ソードアート・オンライン (仮)   作:ナウ

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圏内事件・中間

 キリトに連れて来られた場所は50層・アルゲートにある雑貨屋だった。この雑貨屋って、アイツのだよな? そう言えば、アイツって鑑定スキル持ってたんだよな。すっかり忘れてた。

 

「毎度、また頼むよ。兄ちゃん」

 

 雑貨屋の前に行くと、扉が開いて、槍を持ったプレイヤーがため息をつきながら、出てきた。キリトは空いた扉に向かった。

 

「相変わらず、アコギな商売しているようだな」

「よぉ、キリト。安く仕入れて安く売るのがウチのもっとうなんでね」

「後半は疑わしいもんだな」

 

 エギルの商売に関して、少し茶々入れたがエギルも笑いながら受け流し、拳を合わせた。

 

「何を人聞きの悪い事を、って」

 

 アスナがエギルの店に入ったら、エギルは驚いた顔をしながら、キリトをカウンターに乗せて、顔を近付けた。

 

「ど、どうしたキリト、ソロのお前がしかもアスナと一緒なんて、どういう事だ? お前ら仲が悪かったんじゃないのか?」

「まあ、ボス攻略でいっつも言い争ってるから、仲が悪いと思われてても仕方ないんじゃないかな?」

「あはは」

 

 エギルの言葉に俺も一応、補足として伝えたら、アスナは笑って誤魔化していた。そして、一通りの誤解が解けて、奥の倉庫に迎え入れた。

 

「圏内でHPが0に? デュエルじゃないのか?」

「Winner表示を発見できなかった」

「直前までヨルコさんと歩いていたのなら、睡眠PKの線もないしね」

「突発的デュエルにしてはやり口が複雑すぎる。事前に計画されたPKだってことは確実だと思っていい」

「そこまでを踏まえた上で、この武器が、何らかのカギになると思う」

 

 そう言って、俺達は机の上に置いた、カインズさんがPKされた時に刺さっていた武器を見つめた。そして、エギルは真剣な表情で、武器を手に取り、鑑定スキルを使用した様子だった。

 

「プレイヤーメイドだ」

「本当か?」

「誰ですか、作成者は?」

「グリムロック、聞いた事ねえな。少なくとも一線級の刀匠じゃねえ。それに武器自体にも特に変わったところはねえ」

 

 エギルの鑑定結果に、アスナは制作者の名前を聞いた。俺はその制作者の名前を聞いて、何処かで聞いた事があるような名前だと思った。

 

「でも、手掛かりにはなるはずよ」

「うん」

「あ、そうだ。エギル、その武器の固有名を教えてくれ、何か手掛かりになるかも?」

 

 アスナの言葉にキリトと俺は頷いた。何も知らないより、知っていた方が何かわかるかもしれなかったからだ。だから、俺も武器の固有名を聞いてみた。

 

「えっと、ギルティーソーンとなってるな。罪の茨って所か」

「罪の、茨」

 

 固有名を聞いたエギルはギルティーソーンをキリトに渡した。キリトはギルティーソーンを受け取って、小さく呟き、剣を逆さ持ちにして、キリト自身の手に突き刺そうとした。

 

「待ちなさい!」

 

 だけど、アスナがキリトの手を取り、突き刺すのは失敗に終わった。

 

「なんだよ?」

「なんだよじゃないでしょ、馬鹿なの。その武器で実際に死んだ人が居るのよ!」

「いや、試してみない事には分からないだろ?」

「そう言う無茶はやめなさい」

 

 キリトはきょとんとした表情でアスナの方を見て言ったが、アスナは怒った様にキリトを窘めた。まあ、その武器で実際に死んだところを見たのだから、アスナの反応にも同意できるが、キリトの胆力凄いな。俺な多分、出来ないぞ、そんなこと。

 

「これは、エギルさんが預かっててください」

 

 そう言って、アスナはキリトが持っていたギルティーソーンを奪い、エギルに渡した。エギルも困惑しながらも受け取った。そして、今日は解散となった。

 

「あ、アスナ、キリト、明日のヨルコさんの事情聴取は2人で行ってくれないか?」

「ん? サクラ、どうしてだ?」

「生命の碑でカインズさんの事、調べてみるわ。じゃ、おやすみ」

「あ、サクラ君!」

 

 俺は2人にそう言って、50層にあるホームに向かった。アスナは何か言いたそうだったが、俺は聞かずに逃げた。

 そして翌日、雨の中。俺は、始まりの街の《生命の碑》の前に居た。

 

「カインズ、カインズ」

 

 生命の碑を前にして、プレイヤーネームを調べていた。生命の碑には、死亡すると名前に横線が引かれ死亡原因が表示されるため、全プレイヤーの名前を調べれば、何か分かるんじゃないかと思っていた。ルオン、カイト、そして、集団飛び降り自殺した30人のプレイヤーの名前を見ると、心が痛くなった。

 

「ダメダメだ、今はカインズさんの名前を探さないと」

 

 俺は心を持ち直して、調べる事を再開し、そして、カインズのプレイヤーネームを見つけた。そこにはKの頭文字のカインズとCの頭文字のカインズの名前があり、Cの頭文字の名前には横線とPKによる死亡と書かれて、Kの方には横線は無かった。

 

「見つけた。キリトにメッセージを入れないと」

 

 そうして、この事をキリトに伝えるために、メッセージを入れた。キリトから、これから青竜連合のタンク隊リーダーのシュミットに会いに行くから、56層の転移門前で待っていてくれと言う簡単な返信だった。

 

「キリト、アスナ」

「サクラ」

「サクラ君、そっちの調べは?」

「今のところ、キリトのメッセージに書いた通り、Kのカインズに横線は無かったけど、CのカインズはPKにより死亡とあった」

「そっか、教えてくれて、ありがとう」

 

 俺は転移門前でキリトとアスナと合流した。俺は2人に調べた事をメッセージでも言った事を、もう一度、説明した。そして、青竜連合でシュミットと会い、簡潔に説明をするとシュミットはヨルコさんと話がしたいようで、ヨルコさんの部屋まで一緒に同行した。

 ヨルコさんの部屋で、シュミットはヨルコさんと一対一で座っており、俺がシュミットさんの後ろ側、アスナが俺から見て右側に、キリトが左側に少し離れて立っていた。

 

「グリムロックの武器でカインズが殺されたと言うのは本当なのか?」

「…本当よ」

 

 シュミットの言葉に、ヨルコさんは小さく、だけど、はっきりと聞こえる様に肯定した。シュミットは驚愕の表情をしながら、椅子から立ち上がった。

 

「何で今更、カインズが殺されなければならないんだ!? あ、アイツが、アイツが指輪を盗んだのか? グリセリダを殺したのは彼奴だったのか?」

 

 そう言って、シュミットは椅子に座った。

 

「グリムロックは売却に反対した全員殺す気なのか? 俺やお前も狙われてるのか?」

「グリムロックさんに槍を作って貰った、他のメンバーの仕業かも知れないし、もしかしたら、グリセルダさん自身の復讐なのかもしれない」

「え?」

「だって、圏内で人を殺すなんてこと、幽霊でもない限りは、不可能だわ」

 

 シュミットの震えながらの言葉にヨルコさんは、冷静? 又は静かに可能性を上げて言った。その可能性を言葉にすると、シュミットの表情が困惑や恐怖が現れてきた。

 

「私、夕べ、寝ないで考えた。結局のところ、グリセルダさんを殺したのはメンバー全員でもあるのよ!?」

 

 ゆっくりと立ち上がったヨルコさんは、恐怖に怯えるかのように、思っていたことを、俺達の前で暴露していった。

 

「あの指輪をドロップした時、投票なんてしないで、グリセルダさんの指示に従えばよかったんだわ!!」

 

 そして、後ろ向きで、窓の縁に腰かけたヨルコさんの言葉は続いた。俺達3人はヨルコさんの言葉を聞いて、唖然となり、そのまま立ち止まっていた。

 

「唯一人、グリムロックさんだけは、グリセルダさんに任せると言った。だから、あの人には私たち全員に復讐してグリセルダさんの仇を打つ権利があるんだわ」

「………冗談じゃない、冗談じゃないぞ。今更、半年も経ってから。何を今更…。お前はそれで良いのかよ、ヨルコ! こんな訳の分からない方法で殺され良いのか?」

 

 ヨルコさんの言葉を聞いたシュミットは震えながら、否定的な言葉を発していく、そして、震えながらも立ち上がった。ヨルコさんの方に行こうとしたが、キリトがシュミットの腕を掴んで静かに首を振った。

 そして、不意にヨルコさんの表情が変わった。俺達は何かが起こったんだと思った。ヨルコさんは窓の縁に手を着いて、背中に短剣が刺さっていた。そして、そのまま、ヨルコさんは窓から落ちた。

 

「ヨルコさん!」

「ヨルコさん!」

 

 俺とキリトはすぐさま、窓の方に走り、窓から、ヨルコさんが落ちた所を見た。そしたら、丁度、ヨルコさんのアバターが砕け散るところを確認し、ヨルコさんに刺さっていた短剣が地面に落ちた。

 

「アスナ、サクラ、後は頼む!」

 

 そう言って、キリトは窓から飛び出して、向かいの屋根の上に飛び移った。俺は窓を閉めて、カーテンを掛け、装備を取り出して、シュミットを狙う相手がいるかも知れないと思い、索敵スキルも使用して、周囲の警戒に入った。

 

「ダメよ!」

「ダメだ。俺達はシュミットの安全を確認しないと、あのローブはキリトに任せよう」

「だけど!」

「落ち着け。そう簡単に、キリトがやられる筈はない、それに危なくなったら、転移結晶で他の階層に移動すると思うから」

「…分かったわ」

 

 アスナの声を無視して、キリトは屋根の上を走って、あのローブのプレイヤーを追った。俺はアスナを宥めて、シュミットの安全を確保することを優先した。

 そして、5分も掛からず、キリトは玄関から、ヨルコさんの背中に刺さっていた短剣を手に持って戻ってきた。

 

「馬鹿! 無茶しないでよ」

「1人であんまり、突っ走るなよ、キリト」

 

 俺とアスナは玄関が開いた瞬間、持っていた武器を玄関に向けた。そして、玄関から入ってきたのがキリトだったことが分かり、ちょっとだけ、叱ったが、すぐに武器を鞘に戻した。

 

「それで、どうだったの?」

「ダメだ、テレポートで逃げられた」

「転移結晶か? それなら、転移した階層は?」

「夕方の鐘の音で聞こえなかった。宿屋はシステム的に保護されている。ここなら危険はないと思い込んでいた。…クソ!」

 

 キリトは追っていたことを簡単にまとめて、教えてくれた。そして、システムで護られている宿屋の中で油断していた俺達をあざ笑うかのように、ヨルコさんが殺された。

 

「そうだな、油断していたんだろうな」

「あのローブはグリセルダの物だ。あれはグリセルダの幽霊だ。俺達全員に復讐に来たんだ。はは、幽霊なら圏内でPKするくらい楽勝だよな。あはは、あはははは」

 

 シュミットは頭を抱え、震えながら、壊れた様な声で先程のローブはグリセルダの幽霊だと言っていた。

 

「幽霊じゃない。二件の殺人には絶対にシステム的なロジックが存在するはずだ。絶対に」

 

 そして、シュミットを青竜連合のギルドホームまで送った。

 

「さっきの黒いローブ、本当にグリセルダさんの幽霊なのかな? 目の前で二度もあんなのを見せられたら、私にもそう思えてくるよ」

「いや、そんな事は絶対にない」

「あぁ、あれはグリセリダじゃい、絶対に違う」

「だって、そもそも幽霊なら、さっきだって、転移結晶なんて使わないで…。転移結晶?」

「どうしたの?」

「いや、何でもない。サクラはどうしてあのローブがグリセルダじゃないって言えるんだ?」

 

 アスナの物言いに俺とキリトは否定した。キリトは追いかけていた時事を話していたが、何か引っ掛かったのか、首を傾げていたが、アスナが聞くと何でもないと首を振った。そして、キリトが俺に理由を聞いてきた。

 

「キリトやアスナに言ってないけど、俺、グリセルダに戦い方をレクチャーしたんだ。大体2層攻略中くらいに」

「え? 本当なの?」

「あぁ、このゲームから脱出するんだって、言ってて、積極的に行動していたよ。確か、俺が会ったのは1層のホルンカの村にあるアーニルブレードの入手クエストだ」

 

 俺はキリトとアスナにグリセルダとの出会いを喋った。それは、第2層のエンド武器を使用した武器のすり替えが、あったの覚えてる? そう、その時、俺のフレンドのプレイヤーも同じくすり替えられてね、片手剣だったから、アーニルブレードを入手するために、一層に降りて、ホルンカの村でクエストを受けたんだ。

 その時、クエストの受付である民家の前で、女性プレイヤーが絡まれてるのを発見してさ、それを助けたら、同じクエストを受けるらしくて、彼女に先を譲ったんだよ。そして後からフレンドと一緒にクエストを受けたんだ。フレンドは2層の店売りの無強化の武器を使用してたし、回復アイテムは来る前に用意しておいたし、そのまま、行こうかと外に出て話し合ってたんだ。その時、さっきの女性から声を掛けられてね。自己紹介をして、同じクエストを受けるんなら、私も同行しても良いですかって聞いてきたんだ。俺は少し考えたけど、フレンドはすぐさまOKして、パーティー申請したんだ。俺が不用意に知らない相手をパーティーに入れるなとフレンドに怒ったんだけど、フレンドは笑いながら大丈夫だって、言ってたし、その女性も俺が怒った事が分からなかったのか、首を傾げてたから、一応、PKの事や寄生の事を教えてたら、謝ってきたから、まあ、そのまま、ネペントを倒していたんだ。フレンドって人が良いから、一番目の花を倒したら、グリセルダにあげるし、一旦そのまま村に戻って、グリセルダのクエストを先に終わらせてから、もう一度、倒しに行く二度手間をしたんだよ。その時、パーティーの戦い方やソロでの戦い方もレクチャーもしたよ。

 

「っとこんな感じでグリセルダと、知り合ったんだ。俺はフレンド登録はしなかったけど、俺のフレンドは登録してたな」

「そうだったの」

「じゃあ、なんで教えてくれなかったんだ?」

 

 俺の話を終えて、2人に言うと、キリトから、一番聞かれたくなかった一言を貰った。

 

「…ぶっちゃけ忘れてたわ、フレンドからグリセルダがギルド作ったのは聞いてたけど、ギルド名は聞いてなかったし、結婚してることも知らなかったよ。思い出したのは生命の碑でカインズの名前を探した時に横線が引かれてるグリセルダを見て思い出したくらいだし」

「そうだったのか、悪かったな」

「良いよ。さっきまで忘れてたのは本当だし。薄情だよな、俺って」

 

 俺はそう言って、俯いた。まあ、たった一回しかあった事のないプレイヤーを1年半も覚えておけってのは無理な話だったんだろうけど、それでも覚えていなかったのは、自分的にはショックだった。

 

「そんなこと無いわよ。それと2人とも、はい」

 

 俺は俯いていたが、アスナの声が聞こえてきて、目の前に包み紙があった。

 

「くれるのか?」

「この状況でそれ以外に何があるの、見せびらかしているとでも?」

「じゃ、じゃあ、ありがたく」

「そろそろ耐久値が消滅しちゃうから、急いで食べた方が良いわよ」

「…ありがとう、アスナ」

 

 キリトと俺はアスナから包み紙を受け取った。中身はバケットに肉や野菜を挟んだ物で、美味しそうだった。キリトはバケットサンドに齧り付いた。俺も包み紙を剥がして、食べた。

 

「美味いな」

「確かに、美味しい」

 

 一言いうと、俺とキリトはまたバケットサンドに齧り付いていく。

 

「いつの間に弁当なんか仕入れたんだ?」

「耐久値がもう切れるって言ったでしょ。こう言う事もあるかと思って、朝から用意しといたの」

「流石、血盟騎士団攻略担当責任者様だな。ちなみにどこの?」

「キリト、これ多分、店売りじゃない」

「サクラ君の言う通り」

「え?」

「お店のじゃない、あたしだって料理するわよ」

 

 この味付けは多分、手作りの物だろうと思って言ってみたら、当たった。アスナって調理スキル持ってたんだ。知らなかった。キリトは鈍いのか、まだ分かっていなかった。何時もの鋭い洞察力はどこ行ったんですか?

 

「えーと、それは、その、何と言いますか。いっその事、オークションにかければ大儲けだったのにな、あはは」

 

 流石にそれはダメだろ、キリトよ。そして、アスナが足踏みで音を出すと、キリトが驚いて、バケットサンドを落としてしまった。そして、バケットサンドは硝子の様に光って砕け散った。

 

「おかわりはありませんからね」

「ん?」

 

 アスナの言葉にキリトは膝を着いて、orzの様なポーズをとった。俺はバケットサンドが砕け散ったときに、何か引っ掛かった。

 

「ん? どうしたのよ」

「しっ」

 

 キリトがいつまでも、凹んでいると思ったのか、アスナが声を掛けると、キリトは左手でアスナを止めた。そして、何か考えている感じだった。そして、何かに至ったのか、声を上げた。

 

「あぁ! そうか、そうだったのか」

「何よ、一体何に気付いたのよ」

「俺は、俺達は何も見えていなかった」

「と言うと、この圏内事件の事か?」

「あぁ、見ているつもりで、違うモノを見ていたんだ」

「え?」

「圏内殺人、そんなものを実現させる武器も、ロジックも最初から存在しちゃいなかったんだ」

「最初から? まさか!」

 

 キリトは四つん這いになりながらも、気付いたことを教えていく。そして、もう一度椅子に座り直して、話を戻す。

 

「生きているですって!」

「あぁ、生きてる。ヨルコさんもカインズ氏もな」

「だ、だって」

「圏内はプレイヤーのHPは基本的に減らない、けどオブジェクトの耐久値は減る。さっきのバケットサンドみたいに」

「えぇ?」

「あの時、カインズのアーマーは槍に貫通していた。槍が削っていたのは、カインズのHPじゃなくて、アーマーの耐久値の方だったんだ」

「じゃあ、あの時、砕けて飛び散ったのは」

「そう、彼の鎧だけなんだよ」

「そして、鎧の中に居たカインズは、多分、転移結晶で他の階層にテレポートしたんだ。だからキリトが転移結晶の所で、何か違和感を感じたんだろ?」

「あぁ、そして、テレポートした結果、発生するのは死亡エフェクトに限りなく近い、でも全くの別の物」

「なら、ヨルコさんも」

 

 そこから先は俺がキリトの仮説を聞いて、考えた事を言い始めた。

 

「ヨルコさんは最初っからダガーを刺したまま、俺達と話していたんだと思う、だって、彼女、俺達に背中を見せたのって、彼女が窓から落ちる時だけだ。多分、服の耐久値を確認しながら会話をしていたんだと思う。そして、タイミングを見計らって、飛んで来たダガーに当たったかのような演技をする」

「それなら、黒いローブの男は?」

「十中八九、グリムロックじゃない、カインズ氏だろう。ヨルコさんとカインズ氏はこの方法を使えば死亡を偽装できるのではないかと思いついた。しかも圏内殺人と言う恐ろしい演出を付け加えて」

「多分、カインズと言うプレイヤーネームがもう一人居て、そのカインズがPKで殺されていたから、それを上手く使ったのだろう」

「そして、その目的は指輪事件の犯人を追い詰め、炙り出す事。2人は自らの殺人事件を演出し、幻の復讐者を作り出した」

「シュミットの事は初めから、ある程度疑っていたんだろうな。なあ、ヨルコさんとフレンド登録したままだろ?」

「あ」

 

 俺達が問答して、答えを導き出したところで、キリトがアスナにヨルコさんのフレンドを聞いてみたら、アスナもすぐに何をすればいいのか思い当たったのか、メニューウインドウからフレンドのヨルコさんの位置を確認してみた。

 

「今、19層のフィールドに居るわ、市街地からちょっと離れた丘の上」

「そっか、後は彼らに任せよう。俺達のこの事件での役回りはもう終わりだ」

「うん」

 


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