GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~EXTRA~:番外編&コラボ外伝集   作:フォレス・ノースウッド

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朱音のイラストを描いてくれましたアウス・ハーメンさんがピクシブで連載しているシンフォギアシリーズと結城友奈は勇者であるシリーズとのクロスオーバー小説『戦姫と勇者の二重奏』シリーズ最新作で、朱音も出演中の二重奏XDUでの第八話の前半パートを、ほぼ完全朱音視点で描いた外伝もの+本編では描かれなかった場面付きの映画で言うとエクステンデット版風となっております。
パートナーデ○モンポジとなったトト君との朝とか、放課後のガールズトークとか。
ちゃんとアウスさんからは前もって見せ合って了承を貰ってます。


8.5A-朱音の神世紀の一日 前篇

 八月一日の、父と母の命日だったその日。

 私は平行世界の地球にて実在する神々の集合体――〝神樹〟――のお呼ばれを受け、その神樹様が生み出した結界(せかい)に呼ばれ、人類を抹殺しようとする天の神側に寝返ったと言う造反神が遣わした使徒――バーテックスどもからの手荒い洗礼を受け、かの世界を守護する別世界の響や翼たちシンフォギア装者と、そして勇者たちとともに立ち向かい、そして彼女たちに自らの前世、最後の希望――ガメラとしての自分を打ち明けるなどと言った慌ただしく目まぐるしく、恐らく生涯で最も長いものになるであろう一日を過ごした。

 それから、翌日。

 アラームの設定より早めに起きてしまった私は、日課の一つである早朝のトレーニングをこなし、偶然同じ目的で鉢合わせた、こちらの世界の翼と義理の姉妹にして、この世界のシンフォギア装者兼勇者でありリーダー格であり恩人でもある風鳴静音から色々と聞かされた後、当面の住まいである勇者及び装者用の寮の部屋から戻った。

 シャワーを浴びて汗を流し、ラジオを聞きながら朝食と昼食用の弁当を作って―――って、あらら……これじゃリディアン入学以来のいつもの朝と、余り変わりがない。

 でも、いつもと違うところもある。

 

(おいしそう♪)

 

 出自は異なるも、私と同じガメラ。

 メタな表現をすれば〝小さき勇者たち~ガメラ~〟の世界でのガメラであり、同じく神樹様からお呼ばれを受け、今は私の精霊(パートナー)となっているトトが、私の頭の周りをぐるぐる回って、調理中の風景を興味深く眺めている。

 

「よっと」

 

 フライパンの上のパンケーキを宙に放り投げる。

 くるくると回る回る生地を、私の目はスローで捉え、動きに合わせて反対側の面を鉄板に着地。

 うん、我ながら良い焼け具合。

 

(おおっ~~)

 

トトのつぶらな瞳は一際煌めき、拍手を送ってきた。

 

「もう直ぐできるから、トトはテーブルで待ってて」

(は~い)

 

 トトとはテレパシーで意思疎通もお手の物である。

 今日の朝は、パンケーキとスクランブルエッグと豆腐ウインナーベーコン巻きにシーザースサラダと、アメリカンにヘルシーさもミックスさせた組み合わせです。

 

「いただきます」

(いただきます)

 

私が合いの手をすると、真似する形でトトも合掌をした。

 

「お味はどう?」

(美味しいよ♪)

 

 今は人の身な私と違い、トトは人間の男の子に育てられていた頃のちっちゃなケヅメリクガメな姿なんだけど、トトからすれば大きい過ぎるスプーンやフォークを両手で器用に使って、美味しそうに食べている。

 はぁ~~なんと、可愛いのか……思わず掌に乗せて、ほにゃんとした自分の頬で頬ずりしたくなりそう。

 それに、他の誰かと一緒に朝食なんて、ほんと久しぶりのことだったので、その分いつもより私は笑みを浮かべた表情のまま、自分の作った料理を一際堪能して味わっていた。

 

 

 

 

 

(リディアンへの行く道って分かってるの?)

「ああ、大体はもう頭に入れてある」

 

 新品なリディアンの夏服に着替えて、勾玉も首に掛けた、準備を整えた私は部屋を後にする。

 トトとのやり取りの通り、私がこの世界にいる間も通う学び舎はかのリディアン音楽院ではあるのだが、諸々の事情で急遽四国の香川にて設立された分校の方である。

 弦さんこと風鳴弦十郎が司令を務める特機二課改め、国連直轄組織――SONGの本部たる潜水艦(いどうきち)も、近くの湾港で停泊している。

 エレベーターで寮一階のエントランスに出た私は、そのまま外に出ようとするが。

 

「………」

 

 ドアガラスの奥の光景を目にして、一度その場で立ち止まった。

 鏡を見なくても、自分の顔がしかめ面――grumpy face となっているのを自覚する。

 ここで立ち往生しても埒が開かないので、再び歩き出す。

 自動ドアを潜り抜けると、嫌な感覚(におい)がした。

 この匂いには覚えがある……一億年以上の眠りで摩耗した中での数少ない、ガメラになる前の、超古代人だった頃の記憶の一つ。

 あの……ギャオスどもを生み出した狂信者どもに似た匂いだ。

 

「お迎えに上がりました、草凪朱音様」

 

 背後の扉が閉まると同時に、白装束な神道の神事服に身を包み、仮面で顔を覆い隠した輩たちが、私に頭を深く下げてきた。

 見るからに現代(私のいた世界の年代より遥か未来ではあるが)の日常では異様な風体をしたこの者たちこそ、あの神樹様を祀り立て、管理していると言う組織――大赦の神官たちだった。

 

「出迎えを頼んだ覚えなどないのですが?」

 

 まともに応対するのも煩わしい気分になりつつも、一応口を開いて彼らに応対する。

 自分でも驚きたくなるくらい、響いた自分の声色は、酷く淡々と、低いものになっていた。

 

「それは承知しております、しかし我ら一同は、神樹様の命によりお越しいただいております来訪者の方々に、誠心誠意尽くすよう仰せつかっております故、何卒……」

「私がかつて、〝ガメラ〟であったと知ってのご対応ですか?」

「はい、朱音様のおっしゃる通りでございます」

 

 仮面を被ったまま、抑揚を極端に削り切った口調でへりくだる姿は、まるで賓客をもてなす様。

 なんて――不愉快。

 丁重で腰の低い物腰だと言うのに、私は彼らのその態度が、えらく癇に障った。

 鳴らしたことのない舌打ちまで、鳴らしてしまいそうになる。

 眉間がさらにしかめられ、あの先史文明時代の巫女――フィーネのように敵対しているわけでもないのに、ただの人相手に……ここまで不快を覚えたのは………あのギャオスを生み出した連中以来。

 しょっちゅう二課に圧力をかける政治家官僚たちや、響を含めたツヴァイウイングの最後となったライブに起きた大規模特災害の生存者たちに魔女狩り同然の迫害をしてきた連中にさえ、ここまで気分を害したことはない。

 

〝でも、それ以上に憤りを感じたのは大赦のやり方よ……〟

 

 朝方に見た、静音の、憤りと悲しみと無念にやり切れなさが複雑に絡み合った横顔と、ドスさえ利いた震える声音を思い出す。

 彼女がその時話してくれた、天の神が最初にバーテックスを遣わして世界を脅かし始めて、暦が西暦から神世紀に改めてからの、約三百年。

 人間としては何代にも渡る長い年月にて積み重ねられた〝影の歴史〟。

 どこの世界でも変わらない………人間たちの〝暗部〟。

 事なかれ主義と隠蔽体質に染まり切り、木々で言う根に至るまで、組織としては腐敗し、歪み切ってしまったと言う大赦の実態。

 そして何より、バーテックスとの、過酷の一言だけでは言い表しきれない戦いと、大赦の体質によって弄ばれ、人生を狂わせてきた勇者……いや、勇者の使命を背負うことになった年端のいかぬ子どもでもあった少女たちのことを思えば、とても彼らに嘘でもいい顔ができそうにない。

 一体この仮面の輩たちによって、どれほど少女たちの、血も、涙も、時には命までも流されてきたのか……想像するだけで嘆かわしくなり、憤りたくなる。

 

「静音様から、大体のお話は聞き及んでおりますのでしょう、貴方様が我々にそのような顔をなさる理由も、重々承知です」

「分かっているのですね、自分たちのやっていることが、どれほど非道に満ちていたか」

 

 仮面への鋭利な眼差しは変えないまま、口元を皮肉たっぷりの笑みに変えて私は言い返す。

 戦場は、そこに飛び込んだ者の心を蝕み、狂わせる魔物が潜む地獄だ。

 幼い命たちに、未来の命運を握らせ、戦士としてあの地獄へと誘わせることは、実際に戦場で命を賭ける当人たち以上の重責を背負うことになる。

 避けられぬ〝宿命〟、とでも言ってもいい。

 どちらの世界の、弦さん――風鳴司令ら二課及びSONGの人たちは重々承知し、未来を委ねざるを得ない自らの無力さをも噛みしめて、覚悟を決めて背負っていた。

 その上で、自分たちができる努めを、精一杯に果たしてきた。

 なのに………大赦(かれら)は背負おうとすらせず、目と耳を塞ぎ、口すらも閉ざしてきたのだ。

 私も含めた〝勇者たち〟への態度は、表面こそ丁重にもてなしているように見えるが、実際は違う。

 彼らが芯の底まで縋り切っている神の力をお借りして戦う彼女たちを、良く言えばバーテックスと同様に神の眷属、悪く言えば〝人でない〟者へと祀り上げ、腫れ物として扱っている。

 彼女たちだって、〝勇者〟である以前に……一人の人間であり、今の向こうにある〝未来〟そのものな〝子ども〟でもあると言うのに。

 私に向けてくる神官たちの仮面越しの眼差しだけでも、静音が語った詳説の数々が、紛れもない事実であると突きつけきて、私の口の中は苦味で一杯になる。

 これでは触穢思想に浸かり切り、武士となって武器を取らざるを得なかった者たちを汚らわしい存在と切り捨て、世が乱れていく様から目を逸らしてきた平安貴族と、何が違うと言うのか………。

〝人〟を心より愛しているからこそ、私はやり切れない思いになる。

 

「ええ……まぁ、我々はまだいい方です、上層部に行けば行くほどそのような感情すら抱く様子のないモノたちが多いものですから、お恥ずかしいことに……」

 

 ただ……幸いとも言うか。

 彼らの仮面の奥に、自分たちが積み重ねてきた行いの重さを理解し、そしてまだ良心を捨てずに持っていることが窺えた私は、ほんの少しながら安堵し、表情も幾分か和らいだ。

 逆を言えば、組織のピラミッドの上部に行けば行くほど………大赦に身を置く人々の心は壊死していく悲しき事実でもあるんだけど。

 大赦の次期代表候補として、険しい変革の道を進む静音たちの日々の奔走には深く敬服するよ。

 

「分かりました、今回はあなた方のご厚意を受け取りましょう」

 

 私は一応、彼らの厚意に甘えることにしし、用意された車両に乗り、リディアン四国分校の正門まで送ってもらった。

 

「あ、一つ、〝元神様〟として、忠告しておきます」

 

 校舎に入る前に彼らへ、生体兵器としても守護神としても、出来損ないだった私の、これまでの経験から培った言葉を伝えることにする。

 

「世界に神は実在していても、信者にとっての都合のいい神様などいない、いつでもその似合わない仮面と、暑苦しい神事服を脱ぎ去れるよう、覚悟しておくようにと、上の方々に是非お伝えください」

 

 こちらのブラックジョークに、組織内では木っ端の身の神官たちは何も答えなかった。

 元より一方通行になるのは承知で投げた言葉(たま)なので、気にはしない。

 けど、事務的にSONG本部のブリーフィング後の迎えの時刻を告げて会釈する彼らの姿をよく見れば、微かだけど狼狽えている様子が滲み出ているのが見えた。

 

 大赦本部へと帰還していく彼らを見送った私は、そのまま玄関で内履きに履き替えて校舎に入る。

 校舎内のどこに行っても多くの生徒が行き交うマンモス校な本家本校と比べると、やっぱり視界に入る生徒の数は少ない、高校生である装者と勇者含めて、全校生徒は百人にも満たないそうだ。

 元はミッション系スクールだった両方の世界共通のリディアン現校舎(二課の地下本部があった前校舎は、どちらの世界も終わりの名の巫女との戦いで倒壊、周辺地区は現在も立入禁止区域となって閉鎖されている)と比べても、明治から昭和初め辺りの西洋館風な分校の校舎は規模が控えめ。

 まあハイスクールに進学するまで、学業の大半をアメリカで送った私からすれば、日本の普通の高校に見える四国分校には、却って新鮮な趣きを感じられた。

 

「あっ……」

 

 気がつけば、自分が在籍するクラスの教室が目の前に現れていた。

 さりげなく、周りを見渡す、周りの生徒から奇異の視線は向けられていない。

 よかった………さすがに今回は、興が乗っちゃうと無意識に歌っちゃういつも悪癖はしていなかったので安心。

 異世界に来てまでやらかしていたらどうしようかと……でも屋上で歌う日課は止められそうにないね。

 だって、好きなものは好きなんだもん。

 歌が大好きで何が悪い!

 

「おはようデース♪」

「おはようございます」

 

 心中を落ち着かせて教室に入れば、早速朝の挨拶をかけられた。

 響とまた違った癖のある淡い金髪のショートカットに、×印の髪留めを付けた人懐っこさのある、ですますならぬ〝デスデス調〟な口調の女の子は暁切歌(あかつき・きりか)。

 メソポタミア神話に登場する戦いの神――ザババが使っていたとされる二つの武器の片割れ、〝碧刃――イガリマ〟のシンフォギアに選ばれた適合者である。

 

 私のよりも黒味が濃い黒髪をツインテールに纏め、前髪をいわゆる姫カットで切り揃えた、大人しそうな容姿に反して瞳に意志(ちから)が籠る女の子の方は、月読調(つくよみ・しらべ)。

 同じくザババ神の武器のもう一振り、〝紅刃――シュルシャガナ〟のギアの担い手。

 親友の仲な切歌とはある意味で、二人で一人の装者である。

 

「おはようございます朱音さん」

 

 少し遅れて教室に入ってきて一礼したのは、調くらい腰まで黒髪を伸ばし、ヘアバンドを付けた、瞼の筋が水平線で、雰囲気が似ている調以上に口数が少なそうな印象を受けるこの子は、星空英理歌(ほしぞら・えりか)。

 ケルト神話の太陽神ルーが所有していたと言う、〝貫くもの〟と意味する武器(槍か投石器かと諸説ある)――〝ブリューナク〟シンフォギアの使い手たる装者だ。

 

「三人とも、おはよう」

 

 こちらの世界のシンフォギア装者である三人に、私は彼女たちの、その名は偽名であり、真の名も生みの親の顔も知らず、一時は響たち含めた世界を敵に回し、今年で初めてまっとうな教育機関の学生となった〝境遇〟に複雑な思いを秘めつつも、晴れ模様な朝の陽気のまま挨拶を返した。

 今日から暫く、造反神との戦いの間は、この三人とはクラスメイトの間柄になる。

 

 

 

 

 

 

 あっと言う間に、今日が放課後まで進んだ。

 切歌たちと、こちらでは一つ年上な響と未来(なんとこちらでは彼女も勇者で驚いた)とで私たちは、SONGの移動本部へと向かっている最中だ。

 

「朱音ちゃん、こっちの世界の授業はどうだった?」

「特に問題なく進められたよ」

「はい、私たちもフォローしようと思ってたんだけど」

「いざノートを見たら、すんごい書きこまれてたデス」

「まあ、ここに来る前には夏休みの宿題も終わって、二学期からの予習もある程度してたし」

 

 リディアンは進学校並みの厳しい上に装者としてのお役目もあるので、余裕のある内に先んじてある程度予習しておいたのは幸いだった。

 

「え? 朱音さん、いつ頃こっちに?」

「八月一日だが」

 

 英理歌からの質問に応じると、私を除いた一同にどよめきが走る。

 内一人の切歌が両手で私の手を取り。

 

「ぜ、是非、私たちに勉学のお恵みをッ!」

 

 と、強く願い出てきた。

 確かに実質学校での学業一年目でいきなりリディアンでは、ハードルが高過ぎてか~な~り苦労しているのが浮かばれる。

 

「私も一緒に勉強するのは好きだから良いけど、宿題のコピー機になる気はさらさらないからそこのところよろしく♪」

「ええぇ!? どうしてバレたデスかッ!?」

 

 やっぱり、だと思ったよ。

 快く了承しつつも、切歌の言葉の裏から見抜いた意図、宿題の丸写しだけは、やんわりと笑顔で願い下げさせてもらった。

 

「切ちゃん……私たちから見てもバレバレだったよ」

 

 調もジーとしたジト目で親友の蛮行を咎めた。

 

「あの……朱音ちゃん、できれば私にもそのお恵みを」

「響、調子に乗らないの」

「はい……」

 

 あわや響までも便乗しそうになったが、未来が未然に阻止してくれた。

 装者とリディアンでの学業の両立に苦労しているとは言え、一応こっちでは一年先輩なんだから、さすがに年下の私に教えてもらったら先輩としての沽券が危うくなると思うよ、響。

 

「ごめんね朱音さん、そっちの世界の響からも色々苦労かけられてると思うのに」

「未来が謝ることじゃない、それに私のことは遠慮せず呼び捨てで構わないよ、何なら〝あやちゃん〟と呼んでもいい」

 

 つい、出来心のジョークでえっへんと胸張ってそう言ってみたら。

 

「じゃあ、私と調は遠慮なくそう呼ばせてもらうデース ♪ あやちゃん」

「うん、あやちゃん」

「…………」

 

 一瞬、私の全身が、意識ごとフリーズしてた。

 

「どうしたんデスか?」

「も、もう一回……言ってくれないかな?」

「はい? 分かったデス…… あやちゃん」

「うん、あやちゃん」

 

 あ、あやちゃん………あやちゃん………あやちゃんあやちゃんあやちゃん。

 はぁ~~~なんて、天に舞い上がるくらい、甘美で心地いい響きだろうか♪

 ある種の、神の恵みにも等しい歓喜が沸き上がる。

 ちゃんが付いたあだ名が………こんなにも心を、舞い上がらせ踊らせるものだったなんて。

 

 

 

 

 

 

「ふ、うふふ~~あはははぁ~~♪」

「ど……どうしたのだろう?」

「明らかにあやちゃんの様子がおかしくなったデス!?」

「恍○のヤ○デレポーズ?」

 

 ほわわんとした、しかしどこか実年齢離れした妖しい色香漂う恍惚とした色合いをした前代未聞級のオーラを顔の周りに纏って、両手を赤らめた頬に付けて微笑みくるくると踊る朱音に、調と切歌と英理歌はそれぞれの表現(リアクション)で突っ込んだ。

 

(朱音大人っぽい見た目のせいで、同い年の友達と一緒にいてもよく年上に間違われるらしくて)

 

 トトがテレパシーで、当人に代わって朱音のコンプレックスを説明すると。

 

(((あ~~なるほど)))

 

 一同は心中の声が綺麗に同時にシンクロするくらい、納得するのだった。

 

 ちなみに六人の身長は――

 響:157cm

 未来:156cm

 切歌:155cm

 調と英理歌:152cm

 朱音:169cm

 ――な上に、神樹の結界の中にいる間、肉体の成長はほとんど止まっている為、こちらでも朱音の発育が飛び級した自らの美貌に対する悩みが尽きないのは、確定しているのであった。

 

 

 

 

 

 いけない………危ないところだった。

 何とかトランス状態から戻ってこれた私は、内心新たな友達からあだ名で呼ばれる喜びも慎ましく味わいながら、みんなと一緒に引き続き基地へと向かいつつ。

 

「しかし、朝礼(ホームルーム)の時のある挨拶が気になったな」

「挨拶?」

「ほら、〝神樹様に拝〟をってやつさ」

 

 この世界では異邦人な身ならではの質問を、未来たちに投げて、実際に実演してみせた。

 教室の黒板の上に、神棚が立てかけられていて。

 朝礼と終礼の時に、起立、礼までは自分の世界のジャパニーズスクールと変わらなかったのだが、その次にイスラム教のお祈りよろしく人の世を天の神の業火から守っている〝壁〟のある方角へ向いて、『神樹様に』と合掌してもう一礼する流れがあったのだ。

 別にそれ自体不思議だとは思っていない。

 今朝静音に会った時も、彼女が勇者となってからの神樹様に対する〝日課〟をしていたのを見たし、アメリカのスクールでも、クリスチャンによる礼拝とか、似たようなのをよく目にしてきたからだ。

 私が気になっているのは、いわゆる一般市民たちの、神樹様への信仰の度合いである。

 

「あぁ~ソレ」

「神樹様のことは、静音さんから聞いてるんだよね?」

「ああ、何よりその神樹様に呼ばれてこっちに来たのだから、知ってはいるさ」

「神樹様は、この世界にいる私たちに生きていくための御恵みをくださっている、だからそのことに毎日感謝しなさいって意味が込められて、学校とか会社とかでの朝礼の時とかに〝神樹様への拝〟ていう習わしが生まれたって、小学校の社会の授業の時習ったんだ」

「なるほどね」

 

 未来からの説明に、私は頷いて納得を呑み込んだ。

 

「へぇ~……そうだったんだ~」

「デ~ス……」

 

 っておい、ちょっと待て待て待ちなさいよ、そこの君たち。

 境遇上、切歌はまだ分かるが、響まで感心してどうする?

 未来と一緒に、社会の授業でその習わしを習った筈だろう?

 

「もう響ってば……」

「いや~~そう言えば確かに習ってたね、忘れてたよ」

 

 これには未来も、後頭部を掻く響に呆れ顔になって溜息を吐かざるを得なかった。

 

「まあなんというか、みんなの反応を見る限り、神樹様への敬い方というのは、信仰と言うよりも、生活の一部に定着した風習って意味合いが強いんだな」

「どういうこと? 朱音」

「私の故郷の一つのアメリカじゃ、敬虔なくらいのクリスチャンたちは、もっと神様というモノを強く信仰していて、ライフスタイルとかその域にまで神様を持ち出すようなのもいたからな……それと比べれば、なんというか……」

 

 ぶっちゃけて言ってしまうと、なんて―――ゆる~い信仰心だろうかと、感心させられた。

 でもそうなると………私はある意味で外からの〝雇われ兵〟だから、出過ぎた関心だと自覚しているけど、静音からのあの話を聞いた後では気になってしまう。

 普通の日常を送る市井の人たちと、大赦の人間たちの間には、神樹様への信仰に関して、とても広く深く、奈落ができるほどの溝が存在していることを実感させられた。

 ある意味で、大赦の現状は………かの光の巨人のヒーローたちが、命がけで地球人含めた命を守ろうとしてきた上で、最も恐れている事態………いや、それ以上にもっと酷い状態に陥っているかもしれない。

 朝、神官たちに忠告した通り、信者たちに都合のいい神様など、いない。

 現に神樹様を構成している神の一部――造反神が盛大にクーデターを起こしたが為に、奏さんも含めたこの世界の過去の勇者と装者に、私までもが召喚され、全人類まるごと結界の世界に避難させなければならない事態に陥っているではないか。

 それに………静音たちの今までの戦いの記録を見る限り………この世界の地球は、かつて私がレギオン相手に禁じ手を使った後に、嫌と言うほどよく似ている。

 その上で、この状況。

 

 ということは、いずれ―――。

 

 まあ、今は造反神の侵攻を食い止め、奴に大半を奪われたこの世界を取り戻すのが先決かと、自分に言い聞かし、SONGの本部に入った。

 

 

 

 

 

 尚、夕方の港から本部に入る直前、こんなやり取りがあった。

 

「ところで」

「「「はい(デス)?」」」

「この潜水艦、特訓中に弦さんの震脚で風穴が開いて撃沈したことって、ないよね?」

 

 潜水艦に指さした朱音からのさらりとした声音から飛び出た爆弾発言に、一同、脳髄に轟雷が迸るほどの衝撃を受ける。

 

「あやちゃん……あちらの世界の風鳴司令も、こちらの司令くらいトンデモなの?」

「ああ、私が聞く限りでは戦闘能力は互角だな、多分弦さん同士が正拳付きを正面からぶつけ合っただけで、中心から半径6km四方は、間違いなく壊滅するね」

「神樹様が師匠まで助っ人で呼んでこなくて………よかった……」

「デスデス……」

「うん、同感」

 

 全くである。

 響たちは改めて、日本国憲法抵触レベルの、元怪獣な朱音以上の人間怪獣、もとい別世界の弦十郎までも召喚しなかった神樹の采配に、感謝すら浮かんでくるのであった。

 




二重奏シリーズにはオリキャラもいるので補足。

⊡風鳴静音(ICV:喜多村英梨)
二重奏シリーズの主人公の一人、数奇な運命もあって翼とゆゆゆの東郷さん(わすゆの須美)とは義理の姉妹の仲、緒川さんと一緒に翼のマネージャーも務める。
翼とはまた違った真面目で責任感が強い一方、面倒見は良い。父親同然な弦十郎の影響で映画好き。

⊡星空英理歌(ICV:今井麻美)
二重奏シリーズのオリキャラの一人、戦災孤児でフィーネに拾われ、FISで育った。同い年のきりしらコンビと仲が良い。
日系人であること以外は、本名も出身地も誕生日も不明で、英理歌と言う名もナスターシャ教授から付けられたもの。

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