IS学園の男性教員   作:勝間 おとう党

16 / 16
なぜだろう
最近この話しを書くのが億劫になってきた

しかしエタりも、打ち切りもするつもりはないです


第9話 懐古

   夢をみている

 

 蒼天に照らされた草木

 摩耗した記憶に朧気ながら存在する故郷

 誰1人として人は存在し無い

 

 そこを独り歩く

 

 石で積み上げられた階段を登り

 青々と茂った山道を巡り

 古ぼけた道場のわきを通り過ぎ

 社をくぐり天を仰ぐ

 

 財布に入っていた5円玉を2枚賽銭箱に投げ

 内裏を立て掛けてあった箒で掃き

 お御籤を引いてみる

 

 結果は小吉

 待ち人    すでに居る

 失せ物    あり。目を離すな

 賭け事    負ける。控えよ

 探し物    なし

 争い事    多い。自重せよ

 恋愛     成就せず

 

 燃やそうと思ってジッポを探したが無い

 仕方が無いので近くの木の枝に結ぶ

 

 視界の右端で子供が走り抜けるのを捉えた

 釣られて走り去った方を向くと、そこにはくたびれた蔵が鎮座していた

 

 一刻も早く向かいたい

 そんな感情に塗り潰される

 そこに何か大切なものがあるような気がする

 

 はやる気持ちを押さえつけ進む。歩む

 しかし一向に辿り着けない

 とうとう我慢出来ずに駆け出した

 

 しかし。なのに。されど。何故か

 近づけば近づく程に蔵が遠ざかる

 距離が全く縮まら無い

 手を伸ばすが虚空しかつかめ無い

 声を荒げた 

 しかし慟哭をあげたはずが何も聞こえない

 もう1度吐こうとも上手くいかない

 奥歯が軋む程に強く食いしばってしまう

 

 

 ただただ無性に泣きたくなった

 

 

 

 

 

 ○ △ □ ×

 

 

 

 

 

 場面が移り変わる

 

 森の中、タバコを咥えて岩に腰かけていた

 IS学園の裏手にある森だろう

 

 反対の手に持っていた板チョコを包んであった銀紙で作ったであろう即席の灰皿にタバコを入れ握り潰す

 夢だとわかっているがポイ捨てせずにポケットに突っ込んで建物がある方に向かった

 

 下駄箱から入り職員室の前を抜け

 1年生から3年生までの階を順にまわる

 最後に生徒会室に邪魔をして何故か置いてある冷蔵庫を漁り甘いものを拝借した

 

 ケーキを片手に次は学生寮へと歩みを進める

 

 まず学寮長室に向かい扉を開く

 あまり片付けがいきわたっていない部屋だった

 足を踏み入れようとしたが何か見えない壁のようなものに邪魔をされる

 夢の限界を認識した

 

 踵を返しとある部屋に行く

 いつの間にか握っていた鍵を挿し入れ回す

 がちゃんと音を立ててロックが外される

 鍵を抜きそのまま開けようと思ったが脳裏に嫌な予感が走りドアノブを回そうとした手が止まった

 しかし止まっていても仕方が無いのでゆっくりと慎重に扉を開ける

 だが予感は外れて開けても何も起こら無かった

 

 部屋に入り最初に目についたのは机に並べてあった料理

 出来立てなのか湯気があがる青椒肉絲

 備え付けてあるキッチンに顔を向けたが誰も居ない

 

 箸を持ち青椒肉絲を口に運ぶ

 味はしない

 

 もとより夢だとわかっていた

 しかし先程食べたケーキはちゃんと味はした

 だからこれにも味があるものだと思った

 

 しかし箸が止まらない

 味がしない料理を食べても文字通り味気無いものだし、何より時間の無駄だ

 なのに箸が進み続ける

 ついには完食して箸を置き、つぶやいた

 

 美味しかった

 

 

 

 

 

 

 ○ △ □ ×

 

 

 

 

 

 視界が歪んだと思ったらまた違う場所に立っていた

 

 豪華絢爛に飾り付けられた部屋

 ホテルの部屋。それもVIPルーム

 有名なクラシックが流れている

 

 何故ここに立っているか

 道を踏み外した場所だからか

 それとも彼女に初めて会った場所だからか

 

 あぁ。でも…………

 いや、止めよう

 

 浮かんでは消える想像を振り払い

 唯一ある扉をくぐり抜ける

 

 そこは雅やかだった部屋とは打って変わり

 配線がいたる所に延びる薄暗い空間だった

 

 そうか。ここはやっぱり

 

 電気を点けようと壁を手で探る

 指先がスイッチに触れ、カチッと押すが反応が無い

 カチッカチッと連続で押してみても一向に明るくなら無いので諦め、スマホを取り出そうとポケットに手をまわす

 しかしポケットにスマホが無い

 よくよく考えるとこの時期の私はスマホなんて必要無いものを持っていなかった事を思い出した

 

 代わりになるものと体を調べると、上着の裏ポケットにライターが入ってたのでそれを点ける

 しかし所詮は100円ライター

 明るさなんて微々たるものだったが、無いよりましと納得して先を進む

 

 床に落ちているのは菓子パンの袋、潰れたペットボトル、足跡が付いた紙、硝子の破片、折れた鉄片、溢れた薬品、誰かの血痕、肉片

 陰気な実験の後のような印象を植え付ける

 

 ダンボールやら紙やら薬品やら

 とにかく燃えそうなものを部屋いっぱいに敷き詰める

 最後にライターを部屋の真ん中に投げ捨てる

 燃え上がるのを確認し、入って来た扉とは別の扉から逃げた

 

 逃げた扉の先は曇天の空

 本来は青く輝いているであろう海が天気のせいで沈んでいる

 そんな風景が見渡せる森と隣接した開いた崖の上

 出て来たはずの扉はもう無い

 

 森の中へ進む

 しかし1歩踏み入れたところで入るのを躊躇する

 今はまだ早い

 また此処に来れるとは限らないが今回はやめる

 完全に逃げの姿勢

 現実逃避

 

 体をまさぐる

 銃かなにか持っているだろうと思っていたけどなにも無い

 仕方が無いので崖の方に向かって走る

 勢いよく跳ぶと失敗するかもしれ無いので直前でスピードを落とす

 そして投身自殺

 全身に風を受ける

 胃がきゅっと縮み本能が恐怖を警告する

 アドレナリンの分泌量が増えたからかスローモーションになる落下

 その最中に重要なことを思い出す

 

 別に死ぬ必要は無かった

 

 迫りくる海面からのぞく岩肌を視界におさめ

 ため息を吐きながら目をつぶった

 

 

 

 

 

 ○ △ □ ×

 

 

 

 

 

 目を覚ます

 白い天井。おそらく保健室だろう

 

 今は何時だ

 窓から日が差し込んでいるという事は少なくとも日中だろうか

 

「うっ」

 

 起き上がろうと体をよじると全身を襲う痛みのあまりに声が漏れてしまう

 久々に受けるGTシステムの反動

 痛みを無視して無理やり立ち上がるが上手く歩けない

 何か使えるものがないか部屋を見渡すと車椅子を見つけた

 壁に手を突き、ゆっくりと体を引きずるように進む

 5mも無いほんの少しの距離だったが額に汗が出来ている

 車椅子が電動で助かった

 車輪を腕で回す人力タイプだったら平時でもつらいのに今の状態なら完璧に動かせ無かった

 

 保健室から廊下に出る

 空気が冷え込んでいて人気(ひとけ)がまったくない

 朝の6時かそのぐらいだろう

 今の時間人が居るとなると食堂か用務員室か

 しかし食堂に行っても居るのは調理師の人だから困らせるだけだし、用務員室は轡木さんが学園内の清掃に出ていたら意味がない

 

 うーん……………………………

 いや、いいや

 取り敢えずは用務員室に行こう

 

ウィーン………

 

コン、コン、コン、コン

 

「轡木さん。石見です」

 

 4回のノックと声をかける

 しかし反応はない

 無断で入るのは失礼だと思ったので保健室に戻ることにした

 

「あっ!石見先生!」

 

 保健室に戻ると会長と従者の娘が居た

 

「急にいなくなったから心配しましたよ」

 

「あぁ。それはすみません会長」

 

 2人はぽかんとした顔をする

 

「どうしたんですか」

 

「……いえ、なんでもないわ。そんなことより車椅子なんか乗ってどうかしたの」

 

「思う通りに体が動かないだけですよ。それより現状を教えてもらって良いですか。少し記憶が飛んでしまって」

 

 

 会長から話しを聞かされた

 乱入してきたISを一夏達が倒したこと

 僕が救った生徒は無事だったこと

 話しを聞こうと僕の整備室に行ったら僕が倒れていたこと

 簡単な身体検査をしたが異常はないらしい

 

「それよりビックリしたわよ。中継室から飛び降りたりするんだもの」

 

 会長は驚愕!と書かれた扇子を顔の前で開く

 僕はだからこのザマだと自嘲する

 

 あぁ。しかし下手い

 眠くなってきた。瞼が重い

 

「もしかして眠いの」

 

 朦朧とする意識の中、少しと返事する

 

「運ぶから寝てもいいわよ」

 

 会長の言葉にありがとうございますと言い残し、意識を手放した

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。