GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~EXTRA~:番外編&コラボ外伝集   作:フォレス・ノースウッド

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さてプロローグを経ての第一話。Gフォースにどうしても華を持たせたくてシンゴジ含めたゴジラシリーズの対人類戦を見まくった結果いきなりこんなボリュームに(;^ω^)
なにせGフォース、設定自体はロマンがある(一方で地味に生々しい国際事情の裏設定もあるけど)のに本編ではメカゴジラもモゲラも最終的にはゴジラの赤色熱線で撃破され、いわゆる通常兵器郡の防衛線は碌にゴジラを足止めできないまま破られ、VSデストロイアでは組織縮小で出番は自衛隊の持っていかれ(漫画版では壊滅してるし)と良いとこなしだったし、シンフォギアシリーズとゆゆゆシリーズはどちらも『人間なめんなよ!』な作風の一つなもので。

で、プロローグを読んだ読者は大体こう思ったでしょう――『元から怪獣ギアも同然な朱音(ガメラ)はどうすんの?』と、そこはゆゆゆシリーズの、正確にはのわゆのある設定を生かしました。どんなものかは読んでのお楽しみ。


EP1-怪獣のいる世界 ◆

 ゴジラが天へと見上げてかの〝咆哮〟を盛大に上げた直後、奴の〝自分以外の全て

に怒る〟鋭き眼が、トトの認識阻害の効果もある結界内にいる〝装者(わたしたち)〟を……確かにその目ではっきり捉え、心臓の奥の底のさらに底まで響く、映画で何度も耳にしてきたものと寸分違わぬかの唸り声を上げる。

 

「おいまさか………見えてんのかッ!? アタシらが」

「トトの結界をこうも簡単に見破るなんて……」

「さすがゴジラね……」

 

 奏さんもマリアも奏芽も、咄嗟に各々の得物(アームドギア)を構えて警戒する。

 さすが怪獣の王と言うべきか、常人を誤魔化す程度の〝まやかし〟は一切通じない。

 銀幕越しに見ているだけでも、奴には強力な〝感応力〟を持っているし、窺う限りは目の前にいる本物(ヤツ)も同等以上のものを持っていると見た。ならばそれを逆手に取らせてもらおう。

 私は自身の脳裏に強く明瞭に、ある光景を投影させる。王となってしまった彼にとって………永遠に失われた〝光景〟を。

 

〝ナゼオマエガ………アレヲ………シッテイル?〟

 

 直後、神樹様の神託を受けられる感応力を〝今の自分〟も持っているだけあり、脳内にてヤツの戸惑う〝声〟が響いた。

 やはり……ヤツは〝核の光〟が無ければあの島でひっそりと天寿を全うしていたかもしれない方の――〝ゴジラ〟か………。

 

(悪いが理由を話す暇はない、今は空に気をつけろ)

 

〝ナンダト…?〟

 

 胸中(むねのうた)にて憂いの疼きの音色が鳴る中、それをゴジラ自身に悟られまいとポーカーフェイスを維持したまま、奴に〝忠告〟を送る。

 

「朱音あんたも三枝未希の真似なんかしてないでこの状況どうするか考えなさい! もしあの本物から熱線が飛んでも来たら」

「その前にミサイルの雨が降る」

「「え?」」

 

 私の言葉に一時呆気に取られた三人は、上空から音量が大きくなっていく――大気を切り裂いて進むミサイルの進撃音に気がつき、彼女らとゴジラはほぼ同じタイミングで真上の蒼穹を見上げた。

 ジェット噴射の雲を描いて、地上から、海の奥から、文字通り四方八方ゴジラを取り囲む形で一斉に空を駆ける長距離ミサイルが孤を描いてヤツめがけ降下し、着弾。

 大量のミサイルのゲリラ豪雨で王の漆黒の体表から爆発の炎が上がり、ヤツの鳴き声の負けない騒がしい爆発音を次々と鳴らす。

 

「みんなトトの案内に従って後退しろ、一応私はゴジラの気を引かせておく」

「分かったわ」

「頼んだぜ!」

「(さあこっち)」

 

 奏さんたちがトトのナビゲートを受けて退避し始めた中、私は長距離ミサイルの射線上に入らない程度の高度でゴジラへの様子を窺いながら旋回、今ヤツはこの世界の人類側の先制攻撃による驚愕で〝装者(わたしたち)〟に気を配る余裕は無く。

 

『国連G対策センターよりお知らせ致します、第四種G警戒体制が発令されました―――』

 

 東京湾から正反対の方角な山間部側市街地の方から避難勧告のアナウンスとサイレンも鳴る中、ゴジラの現況を確認した私は飛翔し、眼科の地上(アスファルト)の上を急ぎ走り行く対G戦闘用の兵器を見つめつつもトトが指定した、遠過ぎず高過ぎず、けれど戦況の把握と逃げ遅れの市民の有無の確認を同時に行い易い高さのビルの、先に三人が着いていた屋上に降り立つ。

 

「朱音、さっきの避難勧告のことだけど」

「〝国連G対策センター〟だろう? 戦車とメーサータンクにも〝G-FORCE〟ってロゴがちゃんと書かれてたよ」

「じ、じーふぉーす?」

 

 ゴジラ自体は知ってても、さすがにシリーズの詳細までは知らない奏さんが、その組織に転属辞令が下ったことを知った青木さんに似た声音と顔つきなリアクションを見せた。

 

「名前の通り、対ゴジラ用に組織された国連機関で」

「Gフォースはそこに属する軍隊だ、映画の設定と同様ならの話だけど」

「つまりはゴジラ専門の国連軍ってところね……今は様子見に徹しましょう」

「そうだな、今アタシらが出しゃばるとややこしくなるし、この世界のお手並み拝見だ」

 

 今下手にGフォースとゴジラの戦闘に私達が介入すれば、無用な混乱を起こしてしまうので、マリアと奏さんの言う通り、この世界の人類がヤツに対しどれ程の戦力を有しているか、しばし静観することにし。

 

「トト、周辺にまだ避難できていない市民がいないか見て回って来てくれ」

「(了解!)」

 

 念の為にと、トトに逃げ遅れた市民の散策の指示も出しておいた。

 さて――横浜市街沿岸の目と鼻の先な東京湾海上にいるゴジラを中心とした戦場に私達は目を向ける。ギアの恩恵で視力込みの五感が強化されている為、この場所からでも余裕で戦況を仔細に眺めることができた。

 ゴジラの方は、大腿部までその漆黒の岩肌を東京湾の海面から見せており、上陸しようと進み続けている。

 

「あのバラボラみたいの付けた戦車って」

「メーサータンクね、見たとこ九二式と九三式ツインメーサーとそっくり」

「ってことはあれも、映画に出てきたのと……」

「ゴジラ同様、ほとんど見た目は一緒だ」

 

 しいて違いを挙げるとすれば、新聞記事でこの世界の暦が2034年なこともあり、機体に刻まれた形式番号が異なるくらい………それ以外は映画劇中で出てきたのと同形上だった。高度かつ遠くから見ていると、戦闘中で無ければ一瞬ミニチュアを見間違えていたかもしれないな。

 

「あの装甲車に乗っているのは、〝フルメタルミサイル〟か……」

 

 戦闘車両の中には、吸血鬼に突き刺す銀の杭に似たミサイルを携えた装甲車も見えた。あのミサイルは質量エネルギーとドリルによって貫通力を特化した《フルメタルミサイル》……決定打にはならなかったが、ゴジラの表皮が飛び散るほどのダメージ与えるだけの名に恥じない威力を映画では見せていたが、この現実(せかい)ではどうなるか。

 さらに私達のほぼ真上にて、複数の飛行物体が通り過ぎだ。

 

「〝メーサーヘリ〟までもご登場するとは……驚きよ」

「え、あれってヘリなのか奏芽?」

 

 映画ではたった一作した登場しなかった、プロペラの代わりにターボジェットエンジンとメーサー砲を搭載した両翼を備える《メーサー攻撃機》――通称《メーサーヘリ》までも合計五機が戦場に馳せ参じる。AH-1コブラをベースにしていた映画のものと違い、ヘリと戦闘機の特徴を掛け合わせた外見と翼にメーサーを備えている以外は、メーサータンクと違いかなりデザインが異なる上に、コックピットが見当たらない為。

 

「映画の方では陸自のヘリ扱いだが、あれはどちらかと言えば〝メーサードローン〟だな」

 

 と、奏さんの疑問に応えると同時に、実際に目にした機体の印象からそう表現した。

 各車両がそれぞれの持場(ポジション)に到着し、ゴジラが長距離ミサイルの雨に気を取られている間に砲身、砲塔を奴へと向け照準を合わせ―――戦車の砲身からは轟音を鳴らして電磁砲(レールガン)方式で発射された砲弾が、メーサー車からは青い稲妻状のレーザー光線が、装甲車からフルメタルミサイルが、ほぼ一斉に放たれる。

 長距離ミサイルと入れ違いに、今度は地上の戦車隊から、空からはメーサーヘリによる攻撃を受けるゴジラ。

 

「善戦しているわね」

「Yeah(そうだな)……」

 

 シリーズを鑑賞済みな私と奏芽は、互いにそう交し合った。

 ゴジラが〝主役〟な以上、大抵の映画では彼の敵となる人類側の防衛組織の実働部隊は噛ませ役になりがちだが、今私達の眼前で繰り広げられている〝ゴジラ対人類〟の戦闘では、Gフォースがゴジラを日本本土に上陸させまいと陸・海・空の緻密な連携も相まって奮闘している。

 攻撃を受ければ必ず与えた方に向かってくるヤツの凶暴さを逆に利用し、地上側の戦車隊からの、頭部、首、大腿部に集中して撃ち込まれる砲撃に意識を向ければ、まさに戦闘機とヘリの良い処取りと言えるメーサーヘリ改め〝メーサードローンヘリ〟が、おそらく人間の手による遠隔操作で如何なく発揮された機動性と旋回力で、ゴジラを相手にする側にとっては安全圏であり、ヤツ自身からは死角となる〝背後水平方向四三度、垂直方向八一度〟の範囲内からメーサーと七〇ミリロケット砲に怪獣用ナパーム弾を、背びれと首の後ろ側と後頭部へ各機ヒット&アウェイの戦法で撃ち込み。

 

「へぇ~~やるじゃんGフォース」

 

 さらに高高度の上空より戦闘機の狙いは正確な誘導弾投下と、遠方の海原にいる護衛艦隊からの巡航ミサイルに、地上側基地に控えていると思われる自走発射機からの長距離ミサイルと―――このゴジラ包囲網によるほぼ全方位から迫るGフォースの波状攻撃は、ヤツに決定打こそ与えられずとも、上陸どころか熱線一発も打たせる隙すら与えずに善戦していた。

 だが……。

 

「でも、ギャラルホルンがこの世界への扉を開いた以上………このままゴジラを撃退できるとは……」

 

 マリアが日々怪獣災害に見舞われるこの世界の人々にとって〝想定外〟な懸念を零した。

 そして、できれば起きてほしくないその事態は――起きる。

 ゴジラと戦車隊の間に、ヤツの体表以上にどす黒く淀んだ瘴気の靄が突然出現し。

 

「出てきたわね……最悪のタイミングで」

「あの真っ黒いノイズが……静音の言ってた」

 

 瘴気の渦中から姿を現した暗黒色のノイズ。

 

「〝カルマノイズ〟……」

 

 ギャラルホルンが開いた次元の扉の先の平行世界の数々で、強大な災いを招き、静音たちと激闘を繰り広げている未だ正体が把握されていない謎の〝特異災害〟。

 戦車隊の一部が即座にカルマノイズへと変えた辺り、やはりこの平行世界でもノイズは存在しているらしい。

 

「あいつまで出てきた以上見過ごせないわ、Gフォースの援護に――」

「待て!」

 

 カルマノイズが出現して程なく再びその身を瘴気に変え………ゴジラの方へと向かって行き。

 

「取り込まれたと言うの? ゴジラに?」

 

 瘴気は全てゴジラの巨体が吸収してしまった。

 いっそそのまま呆気なくゴジラによって滅せられて欲しかったが、異変はそこで終わらず………今度はゴジラから同様の瘴気が地上へと発せられたかと思うと、地上に到達したと同時に。

 

「ゴジラから……〝ゴジラ〟が……」

 

 目測で確認できる限り、恐竜ならベロキラプトルほどの大きさで、背びれと体表の一部からマゼンダ色の結晶体を携えた〝小型ゴジラ〟が………まるで〝ゴジラ第五形態〟と言わんばかりに、複数出現した。

 戦車隊は急ぎ、小型ゴジラの群体から距離を取ろうと後退し始める。

 そして明らかにカルマノイズの影響で出現した小型ゴジラたちの狙いは、Gフォース部隊。

 

「アタシたちも行こうぜ!」

「ああ、このまま戦列が乱されればゴジラ本体も上陸してしまう、戦線に介入するぞッ!」

 

 このまま静観し続けるのは、私達にとって最早土台無理な話だった。

 腕部のアーマーからシェルシールドⅡを射出し、シールドは大型すると同時に三つに分身させ、右手の噴射口から放出したプラズマを複合兵装――《ヴォルナブレーザー》に生成させた私は、腰部に折り畳まれていた《ブレージングウイングスラスター》を展開、ガメラのものを模した翼後部の推進機構からプラズマジェットを噴射させて飛翔。

 三人も私のシェルシールドⅡの上に乗り、Gフォース部隊がパニックに陥るのは時間の問題な戦線へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 装者たちの懸念通り、Gフォース部隊は久方振りに出現した〝ノイズ〟がゴジラに吸収されて発生した新たな猛威(アクシデント)を前に。

 

『メーサーヘリ部隊は引き続きゴジラに対応、戦車隊は歩兵部隊と連携しながら小型ゴジラに応戦しつつ後退!』

 

 防衛省のヤングエリート集団――《特殊戦略作戦室》の長にして、出向の形で現在はGフォースの指揮官のお役目を担っている〝彼〟こそ、冷静に対応し、ゴジラはメーサーヘリと遠方の海上にいる護衛艦隊と高高度を旋回する航空戦力からの攻撃に気を取られてはいたが。

 

「身体は真っ黒でも空気の読めねえとこは相変わらずか……」

「そいつがノイズの一番嫌なとこですよ、全く」

 

 戦車内では隊員たちが機関銃で応戦し。

 

「チビでもゴジラはゴジラか! 固え……」

「ゴジラも変なもん食うんじゃねえよ!」

「怯むな! 一機でも多く大元(ゴジラ)から遠ざけるぞ!」

 

 背中にホバリング移動を可能とする反揚力マシンを抱えた歩兵部隊が、戦車隊の援護兼未知の黒いノイズをゴジラが取り込んで出現した小型ゴジラの群体に、かつての劣化ウラン弾以上の威力を持ちながら人体と環境への配慮も充分為された〝特殊弾頭〟(各戦車、メーサー車の副武装(きかんじゅう)の弾丸もほぼ同様の仕様である)を装填したアサルトライフルで迎撃しつつも、この不測のアクシデントを前に、地上側の防衛線の混乱そのものが起きるのは、無理からぬ話であった。

 それでも小型ゴジラの群れの内、何体かを仕留めて再び瘴気となって霧散させる等、どうにか応戦していたが、増え続ける群体にGフォースの地上部隊は次第に押されていく。

 

「うわあ!」

 

 小型ゴジラの何体かが、Gフォースの歩兵部隊に体当たりを敢行し、軍人以前に人間であることに変わりない彼らの口から悲鳴が響く。

 万事休すと思われた―――その時。

 

《烈火球・嚮導――ホーミングプラズマ》

 

《STARDUST∞FOTON》

 

《INFINITE†CRIME》

 

《WORM⋇SLICER》

 

 上空より群れる――火球、投槍、短剣、光輪――たちの雨が降り注ぎ、小型ゴジラたちを串刺しまたは両断、そして爆破させ、その数を一気に減らせた。

 

〝~~~♪〟

 

「今度は何だ? 歌?」

 

 程なく、先の奇襲で小型ゴジラの攻撃から間一髪地上部隊を救った装者たち四人が、彼らの〝盾〟となる形で降り立ち、直接戦闘を開始する。

 

「君たちは一体なんだ? それ以前になぜこの状況で歌っている!?」

『歌はお気になさらず、あなた方は退避を優先して下さい』

『この〝チビゴジ〟どもは、アタシらが足止めついでに退治しとくんでねッ!』

 

 当然と言うべきか、装者独自の〝戦い方〟に当惑の疑念を抱く隊員たちに、朱音と奏は――片やヴォルナブレーザーのハンマーの打撃を叩き込み、片や大型の撃槍を伸長させて刺し貫いて――戦いながら歌唱中の肉声に代わって胸部のコンバーターからの電子音声で退避を促す。

 

『急げッ!』

 

 彼女たちが助太刀の目的で現れたことを察した地上部隊は、退避行動を再開させ、大分装者たちと小型ゴジラの交戦区域から離れることができた。

 四人もそれを確認し、小型ゴジラへの攻勢を強めて掃討に入る。

 

 奏芽の精霊(パートナー)――飛燕は、自分自身を分身させ、敵の群体を飛び回り、牽制攪乱しつつ体当たり攻撃も仕掛ける。

 相棒が作った隙を突き、シンフォギアと勇者システムのハイブリット――《シンフォギアブレイバー》でもある《フルンティング》の担い手たる奏芽は、直剣(アームドギア)と《桜花ノ剣》と名付けられたもう一振りの諸刃の剣の二刀流を小型ゴジラたち相手に振るいつつ。

 

《DISTORTION*BREAKER》

 

 左手を翳すと宙に出現した赤黒い重力球(スフィア)の数々が。小型ゴジラ数体の肉体を包むと同時に強烈な重力の捻りによってねじ切らされ。

 

《STRIKE*BREAKER》

 

 アームドギアの切っ先から紅色の光線を放射して、さらにもう数体吹き飛ばして撃破した。

 

 

 

 

 

 ガングニールの適合者同士にして本来はLiNNKERを投与しなければ長時間ギアを纏えない第二種(じげんしき)の装者である、奏とマリアだが、この平行世界は神樹様とほぼ同一の〝地球(ほし)の意志〟が存在する〝神秘の世界〟ゆえに、地の神々が作り上げた仮想世界内同様の恩恵(バックアップ)によって、こちらでも時間制限を気にせず戦えるようになっている。

 奏は大型ゆえに大振りとなってしまう自らのガングニールの撃槍(アームドギア)を、両端に刃を携え小回りの利くナギナタ形態へと変えて勢い良く振るって小型ゴジラを切り裂き、彼女独特の素手喧嘩法による豪快な拳による打撃や蹴り技やも交えて打ち砕く。

 一方マリアは、愛妹(セレナ)の形見でもあるアガートラームの銀腕(ひだりうで)の

ガントレットから、短刀(ダガー)を数珠繋ぎにした蛇腹鞭(アームドギア)を引き抜き。

 

《EMPRESS†REBELLION》

 

 華麗かつ軽快に新体操の如き体捌きと蛇行の軌道で振るわれる変幻自在の斬撃で、敵(ゴジラ)を続々と切り裂いた。

 

『タイミングを合わせるわよ!』

『おうさッ!』

 

 奏はアームドギアを撃槍(きほんけいたい)に戻し、マリアはガントレットに短剣(ダガー)を日本向かい合わせる形で装着。

 駆け走る二人は、撃槍と銀腕を同時に高速回転させ。

 

《DIAS†ER∞HURRICANE》

 

 奏での右手が持つ撃槍と、マリアの左腕が携える銀腕が、同時に突き出された瞬間、二人のフォニックゲインのエネルギーが合わさったドリル状の暴風が小型ゴジラの群れを呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 朱音とその精霊(あいぼう)トト、一人と一頭にして、元と現役の違いもあれど同じガメラである両者は、背中合わせの状態で旋廻しながら周囲にホーミングプラズマを生成して発射し。

 

《旋斬甲――シェルカッター》

 

 朱音は脳波コントロールでシェルシールドⅡの斬撃を見舞わせつつ。

 

《炎貫弾――スティングプラズマ》

 

 銃口が二連装なアームドギアライフル形態を腰だめに構えてトリガーを引き、貫通性に優れたプラズマレーザーをフルオート方式で連射し。

 

「(トトインパクトッ!)」

 

 トトも自らの口から火球を連続発射して、朱音の技とともに眼下かつ周辺のゴジラたちを滅していき。

 

「(旋熱斬(バーナーカッタァッー!)」

 

 トトはガメラたちの十八番と言える回転ジェット形態となって、四肢を引っ込めたジェット噴射口から炎の鋸刃でシェルシールドⅡの牽制も兼ねた攻撃で特定の場所に集められたゴジラの群体を一気に焼き切り。

 

《緋雷迅――ライトニングスマッシュ》

 

 残る個体もヴォルナブレーザーの斧刃、ハンマー、穂先から一斉に閃光迸って放たれた橙色の雷撃の奔流で消滅していった。

 

 装者たちの奮戦により、Gフォース地上部隊は一人も犠牲者を出さず小型ゴジラの猛威から逃れ退避することができたが――。

 

『メーサーヘリが……』

 

 小型ゴジラの群体及びカルマノイズの横槍によってできた連携の隙間を突かれ、迎撃に当っていたメーサーヘリは全て、本丸のゴジラが背びれを明滅させて程なく口から放射された熱線が直撃し、爆発四散させられ撃ち落とされてしまった。

 

「これ以上あの小型を出されと厄介だわ、本体に仕掛けるわよッ!」

 

 小型ゴジラ相手には圧倒した装者たちだが……それと生み出すカルマノイズを吸収したゴジラそのものと同時に相手をするのは……〝骨が折れる〟程度では済まない。

 

「くらえよ!」

 

《LASR∞METEOR》

 

 高速回転し螺旋状の暴風を纏わせた奏のガングニールの撃槍(アームドギア)から竜巻が。

 

《STRIKE*BREAKER》

 

 奏芽の直剣(アームドギア)からも、紅色で竜巻状のエネルギー波が。

 

《HORIZON†CANNON》

 

 リフレクターと荷電粒子砲を展開させたマリアの銀腕からは、青色の砲撃が。

 

「穿てぇぇぇ~~~ッ!♪」

 

《轟炎烈光波――ブレイズウェーブシュート》

 

 伸長され、三つのエネルギー集束突起が三角状に展開された朱音のプラズマライフルからは太陽の色合いをした灼熱(プラズマ)の熱線の奔流が。

 

 四人の装者たちから、ほぼ同時に放たれる彼女たちの〝大技〟。

 それら全ては、身長百メートルを誇るゴジラの巨体に全て直撃し、海原を激しく震え上がらせる程の爆発が起きたが……。

 

「Jesus(ちくしょう)……」

「無傷……だと?」

 

 爆炎と黒煙が収まると、ゴジラの漆黒の身体からは……白煙こそ上がってはいたものの、傷を受けた様子がまるでない……いやたとえ多少なりとも手傷を負わせたとしても、高い自己再生能力を持つヤツの細胞は、跡形も残さず治癒してしまっただろう。

 おまけにゴジラ自身は……装者たちの攻撃に全く意に介していないどころか……その猛禽の如き鋭利な双眸から発する殺気(いかり)を、弥が上にも強まらせ………海面から振り上げた尾の先の小振りな背びれより、先の熱線の時よりも遥かに輝くチェレンコフ光色の光が煌き。

 

「あれは……」

 

 恐怖を煽りたてる異様さに溢れた放電音を奏でながら、尾の光はゴジラの背部の放熱器官へと段階を経て、しかし着実に昇って行く。

 

「不味い……トト! マリア!」

「(うんッ!)」

「分かってるわ!」

 

 開口されたゴジラの口の奥からは、既に熱線のエネルギーが発射を待ちわびており、ヤツの目の先の射線上にはGフォース戦車隊が待機し、幾多のビルの摩天楼がそびえ立つ市街地そのもの。

 そこへゴジラは明らかに、まさに必殺そのものと断言できる渾身の豪然たる破壊力を秘めた〝放射熱線〟を解き放ち、叩き込もうとしている。

 朱音たちでは具体的な被害規模までは計算できずとも、エネルギーを念入りにチャージするゴジラの姿から………ヤツを〝ゴジラ〟へと変異させてしまった核の光と空を埋め尽くす〝茸雲〟が死の灰を飛び散らせて舞い上がるだろう。

 

(やるしかない……)

 

 装者たちは決意を固めた………ゴジラの強烈を極めし熱線の〝死の光〟から、こちらの渾身の力で防ぐことを……それを為し得られるか否かを問う暇など元より無い、朱音が心中にて零した通り―――やるしかないのだ。

 朱音は翼を広げて悠然と飛び立ち、ゴジラの目線と丁度合わさる高度にて滞空を維持させ、マリアと奏は彼女のシェルシールドに乗り。

 

「満開ッ!」

 

 奏芽は勇者システムの決戦機能(きりふだ)である〝満開〟を発動し、白をメインとした羽衣と飛行能力を有す大型アーマーを纏った姿となり、三人とも朱音と横並びになる形でゴジラと対峙する。

 

「行くぞッ!」

「「「絶唱ッ!」」」

 

 四人はシンフォギアシステムの決戦機能(きりふだ)。

 

〝Gatrandis babel ziggurat edenal~~Emustolronzen fine el baral zizzl~~♪〟

 

〝絶唱〟の詩を歌い始め、朱音とマリアは、自身の脳波でコントロールされているシェルシールドとダガー数本が生成した障壁(バリアフィールド)を重ね合わせて形状を満開の花へと変え、そこのトトたちの精霊バリアをも重ね着し、奏はガングニールの特性と、奏芽は満開によってシールドにエネルギーを送り、強度を底上げさせる。

 

〝Emustolronzen fine el~baral~ zizzl~~……♪〟

 

 四人が絶唱の詩を歌い終えるのと、ゴジラ背びれ全てに光が達し、大きく息を吸い込んだ口から、眩いバースト現象の閃光が迸る熱線が爆音とともに放たれたのは………どうじだった。

 衝突し、大気を極限まで打ち震わして、障壁と熱線が押し合い、鬩ぎ合う。

 

 歯を食いしばり、全身を踏ん張らせ、生み出したエネルギーを惜しみなく〝防御〟に注ぎ込む装者たちと精霊たち。

 神樹様のバックアップにより、本来の禁断の詩を歌った装者を襲う絶唱と、同じく禁忌の花の力を満開させた勇者を襲う代償(バックファイア)を受けることなく、より強力な出力で形成したバリアフィールドで、ゴジラの熱線に耐える一同だったが………ヤツの常識を超えた底力は、彼女たちの予想を超越していた。

 次第に熱線の高熱と衝撃と破壊力に、じわじわと後方へと押されていく装者たち。

 その上ゴジラはさらに攻勢に打って出て、背びれの輝度が膨れ上がると同時に、一層強力な熱線をバリアフィールドめがけ放出した。

 後退しながらもそれまでは耐えていたバリアフィールドの表面から、ついにとうとう亀裂は走り始め、装者たちの決死の盾が押し破られるのも…………時間の問題へと至ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 破壊神にして怪獣の王よ………分かっている。

 お前の核の光を宿す胸の内に蠢く、行き場のない憤怒、己以外の全てに向けられる底なしの憎悪、そして………変わり果ててしまった自分自身と、その残酷な運命に対する悲しみを…………たとえお前自身が求めずとも………かつて自ら怪獣になることを選んだ私と、生まれながらの怪獣でありながら人間を含めた生命を守る為に或トトの――〝ガメラ〟としての心がとても痛く絞めつけられるまでに、理解してしまうのだ。

 一介の恐竜から〝ゴジラ〟となってしまったお前は、身勝手で、傲慢で、醜く愚かしさ極まる………〝人間(わたしたち)〟の………〝罪〟そのものであり、天罰の化身そのものたる落とし子なのだと。

 身勝手に産み落としておきながら、身勝手に殺そうとするのもまた……人間(わたしたち)が犯そうとしている〝大罪〟であるのだと。

 

 だが………私達は、絶対に退くことはできない。

 それでも私達には、お前と言う人の罪過の化身と相争う十字架を背負ってまでも…………絶対に譲れないものがある。

 

 だから、お前の怒りによって奪われる命を……お前の悲しみによって失われる〝世界〟の数々………を、お前の手によって、破壊させるわけには、破壊し尽くされるわけには……いかない!

 

 お前がその姿になっても尚、生きたい様に………私達にも………死にたくない想いを、生きたいと言う〝意志〟があるのだ。

 

 

 

 

 

 だからこそ―――破壊神(おまえ)には、絶対負けられない。

 

 

 

 

 

 絶対に―――〝諦める〟ものかぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!。

 

 

 

 

 

 朱音とトト――二者の守護神ガメラたちが、同時に〝胸の歌〟から沸き上がらせたその〝信念〟を限界を超越するまでの極限の極みにまで昂らせて、一つに束ねた〝音楽〟として協奏させた瞬間………彼女たちの全身から、破壊神の〝死の青き光〟とは真逆の――〝朱く熱い鼓動〟――に満ちた凄まじき〝光〟に包まれ、輝き出した。

 

 

 

 

 

 かの眩く温かさすら携えた煌きは、マリアたちだけでなく光に敏感なゴジラすらも熱線の照射を中断させるまでに怯ませ、その輝きから自身の放った光束の一部が跳ね返され着弾し、吹き飛ばされ海中内へと押し込まれた。

 

 

 

 

 

 朱音とトトから発せられた光が収まり、三人とその精霊たちはそっと目を開ける。

 彼女たちは、確かに今この瞬間、目の当たりにした。

 

 

 

 

 

 両腕両脚の紅緋色アーマーは、メカニカルな無機質さと有機的かつまた一層に鋭利さが利いた鋸状の曲線で象られ、両腕には五指、両足の先に三つ、踵に一つの、金色の光沢を放つ〝爪〟を生やし。

 両翼もよりガメラのものに近づいた形となって尾も付属し、インナースーツの腹部には、トトのものと同様の〝炎〟の文字に似た紋様が刻み込まれ。

 そしてヘッドギア……元より朱音の下顎から頬に密着して沿う形で伸びた牙に加え、歯が並んだガメラの上顎と登頂のトサカが三叉槍(トライデント)状にかつ中央にトトが卵の中にいた頃の〝ゆりかご〟にしてガメラの力の源であった石の色と同色の宝玉が埋め込まれた額当てが頭部に加わった姿へと変化。

 

 朱音の新たなる変身(リビルド)を果たしたその勇姿を前に、マリアたちは一瞬、言葉を失って見つめる。

 

「まさか……」

「奏芽の考えているとおりさ、これは西暦勇者の精霊降霊術と同じもの、今私は……いや、私達は――二者にして一つの――〝ガメラ〟だ」

 

 時空の壁を越えて巡り合い、融合(ユニゾン)を果たした〝ガメラたち〟の瞳は、海中にいる破壊神へと強く見据えていた。

 

つづく。

 


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