GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~EXTRA~:番外編&コラボ外伝集   作:フォレス・ノースウッド

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朱音の厳しめなノーブルレッド評(汗


戦姫シンフォギアXV/EP IF2.5-救われた少女のその後 PARTⅠ

 パヴァリア光明結社。アメリカ人でもある私からすれば――《イルミナティ》と呼ぶ方がしっくり来る錬金術師結社の残党勢力の一人なあ〝BAT GIRL〟………残党狩りの産物で得た情報によればミラアルクと言う名らしい、かの組織が生み出した〝生体兵器〟が引き起した………もう今から四年前となる、ツヴァイウイングのラストライブの惨劇を彷彿とさせる、横浜で開催された、翼と、友のアイディアで飛びいり参加したマリアによるライブを襲った、奴とアルカノイズの襲撃から、約一週間が過ぎた。

 

〝~~~♪〟

 

 その日は休日もあって、SONGの潜水艦(ほんぶ)が現在停泊している、荒れ果てた会場(げんば)からそう遠く離れていない横浜港の一部な海上自衛隊軍港基地の施設を借り、ギアを纏って今の私が持つアームドギアの内で〝切り札〟とも言える《ヴォルナブレーザー》を手に歌いながら、私はそう遠くない未来で起きるのは確実な残党どもとの再戦に備えて鍛錬しながら………幸い救助できたが、観客の一人の女の子を人質とし、翼の前で殺害しようとした自らを〝弱者(よわい)〟と開き直りも同然に発した連中が行うと予想される、非道な〝戦術〟の数々を脳内でシミュレートしていた。

 またしても翼のライブ、人々に希望を与える筈だったのに、空から落ちてきた絶望で悲劇へと変貌させられてしまった………ライブ参加者とスタッフ含め約一〇万人の内、死者は四年前より多い、二万九五七人。

 藤尭さんらオペレーターメンバーの計算と推測によれば、最悪のケースの場合、翼とマリアに緒川さんら一部除き、観客スタッフ問わずライブにかかわった人間ほとんど全てが死亡していた可能性もあったと言う。

 それを踏まえれば、救うことができた人の数こそ多いが………前世(かつて)、ギャオス殲滅を優先する為に修羅になろうとして、自ら殺戮の大罪を犯したガメラでもある自分としては、助けられなかった命の重みが、やっぱり歌を生み出す胸の奥に、重く伸し掛かってくる。

 同じく四年前に起きた、響ら立花一家も含めてライブ生存者と家族への〝魔女狩り〟を繰り返さない為、政府も被害者当人らと、死者の遺族への援助とともに、迫害対策には熱心に打ち込んでいると………現在もSONGのパトロンにして理解者の一人である斯波田事務次官は、その時も好物の蕎麦を豪快に啜りながら連絡してくれた。

 私も二度とあんなことが起きて欲しくないと願いたくもなるし、もし目の前で再発された瞬間に立ち会ったなら、せめて目の前の悲劇だけでも繰り返させない想いである。

 前世の頃から戦いで受けた傷の痛み以上に、痛いほど味わってきて重々分かっていても、掬った砂の中から零れ落ちるものが出てくるように、どうしても助けられい〝現実〟には、やはり慣れない……否、守護者だからこそ、慣れたくはなかった。

 私はもう……悲しみを悲しいと涙できる〝心〟を、二度と否定したくはない、いばらの道だと承知していても尚、その心を失わせない、持ち続けたいのだ。

 

〝If I wasn’t hard,~ wouldn’t be alive~~~♪ If I couldn’t ever be gentle~~I wouldn’t deserve to be~alive~~♪〟

 

 他の装者(そうしゃ)と違って、音色も歌詞も戦闘の状況によってはよく、即興で変わったり新たに作曲されたりする私の〝潜在意識(むねのうた〟は、今の心情の一部を汲み取って、あろうことか私の〝守護者〟としてのモットーの一つとしている、ハードボイルド小説に名探偵の名言――〝強くなければ生きていけない、優しくなければ生きている意味がない〟の原文を、そのまま口から奏でてしまっていた。

 

〝弱い……こと……〟

 

 そのこと自体は決して罪じゃないし、確たる一種の〝真理〟だとはっきり言い切れる。

 そもそも人間と言う生命そのものが〝不完全な弱者〟、だから唯一他の生物より秀でて育まれた〝知性〟で、生態系と言う枠組みから、文明と言う自分達独自の社会(テリトリー)を創造して現在にまで至っているし、宗教も、私たちがこよなく愛する歌を含めた文化芸術も、科学とテクノロジーにその革新も、ノイズ含めたあらゆる兵器の数々も、錬金術も、神から齎されし先史文明の異端技術を利用することさえ、弱者である人類の産物(おとしご)たちに他ならない。

 今は仲間にして、歌を愛する友の一人なマリアも、自身の〝戦闘歌〟の詩にて自分の〝弱さ〟を受け入れて運命に立ち向かうと豪語していたし。

 かく言う私も、地球を守護する怪獣としてのガメラの頃から抱え、進化と引き換えに摩耗していった幾多の激闘の中で、迷い、惑い、悩み、それらを否定しようと足掻きもがき、迷走するがまま抗い続けてていた挙句、たくさんの罪を犯して、生まれ変わっても尚、装者にして人の形で、今も――〝ガメラ〟として災いたちと戦い続ける自分が背負っている自身の〝弱さ〟と言う大きく昏さも濃い〝影〟を、幼い子どもに愛を注ぐよう子どもに抱きしめ……。

 

 己が信念(うたの数々)―――。

 

〝ずっと断ち切りたくとも捨てきれず、どこまでも向き合い続け、持ち続けると決めた、ガメラとしての自分の人類への………《愛》〟

 

 それと――。

 

〝人が、弱くても愚かでも不完全でもその胸の内に、確かに持っている愛を信じる………《想い》〟

 

 

 そして――。

 

〝生きることを諦めない……愛する《人間》を含めた、巨大な災いの前では無力でも、逞しく強い……全ての生命を守り抜こうする――《意志》〟

 

 ――へと為している原動力、またの表現として……源としている。

 ゆえに、だからこそ………決して〝弱さ〟を残虐なる罪科を正当化させる〝免罪符〟として使うことなど、響たちを虐げてきた人々の様に無意識無自覚にでも、残党どものように自覚的にして意識的にでも、断じて――あってはならない。

 私の血にも僅かながら流れる、ユダヤの人々を襲った〝ホロコースト〟も同然だ。なぜあの惨劇が〝ジェノサイド〟と呼ばれない理由は………まだ第二次大戦が起きていなかった時勢に、ナチスと当時のドイツ国民が自ら招き入れてしまった〝過ち〟だからである。

 人類史の記録は、蜘蛛の糸以上に複雑怪奇に分岐と合流が積み重なる因果で絡み合って流れる川な一方で、そんな弱さの向き合い方をはき違えて起きた悲劇たちのリストが無数に刻まれ、失われた多過ぎる命から流された大量の血に塗れている………ルナアタック、フロンティア事変、魔法少女事変、サンジェルマンらイルミナティの幹部が画策した月の遺跡の掌握と言った、装者(わたしたちが)携わった戦いの数々も含めてだ。

 主亡き今、南極で発見された創造主(アヌンナキ)の遺骸を使ってあのサイコパスな残党が何をしようとしているかはまだ分からないが………自分で自分に〝存在していることそのものが罪〟と刻み傷つけている奴らの野望ごと、ギャオス同然に生きた厄災以外の何ものでもない……その〝歪み〟を――断ち切ってやる!

 その決意を胸に、実話な日本史史上最大の雪中行軍遭難事件をモデルとした映画の八〇田山を、アメリカでのリバイバル上映にて始めてスクリーンで見た時を思い出すくらい真冬真っ只中に寒い季節ながら、汗をたっぷり流して鍛錬を続けていく内に、そろそろ昼の時間帯に近づいてきたので、ランチ含めた眺めの休憩を取ることにし、ギアを解除して見てくれをリディアンの体操服姿に戻し、身体が火照っているので、上の上着だけ一旦脱いで水分補給。

 昼休憩の前にまず軍港内の大浴場の温泉で、体全体に溜まった汗を洗い流し、今日のランチは何を作ろうかと思案するのをも兼ねて、思いっきりひとっ風呂にでも浸って疲れを癒そうと考えていた矢先な……その時。

 

〝~~~♪〟

 

 SONG支給の専用端末から、ハリウッド版の怪獣王の映画にて、劇中では王と人間の声を合成した電子音な設定の着信音(メロディ)が鳴った。

 通信を繋ぎ、端末が3Dタッチパネルモニターを投影する。

 

「はい、こちら朱音」

『朱音ちゃん』

 

 相手は、いつもと表現するのは何だけど、現にその通りな、友里さんだった。

 

『午後も訓練でしょうけど、ちょっとそれを切り上げてもらえるかしら』

「どうしました?」

『貴方に面会を希望してる方々がいるの、朱音ちゃんが救助した女の子の――両親よ』

「え?」

 

 思いもよらぬ相手からの訪問に、私は面を食らって翡翠色な自分の瞳を、大きく開かせた。

 

「暫くお待ちくださいと、その方々にお伝え貰えますか?」

「ええ」

 

 会う前に、相応の身支度をしないとね。

 

 

 

 

 

 予定を変更して、シャワーで丹念さを忘れずに駆け足気味で汗を洗いざらい流し切った私は、SONGの装者用にして、出撃時のとは違う冬季時室内用の制服に着替え、軍港内の廊下を進み、応接室に到着。

 

「失礼します」

 

 姿勢を正し直してノックし、このドアの向こうにいる、あの惨劇から命を助け出せた少女――飛江田三葉(ひえだみつは)のご両親と対面するべく、入室した。

 

PARTⅡにつづく。

 


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