魔法少女リリカルなのはザ・ウォーカー ~繰り返される物語~ 作:普通の魔法使い
夢を見た。漆黒の腰まで届くような長い髪を持つ男の夢を。
その男は普通の人では有り得ない程生きた。
故に仲の良かった者や、自身を募ってくれた者や、愛した女性たちが自分より先に逝く事に、最早心が折れかけていた。
そんな時、公園のベンチで何時ものように寝ていると一人の少女が声をかけてきた。
男は声をかけられた方へ視線を向ける。
そこにいたのは──
「……ここは」
目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた。
最近同じようなことが有ったなと考えているとふと布団の上に誰かいる感覚があることに気が付く。
そっと手を伸ばしてみると誰かが寝てるようだった。
起こさないようにゆっくりと体制を整えながら起きると、彩夏がいた。
そっと彩夏の頭を撫で、周りを見渡す。
そこは保健室のように周りがカーテンで覆われていた。しばらく彩夏の頭を撫でながらぼーとしているとドアが開く音が聞こえた。
「あら? 起きたのね」
花を持ったリンディがこちらに歩いてくるのが見えた。
「えぇ、ついさっき目が覚めたばかりです」
「そう……あの後どうなったか覚えてる?」
「あの後……?」
その時最後の記憶が蘇ってくる。
「……終ったんですね」
「えぇ、これもあなたのおかげよ。ありがとう」
「いえ、あれを何とかしないと地球終ってましたし」
「そうね……それと一つ悪い知らせがあるわ」
「悪い知らせ?」
心当たりが無い計は何の事か分からなかった。
「最終決戦の際、サーチャーであの戦闘が見られていたわ。恐らく上層部の仕業だろうけど、あの戦闘の後だから勧誘は避けられないわ」
「なんだ。それなら適当に捻り潰せば良いじゃないですか」
その言葉にリンディは苦笑いしながら、「貴方なら出来そうで怖いわ」と言う。
「ん……」
彩夏が目を覚ました。
「よく眠れたか?」
「計ちゃん!」
いきなり飛び込んできた彩夏を受け止め、その頭を抱く。
「怖かった……怖かったよぉ……計ちゃんが居なくなっちゃうんじゃないかって……」
「怖がらせてごめんな。俺はお前のそばから消える事はないよ。だがら安心しな」
リンディは暫くその光景を微笑みながら眺めていたが、ふと思い出したように計と彩夏に言う。
「そうそう、今食堂に皆が居るから体調が悪くなかったら行ったら良いわ」
そう言い、部屋を出ていった。
「行く?」
「……うん」
どうやらいつもの彩夏に戻ったようだ。
その事に安心する反面、さっきみたいな喋り方でも良いのにと残念な気持ちになった。
「計君大丈夫かな?」
アースラの食堂に今回の事件の関係者が集まっていた。
テーブルの上には食事が置いてあるが、誰一人として食べる素振りを見せない。
「エイミィに聞いたところ、命に別状は無いらしい……いつ目が覚めるか分からないけど」
クロノがそう言った直後、食堂のドアが開いた。
皆が一斉にドアの方に向く。
そこに居たのは安心した顔のリンディだった。
「彼は目を覚ましたわ」
その声に食堂に居た者は安堵する。
「一応ここに皆集まってると言ってあるから、体調が良ければしばらくしたら来るはずよ」
その言葉通りに数分後計は彩夏を連れ食堂に現れた。
12月24日、日野家
「皆集まったかー? まだ居ない奴は手ー上げろー」
この日、無事日野家にてクリスマスパーティーが行われた。
最終的に計達のクラスのみならず、計の学年殆どが集まった。
その中には当然なのはや、フェイト、更にはやても居た。
「それじゃ、ハッピーニューイヤー!」
「それは新年の挨拶でしょ!?」
今回も栞場、伊藤は漫才をしていた。
「痛たた……まぁ、改めてメリークリスマス!」
「「「「「メリークリスマス!!」」」」」
そこから山のように盛られた食物を食べたり、ミニゲームやプレゼント交換などをした。
そしてそのまま時が経ち、皆が寝静まった頃、計は彩夏を連れベランダに出た。
「なぁ、彩夏」
「……?」
計はポケットから黒い宝石を取り出す。
それは数ヵ月前、彩夏が公園で拾ってきた物だった。
「怒りで我を忘れていたあの時、彩夏の声で自分を取り戻すことが出来たんだ」
宝石を撫でながら計は続ける。
「もしあの時彩夏が止めてくれなかったら、取り返しのつかない事になっていたかもしれない……」
彩夏に視線を戻す。
「俺は彩夏を守っているつもりでいた。 でも実際は彩夏に守られていたんだ」
「……違う」
彩夏の言葉に嬉しそうに、しかし哀しそうに首を振る。
「違くないんだ……心の何処かでずっとお前を頼っていた。そのおかげでここまで戦えたんだ。なのに俺はその彩夏のことを考えず奴を殺す事しか考えられなかった……最後に放とうとした魔法はあいつどころか、あそこにいた全員只では済まないようなものだったんだ」
計の眼に涙が蓄まってくる。
「俺は、どんなに強くても心が弱いんだよ……ただ戦い、傷付き果てに命を落そうと戦う事を止められない、弱いやつなんだよ……だから──」
ぎゅっと、彩夏に頭を抱き締められその先の言葉を言えなかった。
「どうか、嘆かないで……あなたが世界を、自分を許さなくても、私はあなたを許します」
その言葉を聞いた計はふと、脳裏に人影が浮かぶ。
どこかで見たことがあるその人影は計の頭を抱き締めながら同じ事を言っていた。
それは何時何処で、誰だか知らないがとても懐かしい雰囲気だった。
「ハハッ……また、守られちゃったのかな……」
計はそう言いながら静かに肩を震わせる。
そんな計を彩夏は暫く抱き締めながら落ち着くのを待っていた。
「うーん、何か見ちゃいけない物を見た気分だなぁ」
「確かに……」
「でもあの二人にこんな秘密が有ったなんて……」
「と言うより話し声は聞こえなかったけどね」
少し離れた所に、栞場、伊藤、なのはやフェイト達が彩夏と計の事を見ていた。
初めに計達に気が付いたのは栞場だった。彼は飲み過ぎの所為で夜中に目が覚め、一人トイレを探していると偶々計達を発見。何かイベント発生か? と伊藤を呼びにいこうとすると偶々なのは達と遭遇し今に到る。
「学校じゃあんな計を見たことが無かったからびっくりだな」
「そう言えば私達、計君の事あまり知らないかも」
なのはが肯定するように言う。
なのは達が違うクラスのはずなのに普段の計を知っていたらある意味危ないだろう。
「そうだね……簡単に言うと彩夏の為に生きているって感じかな?」
「彩夏ちゃんの為?」
首を傾けるなのはに伊藤は説明するように語る。
数年前
私と栞場は仲良く公園でブランコで遊んだり、鬼ごっこやサッカーとかして遊ぶような子で、そこに集まる友達と良く遊んでたんだ。
そんなある日、二人の子供が砂場で山を作ったりして遊んでいるのが見えた。一人は小さな女の子、もう一人は普通の男の子で、男の子の方が女の子に何か話し掛け、女の子はそれに首を縦に振ったり横に振ったりしていた。
会話らしい会話は無かったが、男の子は女の子が何が言いたいか分かっているらしくニコニコしながらまた話し掛けていたりしていた。
それから暫らくして事件は起こった。
発端は最近近所に屯って居る不良達がその少女に手を出した事だ。
誰から見ても不良達が悪いのだが、その場にいた子供達はあまりの恐怖に目を逸らした。
その時一緒に居た男の子が不良の一人に向かって殴りかかった。
完全に不意討ちだったらしく、ろくに反応できずその子供の背の大きさもあり見事に急所に直撃し悶絶させた。
その後も不良相手に攻撃をするが、子供の攻撃はたかが知れてる。
そのうち不良達に殴られるだけになるが、それでも男の子は頑なに立ち上がる。
普通ならもう泣いても良い程痛め付けられても女の子を守るため立ち上がる。
その直後に誰かが呼んだのだろう大人の人が数人来て不良達を取り押さえたが、男の子はその後病院に連れていかれそこで入院をしたらしい。
男の子は退院した後も女の子の為に自分の身を顧みず守り続けた。
「こんな感じで計は彩夏の為だけに自分の身を捨ててまで尽くすようになるのよ」
伊藤が計の過去を話し終わった後、その場の空気は重くなっていた。
「計君にそんな過去があったなんて……」
「じゃあ計があんなに強いのは」
「そう、彩夏を守るために必死になってあそこまで強くなったんだよ」
栞場が何時ものようにおちゃらけた感じではなく、真剣な表情で語るが、あまりのキャラのおかしさに場の空気が和む。
「……なあ、泣いていいか?」
「ダメに決まってるでしょ」
「あんまりだろ……」
「はいはい、夫婦漫才は良いから静かにしてないと見付かっちゃうわよ」
アリサの物言いに栞場はシクシクと泣き真似を始めるがなのは達は無視をする。
この短時間で栞場の扱いに慣れたようだ。
「あれ? あの光は何をだろう?」
すずかが指差す先には光り輝く漆黒の石があった。
「あれはジュエルシード!」
それを見たフェイトが叫ぶ。
ジュエルシード──それはフェイトやなのはにとって因縁とも言えるものだ。彼女達はこのジュエルシードを巡り半年ほど前に戦い、最後には友達となった大切な思いでとなったもの。全部で21個あったそれは1個だけ見付からず、今まで探していたものだ。
たった一つだけでも次元震と呼ばれるものを引き起こすことが出来るそれはかなりの危険物だ。
それがたった今、目の前で発動している。
それを見た瞬間、なのはとフェイトは計達に向かって駆ける。
この場には魔法を知らない者──栞場と伊藤──がいるが、後で事情を説明すれば良い。その考えでバリアジャケットを展開する。手には数日前に活躍した相棒を持ち、照準をジュエルシードに向ける。
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
『『Yes,Master』』
魔方陣を展開。魔力を込め、封印魔法を放とうとした時、突如ジュエルシードは光を失い、彩夏の手元に落ちた。
それは突如起こった。
計は彩夏に抱かれながら、これからも彩夏を護っていく。そう決心した時、彩夏が「……計ちゃんに無理させないように私も強くなる」と呟く。
次の瞬間、今まで何の反応も示さなかった黒い宝石が輝きだした。
咄嗟の事で反応が遅れたが、その宝石から魔力が放出され彩夏の魔力と交ざりあっていくのが見えた。
そして暫らくした後、宝石は光を失い彩夏の手元に落ちた。
「……ところで何でお前等はそこに居るんだ?」
そう呟き、計は扉の方に視線を向ける。
そこにはバリアジャケットを着たなのはとフェイト、扉の前で驚愕しているアリサ、すずか、栞場、伊藤がいた。
「えーと、栞場君が来たら面白いものが見れるって言ったから……」
「よし栞場、今すぐ絞めるからこっち来い」
「結局俺かよ!? って、戦略的撤退!」
走り去っていく栞場の背中を計が追っていく。
暫らく走る音が聞こえた後、突如悲鳴が聞こえ、それから少しした後計がボロボロの栞場を引き摺り歩いてくる。
「で、お前達はここで何を見た?」
「えーと……計君が彩夏ちゃんに抱かれる少し前からかな……」
その言葉に計は「ほぼ最初の方からじゃないか」と顔を赤くし膝をついた。
その後、なのは達は栞場や伊藤が魔法を知らない事を思い出し必死に弁明しここで起きたことは誰にも言わないと約束した。仮に破ったとしても計に潰される事になるので栞場は顔が真っ青になるまで頷いていた。
「で、何でバリアジャケットなんか着てたんだ?」
改めて計がなのは達に問う。
「あ、その事なんだけど……ちょっと彩夏ちゃんその石貸して」
彩夏から石を受け取ったなのははその石を注意深く見た後、フェイトに回す。フェイトも同じように見た後彩夏に返しこう言う。
「それはロストロギアです」
「ロストロギアってなによ」
横で聞いていたアリサがなのはに聞く。それに対し突然何もない場所にモニターが出現し、リンディが映る。
「夜分遅くにごめんなさいね。私は時空管理局所属のリンディ・ハラオウンと言います」
突然の事にアリサ達はそれぞれ驚く。
「ちょ!? まだどこも開発に成功してない空間モニターじゃない!」
「これどうなってるんだろ?」
「これが魔法ってやつ? やけに現代的な気がするんだけど」
「めっちゃ美人だ!」
上からアリサ、すずか、伊藤、栞場の順だ。栞場はこの発言をした後、伊藤に叩かれていたが皆はそれを無視しリンディの説明を聞く。そして聞かされたその事実にアリサは「私たちの知らない間に二回も死んでいた可能性があったなんて……」とショックを受けていた。
無理もない。自分達が知らない内に二回も死んでいた可能性があったと知れば少なからず動揺するはずだ。
「それでどうすれば良い?」
計は黒い宝石を彩夏から受け取り、リンディに見せ問う。
「今からそちらにユーノ君を送ります」
その言葉と同時に何もない空間に魔方陣が展開される。
魔方陣が輝きだしそこになのはや計と同い年位の少年が立っていた。
「ユーノ君!」
「やあ、なのは久し振り」
「ところでこれは?」
計はユーノに黒い宝石を渡す。
ユーノはそれを解析する。
暫らくして、宝石から顔を上げたユーノが言葉を放つ。
「これは元ロストロギアだね」
「元ってどう言う意味だ?」
「この宝石の本当の名前はロストロギア、ジュエルシードと言って所有者の願いを歪んだ形で叶えるものなんだ」
「歪んだ形で叶える?」
伊東が頭を抱えながら言う。どうやら突拍子の無いことに脳の処理が間に合わないようだ。
「えぇ、例えば猫が大きくなりたいと願うとジュエルシードはその猫を10メートル程の大きさにしたりしてしまうんだ。また、ジュエルシードの中にある魔力が暴走すると、次元震と言って最悪周りの世界を巻き込みながら崩壊していくんだ」
あまりのスケールにアリサ達は言葉を失う。
「何でそんなものが地球に有るの?」
その問いに答えようとしたユーノの顔が一瞬悲しそうな顔をしたがすぐにいつもの表情に戻る。
「それは他の世界で発掘したジュエルシードを運搬中、突如船が爆発してこの世界に落ちてきたんです」
「その後、ユーノ君が地球に来てジュエルシードを封印しようとしたけど逆に怪我をしちゃって、その時に助けをよんだの」
「それであの時変な夢を見たって言ったのね」
アリサが納得したように頷く。
「うん。その後、集めていく内にフェイトちゃんと会ったの」
「その時はまだなのはとも敵同士で、会うたびに戦って、そして最後は友達になれたんだ」
「何そのよく有るバトル漫画みたいな展開」
栞場が呆れたように言う。
確かにその後──数日前の事だが──もう一度ここ海鳴の地で世界滅亡の危機が合った。これは計や彩夏などが入ってくるが、ほとんどの場合次の事件の時には新しい敵や仲間が出来てその仲間とともにパワーアップした主人公が事件を解決する。
しかし、ここは現実世界。ここまで来ると仕組まれているとしか思え無くも無い。
「……で、何で元とつくんだ?」
計が目頭を押えながらユーノに聞く。
《
「それは所有者の願いを叶えると言う部分が何もなかったかのように消えてるんだ」
皆の頭に? が浮かぶ。
「元々このジュエルシードは魔力を貯め、それを元に願いを叶えるんだけど、このジュエルシードはその願いを叶えると言う部分だけが綺麗サッパリ消えてるんだ。だから今このジュエルシードはただ魔力を貯める電池としての能力しかないんだよ」
「つまりもうロストロギアじゃないって事だよな?」
ユーノに問い直す。
「うん。本当はダメなんだけど、君の能力で消えてるみたいだからまた効果が復活するって事はないよ」
そう言い、ジュエルシードを計に返す。
「じゃ、僕はまだやらなきゃいけない事があるから先に帰るね」
「バイバイ、ユーノ君」
ユーノは転移魔法を使い戻っていった。
「……さて、お前ら早く寝ないと明日起きれないぞ」
「そうね。じゃあ私たちはもう寝るね」
「おやすみ皆」
計の一言でなのは達は解散し、それぞれ割り当てられた部屋に帰っていった。
「それで、どうだったかしら?」
「やっぱり仮説通りでした」
ユーノとリンディは会議室のような場所で話し合っていた。
「そう……ならなおさら守らないとね」
そう言うリンディの手元には書類の束があり、一番上には『次元航行エネルギー駆動炉ヒュウドラの暴走計画』と書かれた物があった。
──どうもきな臭くなってきたわね……
書類を机の上に置き、目頭を押さえる。
──これは後々厄介な事になりそうね……
彼女は思う。これ以上関係の無い彼等を巻き込まないようにしなくてはと。
そんな彼女の思いは実現しなかった。
ここまで長く書くつもりはなかったけど、区切り良くできる場所を見つけられず約一ヶ月かけて6600程書きました。
まぁ、リアルが忙しかったのもあるんですけどね。
体育祭、中間考査、ボーダーブレイク……色々ありました。特に中間考査で学年ワースト5位入りした時は先生に留年君と呼ばれさすがの俺でも精神的に来ました。
と言うわけで、今回はA'S編最後の場面です。
ここでは闇の書の暴走は12が24日では無いので無事クリスマスパーティーが出来ました。ただ、生まれて17年間一回もこのような物に参加したことのないから描写は省きました。
それと計が彩夏に懺悔。それをひぐらしのあの詩を少し変えた言葉で許す彩夏。実はあの言葉は書こうと当初から考えていたので、やっとかけたという感じです。
そして今まで空気だったユーノ登場。そしてそのまま退場。俺にはユーノが書けない……何故だ?
それと栞場のキャラが掴めなくなって来た……
次回は少し時間が飛ぶと思います。正確にはなのはの墜ちる空白期当たりを予定。