短編日刊ランキング乗っててテンション上がったので投稿。
3話も書くなら連載にしとけば良かったぜ……これじゃ目につくランキングに乗るのなんか不可能じゃないか!
「おのれ司令部」
ライトニング・ボウRARが唸りを上げて雷撃を吐き出す。蟻は死ぬ。
「おのれ技術部!」
グローレイピアが輝き、全ての怪物を俺の胸の高さでだるま落としにする。赤蟻は死ぬ。
「オ・ノーレ経理部ゥ!!」
プラズマ・ラピッドキャノンを撃つ。空中のドローンは汚ねぇ花火になる。
「何が再編成の時間が無いだ!なーにが戦闘データの取得だぁ!ぬゎあーにが輸送の手間と経費削減どぅぁあ!!毎回毎回理由を付けてもう三週間だぞ!さ・ん・しゅ・う・か・ん!!そんだけありゃ何ができると思ってるんだ!!」
やり場のある怒りを目の前の巨大生物の集団に叩きつける。やり場の無い怒りではない……だってこいつらが休む暇なく来てる所為でこんな事態になってるんだし。そもそもこんな状況に陥ったのもこいつらが勝手に押し寄せてきたからだし。俺は正しき怒りを胸に抱いてるんだし!
最初の一週間はひたすらに混乱を極めた。各地に投下される巨大な蟲の群れ、ミサイルや榴弾砲をものともしない金色のUFO、後手後手の戦況、救援要請に駆けつけては敵を薙ぎ倒し、駆けつけては薙ぎ倒す、行きつく間もない出撃に何かを考える余裕も無い……ある意味あの時が一番マシだった。
二週間目に突入し、戦況はある程度の安定を見せた……端的に言えばEDFの基地ごとの防衛範囲が自然に分けられ、無理な長距離出撃や装備面での混乱が収まった事で整然と戦うことが出来るようになった。出撃はひっきりなしのままだったが、ここでようやく周りを見渡す余裕が出来て来た。気が緩んで負傷者が一気に増えたのもここだったので、装備の点検に右往左往してその視線はまだ散らばってはいた。
そして三週間目。混乱が収束し、現状に慣れ、戦闘に集中しきっていた意識が、安全に他に向けられるようになってからソレは発生した。女性のみのウイングダイバー隊において、ある種当然の疑問である。
はて、今まで自分たちはどのようにこの存在と接して来ていたのだろうか?と。
一度疑問に思ってしまえばそこからは早い。態度はよそよそしくなり、誰が狙っているという訳でもないのに声を掛けようとすると無言の牽制合戦、されている側からすれば丸わかりの「(アンタ声かけなさいよ!今朝気合入れた準備してたじゃない)」「(いや、ここはあなたの方が適任でしょ!いつもの合コンで女子力アピールした武勇伝ここで実践してよね!)」「ちくわ大明神」「(じゃァ私が……声、かけちゃおうかしらァ?)」「(ダメよ……それは何かダメなの!)」「「「誰だ今の」」」という妙な連携による重苦しい空気の誕生だ。なまじ美人の集団なだけにコレをやられたときの精神的苦痛たるや。
端的に言おう。胃に穴が開く。
「三週間あればなぁ!新入社員だって仕事を覚え……ないな。週間少年誌のバトルの一つや二つ……終わらない。RPGだってなぁ……うーん、俺はやりこみ派だし三週間だと一つ目のメインシナリオ終わるかどうかか?」
あれ、三週間って意外と短い?
yyyy/mm/dd
危うく司令部の運営に理解を示す所だった。危ない……これが孔明の罠か!
「同人一冊書き上がるじゃん。三週間は短いかと思ったけどそんな事はなかった」
「この激戦を短いとか言われたら溜まったものじゃないんですが」
「いいから出撃ですよ、サイレンさっきから鳴りっぱなしなんですから準備行ってください。私もこの牛乳飲み終えたらすぐに行きますので」
あっちから話しかけてこないのにこっちの呟きには即座に入るツッコミ。俺が会話に混じろうとしたら蜘蛛の子を散らすように逃げていくのにね。ふしぎ。……自分で言って自分で凹むのやめようよ、俺。
出撃準備の為にPDAを取り出し、メンテナンスページを開いて兵装の調整を指示する。ここに指示を出したら武器の選択から取り付けまでくらいの、ある程度の整備をやっておいてくれるのだ。
「で?次の戦場はどこなんだよ」
「此処から北西15kmの市街地っすねー。現地まではグレイプ4両で、飛来しつつあるテレポーションシップから投下されるであろう巨大生物を手早く駆除しろ、ってコトらしいっす」
「今回の出撃は4分隊だけか。あっちに落としこっちに落とし、宇宙人って暇だよな」
「むしろ侵略に勤めてる辺りどこぞのケロケロンな宇宙人よりよっぽど勤勉な気がするっす」
「それもそうか」
今回の敵はまだ投下されてないから何が出てくるかは全くわからない。銀の蟻には中距離射撃武器で近付く前に纏めて撃破が有効で、赤蟻は噛み付きしかしてこないからパワーのある近距離武器が良い。蜘蛛は糸の投射してくるから遠いうちに遠距離武器で何もさせずに処分が望ましい……
「まぁぶっちゃけ遠距離武器で何もさせない内に全部撃ち抜いちゃうのが一番安全で楽なんだけどな」
「何の話っす?」
「今回持っていく武器の話」
「あー」
相手の射程に合わせてやるなんて真似は馬鹿のする事だが、残念ながら武器には有効射程というものが存在し、それが伸びるにつれてエネルギー効率や破壊力はどんどん落ちていく。つまるところ、相手の射程より少し遠い所からパワーを発揮できる武器で、相手の射程まで接近されるまでの間に最大火力で倒してしまえるのが、現実では一番の理想である訳だ。
一般的なウイングダイバーはその重量の関係上、持ち込みが可能な武装は二つまでである。ここに遠距離射撃武器を入れるのか、近距離武器を入れるのか、はたまたプラズマか、ホーミング兵器か……持ち込むものを間違えれば何もできず、全員で異なる武器を持てば有効射程の関係で何もできない者が生まれる。この辺りをどう調整するのかが非常に難しい。
その辺りを踏まえて兵装をあーでもないこーでもないと選択していく。
「まぁ分隊は分隊長に任せるのが一番いいよな。俺のヤタガラスは色々と規格外なんだし……」
「羨ましい話っすよね。プラズマコア二つ搭載してて推力もうちらのより大分増強されてるらしいじゃないっすか」
「その代わり重量えげつないけどな。おかげで飛行ってより跳躍みたいな飛び方しか出来ん……っと。今回の武器はこれでいいや。細かい調整は車の中で出来るだろう」
「うっす。あっちも今回も元気そうっすねー」
視界の端には牛乳を飲み終えて慌ただしく駆け出していく隊員が。
出撃のたびにそこそこの戦果を叩き出し、帰ってくるなり牛乳を飲んでは次の出撃に駆り出されている。得意な武器は範囲攻撃兵器、きっと将来は立派な爆撃王になるだろう。
「なーんか馬鹿な事考えてないっすかー?」
「何故バレるし」
0000%oooo
所変わってグレイプ車内。分隊単位で乗車してる車内には俺の他にででんと鎮座するヤタガラス。
のみ。
「分隊って何だっけなー……」
『うちのウイングダイバー隊だとグレイプに乗車できる全員で1分隊カウントっすねー』
「ヤタガラスくんそこまではでっかくない筈なんだけどなー」
『分隊を組むのって足並みそろえて分隊行動が出来るの前提なんすよねー』
「ヤタガラスくんの飛行って基本直線だもんなーそっかー」
『うちらも伊達や酔狂で飛行ショーのプロしてた訳じゃないっすからねー』
「すげーよなお前らの飛行間隔全然変わらない上に連携バッチリで射線に割り込む動きが一切ねーんだもん」
『いやーそれほどでもあるっすよー』
てれてれとした声が無線機越しに聞こえる。実際こいつらの飛行技術はEDFの中でもトップクラスで、かの有名なスプリガン隊にも引けを取らないと太鼓判を押せるほどの腕前だ。
「その割に射撃の腕はどうにもならんのよなー」
『いやーそれほどでもないっすよー』
「認めろヘタクソ。レイピアしかまともに当てられないってどういう事だ」
『本体の精度がFって事っすね!』
『アタシはGよ!』
「誇るなガバエイム」
『ガバガバじゃないですぅー私はぴっちり合わせてますぅー!』
「一人だけ○び太くんエイムされても……」
そう、飛行技術だけは。若干名頭のおかしい命中精度を誇る連中も居るにはいるが、基本は武器の扱いがド下手な連中ばかりである。腰を据えての狙撃ならまだしも、歩きながらや飛行しながらの射撃は滅法苦手だ。
なので、武装はあえて精度B以下のものを選択し、分隊の制圧射撃で下手な鉄砲を数撃って当てる戦法が一番安定するとこの三週間で学んだ。
「武器もそうだが……今回の相手はテレポーションシップだったな。落とせない相手ってのは好き放題してくれるから困るよな」
『そうっすねー……空軍がテレポーションシップを撃墜可能な新型機を3ヶ月で製造するって宣言したって聞きましたけど』
「それを発表するのが空軍って辺り嫌な予感しかしないんだよなぁ。あの装甲を突破する武器が無いのに飛行機作ってどうするんだって話な」
『言われてみれば……なんで皆あんな話を真に受けてたんでしょう』
「混乱してる所に希望をPON☆と出されて信じ込んじゃったんじゃねーかな。気付いても今更口に出すのは憚られるし……」
『日本人の哀しきサガって奴っすねー。それを口に出しちゃうのどうなんすか』
「駄目なものはちゃんと駄目って言わないともっと酷い事になるんだぞ。具体的には遠くへ放り投げることが出来ないのに半端ない火力と爆破範囲を持つグレネードが量産されたりする。」
『ヒエッ』
そういう危険な失敗作に限って大量に試作されたりするのだ。そして今日もどこかでレンジャーが空を舞う。南無。
「三ヶ月も現状維持に努めて航空機が負けたらどうするつもりなんだろうな……成功前提の作戦を考える指揮官ってどうなの」
『平和ボケしてたEDF日本支部で指揮官まで上り詰めるのって失敗なんて早々したこと無い人ばっかですからねぇ……』
「なんかどっかの国はシップの攻撃にもう核使っちゃったらしいけど。破壊したものの残骸の回収する前に相手のおかわりが来て、汚染撒き散らして生存圏削っただけになったとかなんとか」
『わかりやすく弱点なんかあったらいいんすけどねー』
「ゲームのボスとかな。なんで弱点そのままにしてしかも晒しちゃうのかって思うよな」
『ホントそれっす』
「『あっはっはっはっは』」
『盛り上がってるところ申し訳ありませんがあと5分で到着します!出撃準備を!』
「っと、話し過ぎたな」
『うちの分隊は東方面に布陣するっす。皆、現地にはレンジャーチームもいるらしいんで誤射するのもされるのも注意っすよー。』
『『『了解!!』』』
『……そちらも気をつけて下さい、っす。ホントっすよ?』
「了解。そっちも気を付けてくれよな」
ヤタガラスに向き合い、その頭に位置するパネルを撫でる。
生体認証が実施され、その形状が鳥から鎧に変形する。何度見ても少年ハートをくすぐるものがあるなこの光景は……
頭部が前に倒れ、翼が広がり、足が格納され、メインウイングが展開する。両足を通して固定し、バックルをつけ、肩を通して確実に体に装着し、機器の接続を確認する。
「ぐぅ……やっぱ重いなぁ……」
『目的地まであと2分です!幸いテレポーションシップはまだ到着していない模様……先に現地部隊と合流することを推奨しますが』
「いや、今回はやりたい事があるから単独行動だ。準備完了、いつでも行けるぞ!」
機器とリンクしたバイザーに各種データが表示されるのを確認し、その全てに緑色のランプが点灯したことを確認して声をかける。
『了解しました……では到着です。健闘を!』
車両が停止し、ハッチが開く。空の向こうから金色の船がこちらへ向かってスイスイと進んでくるのが目に入った。
あの船を落としてテクノロジーを解析でもすればこの翼ももう少し軽くなるのだろうか。
「あほくさ。現実的なこと考えよ……さて、こいつを持ってきたのは吉と出るか凶と出るか」
†§†§†§†§†
「大吉だったでござるの巻」
手にはロングレーザーLRB。目の前には両断された巨大生物の死屍累々。そして視線を上げれば……炎を噴き上げて高度を落とすテレポーションシップ。
撃墜したのだ。核を使ってやっと破壊できるような超兵器を、この手で。
なんてことはない、ただ「一々相手が落ちてくるのを待って順に撃破するのなんてめんどくさいし、相手が出現した時点で地面に落ちる前にレーザーで焼けば早いんじゃないか?」と思い、相手のテレポーションシップの出現位置にレーザー照射を続けていたら……
「撃墜、か。どうしよ、絶対報告面倒になる奴じゃん……しかも折角練習した素晴らしき男の声真似が……」
本当はレーザーで落ちてくる敵を縦に切り分けながら、そこらの味方に「よぅ、手伝ってやろうか……?ただし、真っ二つだぞ」なんて声を掛けようと考えていたのに!
そんな俺のアホな考えを知る由も無く、通信機からは友軍の歓声がひっきりなしに舞い込んでくる。
『なんだと!あれをやったのはどこの奴だ!?』
『イヤッホォォオオオオーウ!!誰か酒を持っていないか!?あいつに祝杯をくれてやろうぜ!』
『馬鹿野郎!今は戦闘中だぞ!それは……この戦闘に、勝利してからだ!!あいつのやり方に続けぇっ!!』
『そうだ、突っ込もうぜ……突撃ィー!!』
「いや、あんたら持ってんのシャッガンやないか」
あのレンジャーの分隊長は突撃大好きの脳筋だったらしい。
どう考えてもテレポーションシップの高度まで弾丸は届かないどころか、垂直にショットガンなんか撃ったら銃弾の雨が自分に降って来そうなんだけどなー……と思ってたら視線の先で本当にぶっ放したし案の定届かなかったし、レンジャーの強固なアーマーがなければ今頃えらい事になってたんじゃなかろうか。
「俺が撃墜方法見つけなければ全員ショットガン装備で正解だったんだろうけどなぁ……」
今回テレポーションシップから落ちてきたのは銀と赤の蟻。武器の選択としてはドンピシャだった訳だ。
遠い眼をしながらレンジャーチームに合流し、周囲を護衛されながらそのままテレポーションシップを追加で3隻撃墜した。すると、4隻目を落としたところで相手は唐突に投下を止め、焦ったように飛び去って行った……予定が狂ったんだろうか。転送装置らしきものの蓋を閉めれていないまま飛び去っており、相当焦っていた風体だった。
あと、一人だけちゃっかりスナイパーライフル持ち込んでる奴がいて、テレポーションシップを1隻だけだけど撃墜してた。会話を聞く限りあれは一緒に安全な場所を探している最中の民間人らしい。
「民間人に準備段階で負けるEDFって何なんだろうか……」
また、これは後で聞いた話なのだが、ヤタガラスなんてものを全世界に公開する訳にはいかないらしく、今回の功績はその民間人の功績となったらしい。
「民間人に戦果で劣るEDFって何なんだろうか……」
俺自身目立つのが好きな方ではないため、功績を他人に押し付けるのは嫌いではない。嫌いではないのだが……人類の勝利への大きな一歩が本職ではないってどうなんだろうか。喜ぶに喜べんこのモヤッと感。ボールにして投げつけたい。
それと、ウイングダイバーには被害は出なかったとのこと。そっちは普通にお祝いした。
あと、今回の功績と共闘の経験からレンジャーチームへ配置換えを申請したが秒で却下された。
解せぬ。
空軍「まことに遺憾である」
新型機()「こんなのってねぇよ……」
ヤタガラス「今回も戦闘は全カットっすか」
待てよ、短編ならいつ完結でもバレないじゃないか!
やっぱ俺って、不可能を可能に……ッ!!