突然だが、EDF兵士諸君は自分の使用している武器がどのようにして製造されているかご存じだろうか。
基本的に新しいものを作成するときには、まず技術者が「こういうものを作りたいです」と上に掛け合ってGOサインが出るもの、現場が「こういうものが必要です作ってください」と上に掛け合ってGOサインが出るもの、そして上から「こういうものを作れ」とGOサインが叩きつけられるものがある。
そうして企画立案、必要性の確認、投入できる技術の有無や研究開発、デザインや戦略様々な問題を乗り越えてEDF兵士諸君に配備される武器というものは製造されている。
申請が通ってマガジンの装弾数が改善されたこともあるだろう。技術者が開発した威力を上げる機構を組み込むためにリロードの作業が煩雑になったこともあるだろう。
なんでこんなものを作ったのかと疑問に思えるような、ネタとしか言いようのない危険物がトラックに満載されて運び込まれた経験も一度や二度ではないはずだ。
無論のことながら立案についてはこの三つ以外の例外も存在するが、今は割愛しよう。大事なのは「技術者も現場も申請しないような馬鹿みたいなものでも上からの命令で研究しなければならない場合がある」という点だ。
残念ながら、非ッ常に残念ながら、そんなトンデモ命令にクソ真面目な理由を付けて承認印を求めてしまう上司はこの世界に確かに存在し、そういう奴に限って変に影響力があるものだから承認されてしまうという悲しい事柄が世には溢れているのだ。
俺が前に勤めていた基地の地下にもその権化のようなものがあった。思い出したくも無い、その名前を明言することは避けるがデカくて黄色く何よりデカい、クレーンとは名ばかりのアンチキショウだ。保管と銘打っている以上どれだけ長い期間を置いても確実に来る保守点検、罰ゲームと化した清掃業務……ああ思い出したくも無い。
そんなバルg……ギガンティック・アンローダーなるものも元々は大真面目に企画が立てられ予算が組まれて建造されたモノの一つであり、つまりはあんな馬鹿なものを作ろうとする大馬鹿者が存在することの証明で、何より現場の反対を無視して押し通せるだけの権力をもっている者がいるという証拠な訳で。
そんな馬鹿が、たった一つのオモチャを作って満足する訳がないのである。
そう、EDF兵士に配備されたネタ装備なんかまだまだマシなものであり!
一般に配備なんて出来ないものはその何倍も存在し!
されど!ああされど!
それをクソ真面目に性能評価「させられる」側の人間もいるのである!!
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最初は「あぁいつもの無茶振りが来たな」と思っていた。一時を耐え忍べばいつも通り性能評価欄に「評価外」を書き殴ってダメ出しを書けるだけ書き、問題点を怒鳴りつけて試作分を専用倉庫に封印するだけの簡単なお仕事だと思っていたとも。
そう、あの蟲共が押し寄せてくるまでは。
一式のお値段が最新鋭のコンバットフレームを上回るだけあって、性能の面では非常に優秀だったソレを担いで隊舎に歩いている最中にあいつらはやってきた。連中は瞬く間に基地周辺のデモ隊を食い荒らし、その巨体で悠々とフェンスを乗り越えて襲い掛かってきた。押っ取り刀で駆けつけた守備隊の射撃をものともしない物量でもって津波と押し寄せ、銃撃で少し抉れたその頭を上げ牙を開き、ポーカーの滅法弱い戦友目掛けて駆け出して……
「いや、何しとんお前」
俺の押し付けたグローレイピア……水平収束型ゼロレンジ・プラズマアーク銃の暴威の前になすすべなく蒸発した。
人間の認識できる限界を上回る連射速度によって繰り出された刃の嵐は目の前の銀色の蟻だけでなく、その向こうにいた個体をミンチとし、さらに向こうにいた個体を細切れにして、そのまた向こうにいた個体を蜂の巣にしたところで消滅する。
そのまま右から左へゆっくりと腕を振り、押し寄せていた蟻の群れに大穴を開けてから武器を交換、上下に長く伸び、十字を描くそのフォルムの銃を尚押し寄せんとする蟻の群れに向けて。
「キモっ。ひくわーマジひくわー……何で蟻がキーキー鳴くんやっての」
トリガー。背中の巨大すぎるプラズマコアから超高速で供給されるエネルギーを、その白い砲身が雷撃に変換し解放する。瞬く間に粉砕され爆発し、炭屑となっていく蟻の群れに辟易しながら砲身をあちらこちらの蟻へ向ける。ライトニング・ボウRARはその性能を如何なく発揮し、数分で全ての襲撃者を生ゴミへと変えた。
「うへー。何だよコレ映画の撮影か?……にしてはデモ隊のみなさんもれなくご飯になっちゃってるし……おーい、誰かー!通信機持ってないか!?現状が知りたい!」
発砲の前にやるべき確認をすっ飛ばして虐殺をするようなならず者がEDFにはいるらしい。怖いね。
↑↓↑↓LR
『K-08からM-23の区域で戦闘が可能なものは直ちに装備を整えて出撃しろ!周辺基地には奇襲に対応できず制圧されたものもある!今まさに攻撃を受けている基地も、戦況が劣勢の基地もだ!準備が一秒遅れるたびに一人死ぬものと思え!!』
『メーデー!メーデー!謎の敵の攻撃を受けている!現在コンバットフレームの起動準備中!どうにかして時間を稼げないか!!』
『嫌、嫌よぉっ!あんなバケモノに食い殺されるなんて!』
『誰か助けてくれー!敵が、敵がぁっ!!』
「いや、だから場所言えよ」
救急車を呼ぶ時は何より先に場所を伝えなきゃダメなんだってさ、理由は場所が分かった時点で出動できるから。状況とか伝えたり処置手順聞くのは救急車の移動中に出来るから何よりもまず場所を、ってことらしいね。
何が言いたいのかというと、『誰もかれもがタスケテって叫ぶばかりでどこ行けばいいのか分かりません』……ウチの基地も俺が規格外の完全装備整えてたから迅速に対処できただけで本隊まだ出撃できてないし。
行き先未定で動けないから装備のチェックしかやる事がないでござるー。リロード、持ち替え、リロード、持ち替え、リロード……ってこいつはそもそもまだ使ってない。メインウイング、サイドスラスター、メインコア、サブコア問題なーし……こんなゴテゴテと最先端技術ぶっこむから値段で経理が胃に穴開けるんだよ。それで助かった俺が言う事じゃねぇけど!
『……ザザッ、ガッ……救援要請のチャンネルはこれか!?助けてくれ!こちら184基地所属ウイングダイバー隊の橘だ!基地司令と守備隊長が揃って戦死して命令系統が機能していない!誰でもいいから来てくれ、周辺地区の民間人も居るんだ、誰か!!』
……おー。ようやくマトモな位置情報が。おっちゃん、出してくれ。
「おっさんって言ってたら殴る所だよ。そら、ちゃんと座ってろよノーブルの加速を舐めてると舌を噛むぞ忠告はしたぞー」
ほいほーい。にしても輸送隊だけ出撃準備整えるの早すぎない?俺がここのを殲滅終わるチョイ前くらいにはエンジン始動してたよな?
「離陸!」
あガッ!
^^^ω^^^
結論から言おう。半分だけ間に合った。
着いた時にはパトロールのレンジャー隊とコンバットフレーム隊は全滅してて、地下シェルターに避難した民間人を護る為に入り口でウイングダイバー達が長篠の戦いやってた。
しかし何をトチ狂ったか(そこの基本装備なんだけど)全員レイピアとパワーランス装備だったもんだから致命的な射程不足で、相手の牙の届くギリギリの所での迎撃戦を十数分強いられてたそうな。そりゃ集中線つくくらい怖いわ……三人くらい壊れかけてたし。
「しかし……驚きました。ウイングダイバーの救援かと思ったらいきなり男性の声がするんですから」
「ぅん?」
文句はこんなもんを提案したお上に言ってくれ……あんたらの空がどんなもんかってのを知りたがったアホな男の竹とんぼだよ。
「噂には聞いていたんですがね。何でもコンバットフレームより値が張るとか」
「ああ」
同じ価格かけるならその分のコストで同数のコンバットフレーム作った方が火力も使える人数も多いって気付かなかったのかと声を大にして言いたいよな。要求される筋力がフェンサークラスのウイングダイバーってどの層をターゲットにしてるんだよって話な。
「……クールなんですね。あんなに激しく戦いながら口数はこんなに少ないの、意外です」
舌噛んだからね。碌に喋れねぇ。
Trrrr Trrrr Trrrr
「失礼、通信です……はい、こちら184基地ウイングダイバー隊」
『繋がったか!連絡が遅れてすまない、こちらはEDF総司令部だ。そちらの状況は!?』
ご丁寧にスピーカーモードにしてくれる。通信先は多分さっきの行き先言わない人だ。
「こちらは壊滅状態です……幸い救援が間に合い民間人への犠牲だけは抑えられましたが。残存兵力はウイングダイバー隊と、極少数のエアレイダー隊のみです。基地の放棄を具申します」
『クッ……やむをえないな。その救援というのも気になるが今は急ぎだ、至急民間人を連れて近隣の基地へ合流せよ!その救援とやらにも付き添ってもらえ!おいそこの救援とやら、聞こえているか?可能ならばお前の来た区画まで民間人を護衛してやってくれ!異論はあるか?』
いや、そんなもんあるに決まってるやん何をいきなり……あガッ。舌が痛い……喋れねぇ!
『……異論はないようだな。よし!では任せたぞ!通信終了!』
いや、ちょ、ま、ぁあぁ……
「救援に来て下さった上に護衛まで……本当にありがとうございます。さぁ行きましょう!見た所装備のメンテナンスの大部分はウイングダイバーと共通ですよね?であれば輸送する荷物の量が少なくて済みます……あ、鹿島と朝倉にも連絡しないと……では失礼します!」
……行っちゃったよ。
まぁ、この男性用ウイングアーマー「ヤタガラス」があればちょっとの護衛なら勤まるだろう。蟻の群れをどこのアホどもが送り付けてきたのかは知らんが、あれならモノの数じゃない。精々試作武器群のマトになってもらおう。
そんな、甘い事を考えていた。
==//==//==
こうして、俺の長い戦いが始まった。
ある時はその種類を増やす侵略生物を撃退し。
ある時はウイングダイバーだけだったら補給物資が単純で良いなんて理由でヤタガラス以外の装備補充を寄越さない補給部隊に苦情を申し入れ。
ある時はエイリアンの首を的確に飛ばし。
ある時はそれだけの戦果上げてるなら下手な部隊の再編なんてしない方が良いよななんて理由でこの部隊から離れさせてくれない司令部に苦情を申し入れ。
ある時は更に種類を増やしバリエーション豊富になった侵略生物群を粉砕し。
ある時は女の園で繰り広げられるドロドロとした戦いから必死に目をそらし。
ある時はどう見ても一昔前の宇宙人そのままの姿の巨人の首を集中砲火で飛ばし。
ある時は部隊の黒一点だからかやたら与えられる味見やプレゼントの山という名のカロリーを筋肉へと錬成し。
ある時はマザーシップを撃墜し。
ある時はいつの間にかお守り代わりにとすり替えられているヤタガラスのプラズマコアを再調整し。
ある時はバケモノみたいな動きをするレンジャーの男と協力してなんか銀色の人の首を飛ばし。
そしてまたある時は、『なんかいいデータ採れてるみたいだし、戦いは一旦終息したけどそのままその部隊でデータ収集、シクヨロでぇ~っス!』なんてふざけたことをぬかすEDF技術部に苦情を申し入れる。
そんな俺の。
まさかこんな女の園の隅っこに敷かれた針の筵で過ごす事になるとは思ってもみなかった、長い長い、ある意味孤独な戦いが……
メインウイングに希少鉱石を用いた特殊合金で強度をアップ!材料費が3倍にアップ!
コアの出力を上げる為に採算度外視のパーツ構成で材料費・製造費用が6倍にアップ!
体重を無理矢理飛ばすためのスラスターを腰に増設!メインウイング2基分のアップ!
プラズマ動力源を持ち歩きするために要求される筋力がアップ!
そんだけ増設したら今度はペイロードがアップ!→銃3挺持てるように!
そしたらまた要求される筋力がアップ!
……みたいなのを繰り返したら出来た決戦兵器。
元は「レンジャーにプラズマコア2個持たせて銃装備させたらそれだけで最強じゃね?」って発想から生まれた小話です。
実際あったらぶっ壊れなんでね、ここで投下させて頂きますね。へへへ。