ソードアート・オンライン (仮)   作:ナウ

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一層攻略会議

 集団自殺の事件から、10日が経った。俺は最前線に最も近い街、トールバーナに来ていた。トールバーナは何所か南ヨーロッパ風の街に似た感じの作りだった。

 街の中を見て行き、ポーションや装備のメンテを終えたら、キリトに教えて貰った〈逆襲の雌牛〉をこなしたり、迷宮区に行き、コボルドに2体や3体で囲まれる状況を作り、その状況から盾で護ったり倒したりを、この街に来てから繰り返し続けた。

 

「ヨッ、どうやらお前は大丈夫だったみたいだナ」

「………アルゴか」

 

 そこには待ちくたびれたかのようにアルゴが、家の壁に寄りかかっており背中を壁から離してこちらに近づく。

 

「アルゴは、………ああなる事を知っていたのか?」

「まさか、お得意様候補に亡くなられちゃ商売が繁盛しないしナ、オレッチに取ってもあんな愚策に走るだなんて思っても見なかったヨ」

 

  俺はアルゴの顔を見ると、そう言いたくなってしまった。頭ではそんな訳ないって理解しているはずなんだけど、口に出てしまった。

 

「そうだよな。アルゴ、金は払う、2つほど教えて欲しい事がある」

「なんダ?」

「一つ目はβテスターの死亡者数、二つ目は製品版に移行して、βテストとの変更点があるかどうか」

「………なんで、その二つが聞きたいんダ?」

 

 俺は違うと割り切り、アルゴに2つの情報を聞いた。それはβテストのと製品版による違いのとだ。それを聞いたアルゴは少しだけ低い声で聞き返してきた。

 

「二つ目は元々思ってたんだ。βテストと製品版の違いを、だってそうじゃないとβテスターが有利過ぎる。知っている事を少しでも変更されれば、その知識や経験は、落とし穴になるんじゃないかって思ったんだ」

「それで一つ目は?」

「ルオンとカイトが言ったんだ。βテスターに助けて貰ったって、それでさっきの推測を当て嵌めると、βテスターが死んだ数の方が割合的に多いんじゃないかって考えたんだ」

 

 俺が考えていた予想をアルゴに言った。それが間違っているか、当たっているかは分からない。だけど、知っておいた方が良いと思ったのだ。

 

「およそ、300人」

「え?」

「それが、公式サービス開始後の元ベータテスターの死亡者数ダ」

「クローズドベータテスト当選者1000人の内、正式サービスに移行した人数は、700から800人といったところだろウ」

「つまり、死亡率はビギナーに比べて、テスターの方が多いと」

「そうだ。サクラがさっき言っていた事も当たっているヨ」

「だけど、俺たちビギナーは製品版しか知らない、故にテスターの事情も知りようが無い」

「そうだナ」

「教えてくれて、ありがとう」

 

 アルゴからの情報を聞いて、俺の推測が当たっていたことを知った。俺はトレード画面を表示して、現在の所持金の半分をアルゴに渡した。

 

「これは、貰いすぎだヨ」

「いや、これでいい、教えてくれてありがとう」

 

 そう言って、俺はアルゴを置いて歩き出した。そして、それから3日が経った。

 

「はああ!」

 

 アルゴからの情報を聞いた後、ポーションや装備のメンテを終えたら、俺はまた迷宮区に潜った。盾を手足の様に使えるようにするために、自分はここで生きているんだと実感するために、ボス部屋を見つけるために、そんな思いながら迷宮区を歩き回る。

 

「流石に、これ以上潜り続けるのは危険か」

 

 俺は迷宮区の安全エリアでそう呟いて、メニューウインドウを表示すると、午後7時半を過ぎたくらいだった。迷宮区を出て、星が輝く夜に松明片手にトールバーナに帰り、10時になる前に意識が落ちるように眠った。

 そして、翌日、12月2日、第1層ボス攻略会議が行われる。時間に遅れない様に広場に集合したら、結構な人数が居た。俺は後ろに座り、攻略会議が行われるまで目を閉じて待った。

 

「はーいそれじゃあ! そろそろ始めさせてもらいまーす」

 

 手の叩く音で俺は目を開けた。広場の中央には水色の髪をした青年が出てきた。彼が司会役だろうか。

 

「今日は俺の呼びかけに応じてくれて、ありがとう。……俺はディアベル!職業は…気持ち的にナイトをやってます!」

 

 ディアベルのギャグに周りの空気が穏やかになり周りから「SAOにジョブシステムは無いだろー」と笑いに包まれる。

 

「今日、俺たちのパーティーがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した」

 

 その言葉に周りのプレイヤーが騒めいた。確かに、一ヶ月もボスの部屋を見つけられなかったから、騒がれても無理も無いと思った。

 

「俺たちはボスを倒し、第2層に到達して。このデスゲームもいつかきっとクリア出来るって事を、始まりの街に待っている皆に伝えなくちゃならない。それが今ここにいる俺達の義務なんだ! そうだろ、みんな!」

 

 ディアベルの言葉を聞いたプレイヤーは他のプレイヤーと視線を合わせて、頷き合った。そして、一人が拍手すると、周りの人も拍手したりしていた。

 

「オッケー、それじゃ、早速だけど、攻略会議を始めたいと思う。まずは6人のパーティーを組んでくれ」

「………マジか」

 

 ディアベルの言っている事は最もで、フロアボスは単なるパーティーじゃ、対抗できず、パーティーを束ねたレイドを作らなければならない。

 俺の周りには誰も居ないし、他のプレイヤーは近くに居たプレイヤーと話し合いしてるから、間に割り込みずらい。

 

「ソロの欠点がここで出てきたよ」

 

 さて、一体どうしようかと周りを見渡すと、何処かで見た事ある顔の少年とフードを被ったプレイヤーが居て、少年はかなり焦って見渡してフードの人と組んでいた。

 

「すまん、俺もあぶれたから、パーティーに入れて貰っても良いか?」

「あ、あぁ、構わない」

「ありがとう」

 

 そう言って、キリトからのパーティー申請が届き、それのOKボタンをクリックする。パーティーが組まれたことを証明するかのように、視線だけを左上に向けると、やはりKiritoの名前とHPが、その下にAsunaの名前とHPが表示された。

 

「よーし、そろそろ、組み終わったかな。じゃ「ちょおまってんか」」

「ワイはキバオウってもんや、ボスと戦う前に言わせて貰いたいことがある」

 

 そのキバオウってプレイヤーが現れた。多分、テスターに詫びでも入れさせたいんだろう。その行為は、ボス戦をする前に戦力を削っている事をキバオウは理解してるんだろうか?

 

「この中に今まで死んでいった2000人に詫びを言わなあかん奴らがおるはずや!」

「キバオウさん、君の言う奴らとは、元βテスターの人達のこと、かな?」

「決まってるやないか。β上がりの者は、こんくそゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった。奴らは美味い狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーと知らんぷりや。こん中にもおるはずや、β上がりの奴らが。そいつらに土下座させて、ため込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして、命は預けれんし、預かれん」

 

 はぁ、嫌な予感程、よく当たるもんだな。流石にそれは言い過ぎだと思ったので、俺は言い負かしてやろうと思い、声を出そうとしたが、何だか、渋い声のプレイヤーに先を越されてしまった。

 

「発言いいか?」

 

 ペットスキンの黒人みたいなプレイヤーは立ち上がり、キバオウの前に立った。

 

「俺の名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたい事はつまり、元βテスターが面倒見なかったからビギナーが沢山死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろと。と言う事だな」

「そ、そうや」

 

 エギルがそう言うと、キバオウも少しビビりながらも頷いた。エギルはそれを見たらズボンの後ろポケットに手を入れて、ガイドブックを取り出していた。

 

「このガイドブック、あんたも貰っただろ? 道具屋で無料配布してるからな」

「もろたで、それがなんや」

「配布していたのは、元βテスターたちだ」

 

 エギルの言葉を聞いた知らなかったプレイヤーは先程と同じように、驚いていた。キバオウも知らなかったようで一歩後ろに下がった。

 

「良いか? 情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに沢山のプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて俺達はどうボスに挑むべきなのか。それがこの場で論議されると俺は思っていたんだがな」

 

 エギルが言いたいことを言ったら、キバオウの方に向いた。キバオウは何も言い返せそうになく、小さくうなり声を上げて、渋々と言う雰囲気を存分に表に出しながら、近場の椅子に座り、エギルもその近くに座った。

 

「よし、じゃあ、再会していいかな?」

 

 ディアベルの言葉に声は出さずとも、頷いた。

 

「ボスの情報だが、先程、例のガイドブックの最新版が配布された。それによると、ボスの名前はイルファング・ザ・コボルドロード、それとルインコボルド・センチネルの取り巻きが居る。ボスの武器は斧とバックラー、四段あるHPバーの最後の一段が赤くなると曲刀カテゴリーのタルワールに武器を持ち換え、攻撃パターンも変わるという事だ」

 

 アルゴ、βテストの時と変更点が分かってないのに、ガイドブックを出したのか? いや、それとも分かったから、情報を出したのか? あぁ、分からねえ、βテスターじゃなかったのが、口惜しい。それから、ディアベルの話す言葉を聞いていた。

 

「攻略会議は以上だ。最後にアイテム分配についてだが、金は全員自動均等割り、経験値はモンスターを倒したパーティーのモノ、アイテムはゲットした者の物とする。異存はないかな?」

 

 ディアベルの言っていた事は確かに必要だ。アイテムの分配をゲットした人の物にしない限り、必ず争いが起こるだろうから。他のプレイヤーも異存はない様で、誰もが頷いていた。

 

「よし! 明日は朝10時に出発する。では解散!」

 

 ディアベルの号令と共に、今回の攻略会議は終了となった。他のプレイヤーはパーティー内で話し合いをしたり、アイテムの補充に向かうのか、各自の自由にしていた。

 

「キリト、俺はポーションの補充や装備のメンテしに行くわ、また明日、10時に」

「おお、明日はよろしく頼むな」

 

 俺はキリトに挨拶をして、その場を離れ、ポーションの補充や迷宮区で手に入れた素材で武器と盾を強化しに行く。盾はトールバーナで店売りしてた三角盾(カイトシールド)を買っていた。そして、強化も終わり、時間帯も良い頃合いになった所で空いている宿屋に入り、集合時刻に遅れない様に強制目覚ましをセットしてから睡眠に着いた。

 

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