ソードアート・オンライン (仮)   作:ナウ

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黒の剣士とおまけの主人公

 それから、昨日食事した下のレストランで朝食を食べてから、35層の転移門がある場所まで移動する手前に回復アイテムの補充を行った。まあ、殆ど使用していないから、買わなくても良いかも知れないが、シリカは買っておいて損は無いだろう。

 

「それじゃ、47層に行こうか」

「はい、あ、でもどこに転移すればいいんでしょうか?」

「転移、フローリア」

 

 光に包まれた瞬間 一瞬の転送感覚に続き、エフェクト光が薄れた途端、俺達の視界に様々なな色彩の乱舞が飛び込んできた。

 

「うわぁぁ………! すごい、……とても綺麗、です」

「まあ、この層は通称、フラワーガーデンと呼ばれてるんだ。街の中だけじゃなく、フロア全体が花だらけなんだ。時間があったら、北の端にある《巨大花の森》にも行けるんだけどな」

「終わってから行くのは流石に時間が少ないし。まあ、花を愛でるなら、一瞬いっただけじゃ物足りないだろう?」

「あはは……そうですね? それはまたのお楽しみにします!」

 

 シリカはまだまだ素敵な場所があると言う事を聞いて、少しだけそれが気になっているような感じで、今は目の前に広がる花壇へと足を運び、そこにしゃがみ込んだ。

 

「それじゃ、早速、思い出の丘に向かおうか」

「はい!」

 

 シリカは花を見るのをやめて、立ち上がった。そして、俺達は街道から離れ、フィールドに出て一呼吸置いた。その先に広がっている広大なフィールドの先に 今回の目的地、そして目的のモノがあるのだから。

 

「シリカにこれを渡しておくよ」

「これって、転移結晶ですか?」

「……フィールドでは、何が起きるかわからない。だから、もし予想外の事態が起きて、オレかサクラが離脱しろって言ったら必ずその結晶で何処の町でも良いから跳ぶんだ。オレとサクラの事は気にしなくて良いから」

 

 俺がシリカに手渡した物は水色の鮮やかなクリスタルで、多分、何度もお世話になったアイテム、転移結晶で、シリカは不安そうに受け取った。キリトも俺と同じ考えだったようで、俺の代わりに説明してくれた。

 

「あ、でも……」

「俺達なら、大丈夫だ」

 

 キリトはシリカの頭を撫でた。震えているのが判ったから、安心できるように。

 

「だから、約束してくれ。……オレは」

 

 キリトは……少し辛そうな表情を作る。

 

「オレは、一度パーティを壊滅に……壊滅にしかけたんだ。二度と同じ間違いは繰り返したくないんだ」

「あっ」

「キリト、傍にいるから、だから安心しろ」

「…ありがとう、サクラ」

「サクラさん、…キリトさん」

 

 キリトの言葉に、俺は肩に手を置いて、静かに言う、シリカは俺達の方を向いて、心配していた。そして、俺、シリカ、キリトの順番で進んでいった。その途中、シリカがキリトに話しかけた。

 

「あ……あのっ。キリトさん」

「妹さんのこと、聞いて良いですか……? 現実の事、聞くのはマナー違反だってわかっているんですけど……その、私に似ているって言う妹さんの事……」

 

 キリトは一瞬顔をしかめたが、直ぐにふぅ……とため息を吐く。

 

「……仲はあまりよくなかったな……」

 

 ぽつりぽつりと話し始めた。

 

「妹って言ったけど、本当は従妹なんだ。事情があって、彼女が生まれたときから一緒に育ったから向こうは知らない筈だけどね。でも そのせいかな……どうしても俺の方から距離を作っちゃってさ。顔を合わすの……避けていた」

 

 嘆息……微かにだが、キリトから伝わってきた。懊悩を抱えている、と思っていたから。

 

「……それに 祖父が厳しい人でね。オレと妹は、オレが8歳の時に強制的に近所の剣道長に通わされたんだけど、オレはどうにも馴染めなくて2年で止めちゃったんだ。じいさんにそりゃあ殴られて……。そしたら妹が大泣きしながら『自分が2人分頑張るから叩かないで』 って俺を庇ってさ。オレはそれからコンピューターにどっぷりに なっちゃったんだけど、本当に妹は剣道打ち込んで、祖父が亡くなるちょっと前には 全国で良いトコまでいくようになっていた。……きっと、じいさんも満足だっただろうな……。だから、オレはずっと彼女に引け目を感じていた。本当はあいつにも他にやりたい事があったんじゃないか、俺を恨んでいるんじゃないかって。そう思うとつい余計に避けちゃって……そのまま、SAOここへ来てしまったんだ」

 

 キリトは言葉を止めると、そっとシリカの顔を見下ろした。

 

「だから、君を助けたくなったのは、俺の勝手な自己満足なのかもしれない。妹への罪滅ぼしをしている気になっているのかもしれないな。……ごめんな」

 

 俺は一人っ子だったから、キリトの言う事は完全に理解できなかった。

 

「……妹さん、キリトさんを恨んでなんかいなかった、と想います。何でも好きじゃないのに、頑張れる事なんかありませんよ。きっと、剣道、ほんとに好きなんですよ。好きに、なったんだと思いますよ!」

「ははは……。なんだか、オレばかり慰められてばかりだな。……そうかな。そうだと良いな」

 

 シリカの励ましによって、キリトの表情が柔らかく、先ほどよりも良い顔になった事は理解できた。

 

「あの、サクラさんの方を聞いても良いですか?」

「まあ、キリトの事を聞いたし、俺も言わないとフェアじゃないかな?」

 

 そして、俺はゆっくり、話し始めた。

 

「現実では、両親は小学校高学年の頃に亡くなったんだ。交通事故だった」

「え…」

「あぁ、もう過去の事だし、受け入れてるから、悲観に思わなくていいよ」

「そ、そうなんですか?」

「まあ、もう数年は経ってるし、心の整理はついてる」

「サクラ、サクラはその髪って自分の意思で伸ばしてるのか?」

 

 俺の言葉に、シリカは聞いてはいけない事を聞いたのかと思ったのか、表情を暗くする。俺自身はもう受け入れた事なのに、そう悲観にされるたくはなかった。そして、キリトは俺の髪の毛を聞いてくる。

 

「しょうもない話だけどね。両親が亡くなってから、学校とか不登校になってね。引き籠りになったんだ。まあ、その引き籠りも小学卒業位まで続いてたんだけど、叔母さんに盛大な説教されて、中学からきちんと学校に行き始めたんだけど、髪切るの面倒になって、そのまま放置してたんだ…。そして、SAOに入る頃には髪を伸ばすのが当たり前になってたんだ。これが髪を伸ばしてた理由、だけど、もっと理由を付けるなら、この髪は両親と同じ髪色だったからね、それを大事にしたかったってのもあると思う。しょうもなかっただろ」

「しょうもないなんて思いません、私の言葉なんて軽いものだと思いますけど」

「サクラ、話してくれて、ありがとう」

「キリト、シリカも、お礼なんて言わないでくれ、俺が喋りたくて喋っただけなんだ」

 

 俺の話も終わり、そのまま、何事もなく道を進んでいたが、暫くしての事。

 

「きゃっ!! きゃあああああああああッ!!!! なにこれーーーーー!!!」

 

 それは、フィールドを南に歩いていた時の事だ。サクラが、まずモンスターを発見、確認した。まだ、遠くで強さもこの層で一番弱い。

 その情報を知ったシリカは気合十分だった。短剣を片手に『任せてください!』と一言いうと、草むらに自ら入って言ったのだ。そこで、俺はフラグが立ったかって思った。

 

「やあああああっ!! こないでっ!! こないでぇぇぇ!!!」

 

 草むらのせいで、相手の姿がよくわからなかった。否、草に上手く隠れていたから全体が見えなかったんだ。

 だが、その姿はそう、もう一言で言えば、《醜悪》。人食いの様な巨大な口に牙……茎もしくは胴のてっぺんにはひまわりに似た黄色い巨大花。その口の動きはまるで、ニタニタ笑いを浮かべているようで。更には無数の触手を振り回していたのだ。

 シリカは、その姿を確認したその瞬間。体が固まった。そして、その固まった間に、その触手にシリカは捕まってしまったのだ。その触手の感触から生理的嫌悪を催させた。

 

「シリカ、そいつ、すっごく弱いから、花の下の白っぽくなっているとこが弱点だから」

「やっ! やだぁぁぁっ!」

 

 そしてその間に、持ち上げられて頭を下にして宙吊りにされてしまった。逆さまに釣り上げられてしまったから、シリカのスカートが捲れてしまったのだ。

 

「み、見ないでください! 見ないで助けてください!」

「………それはちょっと難しいな、サクラ、頼めるか?」

「はいはい」

 

 俺はシリカの方から視線を逸らして、キリトに話しかけた。キリトの方は、顔を手で覆い、見ない様にしていた。そうして、キリトからの要望があり、目を閉じて、聴覚に意識を集中した。

 

「こっ! このっ!! いい加減にっっしろっっ!!!」

 

 俺が攻撃しようとしたところ、シリカから、大きな声が上がり、そして、ソードスキルが発動した音と、モンスターが消滅した音が聞え、最後に着地音が聞こえきた。

 

「…見ました?」

「見てない」

「攻撃するだけなら、見なくても出来るから、見てない」

「む~~………」

 

 キリトは目を手で隠しながら、見てないと言い、俺は目を閉じたまま、シリカの方を向いた。音で居場所が分かるから、何の問題もなかった。

 その後、シリカは、俺とキリトのアシストもあり。全く問題なくモンスターたちを倒していった。そして、レベルも着実に上がる。経験値は、モンスターに与えたダメージの量に比例する。だから、2人のアシストは主にサクラが盾で防御して、キリトが、シリカにモンスターの弱点や性質を教えて、効率よく狩れる様にアドバイスもしていた。

 そして、幾度となく、モンスターを撃退していくが、この層のモンスターで俺が一番、気持ち悪いと思ったイソギンチャク型のモンスターにシリカが巻き付かれ、キリトが助け出した。

 

「うぅ~………。ホントに、気持ち悪いです」

「この層はイソギンチャク以上に気持ち悪いのは居ないと思うぞ」

「まあ、あれは俺も触れたくないな」

「それは感性が普通な人間なら、当たり前だろうな…」

 

 俺もキリトも出会った事はあるが、巻き付かれたことはない。生理的嫌悪感が出るのは何もシリカだけじゃないと言う事だろう。

 

「ほら…」

「あっ…… ありがとうございます……」

 

 キリトが、手を伸ばした。ずっと座り込んでいたら、危ないから。ここはフィールドなんだから、いつ次の相手が襲ってくるか判らないからだろう。

 

「それに、目的地も見えたみたいだよ」

「じゃあ、あそこに……」

「真ん中辺りに岩があって、そのてっぺんに」

 

 キリトが指をさした。シリカはそれを聞いた途端に走り出した。もう、待ちに待ったから。そして、シリカがその中心に行くと。

どうやら、シリカが、ビーストテイマーだと認識したようだ。柔らかそうな草の間に一本の芽が伸び、シリカが視線を合わせるとフォーカスシステムが働き、更に細部に至るまでわかる。

 若芽はくっきりと鮮やかな姿へ変わり、先端に大きなつぼみが出来た。

 それは……ゆっくりと開き、真珠の様な雫が生まれた。

 シリカは、それに手を伸ばす。絹糸の様に細い茎に触れた途端、氷の様に中ほどから砕け、シリカの手の中には光る花だけが残った。

 そして、そのアイテム名は。

《プネウマの花》

 

「これで……ピナを生き返らせれるんですよね……」

 

 シリカは、今日一番の……幸せそうな笑顔を見せ、そう聞いた。

 

「ああ」

「……その雫を心アイテムにに振り掛ければ良い。だけど ここは強いモンスターが多いからもうちょっと我慢して急いで戻ろう」

「はいっ!」

 

 無事にプネウマの花を入手した後。転移結晶で一気に飛んでしまいたかったが、徒歩で帰る事にした。転移結晶は、高価なものだからギリギリの状況で使うべきものだからだと判断したからだ。

 

「シリカ、待って」

 

 俺の言葉と共に、俺とキリトは一瞬で表情が変わった。そして、橋の奥川を睨みつけていた。

 

「え……? ど、どうしたんですか?」

「そこで待ち伏せている奴……出てきたらどうだ?」

「えっ………?」

 

 シリカは何を言っているのか分からなかったのか、戸惑っていた。俺はすぐさま、周囲の警戒に移った。

 

「ろ……ロザリアさん……!? なんで……こんなところに……?」

 

 そして、橋の奥にある木の後ろから、赤髪の女性が出てきた。それは、シリカの知り合いで、俺達が追っていたギルドに所属しているプレイヤー、ロザリアだった。

 

「ふふ、アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、お2人さん。少し侮っていたかしら? その様子だとどうやら、首尾よく《プネウマの花》をゲットできたみたいね? おめでと。シリカちゃん」

 

 シリカは、ロザリアの真意がわからないようで、思わず本能的に後退っていた。その表情に、言動に 嫌な気配を感じたからだ。

 

「それじゃ、その花、渡してちょうだい?」

「な、何言っているんですか?」

「このアイテムを渡すわけにはいかないな」

 

 ロザリアは太々しく、プネウマの花を渡せと言ってきた。俺はシリカの一歩前に出て、シリカを庇うようにした。

 

「サクラの言う通りだ。このアイテムは、今 この子に必要なものなんでね。ロザリアさん。いや――、犯罪者ギルド≪タイタンズハンド≫のリーダーさん、と言った方がいいかな?」

 

 キリトのその言葉で笑みが、完全に消え眉がピクリと上がった。相手からすれば、それほど驚く事だったのだろう。

 

「え、でも…… オレンジは街に入れないんじゃ」

「あぁ、それは間違ってないよ。だけど、ああ言う連中は、ずる賢さだけは人並み以上にあってね。全員が犯罪者カラーじゃない場合があるんだ。グリーンメンバーが街で獲物を品定めする場合がある」

「そして、パーティで紛れ込んで待ち伏せポイントに誘導するんだ。昨日のオレ達を盗聴してたのもアイツの仲間だろう」

 

 俺とキリトの推察を黙って聞いていたロザリアは、ゆっくり怪しい笑みを浮かべた。それは俺とキリトの推察が当たっているという事を示していたんだと思う。

 

「まさか……、この2週間同じギルドにいたのって……?」

 

 シリカも聞いて、何か思い当たったのか、言葉を出した。

 

「そうよォ。あのパーティの戦力を評価すんのと同時に、冒険でたっぷりお金が溜まって、美味しくなるのを待ってたの。本当なら今日にもヤっちゃう予定だったんだけどー」

 

 シリカの顔を見つめながら、ちろりと舌で唇を舐めた。俺はその行動の一つ一つが嫌悪感を呼ぶ。

 

「一番楽しみな獲物だったアンタが抜けちゃうから、どうしようかと思ってたら、なんかレアアイテムを摂りに行くって言うじゃない? それに、今が旬だからとってもいい相場なのよね。《プネウマの花》は。情報はやっぱり命よね~」

 

 そして、そこで話を切って、俺とキリトの方を向いた。

 

「でもさぁ……そこまで気がついててノコノコその子に付き合うなんて……馬鹿? それとも身体でたらしこまれちゃったの? アイドルちゃんだからね~?」

「どっちでもない、俺達もあんた達のギルドを探してたんだよ」

 

 キリトはそう言った。ロザリアは意味が解らなかったようだ。

 

「……どういう事かしら?」

「アンタ、10日前に≪シルバーフラグス≫って言うギルドを襲ったな? メンバー4人が殺されて、リーダーが、そして街で待機していたプレイヤーだけが生き残った」

「………ああ、あの貧乏な連中ね」

「リーダーだった人は、泣きながら毎日朝から晩まで、最前線のゲート広場で仇討ちをしてくれる奴を探していた。……それに、リーダーは共に言ったんだ。アンタ等を殺さず、黒鉄宮の牢獄へ入れてくれってな。―――あんたに奴の気持ちが解るか?」

 

 キリトの言葉の節々に、静かな怒りが宿っているのを理解した。そして、俺も怒りが宿っていく。

 

「わかんないわよ」

 

 めんどくさそうにロザリアは答えた。

 

「何? マジになっちゃって馬鹿みたい。ここで人を殺したって ホントにその人が死ぬ証拠なんてないし。そんなんで 現実に戻ったとき 罪になるわけないわよ。だいたい、戻れるかどうかもわかんないのにさ。正義? 法律? 笑っちゃうね、アタシそう言う奴が一番嫌い。この世界に妙な理屈を持ち込む奴がね」

 

 ロザリアの目は凶暴そうな光を帯びた。

 

「んで? あんた、その死に損ない共の言う事真に受けたの? それでアタシらを探してたわけだ。それもたった2人でギルド1つを? ははっ、随分と暇なんだねー。それに……。あんた達2人のまいた餌にまんまと釣られちゃったのは認めるけど、たった2人で何とかなると思ってんの? あたし達、《タイタンズハンド》をさぁ……?」

 

そして、卑しい笑みを浮かべ……右手の指先が素早く二度中を仰いだ。それが合図だったようだ。途端に向こうへ伸びる道の両脇の木立が激しく揺れた。その瞬間には次々と人影が現れた。

 

「に……人数が多すぎます……脱出しないと……」

「大丈夫だ。キリト…」

「俺が前に出る。サクラは周囲の警戒、もしシリカの方に来たら、シリカが逃げるまでの時間を稼いでほしい」

「分かってる。しくじるなよ」

「誰に言ってんだ」

 

 俺は一歩後ろに下がり、シリカの横に移動した。そして、キリトは橋の中央の手前まで歩いて行く。

 

「そ……そんなっ! たった1人でなんて……無茶ですっ!」

「何かあったら、オレも行くから安心してくれ。ただ、転移結晶だけは準備していてくれよ?」

「で……でもっ!」

「大丈夫だ、あの程度の連中にキリトはやられたりしないよ」

 

 俺はシリカを宥める様にゆっくりと言った。それを見ていた男達はキリトを見て暫く下衆な笑みを浮かべていのだった。

 

「キリトさん!!」

 

 シリカの大声を聞いた。男達が何か思い出したように言葉を出していく。

 

「キリト?」

「盾無しの片手剣士(ソードマン)。……黒の剣士!?」

「やばい、ロザリアさん。こいつ……βテスト上がりの……こっ攻略組だ……!」

 

 完全に思い出した1人の男が急激に顔を蒼白させ、数歩後退った。男の言葉を聞いたメンバーの顔が一様に強張った。驚愕したのは……シリカも同じだった。

 

「なんで、ここに攻略組が!?」

「落ち着きな! 攻略組がこんなところにいる訳ないじゃない! どうせ、名前を語って、驚かそうとしている奴に決まってるわよ! それに……万が一にでも本物だったとしても、こっちは15人もいんのよ! この人数なら、黒の剣士だろうが余裕だわ!」

「そ……そうだ! 攻略組ならすげえ金とかアイテムとか持ってる! それがたった2人だぜ!? オイシイ獲物じぇねえか!!」

 

 そうして、ロザリアを除いた、14人は汚い声と共にキリトに攻撃をしていく、キリトは立ち止まったまま、何もしようとしない。まあ、する必要が無いだけだが……。だけど、シリカ冷静に見れていないのか、短剣を取り出して、キリトを助けに行こうとした。

 

「だめえええええ!!!キリトさん!!!!!!!」

「シリカ、落ち着いて。キリトのHPバーを確認してごらん」

 

 俺はシリカの肩を掴んで、助けに行こうとしているシリカを止めた。そして、キリトのHPを見せることにした。

 

「え……。HPが減ってない?」

「減ってない訳じゃないよ。バトルスキル、バトルヒーリングによる自動回復で、攻撃を回復してるだけ。それに約10秒間で400って所かな?」

 

 やがて、攻撃を加えていた男達もこの異常な状況に気がついた。そして、ロザリアも戸惑いを隠せなかった。

 

「あんたら! なにやってんだ! さっさと殺しな!」

 

 苛立ちを含んだロザリアの命令に再び剣を構えたが。

 

「約10秒間に400、それがあんたら全員が俺に与えるダメージの総量だ。俺のレベルは78、HPは14500。バトルヒーリングの効果によって、10秒間に600ほど自動回復するから、何時間攻撃しても俺は倒せない」

「そんな、そんなのアリかよ」

「ありなんだよ、たかが数字が増えるだけで無茶な差がつく、レベル制MMOの理不尽さなんだ!」

 

 キリトに攻撃をしていた盗賊達の攻撃が止んだら、キリトがさっきの攻撃したダメージを言った。ダメージは俺の見立てと同じだった。そして、レベルとHPとスキルを教えた。そして、結晶アイテムを取り出して、目の前で使用した。

 

「これは俺の依頼人が全財産をはたいて買った回路結晶だ。全員これで牢屋に跳んでもらう」

「て、転」

「やらせるわけないだろ」

 

 ロザリアが転移アイテムで逃げようとした瞬間、俺は剣を落として、投剣アイテムでロザリアの転移結晶を砕いた。

 

「な!」

「サクラ、GJ」

 

 それを見た盗賊達は完全に戦意喪失して、武器を落として、キリトが使用した回路結晶の中に入っていく。ロザリアは何かキリトに言っていたが、1日~2日のオレンジなんて俺達ソロには関係ない故、牢屋に放り投げた。

 

「………俺が、怖いか?」

 

 キリトがシリカにそう聞くと、シリカは首を思いっきり横に振って、否定する。

 

「ちが……違いますっ……。その――あ……足が動かないんです……」

「……ごめんな。シリカ。君をおとりにするようになっちゃって。本当は、直ぐに言うつもりだったんだ。でも……君に怖がられてしまうと思ったら、言えなかった」

「すまない」

「いえ、そんな……大丈夫……です。だって……だって……」

 

 シリカは、ぎゅっとキリトの手を握りそして、サクラの方も見て。

 

「お2人のおかげで……私も、ピナも……助けてもらい、ました。……命の……恩人なんですから……」

 

シリカは笑顔で、必死に笑顔を作って……笑おうとしていたが、まだ、身体が震えており、恐怖心が残っている様子だった。俺とキリトは頭を下げて、謝罪した。怖がらせるような事をしたのは本当だったからだ。

 そして、俺達は35層の風見鶏亭に戻った。

 

「あ、あの、キリトさん、サクラさん。……やっぱり 行っちゃうんですか………?」」

「まあ、最前線から5日も離れちゃったしな。すぐに戻らないと」

「そう、ですよね………」

 

 キリトの言葉に俺も頷く、これ以上は最前線から離れたら、次のボス攻略や、レベル不足になるだろうから。

 

「あ、あたし」

「レベルなんて、所詮は数字だ。……この世界での強さは単なる幻想に過ぎない。そんなものよりもっと大事なものがある。だからさ、次は現実世界であろう。そうしたら、きっとまた同じように友達になれるよ。オレ達は頑張るから」

「俺も現実世界でもう一度、友達になろう」

「はいっ。きっと―――きっと」

 

 キリトはシリカが言いたい事を感じ取ったのか、先回りでシリカが欲しいと思った言葉を言っていった。俺もキリトと同じ考えだったので、頷いた。シリカの表情も泣きそうな顔から、笑顔になっていた。

 

「さ、ピナを呼び戻してあげよう」

「はい!」

 

 シリカは頷き、左手を振ってメインウインドウを呼び出した。アイテム欄をスクロールし、≪ピナの心≫を実体化させる。ウインドウ表面に浮かび上がった水色の羽根を備え付けのテーブル上に横たえ、次に≪プネウマの花≫も呼び出した。

 

「……その花の中に溜まっている雫。それが蘇生の要だ。それを≪心≫に振り掛けるんだ。それで、魂は……≪ピナ≫はシリカの元に戻ってくる。……大丈夫。もう、シリカから離れる事は無い」

「は、はいっ 判りました……」

 

 シリカは、そのまま右手の花をそっと……羽根に向かって傾けた。光で部屋が包まれる。まるで……天国の扉が開いたかの様な暖かい光が降り注ぐ。俺はその光景が、本当に暖かく、心まで癒してくれる様な光景が目の前に広がると同時に、この冒険の幕は下ろされたのだった。

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