」

 

 褒められるのは嫌いでは無い。認められるのは嬉しいことだし、自分の意思で起こした行動を褒められれば、より一層自己に自信が付く。

 

  ただ、人間というのは気に入らない奴が認められると頭にくるもので、この時嫌な視線が向けられるまでが一連の流れだ。こんなことばかり繰り返してきた所為で、僕はクラスから少し、いやかなり浮いている。それが辛くないと言えば嘘にはなるが、それでも自分を捨てるよりかはマシだった。

 

 そんな訳で僕、府露糸答也(ふろいと とうや)は順調に捻くれたまま、学園生活を謳歌していた。この物語はそんな阿呆な僕が遠回りばかりしながら歩む、そんなお話らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、答也。お前って奴はどうしてそう周りが反応すると分かっているのにやるんだ?やっぱお前ってバカ?」

 

「別にいいだろ?僕が好きでやってるんだから。自分の意見はしっかりと持っていたいんだよ。」

 

「それはそれで構わんがな、あんな自信満々に挙げなくてもいいとは思わんか?」

 

 昼放課、流石の僕も弁当を片手に雑談に勤しむのは他と同じだ。正面には、幼馴染でもありクラスメイトでもある榊原阿仁松(さかきばら あにまつ)が顔をしかめて此方を向いている。そう、午前の授業の僕の行動に物申しているのだ。

 

「むぅ、確かに態々他の人の目に付くような真似はやめたほうかいいのは僕も分かるけどさ、けど…」

 

 確かに自分の意志を出すのに、他の人を怒らせるようなことは、するべきじゃない。それはただのワガママになってしまう。しかしそれを知っているも、衝動的にやってしまうことが僕には多々ある。小さい頃からやっているある種のクセの様なものかもしれない。

 

「お前の気持ちも分からなくはないがな、寧ろそれだからお前っていう人間なのは俺も良く分かってる。しかしだな答也、もう少し自分を出しながら上手く生きてけよ。やっかみだって面倒だろうに。」

 

 彼は僕の性質にある程度理解を示してくれている。だからこそ長い付き合いになってるのだが、このお小言も同じくらいの間の付き合いだ。けれど、それに慣れている訳ではない。だから、聞くたびに少しムスっとしてしまう。

 

「やっかみなら阿仁松も同じようなものでしょ。主に男子からの。」

 

「……お前なぁ、それ言っちゃう?俺割と気にしてんだけど。」

 

 榊原阿仁松は学校の中でも、かなり有名だ。容姿端麗、成績優秀。運動神経は抜群で、人当たりも良い。特にその容姿は他に並ぶ者がない程のもので、女子から絶大な人気を誇っている。その為、男子からは妬み嫉みの数々が向けられている。

 

「けど、それをどうにかする気は無いんでしょ?」

 

「当たり前だ。目的と労力が釣り合わん。それなら受け入れた方がなんぼかマシだ。」

 

 彼は僕と違い現実主義者だ。損得計算がしっかりとできて人の感情の起伏も気付ける。僕からすればたいへん難しい行為を簡単にこなせる超人だ。問題点と言えば言葉遣いが見た目と合わないことくらいだろう。標準語も喋れるには喋れるのだが、デフォルトだと少し汚い話し方になるのだ。しかし、それが良い方向に働いて近づきやすい雰囲気になるので、問題でもないのかもしれない。

 

「それじゃあ阿仁松も僕と同じだね。」

 

 阿仁松からのお小言が痛くて、屁理屈を並べる。案外というか意外というか、僕はメンタルが弱いのだ。

 

「ったく、口だけは達者だよな、お前。まぁ、お前がそれで納得できてるなら良いんじゃないか?本当に納得できてるならな。」

 

 コーヒー牛乳のパックを片手に、どうでも良いやと言わんばかりの態度を取る阿仁松。あくまでお小言だから、彼も必要以上のことは言わない。友人としての忠告に留めてくれているのは、彼の優しさなのかもしれない。

 

 

 

 ……納得か。

 

 

 

「おっと、そろそろ昼放課も終わるぞ。次は体育か。」

 

 気が付けばもうすぐチャイムが鳴る時間になっていた。体感ではまだ余裕があると思っていたが、そうでもないらしい。

 

「跳び箱か、体育館だから間に合うね。」

 

「……跳び箱かぁ、俺嫌いなんだよなぁ。」

 

 まあ、その体格じゃね。

 

「オイ、今絶対俺の背丈のこと考えただろ!」

 

「いやいや、滅相も無い。」

 

 榊原阿仁松。先程述べた通り、彼は女子から絶大な人気を集めている。そう、その圧倒的なまでの美少年ともいうべき容姿に。

 

 身長146センチ、体重39キロ、サラサラの髪、メルヘンな世界から飛び出したかの様なスベスベで綺麗な童顔、小鳥のようなソプラノボイス。つまりは彼は学校のマスコットの様な存在なのである。女子からは抱きつかれ、持ち上げられ、頬ズリをされ、etc…

 

 それにより、男子からは恨み嫉み、つまりは嫉妬と羨まけしからんの意を向けられている訳である。……うん、まぁ、どんまいとしか言いようがないよね!別に男子からイジメを受けている訳じゃない、気にすることは無いさ!

 

「…………」

 

 無言で責めるような視線を向けられるが、こんなジト目すらも彼の容姿では可愛らしく見えてしまうのである。さて、こんな無駄話は辞めるとして、チャイムが鳴る前に早く体育館に行くとしよう。

 

 きーこーんかーんこーん。

 

 そう思うのと、チャイムが鳴るのは同時にだったように思う。オイ。

 

 

 ♢

 

 

 帰り道、部活がここ最近の事件で無しになり、そのまま帰ることになった生徒たちは、一斉に下校を開始していた。勿論僕も例に違わず帰路に着いている。ただし一人でだけど。

 

 僕個人としては、友人と話しながら帰るのも好きだが、一人で歩いて帰る方が好きだ。歩きながらその日の出来事を思い出して、反省したり、笑ったりする。そんな整理の時間が、僕みたいな奴には必要なんだ。

 

「……阿仁松の言う通りやっぱりあれは失敗だったなぁ。」

 

 自分の行動を客観的に見る、それは大切なことだ。しかし、人間は感情に流されそれを忘れがちだ。自分が正しいと思ったことでも、別の視点から見れば間違っていようにも感じられる。例え正論を話していたとしても、あくまでその是非を決めるのは受け取る側な為、そこで認識の齟齬が生じることもある。

 

 今日の僕の挙手の仕方を例にして考えてみよう。僕は明確な意思表示のつもりでも、客観的に観てみればそれはふざけているようにも思える。そう考えると、そもそも僕へと向けられた嫌な視線は、僕を非難するものだったのかもしれない。

 

 ほら、こう考えれば自分の行動の拙さが浮き彫りになる。

 

「あっちゃあ……」

 

 今日は後悔の日らしい。僕は割と感情屋だ。だからその場の感情に流され目的と手段が見合わなくなってしまう。そうなれば大失敗を起こすだけだ。それを理解しながらも、制御出来ず痛い目を見続けている訳だ。こんなことばかりで、我ながら呆れてしまう。

 

 帰り道の途中に見える川。なんとなく岸に寄ると、水面に僕の顔が浮かんでいるのが見えた。一見無表情に見えるそれは、よく見ると強張っていた。それに気がつき、自分自身を皮肉った笑みを浮かべる。それが水面に見えると、さらに顔が引きつる。何故なら、その笑みは口だけで、表情を伴っていなかったからだ。

 

 ああそうさ、要するに僕には余裕が無いのだ。焦っている。自分を持っていたいと、思いながらも自分を持てているのかが不安で仕方がない。だからそれが堪らなく怖い。一人になるとそれが良く分かる。

 

 唯我独尊に生きていけたらどれほど楽なことだろう。確かな自分を振りかざそうとしても、結局のところ半端者の僕は何もなせず、誰も納得させられない。きっと僕の姿を見る誰もが無意識に理解しているのだ。

 

 ーーーーーー「府露糸 答也は信用できない」と。

 

 自分すらも納得させられないのに、他人を納得させられることなど出来る筈も無い。中身のない物に価値を感じることはできないのだ。

 

 夕日に身体を染められながら、帰り道を歩く僕は何だか自分がかわいそうな奴に思えてきた。

 

 本当は、分かっている。自分のどこがアンバランスで、何故こんなにも焦っているのか。そんなことぐらい既に分かっている。

 

 僕には、僕にはーーーーーー

 

 

 進む歩幅が心なしか狭くなった気がした。

 

 

 ♢

 

 

 夜。街灯により明るくも暗くも感じる夜。何か目的があるわけでもないが、僕はそこに身を置いていた。2月も終わりに近づいているとはいえ、未だ肌寒さが残っており、外気に晒された手が少し冷たかった。

 

 下校時の感傷的気分を引きずり、どうにも寝つけなくなった僕は、気がつけば外に出ていた。自分に呆れながらも、変に引きずった感傷をどうにもできず、気分転換に外へ出たのである。

 

 都会とは言えなくとも、夜でも人通りが絶えない程度には栄えているこの街、湯具市。山に隣接しているが故に、高い建築物からなる有名企業と温泉などの観光地のどちらも持つこの街では、夜に出歩いても変に目立つことは無い。それが今も僕には都合が良かった。

 

 行き先も無く歩いていると、コンビニが目に付いた。寒さから来る澄んだ空気に、その明かりはとても目立った。

 

 特に目的はない筈なのに、僕は誘われるように店内に向かう。自動ドアは、他と変わりなく僕を招き入れた。

 

 明るいところに誘われるのは、虫も人も同じのようで店内には比較的多くの人がいた。どのコーナーにも必ず一人は人がいる。そう、目的なんて無い。けど光があればそこに言葉にできない希望を持って、皆が此処に来るのだろう。

 

 

 

「ーーーー153円になります。」

 

 財布から小銭を出して、飲み物を買った。そしてそのまま店の外に出る。

 

 不意に振り返ると店の明るい外装が見える。赤、黄、緑の三色が白に重なり、ポップな明るさとフランクさを感じさせる。夜の黒にその外装はとても目立った。

 

『やはり、お客様を呼ぶには明るく活気のあるカラーリングが大切なんです。』

 

 そんなセリフをテレビで聴いた記憶がある。だとしたら僕はまんまとそれに嵌められた訳である。

 

「ありがとうございました」

 

 自動ドアが閉まる直前に、そんな声が聞こえた。最早機械が言っているのではないかと思えるほど、心の通っていない定型文だった。その声を背に、僕はその場を後にした。ーーーーなんだかとてもむしゃくしゃした気分になった。

 

 

 

 歩いた。家へと足を向ける訳でもなく、ひたすら何も考えず足を動かした。外に出てある程度の時間は過ぎたように思う。けれど一向に家へと戻る気は起きなかった。進み続けると、街が稼働する音が小さくなってゆき、段々と聴こえる音が足音だけになるのを感じた。

 

 染まる。視界が段々と暗くなり、黒に染まっていく。街の中心から遠ざかる程、光は届きにくくなり、視覚の情報が無くなっていく。だからだろうか、妙に耳が敏感になり足音が反響する音がよく聞こえる。それはメトロノームの様に、繰り返し鳴り響き僕の意識を削いでいった。

 

 

 

 

 

 ーーーー気がつけば暗い路地裏に僕はいた。道は狭く、とても広い間隔で連なっている街灯が先を薄暗く照らし、なんだかとてもじめじめした空気をしていた。いつの間にやらひょんな所に辿りついていたようだ。けれど、することは変わらない。気の済むまで歩き続けるだけだ。僕は再び足を前に進める。

 

 しかし、僕はものの数秒で足を止めることになった。何故ならその先に道は無かったからだ。前には壁があり道は途切れている。壁を中を通り抜けられる超人でもなければ、この先は進めないだろう。

 

 だが、例え僕がそれが出来る超人であっても、その先へは進めなかっただろう。何故なら、何故ならーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ーーーーふぇ?」

 

 そう、女の子が地面に寝そべっていたからだ。驚きの余り思わず変な声が出る。

 

 二度見をした。我が目を疑った。目をこすり、目を見開いて見直す。だが、見える光景は変わることはなかった。その娘の腰まで伸びる所々跳ねた髪、少し色の薄い肌が、数メートル離れていてもとても特徴的に見えた。服は簡素なものだったが、髪にある青いリボンが可愛らしさを引き立てていた。とどのつまり、美少女である。

 

 それを前に僕は、

 

「ーーーー親方、暗闇から女の子が。」

 

 思わず現実逃避する程度には、僕はビックリしていたらしい。

 

 




府露糸答也:一応主人公。いわゆる頭でっかっち。変に頭が回り変に頑固な、一番集団に入れない典型的な奴。今作はコイツの成長を描く予定。

榊原阿二松:答也の幼馴染。みんなが大好きな男の娘。口調は見た目と裏腹に少しこわもて。一応レギュラー。

文章とか変だったらぜひとも意見がほしいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。