背教者ニコラス討伐から、約2ヶ月が経った2月17日。俺は最前線でとある人物を街の門前で待っていた。
「よっ、サクラ」
「あぁ、キリト、遅かったじゃないか」
待っていた人物とは、ニコラス討伐から何かとコンビを組んでいるキリトだった。良くも悪くもお互い、泣いた姿を見合った仲なので、前より一層、親しくなった。
「サクラ、ちょっと最前線から離れても良いか?」
「いきなりどうした? 説明を忘れてるぞ」
「あぁ、悪い。転移門の前に居たプレイヤーに頼まれて、オレンジギルドの捕縛依頼を受けたんだ。だから、ちょっとの間、最前線から離れるんだ。出来ればサクラに手伝ってほしいんだけど、無理強いはしないよ」
「成程、オレンジギルドの捕縛か、殺害なら手伝う気は無かったけど。捕縛なら手伝うよ」
俺はキリトの様子が少し変だったからか、何かあったのかと問いかけると、オレンジギルドと呼ばれる犯罪をするギルドがあり、そのギルドの捕縛依頼を受けたそうだ。そして、俺に手伝ってほしいとお願いしてきた。俺はキリトに恩があるし、少しでも手助けができるならと思い、受けた。
「良いのか?」
「レベル的には問題ないよ。それに急いで攻略しないと言う訳でもないし、手伝うさ」
「ありがとう。助かるよ」
「お礼はいいよ。それより、そのオレンジギルドの名前は?」
「あぁ、オレンジギルド、タイタンズ・ハンドだ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
それから、3日が経ち、俺とキリトはアルゴにタイタンズ・ハンドの事を調べて貰って、現在35層にいるとあるパーティーにロザリアと呼ばれるタイタンズ・ハンド所属の女性プレイヤーが品定めのために活動しているらしい。
「35層か、まさか、2ヶ月位でまたここに来るとは思ってなかったよ」
「確かにそうだな」
「それで、タイタンズ・ハンドが獲物にしようとしているパーティーはこの迷いの森で活動しているんで良かったんだよな?」
「アルゴの情報通りならな」
「だったら、手分けして探そう。その方が効率が良いし、何かあったら連絡入れてくれ」
「了解」
俺とキリトはそう話して、二手に分かれて、タイタンズ・ハンドが獲物にしようとしているパーティーを探し始めた。
「そう言って、二手に分かれたけど、俺、ロザリアの姿知らねぇわ」
そう思い至ったのは、分かれてから20分が経った後の事だった。そう思いながらも、ドランクエイプを一撃で倒していく。まあ、レベル差があるし、アイテムも要らない物ばかり落とすから、正直、相手にするのが面倒になってきた。
「ん? キリトからのメッセージか」
キリトから、メッセージを受け取り、メッセージを読むと、ヘルプの3文字だけだった。俺はキリトが居る方面に走って行った。
「キリト、何があった!?」
「あ、サクラ…」
俺がそこで見たものはキリトが立って困っていながら、少女がピナと言いながら泣いている姿だった。それを見て、俺は何があったのか推察した。
「仲間が、やられたのか?」
「……ゴメン……ゴメンね……、ピナ……」
「………彼女は〈ビーストテイマー〉みたいなんだ。オレは……彼女の友達を助ける事ができなかった」
キリトは悲しそうにそう話した。どうやら、モンスターに襲われていた少女を、キリトは助ける事が出来た様だが、そのピナと言う名のモンスターは助ける事が出来なかったと言う事だ。
「い、いえ…… 私が、馬鹿だったんです……。1人で、この森を 抜けれる……って思い上がってたから……私のせいで……私を庇って……ピナが………」
「落ち着いて、その羽根だけど アイテム名が何か設定されているか?」
キリトが落ち着いてきたとは言え、まだ取り乱して、涙で顔を覆われている少女にそう聞いた。……彼女はキリトに言われるまま、羽根のアイテムを確認していく。
「あ、ッ……」
少女は羽根のアイテムを確認して、〈ピナの心〉と言うアイテムだったのを見た。
「うっ……ううっ……ピナっ……ピナぁぁッ………」
「あっ 待った待った! 落ち着いて、ピナの心が残っているのならまだ蘇生の余地があるから」
「……え!?」
泣き出す寸前の少女に慌ててキリトがそう答える。この話が発生したのは、最近なのだが 上層では有名な話だ。下層~中層間では、まだ出回っていない可能性が高い。だからこそ、少女は涙を流している。
「最近判ったことだから、まだあんまり知られてないんだ。47層の南に思い出の丘って言うフィールド・ダンジョンがある。まぁ、名前の割りに難易度が高いんだけどな……。そこのてっぺんで咲く花が、使い魔蘇生のアイテムらしいんだ」
「ほっ ほんとうですか!?」
その言葉を訊いて、少女は思わず腰を浮かせて、叫んでいた。悲しみにふさがれた胸の奥から希望の光が差し込むのが自分自身にもよく判るし、生気が戻ってきた様にも感じた。だけど、最大の問題点がある事にも同時に気づいた。
「よ、47層……」
「ガアアアアアアッ!!!」
少女がいる層は35層それから12層も上の47層に行くには、今の自分のレベルでは安全圏とは到底言えるものではない。多分、今のまま47層の思い出の丘に行けば、モンスターに倒されるだろう。その少女の後ろ側から、ドランクエイプ5体の一番前が咆哮して、少女に襲い掛かってきた。
「ドランクエイプか」
「え?」
俺は少女の前に立って、盾を構え、ドランクエイプの攻撃を完全に防ぎきる。そして、防ぎきった先から、キリトが一撃で倒していく。
「ナイス」
「そっちこそ」
俺たちはドランクエイプを全滅させてから、ハイタッチをした。そして、少女の方を向いて話の続きをした。
「それで、話を戻すけど。実費、経費を貰えば、俺達が行ってきても良いんだけどなぁ……。 残念だが使い魔の主人が行かないと肝心の花が咲かないんだ」
「いえ……情報だけでもありがたいです。ほんとにとても。がんばってレベルを上げればいつかは……」
「いつかじゃ、駄目なんだ」
「え? そ、それって、どういう意味なんですか?」
「…蘇生が可能なのは死亡から3日以内。それ以降は《心》が浄化して。……変化して、《形見》に変わる。変われば、現時点で復活の方法は無い」
俺は少女がやる気を出したところで、そのやる気を叩き落すような言い方をした。だけど、これが蘇生できる条件なのではっきりと言わなければならなかった。
「っ……そ……そんなっ……」
「ピナ、ごめんね……」
「大丈夫、まだ3日も残ってる」
キリトはそう言いながら、俺の方を向いてきた。どうせ、助けたいと思っているのだろう、だから、俺も頷いて、助けることを手伝うことにした。それを見たキリトは、少し嬉しそうにして、トレード覧に装備と武器を入れていった。
「あの…」
「この装備で、4,5レベル分は底上げできるし、俺達が同行すれば、そう難しいことじゃない」
「…どうして、そこまでしてくれるんですか?」
キリトの行為に少女は戸惑いながらも、疑問を問いかけてきた。キリトは、少し恥ずかしそうに下を向いた。
「笑わないって…約束するなら」
「笑いません」
「君が、妹に似てたから」
キリトの言葉に少女は笑ってしまった。うん、これは笑っても仕方ないと俺も思った。
「わ、笑わないって言ったのに…」
「ご、ごめんなさい。それで、あなたは?」
「俺か? 俺はキリトが助けたがってたから、それにちょっと思う所もあったしな………」
俺は誤魔化さず言った。少女は少し驚いて、そして、ようやく笑顔を見せた少女に安心した。
「よろしくお願いします。助けてもらったのに、その上こんな事まで……」
「あの……こんなんじゃ、全然足らないと思うんですけど……」
「いや、お金は良いよ。余っていたものだし、オレ達がここに来た目的と被らなくも無いから」
「右に同じく」
少女はキリトが出した、トレード覧に所持金を出してきた。正直、お金が欲しくて、やった訳ではないのでそのお金を受け取らず、キリトはトレード覧のOKボタンを押して、アイテムを少女に渡した。
「何から、何まですみません、私はシリカって言います」
「俺はキリト、こっちはサクラだ」
「よろしく」
「はい、キリトさん、サクラさん、よろしくお願いします」
そして、ここでやっと少女の名前を聞くことが出来た。少女がロザリアではなかった事に多少の安堵を示しながら、流石に暗くなってきたので、迷いの森を抜け出そうという方針になり、俺が前衛、シリカが中衛、キリトが後衛の形で、前後から出て来るモンスターを一掃しながら、迷いの森を抜け出した。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
迷いの森を抜け出した俺達は、35層にある主街区、ミューシェに戻ってきた。キリトは街に入ってから、物珍しそうに周囲を見て回っている。
「おっ! シリカちゃん発見!」
「随分遅かったね? 心配したんだよ!」
街に入ってから、多少歩いたところで、男性プレイヤー2人はシリカに話しかけてきた。なんだか、馴れ馴れしくて、俺はちょっと遠慮したかった。
「今度さ? パーティを組もうよ! シリカちゃんの行きたい場所、どこにでも連れて行ってあげる!」
「あ、あの。あたし、暫くこの人たちとパーティを組むことにしたので。すみません」
シリカは俺とキリトの両腕を両手でとって、謝った。謝ったが、男性プレイヤー2人は口々に不満の声を上げながら、胡散臭そうな視線を俺とキリトに投げかけた。まあ、キリトは装備も鎧を着ている訳ではないし、ロングコートであり、背負っているのはロングソード。持てる筈なのに盾を装備していない見た目だ。これで強いとは思えないんだろう。俺も黒と蒼のロングコートで鎧は着ていない、カイトシールドを背負っていても、あまり強そうには見えないんだろうな。
「おい、あんた達。見ない顔だけど、抜けがけはやめてもらいたいな。オレらはずっと前から、この子に声をかけてたんだぜ」
「そう言われても、成り行きだしな?」
「そうだね、成り行きだったんだ」
キリトは男性プレイヤーの言葉に、困った様子で言っていく、俺もキリトに合わせて言っていく。
「あ、あの、 あたしから、頼んだんです。すみませんっ!」
「そうなんだ。だったら、仕方がないか…」
男性プレイヤーはそう言った。分別があるプレイヤーで助かった。もしかしたら実力行使をしなければならなかったのだから。
「……すみません。迷惑かけちゃって……」
「実害はなかったし、問題ないよ。キリトは?」
「こっちも、大丈夫だよ」
シリカは謝ってきたが、謝る必要はなかったので、俺達は何でもない様に言って、この会話を終わらせた。
「それにしても、シリカは人気者なんだな」
「いえ…、……マスコット代わり誘われているだけです。きっと。……それなのに、《竜使いシリカ》なんて呼ばれて……いい気になって……」
「心配ないよ、必ず間に合うから」
キリトはシリカを安心させるように、頭を撫でた。俺はそれを眺めているだけだった。
「はい!」
シリカはキリトに撫でられて、安心できたのか、笑顔で答えていた。そして、しばらく歩いていると2階建ての看板が見えてきた。その看板には、風見鶏亭と書かれており、そこが宿屋だと分かった。
「あ…、ごめんなさい、お2人のホームは?」
「ああ、いつもは50層なんだけど、今更戻るのも面倒だし、サクラ、今日はここで泊まらないか?」
「良いよ。確かに今更戻るのも面倒だしね」
「そうですか! ここのチーズケーキがけっこういけるんですよ!」
シリカが申し訳なさそうに、俺達にホームを聞いてきた。俺もキリトも特定のホームを持っている訳ではないし、基本的に50層で寝泊まりをしているが、何処で泊っても問題ないので了承すると、シリカは嬉しそうだった。だが、風見鶏亭を目の前にしたときに、シリカの表情が曇った。
「あら? シリカじゃない」
「どーも……」
「へぇー、森から脱出できたんだ? よかったわね」
シリカに話かけてきたのは真っ赤中身を派手にカールさせた髪が印象的な女性、こいつがロザリアだった。キリトに視線を向けると、キリトも小さく頷いた。
「でも、今更帰ってきたところでもう遅いわよ。アイテムの分配は終わっちゃったからね」
「私は要らない、って言ったはずです! ―――もう、急ぎますから」
「あら? あのトカゲ、どうしちゃったの?」
シリカがロザリアとの話を切り上げようとしたが、ロザリアの方は簡単に逃がすつもりはない様子で、シリカの傍にピナがいない事を指摘した。
「ピナは死にました。……でも! 絶対に絶対に生き返らせます!」
「へぇ……ってことは、《思い出の丘》に行く気なんだ。……でも あんたのレベルで攻略できるの?」
シリカはロザリアを睨みつけて、宣言する。ロザリアは如何にも『痛快です』と言わんばかりに笑っており、次に小さく口笛を吹いた。
「できるさ、あそこはそんなに難易度の高いダンジョンじゃない」
「3人も居れば、安全マージンに関しては問題なしな」
そこから先の言葉はキリトが紡いだ。もう見てられなくなり、シリカを庇うようにコートの陰に隠す。俺もキリトの横に立ち、横やりを入れる。ロザリアはあからさまに値踏む視線でキリトを、そして俺を眺め回し、赤い唇を再びあざけるような笑いを浮かべてた。
「へぇ……、あんたらも 沢山の男共と同じく、その子にたらしこまれた口? ん~~、見たトコ、そんなに強そうじゃないけど」
「………言いたい事はそれだけか? だったらさっさと退いてくれ、興味のない話を聞かされる程暇じゃないんでね」
俺はキリトより少し前に出て、少しだけ挑発するように言った。先に挑発してきたのは向うからなんだから、少し位やり返しても罰は当たらないだろう。
「何ですって…」
「だから、退いてくれって言ってるんだ」
「ちっ」
ロザリアは俺が何も言い返さないのに舌打ちをして、その場からこそこそと逃げていった。そして、俺達3人は、宿屋一階のレストランに入った。
この風見鶏亭は一階がレストランになっているのだ。チェックインを済ませ、カウンター上のメニューをクリックしてそしてテーブルに俺とキリトが同じ向きの席に座り、シリカが反対側の席に着いた。
「さっきは助かったよ、サクラ。俺じゃ、あそこまで簡単にはいかなかっただろうから」
「別に、勝手に向う側が逃げていったんだ。俺は何もしてないよ」
「そっか、だったらまずは食事にしようか」
丁度その時だった。ウェイターが湯気の立つマグカップ3つをもってきた。目の前に置かれたそれには不思議な香りが絶つ赤い液体が満たされている。パーティを結成した記念を祝して、とキリトの一声を訊き、シリカと俺もカップを掲げ、こちん……と合わせた。
「わぁ…。美味しいです。これ」
「ルビー・イコールだな、キリト、まだ飲み終わってなかったのか?」
「ルビー・イコール?」
シリカはカップの中身を、口の中に一含みし、喉に通して、違和感を覚えたようだ。俺も一度キリトと飲んで以来、飲んでいなかったワインにも似た味の飲み物を言い当てた。シリカはこの飲み物の事をキリトに聞くと、キリトは笑顔で答えた。
「NPCレストランは、ボトルの持ち込みも出来るんだよ。俺の持っていた《ルビー・イコール》って言う飲料アイテムさ。カップいっぱいで、敏捷力(AGI)の最大値が1上がるんだぜ」
「え、ええ! そっ……そんな貴重なものを……」
「ん、酒をアイテム欄に寝かせてても味が良くなるわけじゃないしな。オレ……知り合い少ないから、ワインを開ける機会があまりないんだ」
「スルーかよ。まぁ、確かに知り合い少ないもんな、お前」
「サクラは黙っててくれ」
シリカがカップをテーブルに置いて、申し訳なさそうな表情をした。そしてキリトは少しだけ おどけたように肩を竦める。俺はキリトの言葉に肯定したら、キリトから少しだけ睨みつけられてしまった。………解せぬ。
「……でも、なんで、あんな意地悪を言うのかな……。キリトさんやサクラさんは凄く優しいのに……」
「そうか、シリカはMMOを。ネットワークゲームはSAOが初めてなのか?」
「はい……そうです」
キリトが聞くように、シリカは、このSAOが初めてだった。話題作だからやってみたい。と思ってのプレイだったのだろう。プレイの動機はさておき、MMO初心者だからこそ、その本質を知らない様なのだ。
「どんなオンラインゲームでも、人格が変わるプレイヤーは多少なりとも存在する。中には悪人を演じるやつもいるから」
「……サクラの話も、尤もだよ。俺達のカーソルは緑色だろ、だが、犯罪を行うと、カーソルはオレンジに変化する。その中でも、殺人、PK(プレイヤーキル)を犯した者は、レッドプレイヤーと呼ばれる」
「人殺しなんて……!?」
「本来のゲームなら、悪を気取って楽しむ事も出来た。でも、このゲームは遊びじゃないんだ……」
「……すまない」
俺らが話す事をシリカはしっかりと聞いていた。聞きたくない部分もあるだろうか、それでも聞いていた。
シリカに謝った。そして、俺達は顔を伏せた。そして、シリカはテーブルから身を乗り出しかねない勢いで立ち上がる。勢いで、勢いに身を任せ、心に思うままに言葉を発したように見えた。
「いいえ! お2人は良い人です! だって……だって!」
シリカは、しっかりと俺達の目を交互に見て。
「だって、お2人は、私を助けてくれました! 私を、元気付けてくれました! 私の恩人なのですからっ!」
その言葉に俺とキリトは少しだけ、心が軽くなったのを感じた。多分、それは本心から言ってくれた言葉だったのだからだろう。
「…これじゃ、どっちが慰めてるか、分からないな」
「そうだね、だけど、ありがとう」
「なっ……なんでもないですっ! あっあたし、おなか減っちゃって……チーズケーキ遅いですねっ!」
シリカは、俺達を見た後、何故か顔が赤くなっていた。そして露骨に話題を逸らしてくる。
「あっ あの~~! まだなんですけどぉ~~!!」
それから、シチューと黒パンを食べた。その様子は先程の暗い感じではなく、笑いながら雑談したり、俺達の事を多少教えたりなどと言った。ゆったりとした時間が流れた。
「あ、本当にチーズケーキ美味しいな」
「そうでしょ! ここのチーズケーキが私は好きなんですよ」
「うん、美味しいな」
そんな感じに、チーズケーキも美味しく食べ終えた。大体、食事が終わったのが8時過ぎたくらいだったので、2階の寝室の方に移動した。2階は広い廊下の両脇にずらりと客室のドアが並んでいる。客室を選べるというシステムは備わっていないから、基本的に部屋位置はランダム仕様だ。俺とキリトは面倒だったため、一部屋しか借りず、ベッドはじゃんけんで決めようという感じになった。
「キリト、シリカに47層の説明をしなくてよかったのか?」
「あ、忘れてた…。シリカ呼んでくる」
「寝てたら、明日の朝で良いかな」
「そうだな」
俺はシリカに47層の説明を忘れていたことをキリトに伝えると、キリトも忘れていたのか、今からキリトはシリカを呼びに行った。それから、5分も経たない内に、キリトとシリカは部屋の中に入ってきた。
「ん? どうした?」
「何でもないです」
「そっか、それなら良いけど」
「そ、それより、47層の説明ってどうすんですか?」
俺はシリカの顔が少し赤かったので、聞いてみると、何でもないと言われてしまった以上、これ以上は何も言えなかった。そして、シリカはどうやって47層の説明をするのか気になる様だ。俺は椅子に座って、結晶アイテムを取り出して、使用した。
「わぁ……綺麗です。なんですか? それは」
「これは、《ミラージュ・スフィア》って言うアイテムだよ」
俺は水晶を指でクリックするとメニューウインドウを呼び出す。そして、手早くOKをクリックすると……球体が青く発光し、その上に大きな円形のホログラフィックが出現した。どうやら、アインクラッドの層ひとつを丸ごと表示しているらしい。街や森、木の一本に至るまで微細な立体映像で描写されている。システムメニューで確認できる簡素なマップとは雲泥の差だ。
「うわぁぁ……」
「綺麗だろ、だけど、見惚れるのは後だ。47層の説明をしていくぞ」
「あ、はい」
「俺の補足説明もあるし、大丈夫だろう」
「あぁ、任せてくれ」
「説明は頼んだ」
それから、キリトは指さしながら、47層の事をシリカに教えていく、俺はキリトの言葉が分かりにくい所などに補足して、説明や、解説を入れていく。そして、話が半分を越えた所で、俺は右手を上げてた。それはキリトに対する合図でもあった。
「誰だ!」
キリトは合図をきちんと理解して、行動に移した。
「聞かれてたようだね」
「そうだな」
「追おうか?」
「いや良い、俺はメッセージを送る」
「了解」
キリトは依頼主にメッセージを書き始めた。俺はその間、ドアを閉めて、周囲の警戒をしていく。
「えっ……で、でもっドア越しになんて……ノックもありませんでしたし、声は聞こえないんじゃ……」
「聞き耳スキルだ。あのスキルは熟練度が高ければ、迷宮区の隠し扉の内側の声も聞き取れるんだ。まあ、真っ当な理由であんなスキルを入れてるプレイヤーは少ないだろうけどな」
「え、そうなんですか?」
それから俺は立って、何時でも動ける状態を作っておく、キリトもメッセージを打ちながら、シリカに背中を見せてゆく。それから、数分も経たぬうちにベットから寝息が聞こえてきた。そして、床にごろ寝し、目を瞑って眠る体制を整えた。そして、ゆっくり意識が落ちて、眠っていく。