GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~EXTRA~:番外編&コラボ外伝集 作:フォレス・ノースウッド
私とトトが、まだ姿を現さない柳星張転生体含めた造反神側の戦士(しょうじょ)たちと共闘は必須なバーテックスらとの、激化は確実な戦いへの備えとして、映画が元による、トトのテレパシー能力で〝設計〟した明晰夢の世界での特訓を始めてから、最初の休日の、サタデーモーニング。
昨夜も私達は夢の世界で特訓していた上に、起きてからも日課の早朝トレーニングをさっき終えたばかりだ。
だが無理に無理を重ねた鍛錬で体調を崩して実戦に出られなくなっては本末転倒なので、常に最良のコンディションをキープする為しっかり心も身体も労り、学業も忘れず、休みの日は仲間(とも)たちとの娯楽などに興じて、自分たちが守る大切な存在の一つたる日常も喜び愉しみつつ両立させている。
その証に、今朝の臨海公園から吹く潮風も、トレーニングで流した汗も、水分補給に飲んだ飲料水の味も、その後に身体を洗い流したシャワーの水とお湯も、いずれも気持ちいいものだった。
「いただきます」
「(いただきま~す♪)」
トトと一緒に食べる朝食も然り。
今日は、バジルソーセージとスクランブルエッグに、歌野が丹精込めて育てた秋トマトとレタスを挟んだホットサンド、大根ニンジンきのこのコンソメスープ、特製グリーンミルクスムージー、デザートに雀からこの前助けたお礼として送ってくれた愛媛みかんを添えた組み合わせ。
「(ふ~んふ~ん♪)」
今宵もトトは頬を、焼いたチーズ並みにとろけさせるくらい美味しそうに食べ、私も我ながら某てぇ~んさい物理学者マスクドヒーローばりに『凄いでしょ? 最っ~高でしょ?』と言いそうになるくらい絶好の出来栄えを、笑顔で味わっていた。
〝生きるってことは、美味しいこと〟とは、家事と栽培と創作料理が趣味で自分の店(レストラン)も構えたヒーローの名言であるのだが、私もその通りだと思う。
だって実際に〝生きてる〟って感覚を、こうして食事の美味と一緒に、味わっているのだから。
〝~~~♪〟
二輪免許資格試験をパスすると同時に買ったバイク――ワルキューレF6Dと同様、装者として災いと戦うお役目でSONGから支給されたお給与で購入したコンポから流れるラジオ番組から、夜明けの光が世界を照らす爽やかな朝の空気にぴったりなクラシック音楽の音色を耳に取り込みつつ。
「(今日の予定はどうするの?)」
トトからの質問にも、しっかり逃さず聞き取る。
「基地での特訓の傍ら、静音に『ドリームトレーニング』の報告書を書いて、エルフナインに、明晰夢を人工的可能とするテクノロジーがあるか聞いてみる、ってとこ」
「(ごめんね、僕の夢設計がもっと融通利いていれば……)」
ここ数日で、造反神側の連中の威力偵察が行われていない時間帯の一つが、朝方だってことは把握してる。現に今朝からも何度か感覚を研ぎ澄ましてみたが〝視線〟は一切感じない。
なので現実、正確には神樹様の模倣現実内でも、秘密の特訓に関する話題を上げることはできた。
「気に病むことはないよ」
『ドリームトレーニング』の効果は予想以上だった。
まだ一週間も経っていないと言うのに、私のギアーーガメラの《ヴォルナブレーザー》ら新武器(アームドギア)、新機能、新技を結構の数で編み出すことができた。
中にはレギオンのマイクロ波シェルを元にした《螺旋熱光波――フォトンスパイラルシュート》など、まだ課題が残る(最初よりはマシになったが、まだ排熱面と発射時に生じる隙等の問題)ものも残っているが、〝現実の二〇倍ある夢での時間〟の恩恵もあって、大半は現実の実戦でお披露目できるくらいに鍛え上げることはできた。
「薄々、都合の良いものばかり利くものとは思ってなかったから」
けど、良いことずくめばかりでもなかった。
まずトトの夢の世界に入れる上に、かつそこを明晰夢だと認識、自覚できるのは、神樹様からの神託を受けられる巫女と資質保有者のみ。
該当するのは、実際に巫女であるひなたと水都に、保有者の静音、奏芽、東郷、そして私の六人、戦闘員だけなら四人と、圧倒的に少ない。
だから代用できる技術があるか、実現できるか、できたとしてメリットとデメリットがどんなものか、あの子に相談してみることにした。
「(でもどうしてエルフナインなの、あの子以外にも技術士兼錬金術師はいるでしょ?)」
「確かにね、でもキャロルたちの中で、一番〝脳領域〟の研究に熱心だから、それに――」
「(それに?)」
「仕事人間なあの子に、休み方のいろはを教えておこうと思ってね」
「(あ~そう言えば前に愚痴ってもいたね、キャロルもイクスも)」
この前の休日に、SONG本部含めた軍港にて、その日もリディアン一回生組で訓練に励み、いつものように調理施設をお借りして調と二人で作った料理でみんなとランチを取ろうとした時、丁度食堂でキャロルとイクスの二人に鉢合わせ。
〝エルフナインはどうした?〟
と聞いてみると、キャロルは盛大に溜息を吐き、イクスも苦笑い。
〝あいつなら今日も、研究室で絶賛引きこもり中だ〟
〝三度の飯よりなんたらってやつです〟
寝ても覚めても、常日頃研究に没頭する同僚のことを話してくれた(キャロルの場合、クリス並みに粗暴な口調で愚痴もたっぷりに)。
〝それでお身体大丈夫なんデスか~~? 前にあわや仏様になりかけたのに〟
〝お菓子ばっかり食べてたドクターや、お肉ばっかりだったマムほどじゃないけど、それは少し不衛生だよ〟
切歌たちからも心配の声が上がる中、私はと言うと―――なるほど、それらで大体分かった。
〝つまりエルフナインは、ワーカーホリックと言うよりは、『仕事以外を知らない』子なんだな〟
そう言ってみると。
〝まあ……そうなるな、実際あいつには、オレの見てくれと錬金術と記憶以外には、『仕事』しか与えてこなかった………今はオレもこいつは不味いと思って『根を詰め過ぎるな』と度々言ってはいるんだが、強情なとこだけはオレに似ちまいやがって……はぁ……世話が焼ける〟
溜息混じりにこう答えたキャロルの声音には、エルフナインを案じる確かな〝想い〟が垣間見えた。
この技術部トリオの話、即ち『魔法少女事変』の話をし出すと、かなりの時間を要するので申し訳ないが、以下中略。
「ごちそうさまでした」
「(ごちそうさまでした)」
なんてことを話題にしている内に、私達は同時に朝食を食べ終え、ハモる形で締めの合掌と一礼をした。
朝早い内に軍港へと向かった私とトトは、まずSONG本部の潜水艦内のレクレーションルームの一室を借りて、静音に提出用のドリームトレーニングに関する報告書を纏める。
実はまだこの特訓法は、静音にも弦さんにも話してはいなかった。やり始める時点では効果が未知数だったし、メリットとデメリットもある程度把握しておきたかったし、それともう一つ言ってしまえば―――〝敵を欺くにはまず味方〟から。
向こうは自分達の〝出歯亀〟が私達(ガメラ)に悟られていることと、何かしらの対策を行ってると薄々感づいているだろう。
けど具体的な手段までは、まだ測りかねているところな内に、口の堅さは誰より保証できる静音に伝えておく。
潜水艦内の密室だが、念のためインターネットは一切遮断、画面は正面以外の角度からは見えない設定にし、トトに〝見張り役〟だと見抜かれないよう注意も払って見張ってもらいつつ、日本語の文章を筆記体表記のローマ字に、さらにアナグラムで英語文章に置き換えた。これをそのまま日本語訳しても『勇者か装者、あるいは両方と思われる造反神側の新戦力による威力偵察が度々見られる』としかならない様にして纏め、SDカードに保管する。静音の頭脳ならトリックを見抜いてくれると信じているゆえにできる措置だ。
それを変にこっそり渡しては、逆に怪しまれかねないので。
「このSDカードに入っている近況報告書を静音に渡してもらえますか?」
「分かったわ朱音ちゃん」
あえて堂々と、友里さんを経由して静音に送るようにしておいた。
続いて、現実での肉体も込みも鍛錬の方に、無理はし過ぎない様、時間とメニューはきっちり決めておいた上で。
最初は軍港内のフィットネスジム施設にて基礎的な体操と筋トレをこなす、基本は大事だからね。
次に筋トレマシンを使い。
その次に、音楽再生機能付きかつメロディに合わせてベルトコンベアの速度が変化する設定も備えたランニングマシンで、歌いながら一〇曲分ぶっ通しで走り続け、一旦休憩し水分補給(清涼飲料水と、たんぱく質補充の為生卵の一気飲み)して身体を癒し。
再開後に行ったトレーニングと言うと、ボクシングルームでサンドバック相手に基本的だが単調にならない様、常にステップと異なる攻撃の組み合わせでの打ちこみ、縄跳び。
続けて、動画サイトで偶然見たのを参考に、一〇キロはあるビーチバレーくらいの大きさな灰色ボールを三つ、アッパーパンチの打ち上げでジャグリングしながら、トトが同様のボールをヘディングでこっちに打ってきたところを蹴り返し、トトも打ち返して蹴り返し、打ち返して蹴り返しを繰り返す、集中力と打撃力と瞬発力とバランス等々を一度に鍛え、また休憩。
その次は射撃場で、友里さんとも一緒に拳銃による射撃訓練して、また休みを取り。
今度はダンスルームでの、様々な曲を歌唱兼舞踏。
ツヴァイウイングやマリアの現代POPから、バレエ曲、神事の巫女舞、神世紀の時代でも連綿と歴史を絶やさず繋げてきた民族舞踊の数々もこなすことだってある。
そうして時間内のメニューを一通りこなしたので終了、当然ながら汗だくではあるが、特訓直後の汗の感覚はいつも気持ちいい………でも放ってはおけないのでちゃんとシャワーを浴びて洗い直し、トレーニングウェアから私服に着替えて、再びSONGの潜水艦(ほんぶ)へ。
艦内にはシンフォギア装者を抱えるSONGならではの施設として、レコーディングスタジオ(ブースとコントロールルームが分かれ、多数のマイクにミキシングコンソールや吸音材なども揃った本格仕様)があり、そこでは装者の歌声の録音だけでなくフォニックゲインをより子細に記録することもできるようになっている。
『魔法少女事変』の際、響が精神的不調によって聖詠が歌えず変身不能になる事態が起き、また一度本部が敵の攻撃で大破したこともあっての修理が必要になった際、装者のメンタルチェック用に静音の手で増設された設備で、私も重宝させてもらっている施設だ。
午前の予定の締めとして、今日はトトと一緒に歌い、藤尭さんに歌声とフォニックゲインを記録させてもらう。
「朱音ちゃん、準備は良い?」
「いつでも」
ヘッドフォンを被り、大型録音マイクとの適切な距離に立って準備を終えた私は調整室にいる藤尭さんに万端だと伝え、録音が始まる。
今回はアカペラで、この世界でも二〇一四年に公開されたかの怪獣王のハリウッド版映画の、バーテックスの襲来で幻となってしまった続編の重要な場面で流れる劇伴の、バビロニア語で書かれた歌詞を、一回目は私一人で。
〝~~~♪〟
二回目はトトと一緒のデュエットで粛々と荘厳な調子で歌い、レコーディングは終了。
窓越しに藤尭さんの様子を見ると、端整な顔立ちにかなり驚いた表情を形作らせて、ブースに入ってきた。
「どうしました?」
「いや~~見てよ、先日のと比べて朱音のフォニックゲインの数値が急上昇してるんだよ」
藤尭さんは手に持ってたスマートパッドの画面に表示されたフォニックゲインの数値のグラフを見せてくる、確かに先日録ったものより、今日の方が高い数値を上げていた。
「ここ数日何があったの?」
「その辺に関しては静音にレポートを送ってあるので、そちらを参考に頂ければ」
「さすが手回しが早いね、それじゃあ、次にトト君と一緒に歌った二回目なんだけど」
次に二回目の数値のグラフを見せてもらった。
たたでさえ『ドリームトレーニング』の効果で高くなっていた一回目よりも、さらに高い数値でフォニックゲインが生成されているのが一目瞭然。
「もう何度か記録して解析してみないことにははっきり断定できないけど、これは君達ガメラ同士による〝ユニゾン〟だと思うね、トト君がテレパシーを使えるとは言え、人と精霊のデュエットでここまで叩き出せるなんて、大発見だよ」
やり手中のやり手で優秀な一方、私の世界でもこちらの世界も共通して、藤尭さんは仕事時間が長くなるほどボヤキ癖が現れる性質なお人なのだが、今回のレコーディングの結果に、いつになくテンションが高かった。
そんな彼が口にした〝ユニゾン〟とは、簡単に言えば装者同士が共に歌唱することでフォニックゲインの共振・共鳴による相乗効果で、ギアの出力と戦闘能力(バトルポテンシャル)を飛躍的に向上させるシンフォギア運用法の一つである。
実際に私も、自分の世界にて翼とお互いのギアによって専用の戦闘曲を作成し協奏するほどのユニゾンを体験したことがあった。
ドリームトレーニングの最中で、もしやと思って試してはみたが………これはまたなんて、福音(よきしらせ)。
トトともユニゾンによる歌唱で戦闘能力を高められるとなれば、造反神側の柳星張ら勇者たちとバーテックス連合軍との領土を巡って一段と激しくなる攻防戦に対して有効な戦術の一つにもなる。
「一応もう一曲、ユニゾンで歌ってみる?」
「お願いします、次はユニゾンだけに………ハ〇パーエージェントのあの曲で」
まだインターネットに馴染みなかった西暦九〇年代に時代を先見したネットの世界を舞台とした特撮ヒーローの続編アニメの(神世紀では三〇〇白年以上越しに近年制作された)主題歌で、日本語で『合体』を意味する主題歌を私はリクエストした。
「おお~特撮マニアな朱音ちゃんならそう来ると思って用意しておいたよ、この分もプライベート用に聞いてもイイよね?」
「Off Course♪(もちろんですとも♪)」
この世界でも〝隠れファン〟な彼に私が満面の笑みで、了承のサインを送ると。
「よぉぉ~~し! それじゃあちょっと待っててね~♪」
「はい」
いつのも仕事中からは考えられない分かり易く陽気な調子で、調整室に戻って行った。
これで彼のボヤキ癖が少しでも解消されれば、時たまそれに困っている弦さんや友里さんにも福音になる。
「トト、二曲目の準備は?」
「(いつでも万端♪)」
ヘッドフォンは付けてないトトだが、テレパシーで私の脳内にアクセスすることで、耳を通じて頭に流れている曲の伴奏を聞くことができるので、問題はない。
私も準備を整え。
〝~~~~♪〟
耳へ伝ってくる、ストレートにヒロイックで熱いギターメインのサウンドに乗って、私とトトはさっきと打って変わり、エモーショナルかつエネルギッシュに、かの電脳世界のスーパーヒーローの主題歌を歌い上げるのであった。
今日はこんな感じで、午前のスケジュールを全て消化し終えて、午後からのメインの予定も進める為、私とトトは館内のエルフナインが使っている研究室の方へと向かった。
オートスライドドアの横にあるインターフォンを押してみる……が、応答がない。
一応、二回目も押してみる……やっぱり一切リアクションがない。
「(これってもしかして)」
「もしかすると、だね」
ドア越しに研究室内でエルフナインがどうなっているか、大体事情を察した私達は。
「Excuse me(失礼します)」
ドアの開閉ボタンを押して入室すると。
「やっぱりか」
案の定、研究に没頭し過ぎて机の前で両腕を枕代わりにすやすやと眠るエルフナインがいた。
私は起こさない様に、こっそり慎重に、エルフナインを研究室内に設置されているベッドの上にまで運ぶ、典型的な仕事疲れらしく、見たところそれ以外に体調に問題はなさそうだ。
処方箋は、ランチのご馳走で決まりだな。
「トトはエルフナイン様子を見てて、今からランチを作ってくるから」
「(分かった)」
今日の昼食(ランチ)を作るべく、本部内の食堂兼調理場の方へと向かう。
メニューは何にしようか……そうだ、イタリアンンシチューのトリッパにしよう、キッチンにはいつも一通り食材は揃っているから、わざわざ買いに行かなくても作れる。
そうと決まればと、私は調理する楽しみの余り、キャットウォークをスキップしながら調理場に向かって行った。
『夜の秘密の特訓EXⅡ:MOTHERFOOD』に続く