GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~EXTRA~:番外編&コラボ外伝集   作:フォレス・ノースウッド

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外伝の方も新作できました。二重奏シリーズのオリ主の静音と大きなわだかまりがあるこの世界線での防人部隊と巫女。

今回は『巫女』の方をクローズアップする前振り回でもあります。

これで心置きなく『ゴジラ キング オブ モンスターズ』に臨めるぞ!


先生の想い、飛び出した小鳥

 香川県、大橋市。

 東郷美森の過去の自分――鷲尾須美と、同じく過去の園子、そして銀ら神樹館学園初等部と。

 東郷の義姉にして我らがリーダー。風鳴静音の過去の自分――鷲尾清美ら中等部。

 友奈たちからは一代前に当る、先代勇者たちの故郷(ホームタウン)たる街を取り戻してから、まだ間もない休日。

 

 大束町。

 以前、未開放地区に入り込んでしまったところを、朱音が仲間らとともに助け出した加賀城雀も所属する戦士隊――防人の拠点にして、神世紀の時代でも尚、四国地方最長の建築物であるゴールドタワーの展望台にて、室内円柱の一つに背をもたれ、両腕を組みつつ外を眺めていた。

 ちなみに今日の朱音の服装は、白を基調に空色のラインがいくつも走る縦縞模様のVネックスキッパーシャツに、濃い紺色のショートデニムと黒パンストの組み合わせと、そのままファッション誌に掲載できそうな、彼女の年頃の女子な一面が窺える風体。

 無論、首には勾玉、朱音のシンフォギア――ガメラが掛けられている。

 無意識の癖として、朱音は両親の形見でもある勾玉を撫でながら、ガラス越しの香川の俯瞰風景を、鑑賞し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 一度空を見上げていた目を、ほぼ真下の地上に移す。

 ゴールドタワーに隣接する、防人部隊の訓練場、トトをわざわざあそこへ様子を見に行かせなくても、今日も隊員たちは鍛錬に追われている最中だろうし、雀はきっと泣き言をぼやいてリーダーの楠芽吹に扱かれている真っ最中だろうと容易にイメージできた。

 ここからじゃ、せいぜい〝ファ~イト〟と思念を送るぐらいしかできないな。

 しかし、それにしても――。

 

「千景殿(せんけいでん)、か……」

 

 ――香川の地を見回す私の口はふと、この世界のゴールドタワーの、大赦内で使われている〝もう一つ〟の名前を零した。

 展望室に限らず内部の四方はどの階も全てガラス張りであり、特に上階に位置するこの階では香川県内のあらゆる場所が、ほぼ一望できるようになっている。

 海の方を見れば、神託のビジョンでも見せられた、中学時代の静音こと清美達先代勇者とバーテックスとの決戦に巻き込まれ、私にはまるで天を呪って仰ぎ見る様に見える………無残に大破し何年もそのままな大橋と、瀬戸内海と神樹様の壁。

 陸の方を見れば、若葉たち西暦勇者たちの拠点だった丸亀城と、通称〝讃岐富士〟とも呼ばれる、讃岐平野にそびえ立つ飯野山も見えた。

 展望室からこれらの景色を眺められるゴールドタワーのアナザーネームーー《千景殿》の由来は――〝千々の景色を見られる塔〟――大赦の記録ではそうらしい。

 まあ確かにその通りではあるけど、命名したのがあのひなたの子孫である上里家な時点で、それが〝表向きの理由〟なのは明白だ。

 この世界に召喚された時点より少し先の未来のひなたが、事情あってのこととは言え、存在そのものを抹消した大切な友にして勇者の名を、子孫がこのタワーに名付ける………これだけどう言う意図でかの名を付けられたのか………簡単に把握できた。

 まあ、そんな大赦の組織事情の氷山の一角と、勇者を輩出してきた御家たちの〝御家事情〟はさて置き。

 

 今日も今日で―――私(こっち)を見ているな。

 

 傍からは展望台のガラス越しに風景を鑑賞している体の〝姿勢〟のまま、私は私に送られている、敵意混じりの、あのフィーネとはまた違った、蛇の様な……滑りとした感触を携えた触手が怪しく蛇行するが如き――〝目線〟を感じ取る。

 大橋奪還作戦決行日直前辺りからだ………何者かが、私を〝見ている〟。

 正確には私だけではなく、若葉や棗、静音にも、似たような目線を向けられている時が度々あるそうだ。

 それ自体に驚きはない。神樹様の人知では及びもつかぬ〝御業〟の数々は、かつてその一部であった造反神もできないことではないと、とうに分かっている。

 そして、〝私――ガメラ〟の身に起きたことが――〝奴〟の方にも起きないとは、限らないと言うことであり、この視線は何よりの証明だった。

 現状、向こうはまだ当分様子見に徹している様だが……いずれ、おそらくバーテックスをも従えて、真っ向から相見え、嵐の中の京都以来となる、決戦の日が確実に来る。

 その時までに、よりもっと鍛え直しておかなければな。

 自分と同じ装者か、または勇者か、そこまで断定はできないが………わざわざ造反神が呼び寄せたのだ。

〝邪神〟としての奴の能力は……ほとんど再現されていると見て良いだろう。

 

「っ……やっと、おいでなすったか」

 

 背後から、暫く利用者がいなくて暇を持て余していたエレベーターの駆動音が響く。

 誰が乗っているのかも、どの階で止まるのかも、把握できた。

 程なく、エレベーターのドアが開かれる。昇降機に乗ってこの展望室にまで来たのは、予想通り、大赦お抱えの時代からSONG所属の戦士隊となった現在までも尚、防人部隊の教官である――安芸先生そのひと。

 

「大変待たせてしまったわね、こちら呼んでおきながら申し訳ない」

 

 今日私をこのタワーに呼んだのも、何を隠そう、このお方だ。

 

「いえいえ、お陰で神世紀(このじだい)では中々お目に掛かれないこのタワーからの光景を拝ませて頂きましたし」

 

 確かにゴールドタワーに来てから、呼び出した張本人の安芸先生が来るまで、結構時間は掛かったが、防人部隊の教官としてのお役目込みな先生の日頃の多忙さを想像すれば、ここまでの待ち時間など、どうってことなかった。

 それに実際、この時代のゴールドタワーは防人の拠点、国連直轄のタスクフォース所有の施設となっている為、展望台からの香川の地のほぼ全域を高所より拝めるなんて、一般の香川県民どころか観光目的の県外の日本人、国外の観光客でさえその機会が全くないと言ってもいいから、貴重な体験をさせてもらった。

 

「それで、私をわざわざタワーにお呼びした理由(わけ)は、やはり」

「ええ、この前は私の教え子がとんだご迷惑をかけて、申し訳なかったわ………ごめんなさいね」

 

 予想してた通り、色々お忙しい中安芸先生がわざわざ私を呼んだのは、この前の防人部隊の一人にして先生の教え子の一人である加賀城雀が、こっそり造反神と戦う私達の様子を窺おうとして、うっかり未開放地区に足を踏み入れてバーテックスの襲撃に遭い、運よくそこからほど近い歌野の農園で収穫作業をしていた私達が救出した件だった。

 

「それと改めて、朱音さんにはお礼を伝えておきたくて、加賀城雀を助けて頂き、本当にありがとう」

 

 先生は厳格さを帯び、眼鏡がよく似合う知的な美貌に微笑を浮かべて感謝を伝えてきた。

 雀を助け出した功労者は、何も私一人だけではないのだが、そこは安芸先生のことだから銀たち他の救出メンバーにも、一人ずつ何かしらのお礼をするだろう。

 まずは実質、雀救出の指揮役を担った私から、と言うことだ。

 

「受け取っておきます、それと、私からも先生にお礼を言わせてもらいます」

 

 安芸先生に、お礼返しで頭を下げる。

 

「っ………なぜ?」

 

 さしもの安芸先生も、呆気に取られる様子を見せた。

 

「雀を助けられたのは、貴方が書いた防人の記録のお陰でもあるからです」

 

 勿論、神樹様からの神託のお陰でもあるが、私にとってはそれ以上に安芸先生のお陰だと思っている。

 先生が〝勇者〟と言う名の花が咲かなかった教え子たち自身と、勇者たちの活躍の影で必死に、けれど絶対に生きて帰るべく命がけのお役目を全うしていた活動も含めた日々の数々を、子細に、丁寧に書き記し、記録に取り纏めていたからこそ、それを拝見していた自分は、神託が防人部隊の一人であることを指していると気づけ、NARUKOで早急に居場所を発見、救出に向かい、実際に助け出すことができた。

 

「実質先生が、雀を助けたも同然ですよ」

「っ………ではそのお言葉、丁重にお受けしておくわね、朱音さん」

 

 安芸先生は、改めて私に頭を下げ返した。

 これは先生なりの照れ隠しでもある。ほんの一瞬、頬を赤らめた先生の表情(かお)を、なまじ動体も込みで視力の良い私の瞳がちゃっかり捉えていたのだ。言及しちゃうともっと赤くさせそうなので、自分の胸の内に締まっておくことにした。

 

 

 

 

 

 今のゴールドタワーの展望室には、神世紀からは大昔に当たる西暦の四国での観光施設の一つだった頃と同様、窓に接する形でカウンターテーブルとサークル型の椅子がいくつか据えられ、座りながらでも香川の〝千々の風景〟を眺められる。

 

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 

 おまけに、カップ飲料を飲める自動販売機が、ジュースやお茶メインと、本格コーヒーが飲めるのとで二台置いてあり、安芸先生が持ってきたホットコーヒーの紙コップを受け取る、先生自身のチョイスはホットの緑茶だった。

 お互い、最初の一口目を飲む。

 本格的に豆を淹れた――を謳った自販機のコーヒーの幾つかを、飲んできたことはあるが、これはその中でも一番に旨味ある苦味で、香りも本格的だった。たださすがに友里さんの淹れたのに比べたら、分が悪いけど。

 これはもしや、コーヒー好きの静音の差し金かな?

 

「それで、〝お礼〟以外に私をこちらに呼んでお時間を設けた理由と言うのは?」

 

 なんて安芸先生がわざわざゴールドタワーへ自分を呼んだ、もう一つの理由を本題として切り出す。

 

「実は……」

 

 少し〝間〟が掛かるとも思ったが。

 

「朱音さん、単刀直入にお聞きするけど」

 

 私の予想より早く、安芸先生は。

 

「この先、防人の隊員たちが……造反神との戦いに駆り出される可能性は………貴方から見て、どれくらいかしら?」

 

 私が、先日先生から今日のことで連絡があった時点で、もしやと薄々察していた質問を、投げかけてきた。

 それを受けた私も。

 

「私の見立てでは、先生の今の教え子たちも、神樹様からの招集が、いずれ確実に掛かるでしょう」

 

 遠回しや、オブラートに包んだ表現を用いず、ストレートで先生に答えた。

 今後の造反神との戦いで、防人のメンバーも、その戦列に加わる可能性を。

 神樹様当人たちから、まだそのような神託は受けてはいない……けど私の直感(かん)は、ほとんど確実にそうなると、結論付けていた。

 

「朱音さんからは、ほとんど確定事項ってこと?」

「はい、実際私達同様、彼女たちも肉体ごと召喚されてますし、全員とまではいかないでしょうが、メンバーの内の数名かは、チームに加わることになる筈です」

 

 事実、雀も含めた防人のメンバーたちも、肉体ごと結界(このせかい)に呼び寄せられている。神樹様が今後さらなる造反神との〝戦争〟の激化を見越しての備えの一つなのは、ほぼ間違いない。

 さて、ここからどう安芸先生にフォローを入れるか………かつて須美、園子、そして銀を指導し、今でも気丈に、勇者たちの教官の役を全うしている先生だけど、その胸の内には今でも、銀たち先代勇者の死や、満開の代償に翻弄された須美――東郷たちに関しても、現在の教え子である防人部隊に対しても、ティーンエイジャーたちを戦場に送り出す立場な自分に、弦さんたちくらい〝負い目〟を感じ、背負っているだろうから。

 実際、表向き平常に見える安芸先生の、眼鏡の奥の瞳が……揺れている様を私が目にした、その時。

 

〝~~~♪〟

 

 安芸先生の懐から、彼女のスマートフォンのものらしき着信音が、突然響く。

 

「どうぞ、こちらはお気になさらず」

 

 私のことは遠慮せずと伝えると、先生はこちらに会釈して席を立ち、私から数歩ほど離れて、メロディが鳴る端末を取り出して電話に出た。

 相手といくつかやり取りを交わした先生の顔から、驚きの感情が、抑えようとして完全に抑え切れず、眼鏡がよく似合う生真面目で知的な美貌に表れる。

 それからさらに相手とやり取りを交わして通話を切った安芸先生は、落ち着こうと心がけつつも、焦燥そのものを払いきれない様子で。

 

「ごめんなさい、今急な用事が入ったものだから、失礼するわね、コップは一緒に片付けてもらえるかしら」

「はい」

 

 私に断りのお言葉を伝えて、急ぎエレベーターの下へ走ってボタンを押す。

 エレベーターが展望台の階に着いて開くと、すぐさま先生は乗り込んで扉が閉じ、内部のマシンは下へ下へと降りていく。

 残っていたコーヒーを飲み干した私は、先生が飲んでいたのと一緒に自販機の隣のダストボックスに入れつつ、さっきの通話中の先生の様子を思い返す。

 先生はできるだけ小声で電話相手と通話していたが、なまじ人並み以上に五感が鋭敏な私の聴覚は――。

 

「こくど……あや……」

 

 ――確かに、安芸先生を急用に駆り出させた張本人である〝巫女〟の名を、耳にしてしまっていた。

 どうしてその人物が巫女だと断定できるかと言えば、安芸先生の防人の記録に載っていたのだ。

 防人部隊のメンバーを、精神面でサポートする巫女を、名は――〝国土亜耶〟。

 私は端末を操作して、トトを呼び出し。

 

「トト、さっきの先生の電話聞いてた?」

「(うん、例の巫女の子の名前も込みで)」

「なら〝国土亜耶〟を、先にここに行って、探してきてもらえる? 大赦の神官たちに連れ戻される前に」

 

 端末の地図アプリで、ある地域を指差してトトに見せた。

 その地域とは、静音から聞いた大赦専属の巫女が住まう寄宿舎とも言える施設である。

 

「多分、まだこの地区からそう遠くない場所にいる筈だから」

「(分かった)」

「もし見つけたら、上手いこと私の方へ連れてきて、静音の大赦改革で、昔ほど信心深くはないと思うけど、手助けしてくれるとなれば聞いてくれると思うから」

「(りょ~かい、じゃあお先に)」

 

 トトは霊体化して、先にタワーを後にして、私が指定した地区に向かって行った。

 私もトトを後より追いかける形で、エレベーターに乗り込む。急ぎたくても、さすがに樹海化警報も鳴ってない上に神託のない中で変身して目的に飛んでいくわけにはいかない。

 幸い途中停車もなく、私を乗せたエレベーターは一気に一階まで着き、扉が開くと俊足でタワーを出て、急ぎ走り行く。。

 この時、私の心には、ある衝動が―――私自身に、囁いていたのだ。

 大赦の神官たちが見つけるよりも先に、彼女を……〝国土亜耶〟を、見つけ出せと。

 その想いに駆られるまま、私は駐車場に停車させていた愛用のバイク、ワルキューレウイングF6Dに乗り込み、アクセルを吹かせて走り出した。

 鳥籠から、自ら抜け出した――〝巫女〟の下へと。

 


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