GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~EXTRA~:番外編&コラボ外伝集   作:フォレス・ノースウッド

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去年のXVに続き、今回はメックヴァラヌスのIF短編集をお送りします。
これいわゆる前置で、次は『本当に綺麗なOTONAな訃堂殿と朱音』のやり取りを描いたIF短編を考案中。


竜姫咆哮メックヴァラヌスIF集/もしも朱音もいたら?

メックヴァラヌスIF:もし朱音もいたら?

 

その①:装者と竜姫の邂逅では?

 

 ヴァラヌス世界で目を覚ました直後に鉢合わせたノイズ戦の後。

 

「二課本部聞こえますか? ノイズ発生地点で不審人物を発見」

「指示を!」

 

 この世界のエージェントが現れる。

 

「(朱音、ここはお前の弁術で事を収めてくれないか)」

「(了解、できるだけやってみるさ)」

「「(頼むね・頼んだぞ)」」

 

 四人の代表として朱音は交渉役を請け負った。

 

「二課? 丁度良かった、貴方たちからしたら私たちは不審人物なのは無理ない上で不躾なお願いとなるのですが、特異災害対策機動二課の司令官とお目通りを願いますかな?」

「何? どう言うつもりだ!?」

「司令とお目通り願えるなら、私たちの対ノイズ殲滅兵器に関する情報を提供するだけでなく、大人しく武装解除した上でエージェントの皆様の指示に――」

「ちょっと待った!」

 

 穏便にことを進めようとした矢先。

 

「ええ!? 今の声もしかして……」

 

 聞き覚えのある声が響いたと思ったら。

 

「来てくれましたか……」

 

 朱音と響のクラスメイト、創世、詩織、弓美の三人が現れた。

 

「なんで皆が……」

「響、あの創世たちは平行世界の別人だ」

「あ、なるほど……」

「そして朱音たちの級友がこの場に現れたと言うことは……」

「ああ、多分平行世界(こっち)じゃあいつらが人知れずノイズと戦う戦姫さまってとこだな……」

「ええッ‼?」

 

 驚く響を除いて、三人の見立て通り。

 

「行くわよ!」

「「「メックヴァラヌス――テイクオフ!」」」

 

 平行世界の弓美ら三人は、この世界における対ノイズ用パワードスーツ――《メックヴァラヌス》を纏って。

 

「へ、変身したぁぁぁーー! どういうこと!?」

 

 ――変身、したのだった。

 

「メック……バラ……ヴァラヌスだぁ?」

「シンフォギアではないのか?」

「シンフォギアでも、ファウストローブとも違う、別系統の技術が用いられたノイズ兵器らしいね」

 

 響ほどではないが、シンフォギアではない代物で変身した弓美たちに驚く翼とクリスと、冷静に相手を分析している朱音の一方で。

 

「ごちゃごちゃ言わないそこのバチモン四馬鹿ッ!」

「バチモン!? 私たちが纏っているのはバチモンなんかじゃない! ぶっちぎりのオリジナリティ、シンフォギアだッ!」

「四馬鹿なのは否定しないんだ?」

「「断じて違うッ!」」

 

 創世の言葉に、翼とクリスは初対面の時並みに綺麗なシンクロ具合で断固否定した一方で。

 

「はぁ……」

 

 一人朱音はダウナーさたっぷりに溜息を零した。

 

「ちょっとそこの追加戦士っぽいアンタ! 何溜息吐いて白けてんのよ」

「そちらさんもさっきノイズを相手にしていたのではないのか?」

「え? なぜ私たちが戦闘していたとお見抜きに?」

 

 事実ついさっきまで、別地点に出現したノイズと戦闘を終えて、おっとり刀で駆けつけた三人は呆気に取られた。

 

「君たちの着ていた私服に、倒されたノイズの炭素がこびり付いてたのを目にしてね、余程の運に恵まれでもしない限り、ノイズと直に接触して生きていられるとしたら、それは最重要国家機密でもあろう対ノイズ兵器を扱える……いわば〝適合者〟ぐらいしかいない、それに――」

「それに何?」

「今下手にノイズと渡り合える私たちが同士討ちをして消耗した時に、またノイズが出現したらどうする? アニメでも大抵、こういう時にやり合ったら敵が漁夫の利を狙って襲ってくるフラグが立つところだよ」

 

 朱音は、この世界の弓美も生粋の〝アニメオタク〟であることに賭け、アニメを引き合いに出すと。

 

「そう言われてみれば、アンタの言う展開が起きるフラグがピンピンな状況だわ……」

 

 よし、効果は覿面。

 案の定、この世界の弓美もアニメオタクだった様で、アニメを用いた朱音の言葉に頭が冷え始めたのをチャンスに。

 

「響」

「うん」

 

 朱音と響は、平行世界の弓美ら含めた二課の面々に戦意も敵意もないことを示す為、変身解除し。

 

「雪音」

「ああ、アタシらも正直アンタらと状況をややこしくするドンパチは避けたいんでね」

 

 続いて翼もクリスもギアを解いた。

 

「では、私たちも矛を引いてお話を致しましょう」

「ちょっと詩織! なんでアンタがことを進めてんのよ」

「悪い人たちには見えないと、彼女たちの様子から判断しましたので」

「私も〝お話〟には賛成」

「創世まで……しょうがないわ」

 

 とまあこんな風に、主にアニメやヒーローものあるあるな『お互い初対面ゆえの勘違いと誤解で戦闘になってしまう展開』は避けられた。

 

「でも込み入った話になるなら、本部で代行と一緒に直でしてもらえないかな?」

「代行?」

「司令の代理ってことかい?」

 

 クリスと朱音からの問いに創世は。

 

「うん、私たちの上官で、二課の司令代行、凪景義――」

 

 代行とは、自分らの特機二課の一応の……司令的立場の本名を上げ。

 

「通称――」

 

 そして朱音たちの次元(せかい)同様に、親しい相手には必ずあだ名を付ける創世は。

 

「――さなぎマン」

 

 ズゴォォォォ~~~~―――ッ!

 

 そのニックネームを口にし、朱音たちは内心、ギャグアニメ劇中よろしく盛大にずっこけていた………直後、彼女たちの専用端末(スマートウォッチ)から通信音が鳴ったかと思うと。

 

『ちょっと待った! 僕(ボキ)はそんなあだ名でもそんなまどろっこしい官職でもないといつも言ってるでしょうが!――特機二課期待の新司令、凪景義とはボキのこと! そこの不審者の方々も重々覚えてくれたまえ』

 

 立体モニターが現れ、画面にその凪景義司令代行らしい人物が現れた。

 

「(なんだよあの〝脂肪モリモリぽっちゃりマン〟な眼鏡野郎は……)」

「(しかも一人称は、僕と書いて〝ボキ〟と呼ぶらしいな)」

「(アホさ具合が暴発してるぞ……)」

「(同感、それにああ言う手合いは大抵小心者で保身に走りがちな小物、大丈夫かな……この世界の二課は……さっさと人事異動をお勧めしたいよ)」

「(そいつは言えてるな)」

 

 弓美ら三人とエージェントに先導される形で二課の地下本部に向かいながら、朱音とクリスはさなぎマン司令代行の第一印象を、少々きつめに表するのであった。

 

 

 

 

 

 その②(リディアンチャイム~♪)

 

 シンフォギアの代わりに、メックヴァラヌスと言う対ノイズ殲滅兵装が存在する平行世界の特機二課本部は、私立リディアン音楽院ではなく―――仰陽館学院と言う学校校舎の地下にあった(もっとも女子校であることや校舎のデザインもリディアン旧校舎と似ており、制服に限っては瓜二つである)。

 

「さて、君達シンフォギア装者には、仰陽館学院校長――」

「正確にはこちらも校長代理です」

「詩織さん今日も一言余計です! ゴホン……そして君らの管理者でもあるこの僕(ボキ)の目が届く様、事態が収束し、元の世界に帰還する術が見つかるまでは、学院の生徒として過ごし、寝泊まりは学生寮でしてもらいます」

「分かりました、凪司令代行、私たちは貴方の判断に異論はございません」

 

 そして凪司令代行の判断により、四人は当分の間、かの学院の学生として普段は過ごしつつも、ノイズが発生した際は弓美らメックヴァラヌスの担い手たる竜姫らと共同で迎撃に当ることになり、実質的に装者側の代表的立場に成り行きで立っている朱音は了承の意を示した。

 ただその前に――。

 

「(私はとうに卒っ――)」

「「(ストップ!)」」

 

 翼は既に学業より卒業してから半年以上経ってる(ゆえにまた制服を着ることに全身の細胞が悲鳴を上げるくらい拒否感が少なからずある)身であることを口にしようとしかけたところ、朱音とクリスに制止された。

 理由は言うまでもなく。

 

「(緒川さんがいないこの世界でどうやってこの世界の二課から提供された住まいを爆心地(ごみやしき)にせず生活できるアテがあるのかい翼……もし一人別次元から助っ人呼べる能力があったら、リヴァイ兵長を寮の管理人役として呼びたいくらいだよ)」

 

 朱音は、これが自分たちの意図を推し量る為のお目付けの意図も含まれた施しでもあることを理解しており、下手に渋ったりすると弓美たちはともかく、司令代行から抱かれている疑念を助長させかねない――なのも理由の一部だったが、大半は翼の絶望的かつ壊滅的生活能力の無さが原因だった。

 厚意は厚意なので、提供してくれた部屋を地獄か煉獄のゴミ屋敷にでもしてしまったら、ある意味で恩を仇で返す行為も同然であり。

 

「(ぐっ……ぐうの音も出ない事実とは言え、こうもまたはっきり言われるとどうしても言いたい、朱音も雪音も〝私に意地悪〟だ……)」

「(先輩……愚痴ってもそれこそぐうの音が微塵も出てこない事実(ほんとう)なんだからさ、朱音にきっちり面倒みてもらおうぜ、当分こっちで暮らすの確定なんだしよ)」

「(雪音まで……しかし否定できぬゆえ……不承不承だが、二人の意見は受容しよう)」

 

 自分でも己が悪癖を恥ずかしさ情けなさ込み自覚している翼は奏が存命だった頃よく彼女にも使っていた口癖を使って若干悔しさで涙目になりかけつつも、異世界に自分の生き恥を晒したくない気持ちも否めなかったので後輩二人の忠告を聞き入れ、寮部屋は四人の装者の中の生活能力は一定以上の水準を持つ残りの三人の内、最も高い朱音と相部屋になった。

 

 

 

 

 

 

その③

 

「ただし、凪司令殿のお望み通りの形で私たちシンフォギア装者を管理下に置く上で、こちらからも条件があります」

「条件ですか……」

 

 あからさまに、不快とまでは行かずとも眉をしかめるさなぎマン――もとい司令代行。

 

「実は私たちの世界には平行世界の扉を開く聖遺物が存在し、以前よりそれを用いて別次元に渡っては、そこで発生した危機に対処してきました」

「それどこのイー○スやディ○イドライバーよ……」

「生憎、君が上げたのよりそう都合のいい代物じゃないけど」

 

 弓美からのこのツッコミに。

 

「ほほ~う、興味深い、どのような聖遺物なのですか?」

「国際レベルの最重要機密なので――」

「国際レベルッ!?」

 

 それと朱音の発言から、シンフォギア装者が所属する母体組織の規模を想像したのか驚愕する凪司令代行のことは右から左で流しておいて。

 

「――名称込みで詳細は明かせません、それ以前にどうも異世界に何らかの大きな災禍の兆候が表れた時のみ、次元の扉が開かれ、今回の事態を例外として、その才かを収束させるまでは扉は常に開かれていること以外は、判明していないことも多いのです」

 

 朱音はギャラルホルンの名称は伏せつつも、事実であるかの聖遺物に関する謎だからである現状を説明しつつも、ポーカーフェイスで凪司令代行の様子を窺い。

 

「どうやらこちらには、今説明した聖遺物と同等または近い機能を有する代物は発見されていない様ですね、条件とはそのことだったのでこちらが提示する条件は無いと訂正します、となると私たちの組織の本部機能の復旧と例の聖遺物の再起動までを待つことになりますが――」

 

(単刀直入にギャラルホルンはあるかと問わなかったのは正解だな、同じものか近しいものかさて置き、次元に関連する聖遺物自体は組織の最重要機密扱いで、厳重に封をされている形ながらも存在しているらしい、今これ以上踏み込むと代行の警戒心を強めてしまうか、目立ちたがりで出世願望を捨てられない小心者だが、確かな強かさは持ち合わせている)

 

 実際に凪司令と対面してみて、彼が二課の司令的立場にいるだけの有能さを持っていると朱音は見抜き、実感した。

 どの道、自分らがこの世界に迷い込むきっかけを作った正体不明な襲撃者と、その者が率いていた謎の怪物をどうにかしないと行けない事情も考慮しなければならない、自分らの世界以上の頻度でノイズが出現している上に、かの連中までこちらに現れたら………シンフォギアより性能に後れを取っているのが否めないメックヴァラヌスとその使い手たる平行世界の弓美(とも)たちには荷が重すぎる。

 

(今は仮にもこの二課の長の司令代行の警戒心を解き、少しずつ信頼を得てから、改めて直接ギャラルホルンの件を尋ねた方がいい)

 

 そう判断した朱音は、自分たちの世界に帰還する方法を探す件は一旦保留にしておくことにした。今は――〝機を待つ〟――時だ。

 

「仮に次元の扉がこの世界に現れても、事態を解決するまでは司令殿の保護下にて当分の間こちらに滞在させて貰い、無論竜姫たちへの協力も惜しまないので、ご安心を」

「分かりました、ボキの顔を立てて頂き感謝しますぞ、草凪朱音君」

「いえ、貴方はいわばこの特機二課と言う一国を治める、司令代行に甘んじている現状が惜しいくらい優秀な〝城主〟であらせられるお方、顔をお立てする他ございません♪」

「いやいや~~そこまでお世辞を仰ってボキを面目を立てても何も出しませんぞ~♪」

 

(有能だけど、弦さんとはまた違う意味で詰めも甘いな………例の連中の黒幕がハニートラップを使わなければいいが………こちらとしては対応し易くて助かるけど)

 

 にっこりかつ慈愛たっぷりに微笑みとセットでおだてた朱音に対し、凪司令代行は彼女の類希な美貌に、露骨な警戒具合から一転すっかり有頂天にニヤケており………朱音は笑顔のまま内心、大いに呆れてしまいつつも、相手のそんな気質も上手く活用できると考えていたのであった。

 

 

 

 

 

その④

 

 それから数日経って、二課地下本部司令室。

 

「なぜ呼び出されたのか、察しくらいはついていますよね?」

 

 その日の竜姫たち三人は、あからさまに不機嫌なご様子を剥き出しに見せつけている凪司令代行に呼ばれていた。

 

「言われた通り、あの四人に怪しいところが無いか見張ってたわよ……」

 

 初対面では朱音にあっさり手玉に取られた代行だが、それでも完全に装者たちへの疑念が消えたわけではなく、竜姫たちに学業と日常ともども交流の傍ら、彼女らの同行を見張らせていたのだ。

 

「そろそろ〝尻尾を掴めた〟報告を聞きたいところなのだがね……」

「掴むも何も……ノイズと戦っている時はともかく」

「学院や寮にいる時は私たちと同じ〝年頃の女子〟ですよ、四人とも」

「代行の勘繰り過ぎじゃない……スパイなんてヒーローのやることじゃないわよ」

 

 三人にとって、時空規模の迷子の身な上に、危うく問答無用で攻撃しかけたのに文句の一つすら返してこないばかりか信用してもらい、その上惜しみなく特異災害の対処に協力してくれている上に、何より彼女たちから見れば〝善人にしてヒーロー〟も同然な装者たちを監視するのは気持ちの良いものでは無かったが……〝命令〟扱いで指示されたのもあり、渋々請け負っていた。

 

「色気より食い気な大食いのあの子はともかく、一人は平行世界とは言え、あの風鳴家の御令嬢、もう一人はバルベルデ紛争に巻き込まれ家族ともども亡くなったあの雪音夫妻の娘と同じ名、さらにもう一人は……君たちと同い年にしては年相応に収まらぬ〝爪を隠す鷹〟な切れ者ですよ」

 

 朱音が見立てていた通り、初対面時はしてやられた司令代行は、だからこそ後からになって彼女のただ者ではない〝香り〟に気がついていた。

 そうでなくても、まだ彼は装者を信用するには、そうするに値するだけの〝証明〟材料がまだ足りないと考えているのもあり、日常でも戦闘でも接する機会の多い彼女らに監視を命じていたのである。

 

「まあ確かに朱音(アーヤ)って、同い年と思えないくらいしっかりしてるし」

「実際に芸能人な翼さんと張り合えるくらい美人ではありますよね♪」

「まさに二次元(アニメ)から飛び出して来た属性てんこ盛りキャラよ朱音って」

「私が言いたいのはそのような意味ではなく――」

 

 微妙に意味(ピント)のずれた返答をしてきた三人に、代行の不機嫌が増量されかけた時だった。

 

「なるほどなるほど~~妙に鼻がむずむずするから、もしやと来てみれば、案の定だったね」

「「「ええぇぇぇぇーーー!」」」

 

 噂をすれば何とやらで、いつの間にか壁にもたれかかり、腕を組んだ体勢で朱音が司令室内にいた。

 

「まさか人類最期の城の城主たる二課司令殿にそこまでご評価頂いていたとは、お褒めに預かり光栄です、凪司令殿」

 

 朱音はにこやかな容貌と物腰に、慎ましく畏まった姿勢で一礼をする。この手の女性に嫌われるタイプの女性にありがちな〝媚び臭さ〟は微塵もない――どころか、宮廷に仕える騎士の如き品位さえある朱音の態度に対し。

 

「いやはや~~チミの様にボキの秀でた能力を正しく評価してくれる者が現れて、ボキも感激してますぞ~♪」

 

 また凪司令は一転して口笛を鳴らしそうなくらい調子よく浮かれ。

 

 

「竜姫を君たち装者のお目付け役にしていたのは実のところ、二課の上部組織の方々が抱く疑いの目を、早い段階で晴らしておく為のものでして」

 

(どう見ても今のが〝嘘〟で疑惑一〇〇パーセントで三人に監視させていたのがバレバレ、だから代行止まりで名誉司令に頭が上がらない立場から抜け出せないのさ……まあこっちとしては都合が良いから、敢えて合わせてと)

 

「そうでしたか、なのに敢えて偽悪的に弓美たちに指示を出す潔さ、漢気を感じさせられましたよ♪」

 

 この通り朱音は咄嗟に代行の口から出た〝嘘(でまかせ)〟だと看破していたが、代行の調子に乗り易い調子は上手く利用した方が自分らに利があると踏んでいた為、さらに彼の調子を浮かせるべく誉め上げ、また一本取ってしまった。

 三人も三人でそんな朱音に今回もまんま手玉を取られている代行の掌返し具合とチョロさに、それぞれの人柄らしい呆れた目線(まなざし)を向けており、特に弓美は苦笑いで濁す二人と違い、露骨に絶句している。

 代行自身、先の発言の通り朱音の歳相応離れした手腕家振りを見抜いてこそいたものの、有能さと平行して抱える詰めの甘さが災いし、どうしてもいざ本人を前にすると隙を与えて一本取られてしまうのだった。

 

 

その⑤――腹を割って話す。

 

 それから数十分後の、夕陽差す仰陽館学院学生寮の屋上。

 

「助かったよアーヤ、あの時来てくれなかったら、もう何時間はさなぎマンにネチネチ言われてたと思うから」

「礼には及ばないよ」

 

 そこで朱音と平行世界の創世たちは近所のコンビニで買ったスイーツと飲み物を手に談話していた。

 

「そろそろ聞きたかったところなんだけど朱音、どうして私たちが代行から呼ばれたタイミングで司令室にいたのよ」

「そもそも、いつ頃から私たちが装者の皆さんに探りを入れていたことを気づいていたのですか?」

「あ、それね――実のとこ初日にボキ代行君と顔合わせた段階で、これは君たちにスパイをやらせる気だなと思ってたよ」

「「「ええッ!?」」」

 

 まず詩織の質問に応じた朱音の返答内容に、三人はぴったり驚愕の声を三段重ねさせた。

 

「この世界の二課からすれば、私たちは怪しさの塊なのは自覚してたし、おまけに現状虎の子のメックヴァラヌスよりも遥かにスペックが高い対ノイズ兵器を見せられたんだ………私たちの目的と正体と、シンフォギアに関する詳細なデータは、喉から手が出るくらい欲しくなるのも無理ないさ、しかもあのボキ代行君と来たら――」

 

 その上先日、竜姫が訓練に使ってるシミュレータによる仮想戦闘でギアの戦闘データを取ろうと司令代行は画策したことも話した。

 

「日頃から私たちを口煩くこき使っておいて………そりゃまだまだ自分でも力不足だと感じてるけど、それでも癪に障るわね……」

 

(余り気負いすぎるなと言いたいけど、先代の竜姫の件を踏まえると……そう簡単に肩の力は抜けないか……)

 

 悔しさで唇を強く噛みしめる弓美と、彼女ほどではないにしても、自身の力不足具合を含めた複雑な心境を顔に出す三人の様子を見た朱音は、彼女たちが自ら話してくれた竜姫となるきっかけとなった――某特撮ヒーローの用語を使うなら〝ビギンズナイト〟を思い返す。

 メックヴァラヌスの担い手である竜姫には、先代が存在した。

 弓美たちはその先代に憧れ仰陽館に入学したのだが、一回生一学期の頃に行われた校外学習の際、行き先のある島で大規模な特異災害が発生……三人は他のクラスメイトと教員からはぐれてしまい、多数のノイズに囲まれてしまった。

 そこへ間一髪、先代が駆けつけ、廃屋に隠れ潜むことはできたものの………突然現れた〝竜の姿をした怪獣〟が引き起こした衝撃波にノイズ共々巻き込まれ負傷し、命こそ助かったものの………その時一人で多数のノイズ相手に奮戦していた先代は………あのツヴァイウイングのラストライブで命燃やし尽すまで歌い続けた奏さんの如く……殉職したそうだ。

 ある意味で三人はかの出来事と竜姫の力を受け継いだことで、響に近しい〝歪さ〟を抱え込んでいると朱音含め、この世界に迷い込んだ装者全員が見抜いていた一方で。

 

(もしその竜らしき怪獣が、あの襲撃者が引き連れていた怪物と同一の存在だとしたら……)

 

 その〝竜〟の件も……気がかりだった。

 だが例の襲撃者らと関連づけるには、まだまだ情報が足りなさ過ぎる為………朱音は迂闊に断定しない様に留意し、あくまで可能性の一つとして留めていた。

 

「それと三人の見張り自体の件だけど、私の目からはそれもバレバレだったな」

 

 そして凪司令代行の全然隠せていないどころか、日に日に増す不機嫌さから、この二・三日の内に三人は監視の中間報告に呼び出されるだろうと朱音は思案し、放課後先回りして地下本部に繋がる仰陽院中央棟の専用エレベーターの近くに張り込んでいたところ、溜息を吐いて昇降機に乗り込んだ姿を目にし、こっそり後を追って気配を消したまま司令室に入り、装者の見張りの件で夢中になって気づいていない彼女らを横目に自分からやり取りに入り込むまで、半ばちゃっかり堂々と代行と竜姫の密談を眺めていたわけである。

 

「これでも気づかれない様、慎重に行ってたつもりなのですが……」

「そのつもりでも、悟られない様に意識し過ぎているのが、視線や無意識の仕草で筒抜けだったよ、これは私のグランパ、祖父からの受け売りだけど」

 

 朱音の祖父は言っていた――気づいてないだけで、人は常に無意識の内に性格やら感情やら潜在意識(むじかく)に秘めた想いやらを意図せずに顔の表情や全身の仕草等による〝サイン〟として出している――と。

 

「日頃観察力やら論理的思考力やらを磨いてコツを掴めれば、そのサインを読み取ることだって造作もない、ただ司令代行に関しては、わざわざ鍛えるまでもなく顔にも全身からも諸出しだけど」

「あ~~言われてみればさなぎマンって確かに顔にすぐ出ちゃうよね」

「そりゃ朱音に一本どころか、何本も取られるわ」

 

 朱音を通じて、司令代行の詰めの甘さと、人一倍サインを出してしまう癖を認識した弓美らは思わず吹き出してしまっていた。けれどそれが結果として、たとえ一時的でも、竜姫としての使命感(プレッシャー)を背負い込み過ぎてしまう三人の負担を和らげてくれる効果を齎して――程なく。

 

「ほんと見張ってた件はごめんね………」

「気にしてないよ、さっきも言ってたけど、私たちが疑われる立場なのは承知しているし」

 

 創世は三人を代表して改めて監視の件を詫び、朱音はこれ以上良心を痛ませない様留意しつつも。

 

「こっちもこっちで、この世界の二課に関して〝懸念〟があったんだ」

「何ですか? その懸念って……」

「まだ推測の段階なんだけど………今回の事態を招いた、正体不明の怪物を率いるテロリストが、この仰陽院の生徒として隠れ潜んでいるかもしれない」

「「「ッ!」」」

 

 もう一つ、現状では可能性の域を出ない危惧を、朱音は後顧の憂いを予め断つ為の措置も兼ねて打ち明けた。

 

「テロリストはフードの付いたローブで顔を隠してたけど、体格は丁度女子高生ぐらいだった………それに隠れ蓑にするには仰陽院は格好の場所だ」

「確かに、灯台下暮らし、または木を隠すにはまず森から、とも言いますし……」

「この学院自体、日本でもトップクラスのマンモス学校だから……」

「それに仰陽院をアジトにするのに都合が良いことがもう一つ、いや二つある」

「何? その都合の良いことやらって……」

「こうして牽制し合っている私たち装者と君達竜姫含めた二課の監視と、両者を同士討ちさせる策謀を練ることさ……」

 

 三度、竜姫の少女たちは朱音の提示した懸念に言葉を失い、大きく固唾を呑んだ。

 

「奴らとその背後にいる首謀者の真意がどうあれ、私たちは連中の目的を果たす上で邪魔な存在、それを直接戦わずに排除しようと考えているとしたら……」

「私たちを仲間割れさせて、共倒れさせようと……」

「もしそうなら、とんだ下衆で外道な悪党(ヴィラン)どもね」

「ああ、こうして話している瞬間にも、連中は盗み聞きしているかもしれない………三人とも気をつけて」

「うん……」

「はい……」

「分かったわ、ヴィランの思うつぼに嵌ってたまるもんかよ!」

 

 朱音が思いきって腹を割って竜姫たちに幾つか自分らの意図や懸念を話したことで、最悪の道筋に至る可能性は、一気に低くなった。

 それでもまだ、油断は禁物……今回の事態の首謀者たちは、未だ影に潜みながら、陰謀を張り巡らせているのも確かなのだから。

 

 

IF短編集、終わり。

 


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