ソードアート・オンライン (仮)   作:ナウ

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1層ボス戦

 翌日の12月3日、午前9時50分、広場には昨日集まっていた全員、時間に間に合うように集合していた。

 何だか畏縮しているキリトが居たのが見えたので、挨拶しに行こうと思ったら、凄く不機嫌そうなオーラを纏ったアスナも隣に居た。

 

「………おはよ」

「おはよう!」

 

 アスナに逃げる様に俺の傍に来たキリトに俺は耳打ちした。

 

(おい、なんで彼女、あんなに不機嫌そうなんだ?)

(サクラ、聞かないでくれ、お願いだ)

 

 俺の小声に、帰ってきた返答は声が震えていたので、聞かないでおいた。聞いたら、戻れなくなりそうだったから。そして、ディアベル達が出発した、俺たち3人はその後ろを付いて行く。第1層・森のフィールドに入ったところで、キリトが確認してきた。

 

「確認するぞ、俺たちの担当はルイン・コボルド・センチネルって言う、ボスの取り巻きだ」

「分かってる」

「問題ない」

「俺が奴らのポールアックスをソードスキルで跳ね上げさせるから、すかさずスイッチで飛び込んでくれ。サクラは周囲の警戒と他のコボルドが向かってきたら、足止めか、出来れば倒してくれ」

「了解」

「スイッチって?」

「もしかして、パーティー組むのこれが初めてなのか?」

 

 キリトの確認を聞きながら、自分のやるべき事を今一度、再確認した。俺は周囲の警戒と向ってきた取り巻きの討伐だった。アスナがスイッチの事を知らなくて、キリトが少し驚きながら、パーティー経験が無いのかと聞くと、アスナは小さく頷いた。

 

「な………」

「マジか」

 

 俺とキリトはアスナの頷きを見て、驚いて足を止めてしまった。アスナは少し歩いて、こちらを振り向いた。それを見たキリトは肩を落とした。

 

「仕方ないよ、キリト。道すがらキリトが教えて行けばいい」

「あぁって、面倒事を俺に押し付けるな」

 

 そして、現在、ボス部屋まで誰も死なずに辿り着いた。スイッチやポットローテの事も教えていた。キリトってなんだかんだ言っても面倒見が良いんだなって思った。

 

「サクラ、周囲の警戒、ありがとう」

「このくらいなら問題ないよ。そっちこそ、アスナに教えるのお疲れ様」

「聞いてくれみんな、俺から言う事はたった一つだ。勝とうぜ!」

 

 俺らが話している時に、ディアベルがボス部屋前に立って、俺たちに向けて、お言葉を発した。…ただその一言だけで全員の気持ちが1つになるのを感じた。

 

「行くぞ!」

 

 ディアベルは扉を開きボス部屋へ足を踏み入れる。すると、少し進んだ所で、部屋に明かりが灯り、奥のウサギのような亜人の姿がハッキリと見えた。

 

〈イルファング・ザ・コボルドロード〉

 

 コボルトロードは俺たちを認識すると猛々しい方向を放ち、周りに取り巻きのコボルドを3匹ポップさせた。

 

ディアベル「戦闘開始!!」

 

 それと同時にディアベルの掛け声で全員、敵に向かい突撃して行く。それから、数分が経った。

 

「A隊、C隊、スイッチ! …来るぞ! B隊、ブロック!」

 

 各部隊はディアベルの指示に従って、交代したり、防御したりしていた。俺は周囲を警戒しながら、キリト達に近付かないようにしながら、他のパーティーの迷惑にならない様に立ち回っている。

 

「すまん、回復終わった」

「なら、そっちのコボルドは任せても?」

「あぁ、サポート感謝する」

「D、E、F隊、センチネルを近付かせるな!」

 

 ディアベルの指示が入り、俺はコボルドを倒すとキリト達の方を見た。問題なくコボルドを倒していった。と言うか、アスナは初心者だと思っていたけど、結構な手練れだった。早すぎて剣先を見る事が出来なかった。キリトは嬉しそうにしていたけど、コボルドがリポップして、キリトに襲い掛かろうとした。

 

「GJ(グッジョブ)」

「そう簡単に攻撃を入れさせない、キリト、スイッチ!」

「おう!」

 

 俺が護り、キリトとアスナが攻撃と言う流れが出来上がりつつあった。コボルドの攻撃をガードしながら、ボスのHPバーを確認する。ボスのHPバーは4本の内の3本が削れていた。順調にボスにダメージを与えているんだと確認を終えて、周囲の警戒を怠らず、目前のコボルドに集中した。

 

「サクラ、GJ」

「キリトもね」

 

 キリトはアスナの方に行き、コボルドを一緒に倒していく。俺は周囲の確認をしつつ、リポップしたコボルドを引き付けておく。

 

「サクラ、後ろだ!」

 

 キリトの声に俺は後ろを振り向きたかったが、目の前のコボルドがソードスキルを使ってきたから、盾で防ぐしかなく、無防備な所を、ポールアックスの一撃が入りそうだったが、ギリギリ、片手剣で受け流しが間に合い、耐えきった。

 

(これでも、囲まれた時の対処法は、囲まれながら覚えたんだ、そう簡単にダメージを受けると思うな!)

 

 それから、2匹の攻撃を武器や盾で防御しながら、他のパーティーの方に行かない様に攻撃を入れて、憎悪値(ヘイト)を溜めながら、敵の攻撃を引き付ける。

 それでも、敵の攻撃に合わせる様に攻撃を入れていく。それで目前のコボルドを倒して、前にステップをしながら半回転し、後ろにいたコボルドには先程の恨みを込めて、スラントを叩き込む。

 

「大丈夫か?」

「大丈夫だ、ポーションも飲んだからHPも満タンまで持って行けた」

 

『グォォオオオ!!!』

 

 コボルトロードがいきなり咆哮を上げたので何事かとボスに振り向くと、ボスのHPバーが赤色になり、斧とバックラーを放り投げて、腰に装備していた。タルワールを取り出そうとした。

 

「情報通りみたいやな」

「下がれ、俺が出る!」

 

 キリトはディアベルの言葉を聞き、ディアベルの方を向いていた。俺もコボルドを攻撃しながら、ディアベルの方を見た。腰に装備した武器を見て、俺とキリトは声を上げた。

 

「ダメだ! 全力で後ろに飛べ!」

「βの時と、武器が違ってる!」

 

 その後、ディアベルはソードスキルを発動させ、突っ込んで行ったが、ボスもソードスキルを発動させたのか、ディアベルのソードスキルが当たる前にボスに斬られディアベルのソードスキルはキャンセルされた。まだ、ボスのソードスキルは終わっていないのか、ディアベルが吹き飛ばされているところに追いつき、背中を斬り上げ、俺たちの近くに落ちた。

 

「ディアベル!!」

「ポーションを!」

 

 俺とキリトはディアベルの傍に行った。キリトはディアベルを抱えた。俺はポーションを取り出して、キリトに渡した。キリトはディアベルの回復をしようとした。

 

「ディアベル、何故一人で」

 

 だけど、ディアベルはポーションを手で押さえて、受け取ろうとしなかった。ディアベルのHPが無くなっていくのを見ていた。

 

「お前たちもβテスターだったら、分かるだろ?」

「ラストアタックボーナスによる、レアアイテム狙い。お前もβ上がりだったのか」

「…頼む、ボスを、ボスを倒してくれ。………みんなのために」

「ディアベル!」

 

 ディアベルは死ぬ間際まで、みんなの事を思っていた。そして、HPが全損して、アバターに罅が入り、砕け散った。それを俺とキリトが見届けた。キリトは立ち上がった。俺も後に続いて、キリトの右側に立ち上がり、アスナはキリトの左側に立った。

 

「行くよ」

「私も」

「頼む」

 

 俺達は短くやり取りをして、ボスに向けて走り出した。

 

「手順はセンチネルと同じだ」

「分かった」

「ボスの攻撃は俺が弾く」

「スキルのタイミングは指示する!」

「分かった」

 

 キリトの声を聞きながら、俺が2人の前を走りながら盾を構える。ボスはソードスキルを使い、俺たちに襲い掛かった。

 

「今だ!」

「はあああああ!!」

 

 俺の盾がボスの攻撃を受け止める。重い、盾が持っていかれそうだった。だけど、もっと声を張って、ボスの武器を弾き飛ばす。

 

「うおおおお!! スイッチ!!」

「はあああ」

「うおおお」

 

 ボスの攻撃を弾いて、アスナとキリトがソードスキルで攻撃をしようとしたところ、ボスが弾かれた武器をそのまま、斜めに振り下ろしていく。それに気付いたキリトは、声を出して、彼女の名前を呼んだ。

 

「アスナ!」

 

 アスナはギリギリ、ボスの攻撃を回避したが、フードが壊れ、その姿を現した。キリトとアスナの攻撃を受けたボスが、後ろに弾き飛ばされた。

 

「次、左斜め上!」

「はああ!!」

「アスナ!」

 

 俺はキリトの言葉に従い、次の攻撃を弾いていく。アスナとキリトは攻撃をして、ダメージを稼いでいくが、2人の攻撃では少ししか、ダメージを与えられていない。

 

「つ」

「それは、一度見たぁぁ!!」

 

 キリトの言葉の前に俺は、二人の前に立ち、ソードスキルだろうが、通常攻撃だろうが、盾と片手剣で、受け止め弾き飛ばしていく。だけど、何度も攻撃を受け止め、弾き飛ばしているせいで、精神に疲労が蓄積されていく。

 

「はぁはぁ、ま!」

 

 俺はバーチカルでボスの攻撃を弾こうとしたが、フェイントに引っ掛かり、下から切り上げられた。後ろにいたキリトに衝突した。キリトを巻き込んで倒れこんだ。キリトが立ち上がろうとしたが、ボスがソードスキルを使用して、俺たちに向かってきた。俺は最後の意地でカイトシールドを掲げた。

 

「回復するまで、俺たちが支えるぜ!」

「あんた」

「すまん」

 

 だけど、攻撃は来なかった。それはエギルがソードスキルを使って、ボスの攻撃を弾いたからだ。俺はキリトから退いて、赤色のHPバーだったのでポーションを飲んだ。エギルのパーティーがボスに攻撃を仕掛けていくが、武器で防御されて、エギル達を薙ぎ払った。そのまま、ボスは頭上にジャンプして、武器に薄紫色の光が纏った。

 

「危ない!」

 

 キリトは言い放ち、多分、ソニックリープを使った。

 

「届け!」

 

 キリトのソニックリープを使い、ボスの腹付近に直撃させ、ボスのソードスキルをキャンセルさせた。

 

「アスナ、サクラ、最後の攻撃、一緒に頼む!」

「「了解!」」

 

 ボスが墜落し、キリトは着地して、ボスに向かって走り出すと同時に、俺たちに声を掛けた。俺とアスナはそれに応じて、キリトの元に全力疾走した。ボスは未だに、諦めていないのか、赤色の光が武器に纏い、攻撃してきた。

 

「2人に、攻撃は通さない!」

 

 俺の言葉と同時に、ボスのソードスキルと俺のソードスキルがぶつかり合い、相殺された。その直後、アスナの細剣のソードスキル、リニアーで攻撃し、その後のキリトの片手剣のソードスキル、バーチカル・アークの真上から斬り下ろし、からの垂直に斬り上げの攻撃によって、ボスを倒すことが出来た。

 

 Congratulationの文字が、ボス部屋の中央にデカいく表示されていた。

 

「や、やったああああ!!!!」

 

 一人の喜びの声が上がり、周りに伝染でもしていったかのように周囲も喜んでいった。肩を組む奴、両腕を天高く伸ばしている奴、仲間とハイタッチしている奴、様々な喜びがそこにはあった。

 

「はぁはぁ」

「キリト、はぁはぁ、大丈夫か?」

「お疲れ様」

 

 俺とアスナ、エギルは、片膝を着いて、息を荒くしているキリトの元に行き、苦労を労った。キリトは報酬が出ている画面を見ていた。

 

「見事な剣技だった、コングラチュレーション。この勝利はあんたの物だ」

「いや………」

「なんでや! なんで、なんでディアベルはんを見殺しにしたんや」

 

 息を整え、キリトは何か言おうとしたが、他のプレイヤーの拍手によって、遮られた。そして、キバオウの言葉で場が静まった。

 

「な、に?」

「見殺し?」

「そうやろが! あんたらはボスの使う技しっとたやろが!! 最初からあの情報を伝えとったら、ディアベルはんは死なずにすんだんや!!」

 

 キバオウの言葉で、さっきまでの雰囲気が一気に険悪なものに変わった。他のプレイヤーはキリトと俺に疑いの眼差しを向けてくる。

 

「きっと、あいつら2人とも元βテスターだ! だから、ボスの攻撃パターンも全部知ってたんだ。知ってて隠してたんだ! 他にも居るんだろβテスターども、出て来いよ!!」

 

 キバオウの近くに居た槍使いの言葉に、他のプレイヤーが疑心暗鬼に軽く陥り、プレイヤー同士睨み合い、疑い始めた。俺はこの時、何が出来るか、どうすればいいのか。分からず、立ち往生していた。

 

「くはははは、あはははははは」

 

 唐突の笑い声に、この場に居たプレイヤー全員が笑い声の方を向いた。

 

「元βテスターだって、俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

「な、なんやと!」

 

 キリトはβテスターを馬鹿にしたような口ぶりで言葉を紡いでいく。その言葉にキバオウが文句を言った。その文句を聞きながら、キリトはキバオウが見えるまでゆっくり、歩いて行く。そこで、俺はキリトが何をやりたいのかを理解した。

 

「SAOのβテストに当選した1000人の内の殆どはレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたらの方がまだマシさ。だけど、俺はあんな奴らとは違う。俺がボスの刀スキルを知っていたのは、もっと上の階層で、刀スキルを使う敵とイヤと言うほど戦ってきたからだ」

「な。何だって」

「それに、サクラがβテスター? あははは! 笑わせて貰ったよ。サクラは俺が戦い方をレクチャーしたんだ。このくらい出来なきゃ教えた甲斐が無いよ」

 

 キリトの言葉に周囲のプレイヤーが批判的な表情を作り出す。

 

「他にも色々知っているぜ。情報屋なんか必要ないほどにな」

「な、なんやそれ‥そんなんβテスターどころやないやんか。もうチートやチーターやないか」

 

 キバオウはチート、ズルと言う言葉を使ってきた。そして、周りのプレイヤーからも非難の声が上がってくる。その声の内、「ベータのチーター、だから、ビーターだ!」などと言う声も上がってきた。

 

「ビーター、いい呼び名だな。今後、元テスター如きと一緒にしないで欲しいな」

 

 キリトはそう言いながら、メニューウインドウを表示していた。そして、先程まで持っていなかった防具を装備した。多分、あれがディアベルとキリトの言っていたラストアタックボーナスによるレアアイテムなのだろう。

 

「2層の転移門はアクティベートしてやるよ。付いて来るなら、死ぬのを覚悟しろよ」

 

 そう言って、キリトは話を切り上げて、

 キリトは次の階層に上がるためドアの元に行く階段を登る途中、キリトは2つの足音が聞え振り返った。

 

「待って、貴方、戦闘中に私の名前、呼んだでしょ」

「ごめん、呼び捨てにして。それとも読み方違った?」

「どこで知ったのよ」

 

 キリトが少し振り向いて、レクチャーしていた。アスナは少しだけ目を細めて、自分のHPバーを見ているようだった。俺もアスナの後を追って、キリト達に追いついた。

 

「キ、リ、ト。キリトにサクラ。これが貴方達の名前?」

「あぁ」

「うん」

「フフッ、なんだ、こんな所にずーと書いてあったのね」

「君らは強くなれる。だからもしいつか、誰か信頼できる人にギルドを誘われたら、断るなよ。ソロプレイには絶対的な限界があるから…」

「なら、貴方は?」

 

 キリトはアスナの質問に何も答えず、一人で階段を登っていく。そして、キリトがメニューウインドウのパーティーの項目から解散の文字を押して、OKをし、ドアを開けて中に入っていく。そして、次の階層に足を踏み入れていく。

 

「じゃあ、俺はキリトの方に行くよ」

「そう」

「それじゃ、次も出来たらパーティーを組もうぜ、3人で」

 

 俺はそう言って、キリトの後を追って、階段を登っていく。キリトに追いついたのは、キリトが2層の扉を開いて、黄昏れていたところだった。

 

「βテスターに向かう不信や不満はキリトに向かった、ビーターと呼ばれるお前に」

「…サクラ、か。何で来たんだ。来るなって言っただろ」

「来るなとは言ってないよ。死ぬ覚悟があるなら、来いって言ったんだ」

「……そうだったかな?」

 

 俺のセリフを聞いたキリトは俺の方を見て言った。キリトの表情は悲しいや辛いとかの、負の感情が渦巻いているのを確認した。

 

「ボスの時、助けてくれてありがとう。一人だったら、絶対にボスの攻撃を止められなかったよ」

「こっちこそ、ボスの攻撃を止めてくれて、助かった」

「そっか、……ねぇ、キリト。今から言いたい事言うけど、いやだったり、不快な思いをしたら、言ってくれ」

「サクラ?」

「俺はまだ弱い、キリトをまた、守れなかった。だから、もっと強くなる。キリトを守れるくらいに、キリトと肩を並べて戦えるくらいに、強くなってやる。待っとけよ。独りにはさせないからな」

 

 と、俺は澄んだ声で高らかにキリトに向かって、宣言した。キリトは意味不明な様子で、多分だけど、頭に?マークが浮かんでいるんじゃないかと思う、そうであって欲しい。そして、言った言葉を思い出し、俺も恥ずかしくて、顔を赤めながら、後ろの1層のボス部屋に回れ右した。

 

「それじゃ、アスナにも言ったけど、次も出来たら3人でパーティーを組もうぜ」

「え、サクラ!?」

 

 俺はキリトの言葉を無視して、ボス部屋に向かって、走った。うん、羞恥心が無いって怖いわ。あのままだと、めっちゃ、気まずい雰囲気になった可能性があったからな。

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