魔法少女リリカルなのはザ・ウォーカー ~繰り返される物語~ 作:普通の魔法使い
12月2日、今日も計は公園で剣術の練習をやっていた。彩夏もいつも通り、計の剣術を見ていた。いつもの光景。しかし、今日は少し違っていた。
「……人がいないな」
この時間帯だと、子供はいない。しかし、帰宅途中の近所のおじさんや、此処最近練習が終わったら焼き芋をおまけしてくれるおっちゃん達がいないのはおかしい。
ふと、空を見てみる。
「ッ!?」
何時もならオリオン座などが綺麗に見えるのだが何故か灰色だった。しかし、雲はない。はっきり言って異常だった。
「……彩夏、今日はもう帰るぞ」
「……うん」
彩夏もこの異様な雰囲気に気が付いたのか、直ぐに支度を始めた。
その時、此処に来る気配を感じ、手にしていた小太刀を両手に持ちだらっと垂らす。他の世界の正義の味方の様な構え方だ。傍から見れば隙だらけでしか無いがその道の人が見れば隙などない。計は剣術を初めてから色んな型を試してみたが一番これが良かった。
「……計ちゃん?」
いきなり臨戦態勢に入った計の事が気になったのか、不安そうな声で聞いてくる。
「大丈夫だ……もう終わったか?」
「……うん」
「そうか……なら帰るッ!?」
さっきの気配が襲ってくる。計はなんとかそれを受け流す。
「彩夏!少し離れていろ!」
「け、計ちゃん!?」
「大丈夫!直ぐに行くから!」
その言葉を聞き、彩夏は気を付けてと言い、そこから離れる。
普通なら彩夏の傍にいてやりたかったが、相手はそんな事では勝てない。最悪死ぬ可能性があった。幸いな事に気配は一つだけ。不意を突いて彩夏を攻撃するとは考えにくい。
「……ったく、あんたは何なんだよ」
「……出来ればさっきの一撃で終わらせたかったんだが」
女の声だった。計は襲撃者の顔を見る。
そこには、ピンク色の髪の女性がいた。恐らく20歳前後であろうその凛々しいその女性は悔しげなしかし、安心したような何というか色々な感情が表情に出ていた。その中でも、贖罪や、悲観のような感情が痛々しかった。
「いや、これで良かったのかもしれんな……私は烈火の将、剣の騎士シグナム」
「計、小室計だ」
お互い名を名乗る。計は小太刀を、シグナムは片刃剣をそれぞれ構える。
「計か……いい名だ」
「ありがとよ……それよりお前の目的は何だ?」
「お前の魔力、貰うぞ!」
は?と一瞬惚けてしまった。シグナムはその一瞬の隙を突き、斬り掛かってくる。
なんとかそれを流す。こっちは木刀、相手は鉄で出来ている剣を振ってくる。正面からかち合えば一瞬で折られてしまうだろう。故に流す。
しかし、シグナムの攻撃は勢いを増すばかり。それを、避けて、流して、躱して、流してと上手く捌いていく。
そして、シグナムが放った攻撃を後ろに流す。その時、シグナムは体制を立て直す為に一瞬硬直してしまった。そして、そこから計の反撃が始まる。
計が使う小太刀はリーチ、打撃力が少ない分、手数を増やす事に特化させたものだ。反対に、シグナムの片刃剣はリーチ、打撃力に特化させたもの。故に一度攻勢に入った計を止めることはかなり厳しい。
一瞬の内に攻防が逆転し、更に追い詰められる事になったシグナムは計のその技量に舌を巻いた。
(主と同じぐらいの子供なのにこの技量……もし違う場所で出会えたなら、きっと良き友となれただろう……だが、此処で負ける訳には!)
この時、計は油断をしていた。奇襲をかけるような奴が一人で居る訳が無い。最低でも二人で行動するものだ。しかし、今の計は目の前の敵──シグナムとの闘いで、その事を完全に忘れていた。
「うぉりゃぁああ!」
いきなり横から来た攻撃に反応が少し遅れる。衝突。
その時、何とか攻撃が来た方とは逆に跳び威力を弱めた。しかし、そのまま木に直撃。二、三本圧し折ってからようやく止まる。
「ったく、何でこんなのにやられそうになってんだよ」
「すまない、ヴィータ」
大きなハンマーを持った計達と同じぐらいの歳の赤いゴスロリ服を着た女の子──ヴィータがシグナムに話し掛ける。
「……お仲間さんかい……こりゃ
嫌だなぁ……とぼやく計。今の計の状態は満身創痍とまでは行かないもののかなりダメージを受けている。
本当なら
「……悪いな、これで終わらせてもらう」
「それはどうかな?」
次の瞬間、計はシグナムの後ろに回り込んでいた。
「何ッ!?」
「本当は使いたくなかったんだがな……そんな悠長な事は言ってられないし」
縮地──計が名付けた奥義。人間の限界を超えた移動速度で移動する。無論副作用もある。
本来、人間の脳はその力の大半を抑制している。その理由は、身体が着いていかないからだ。縮地はその抑制された力を開放する。
結果、計の無理な行動により身体はボロボロに、しかしそれでも計は意地で倒れないようにする。
「速攻で片付ける」
そこからは計の独壇場だ。シグナムが斬り掛かってくれば、先程の三倍以上の攻撃速度で翻弄され、ヴィータがハンマーで殴りかかってくればそれを躱し意識を刈り取ろうと計の小太刀が襲い掛かる。
その中、シグナムは計が魔法を使わない事に気が付き始めていた。
(此れだけの魔力を持っていながら何故魔法を使わん……さっきの移動からは一切の魔力を感じられなかった……まさか魔法を知らないのか!?)
十分有り得る事だ。彼女等の主はつい最近まで何も知らない普通の女の子だった。魔力が有るからって魔法を使うとは限らない。はじめの反応を見るからに、魔力と言う言葉を聞いたことが無いらしい。昨日闘った管理局の魔導士との事で頭から抜けていたが此処は管理外世界。魔法なんてテレビの向こう側の事だ。
『なぁ、シグナム』
『何だヴィータ?』
『まさかこいつ、魔法を知らないんじゃないか?』
どうやらヴィータも気が付いたようだ。
もし本当に知らないのなら、魔法を見た瞬間、驚き行動を止めるだろう。シグナムとしては、そんな卑怯な事はしたくないのだが主の為、何としてでも魔力を集めなければならない。
──やるしかないな。
シグナムは剣を鞘に戻す。
「レヴァンティン!」
《Ja.》
シグナムの相棒であるレヴァンティンが初めて声を出す。
「!?」
いきなり剣から声が出た事に、驚く計。
その隙が致命的な物になる。
「カートリッジロード!」
ガシャコン
レヴァンティンから薬莢が排出される。それはよく銃に使用されるような物だった。
「紫電一閃!」
レヴァンティンの刀身から炎がでる。
計は目の前で起こっている事が全く分からなかった。
(ありゃ何なんだよ……)
現実では有り得ない現象。剣から声がでる。更にその剣が薬莢みたいなのを排出、その後剣が炎に包まれる。
テレビの中では剣から氷が出たりするのを何回か見ている。しかし、現実でやろうとするとまず不可能。炎の剣なら剣に油を塗って燃やせば良いが、それでは剣を使う者が火傷しかねない。
──これは何だ?一体俺は何を見ている?
次の瞬間、計は斬られた。
ドサッと計の体が崩れ落ちる。
「け、計ちゃん!」
今まで隠れていた彩夏が姿を現す。
「ねえ、計ちゃん!」
彩夏は計の体を揺するが、計は全く反応を帰さない。
「ひっく……嫌だよぉ……ひっく……計ちゃん……死んじゃ……ひっく……嫌だ……」
計が全く反応を返さない事で、彩夏は泣きだしてしまう。
それを傍で聞いていたシグナム達は
「すまない……許してくれとは言わん。だがこれしか方法が無いんだ……治療はする……シャマル、後は頼んだ」
次の瞬間、計の体は緑色の光に包まれた。
シグナムとの闘いで出来た傷がすぅ……と消えていった。
そして、今度は計の胸から手が飛び出し、黒いビー玉の様な物を握る。
少しずつ、だけど確実にビー玉の様な物が小さくなっていく。
そして、ある程度小さくなったら、次は彩夏の胸から手が出てくる。
うっ……と小さく呻く。
彩夏から出てきたビー玉は白色だった。
そして、計の時より少し早く、終わると、痛みのあまり意識が飛んだ。
シグナムは気絶した彩夏と、今だに目が醒めない計をベンチまで運ぶ。
そして、去りぎわに一言、
──本当に済まなかった……
そう呟き、その場から立ち去る。
今まで空を覆っていた物が無くなり、何時もの空が戻ってきた。
ゆっくりと、計は目を開ける。
不思議な事に、体に痛みは無かった。
そこからあの後の事を思い出していた。
──そうか、俺は敗けたのか……
ふと、横を振り向くと隣に彩夏が寝ていた。
恐らく自分が倒された後に、何かやられたのでは?そう考えていると、あの時の約束が守れなかった事に、悔しさが募った。
(くっ……何が護ってやるだ……結局護れなかったじゃないか……ッ!)
その時、計はあの時の手紙の事を思い出した。
(もし、あれが本当なら……)
確証は無い。だが、今は力が欲しい。シグナムの様な力が。
「力が欲しい……あいつらに勝てる……彩夏を護れる力が……ッ!」
次の瞬間、計の目の前が真っ黒になった。
やっとかけた~……
シグナム姐さんとヴィータの口調が合ってるか怖い……