ソードアート・オンライン (仮)   作:ナウ

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少女との出会い

 あの後、キリトから結婚報告を受けた。それから1週間の時間が経った。その間に起こった事はキリトとアスナが血盟騎士団をお休みして、22層のログハウスで休暇を取っていることぐらいかな? 後は普通に攻略を進めている感じだ。

 昨日、キリト達にお祝いの品も渡したし、久しぶりの友達と再会も出来たし、あれはあれで楽しかったから良いか。

 

「サー坊、今日はどうした?」

「いや、この前のお礼だ」

 

 俺はそう言って、アルゴに作った料理を渡した。この前のお礼とは、キリト達にお祝いの品を渡すときに何が良いか考えていて、アルゴにその品をドロップするモンスターの場所を教えて貰ったからだ。

 

「あ~、あれカ、結果はどうだっタ?」

「牛は1ヶ月位は見たくないな」

「何桁くらい狩ったんダ?」

「3桁後半くらい」

「………うわぁ」

 

 俺の言葉を聞いたらアルゴは、若干引いた。それを見たら、少しだけ悲しく感じた。まぁ、もう絶対にドロップマラソンはやらないと心の中で決めた。

 

「お礼は一応、料理だよ。ホーンバイソンの肉が大量に余ってたからね。耐久値が多い料理を幾つか作ったから、遠慮なく食べてくれ。流石に食材を腐らせるのは、ゲームでも勿体ない」

「にゃはは、分かったヨ。サンキューな、サー坊」

「おう、それじゃな」

 

 在庫処分が出来てラッキーとも思いながら、アルゴに料理をトレード画面に乗せて渡した。いやいや、在庫処分と言っても、きちんと料理してるし手間暇かけてるし、料理の耐久値とかも普通のより多いし、だから、問題ない………はず。

 

「夕食までどうしようか? ん、キリトからメッセ?」

 

 呟きながら、夕日を背に家に帰ろうとしたら、キリトからメッセージが届いており、そのメッセージには「意識不明の少女を保護した」とだけ書かれていた。俺はその情報だけでは現状が理解できなかったので、2人のホームがある22層に今から行くとだけ、キリトにメッセージを入れて向かった。

 

「サクラだ」

「サクラ、いらっしゃい、入ってくれ」

「分かった」

 

 俺はキリト達の家に着いてドアをノックするとキリトが出て来て、家に入れてくれた。そして、キリトの後ろを歩き、2人の寝室に入ると、アスナと二つのベットの内、窓側のベットに少女が眠っていた。

 

「キリト、この子が例の?」

「あぁ、少し前にこの階層で幽霊騒ぎがあったんだけど、その正体がこの子だったんだ」

「まぁ、この子が起きないと何も聞けないから、この子と出会った事を詳しく聞かせてほしいかな。メッセージには意識不明の少女を保護したくらいしか書かれてなかったから」

「…あ、悪い、焦って説明省いてたな」

 

 俺が少女に話を聞きたいが目が覚めていないから、その間にキリト達にどうしてこの少女と出会った事を聞くことにした。だって、俺はこの事に関しては、この階層の幽霊騒ぎの正体がこの少女であり、現在は意識不明って事だけしか知らないからだ。

 そして、どうして、幽霊騒ぎの場所に行ったのか、この少女が倒れた事とか、それ以外の事も聞いていった。と言うか、アスナって幽霊とか苦手じゃなかったか? キリトは良く幽霊騒ぎの場所にアスナを連れて行けたなと考えながら聞いて行った。だけど、残念ながら有益な情報は無かったと言って良いと思う。

 

「聞いてみたは良いが、有益な情報が殆どないな」

「サクラは何か知らないか? 少女を探してる人が居るとか」

「何で俺に訊ねるんだよ…」

「え、だってサクラ、下層や最下層のプレイヤーに戦い方教えたりしてただろ。だから何か知ってないかなって思って」

 

 そう、キリトが言ったように俺は下層のプレイヤーに対しては、モンスターの情報や罠を教えたりしているし、最下層、大体2桁以下の階層のプレイヤーに対しては、戦い方を教えていたりしていた。まぁ、もう最下層に居るプレイヤーは基本的に戦闘をしないプレイヤーなので教える事は無くなっていた。

 

「おいおい、もう半年前の事だぞ。そりゃあ今でも1層に行く事はあるけど、そこまで話を聞いたりすることはないぞ」

「そっか」

「だけど、始まりの街には子供たちを保護してる施設がある。なにかしら手掛かり位はあるかもしれないな」

 

 俺が補足として入れた言葉にキリトは少しだけ、安堵していたようだ。まぁ、それからは多少の予想をキリトと考えていたら、アスナが夕食を作ってくれたらしく、キリトが俺も食べていけと言っていたので、ご相伴にあずかることにした。

 

「う~ん、やっぱりアスナの料理は美味いな」

「そうだろうそうだろう」

「何でキリト君が得意げなのよ」

「あ~、コーヒー欲しいな…」

「自分で入れれば?」

 

 このバカップルは俺が居るのに、それを見せ付けるようにイチャコラし始めた。まぁ、慣れてるから大丈夫だけどね。諦めているとも言えるだけだろうか? それから椅子に座って、俺が入れたお茶を飲みながら、俺の事やキリト達の進境の事を笑いながら話していく、このような穏やかな時間を過ごしていた。この間はキリトもアスナも、もちろん俺も笑っていた。

 

「それじゃそろそろ良い時間だし、俺は帰るよ。ご飯、ご馳走様」

 

 そう言って立ち上がると、左肩にキリトの手が置かれた。

 

「泊っていけよ」

「泊っていってね」

「それは決定事項なのか?」

「あぁ」

「うん」

「寝る場所は?」

「俺のベット使えばいいよ」

「まぁ、キリトとは何度か、同じベットで寝た事あるけど…」

「え! キリト君とサクラ君ってやっぱりそういう関係なの?」

 

 なんだか、アスナが物凄く勘違いをしていたが、キリトが金がなくて、サクラの借りている部屋に転がり込んだことはあるが、同じベットで寝た事はないと言って、誤解を解いた。まぁ、わざとそう言ったんだけど、キリトの焦り様が面白かったとだけ、言っておく。

 

「サクラ、お願いだから、あんなこと言わないでくれ、心臓に悪いから」

「あははは、悪い悪い、ああ言ったらどうなるか、気になったんでな、好奇心には抗えなかったよ」

 

 その後、俺は椅子で寝るから大丈夫だと言って、居間の明かりを消しキリトとアスナは同じベッドに入っていった。目をつむってしばらくして人が動く気配がして目をあけるとアスナが少女を抱きしめ「おやすみ。明日は、目が覚めるといいね……」と言っていた。俺は微笑むと本格的に眠りに落ちた。

 

………

……

 

 そして、翌朝、俺は目が覚めて天井を見ると、そこは俺の部屋の天井ではなかった。どうしてと思いながら、昨日の事をゆっくりと、あぁ、キリト達の家に泊まったんだったなと思い出した。

 

「キリト君! キリト君ってば!」

 

 アスナのキリトを起こす声が聞こえてきて、何かあったのだろうかと思い、失礼を承知で2人の寝室に入って行く、少女が目を覚ましていた。それを見て、あぁだからキリトを起こしたのかと理解する。

 

「…おはよう、どうした?」

「早く、こっちに来て!」

「…!」

 

 俺が居る事を忘れているのか、アスナは少女を起こした。

 

「良かった、目が覚めたのね。自分がどうなったのか分かる?」

「? ううん」

 

 少女は首を小さく横に振って、アスナの質問に否定した。

 

「そう…、お名前は、言える?」

「な、なまえ? わたしの、なまえ…、ゆ、い。ユイ、それが…なまえ」

「ユイちゃんか、良い名前だね」

 

 少女の名前はユイと名乗った。アスナが微笑みながら、ユイの名前を褒めて、キリトの方を見ると、俺と視線が合って気付いた。

 

「私はアスナ、この人はキリト、あの人はサクラ」

「あ…うな。き……と。さう…」

 

 俺達の名前は呼べていないみたいだ。俺達3人ともそこまで名前は難しいくは無いのだが…。

 

「ねえ、ユイちゃん、どうして森の中に居たの? どこかにお父さんかお母さんはいない?」

「わ、かんない。なんにも、わかんない」

 

 ユイはアスナの質問に少し考えて、分かんないと言いながら首を左右に振った。

 

「そ、そんな…」

 

 そう言ってアスナは、ユイから視線を外した。それを見たキリトが、ユイに視線を向けた。

 

「やあ、ユイちゃん。ユイって呼んでいい?」

「うん」

「そうか、それじゃ、ユイも俺の事、キリトって呼んでくれ」

「キイト」

「キリトだよ。キ、リ、ト」

「キイト」

 

 ユイはキリトの名前を呼ぼうとしても、呼べなかった。う~ん、これはどう言う事なんだろうか? 分からん。

 

「キリト、この子は俺達の名前は言えないみたいだから、ユイが言い易い呼び名を呼ばせてみたら?」

「あ~、そうだな」

 

 俺の言葉を聞いて、キリトはユイの頭を撫でながら、言い易い呼び方で良いと言った。

 

「パパ」

 

 ユイはキリトを見て、パパと呼んだ。え、マジで。まぁアスナと結婚してるし、いずれはキリトも父親になるから、間違ってはないけど……。

 

「お、俺?」

「あうなはママ」

「…そうだよ。ママだよ、ユイちゃん」

 

 アスナは微笑みとともに頷く、ユイはアスナの頷いた後に満開の笑顔だった。

 

「さうはにぃ」

 

 え、俺もなの? にぃ、多分兄さんとか、兄貴とかのにぃだよな? 俺がキリトとアスナの子どもとか、マジか……。確かに、俺がキリトに言い易い呼び名で呼ばせてみればと言っけどさ~。

 

「ダ…メ?」

「あ、いや、あの」

 

 ……想像して欲しい。純粋な十歳児それも美少女の部類に入る少女の涙目プラス上目遣い。……あなたは断れますか? そして、キリトとアスナはニヤニヤした表情をやめて欲しい、物凄く殴りたくなるから。

 

「分かった、良いよ」

「うん」

 

 俺の了承を得ると、ユイは先程の満開の笑顔にも負けないくらいの笑顔を見せてくれた。これでは断ることは出来ないだろうなと、他人事のようにどこか考えていた。

 

「パパ、ママ、にぃ」

 

 ユイは俺達を呼びながら、アスナに抱き付いた。アスナも抱き返して立ち上がった。

 

「お腹が空いたでしょ、ご飯にしましょ」

「うん!」

 

 はぁ、これじゃ帰れないな。まぁ、乗り掛かった舟だ、最後まで一緒に居てあげるか。………ベスタには悪いけど、今日の護衛は急遽なしと言う事で、メッセージを入れておいた。そのすぐ後にベスタからメッセージが返ってきて、「こっちも急な注文が入ったから今日は行けないってメッセージ入れようとしてた」と書かれてあったから、どちらにせよ今日は無理だったみたいだ。

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

 場所を移動して、リビングでキリトと俺の朝食をアスナが作ってくれた。俺はお礼を言って受け取り、最下層や下層で活動をしている信頼できるプレイヤーに8~9歳くらいプレイヤーを探している人はいないかとメッセージで聞いてみた。

 

「サクラはどうだ?」

「残念ながら、知り合いのプレイヤーにユイの名前をはぐらかしてメッセージを送ってみたが、ユイらしき少女を探している人はいないらしい」

「そっか、ん? ユイ、これはすごーく辛いぞ」

「ん? …パパと同じのが良い」

 

 俺とキリトが話していると、キリトが手に持っていた激辛のバケットサンドを見ていた。キリトがそれに気づくと、ユイにバケットサンドは物凄く辛いと言ったが、ユイはユイでキリトと同じものを食べてみたいらしく、手を出して欲しいと言ってきた。

 

「そうか、そこまでの覚悟があるなら、俺は止めん」

「いや、止めろよ!? それかせめて辛さ下げろよ! 初心者にキリトと同じ辛さはまずきついから!」

「サクラ、何事も経験だろ?」

「その言葉について、否定はしないけど…。あ」

 

 キリトはユイに自分の激辛バケットサンドを手渡した。ユイは両手で受け取って頬張った。噛んで行き、飲み込んだ。

 

「美味しい」

「中々、根性のある奴だ。晩飯は激辛フルコースに挑戦しような」

「うん」

「根性があるのは認めるよ。まぁと言っても、アスナがその激辛フルコースを作るかどうかだけどな」

「もう、調子に乗らないの。そんなの作らないからね」

「だってさ」

「だってさ」

 

 ユイが激辛バケットサンドを食べて、美味しいと言ったその根性は認めるとして、アスナは激辛フルコースなんて作らないと言ってのけた。それでキリトの言葉をまねしたユイ、それを見て、俺達はまた笑顔になった。

 そして、サンドを食べ終わってから少し経つと、ユイは椅子で眠ってしまった。

 

「ねぇ、キリト君、サクラ君、どう思う?」

「記憶はないようだな。でもそれより、あの様子だと」

「まるで赤ちゃんみたいで、私、私」

「何かを思い出したくないから、全部忘れる事にした。その何かが係わる全部を………」

「サクラ!」

「あ、…ごめん。この言い方は最低だったな」

「………ごめんね、わたし、どうしていいのか判んないよ」

 

 俺の予想を聞いて、アスナは泣き出した。不謹慎な言葉だったと思い、謝罪する。

 

「……この子が記憶を取り戻すまで、ずっとここで面倒みたいに思ってるんだろ? 気持ちは……解るよ。俺もそうしたい」

「うん、でも」

「ジレンマだよな……。そうしたら当分攻略には戻れないし、その分、ユイが解放されるのも遅れる」

「うん」

「とりあえず、出来る事をしよう」

「そうだな、装備だけを見るなら、日常的にフィールドに出ていたとは考えにくいよな、だから、始まりの街に行こう、キリトには言ってたと思うけど、始まりの街には戦えない子ども達を保護している施設がある。まずはそこに行って、ユイの親兄弟を探してみよう」

「そうだな」

「そうだね」

 

 俺達はずっとこの場に居る訳にはいかない、俺達3人は攻略組だから、ユイを浮遊城から解放するためにも、最前線に戻らなければならない、だけど、今戻るとユイの事が見れなくなる。ジレンマだなと思いながら、それでも今できる事を考えていく。

 

「ユイと別れたくないのは俺も一緒だ」

「………キリト君」

「何て言うのかな? ほんの短い間だったけど、ユイが居る事でここが本当の家になったみたいな…、そんな気がしてさ」

「うん」

「でも、二度と会えない訳じゃない、それに家族や保護者が居るなら、今頃心配しているはずだ」

 

 俺は目の前のイチャコラを見せられながら、今後の事を考えていた。と言っても、始まりの街に居る知り合いに連絡取ってとか、そう言った事だ。

 

「うん、ユイちゃんが起きたら、始まりの街に行ってみよう」

「一応、すぐに武装できるように準備しといてくれ、あそこは軍のテリトリーだからな」

「気を抜かない方が良いね」

「あぁ、サクラも保護施設の案内、頼むよ」

「分かってるよ」

 

 俺達はそう今後の方針を決めた。そしたら、寝言でユイが、俺達を呼んでいて、微笑ましくなった。そう思っていると、アスナが何か気付いた様子で、俺の方を見ていた。

 

「………なんだ、アスナ?」

「サクラ君って、ユイちゃんのお兄ちゃんなんだよね? ってことは?」

「言いたい事は分かるが、やめてくれ、同年代の両親とか勘弁してくれよ。まぁ、2人は俺の両親と同じ感じがして………」

 

 何だか物凄く、嫌な予感がしたが、回避できるものではなかった。そして、ゴニョゴニョ言う俺は不意にアスナに引き寄せられ抱きしめられた。

 

「何か。急にサクラ君が可愛く見えるようになってきた…」

 

 アインクラッドで五本の指に入るほどの美人に抱きつかれてるのは嬉しいが、だけど何か嫌だ! そう思いキリトに目で助けを求めると苦笑いして目を逸らされた。「パパ助けて」というとキリトは頭を抱えてしまった。後から聞いたが、曰く鳥肌が立ったらしい。まあ当たり前か……。

 その後、アスナの事をママと呼ぶまで放してくれなかった。あれ? 筋力パラメーターはこっちの方が上なのに、なんで振りほどけなかったんだ? ………いやまぁ、理由は分かってるんだけどね。

 

「たまにはママって呼んでね」

「勘弁してください」

「諦めろ、サクラ」

「助けてくれよ、キリト」

「あの状態のアスナからは無理だ」

 

 俺は相当やつれた感じを出しながら、ユイが目覚めるまで待っていた。その間に、保護施設の知り合いにメッセージを入れて、今日行くかもしれないと送った。

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