『専用機使わない?!折角作ったのに!?』
姉さんの悲痛な叫びが、試験部屋中に響く。
私が姉さんが作った私の専用機【紅椿】を使うのを拒んだからだ。
なんでも、私の誕生日プレゼントとして作ってたらしいが、どうせこのあと入学試験に出るのなら、使ってくるといいとのことだった。
だけど私はそれを断った。
純粋に、私にはまだ早いと思ったからだ。
まだ私はISをほとんど知らない。
タイタンとISの操作はかなり似てると姉さんは言うけれど、空中での戦闘は経験がない。
宇宙空間での戦闘と似てると言う人もいるが、それは違う。
宇宙空間とは違い、地球には風も重力もある。
推進剤の減りが早いし、慣性の効き方も変わってくる。
何よりもISはタイタンより小型かつ速い。
そんなものをいきなり専用機で扱える気がしなかった。
まずは汎用機で戦闘に慣れることを目的とした。
汎用機は誰でも使えるようにしてるから、実際のところ、使い手次第では専用機より遥かに強い。
専用機とちがって、どんな環境にも適応できるしな。
私のローニンもかつてはなんのカスタムもしてなかったから、実質汎用機だった。
私の戦闘スタイルを確立するためにも、まずは専用機より汎用機で腕をならしたかったんだ。
まあ、それなのに初陣が入学試験と言うのもあれだがな。
ちなみに同意件でカレルも汎用機を選択した。
私は日本の汎用機【打鉄】、カレルは【ラファール・リヴァイヴ(通称ラファール)】を選んだ。
まあ結局どちらもいつもの武装を積んだのだが……。
そう私はショットガン、カレルはテルミット武装一式を。
まずはタイタンでの戦法が通用するかどうか知りたかったのでな。
『パイロット、ご無事を願っています』
紅椿に搭載されたローニンが私に呟いてくる。
結局、紅椿は使わないけど預かることになり、ローニンのコアを移植してもらった。
待機形態として、今は鈴のついた腕輪になっているが。
「さすがに死ぬことはないと思うけどな」
試験様に置かれた打鉄に乗り込み、ローニンに返答する。
試験の準備はすでに終わっている。
あとは試験官からの指示を待つだけだ。
『篠ノ之箒さん、どうぞ』
呼ばれた、さあいくか。
私は打鉄との接続に少し違和感を覚えつつも、試験場へと向かう。
タイタンのより反応が鈍いな、神経を直接繋いでる訳じゃないからか。
まあそれは仕方ないことだ。
まっすぐ機体を進めていけば部屋が広がり、試験場へと繋がる。
そこに鎮座するのは一体のラファール。
おそらく試験官だろう、緑の髪を持った眼鏡の人だった。
『私があなたの試験を担当する、山田真耶です。よろしくお願いしますね!』
「こちらこそよろしくお願いします」
挨拶礼儀は大切だ、頭を下げて敬意をはらう。
しかしそれと試験は別だ。
語られた試験内容はこうだ。
試験官の撃破、あるいは制限時間までの生存。
勝利条件は以上の二つ。
撃破されたら敗けだ。
まあ撃破されても受かることがあるらしいが、できるなら勝ちを取りに行きたいな。
『それでは始めます!』
そう山田さんが告げると、カウントダウンが始まる。
視界の端、HUDにアップされ、3から下がっていく。
やがてついに1がGOに変わり、開始が告げられた。
瞬間私は打鉄に存在してる物理シールドを前面に展開しつつ、左手にショットガン、右手にブレードをコールする。
やはりイメージで武器を呼び出すというのはなれないものだ。
一応即座に呼び出すことには成功したが、さてここからだ。
真っ直ぐまずは突っ込み、シールドの合間からショットガンを発射する。
もちろんこれはあっさり右側に避けられ、反撃とばかりにアサルトライフルが掃射される。
スピードはこちらが負けている、経験から来る操縦テクニックの違いだろう。
だがこちらとて五年間戦場を伊達に走ってきてる訳じゃない。
物理シールドのお陰で、まだこちらには一発もダメージが入っていない。
散弾を先読みで置いていく、広範囲に散らばるから、先読みで置かれれば回避は難しい。
私の背後をとろうと回り込もうとする度に先読みで散弾が飛んでくるのはたまったものじゃないだろう。
しかしこのまま固定砲台で終われるわけなどないことはわかってる。
山田さんが次の手を打った。
それはスモークだ。
スモークグレネードと私に投擲、普通のグレネードと思った私はそれを迎撃、瞬間炸裂する煙幕。
視界がホワイトアウトし、なにも見えなくなる。
成る程、こうして視界を潰したのちに、外からライフルを連射して撃破する腹積もりか。
しかしそれは私には無意味なことだ。
精神を研ぎ澄ます、聴覚を集中させる。
戦場で嫌と言うほど鍛えられた私の耳は、一対一でそれ以外に音がない状態なら、ほぼ見ているのと変わらないほど鋭い。
そしてISはブースターで補助的に動くためか、タイタンに比べて小さいとはいえ騒音が目立つ。
つまり分かりやすい。
これが味方も含めて複数だったらわからなかっただろうが、これは試験でタイマン。
聞き落とす訳がない。
「そこかっ!」
耳がとらえた、一気に速度を上げて音のする方へと向かう。
大当たりだ、そこにはサブマシンガンを二挺構えて、さあ掃射しようとする山田さんがいた。
『ふぇ!?』
「チェストォ!!」
ブレードを水平に薙ぎ払い、サブマシンガンを二挺とも両断し、さらに山田さんの懐に飛び込む。
ショットガンの銃口を突きつけ、1、2、3、4。
薬莢が4つ排出され、弾丸がゼロ距離で山田さんの腹部に直撃する。
かはっと空気が押し出される音が聞こえる。
絶対防御が発動して、シールドエネルギーを大きく削る。
『っう、はぁ!!』
このままではやられる。
そう考えただろう山田さんが、私の顎目掛け膝蹴りを繰り出す。
これを私は少し離れることで回避、土草に紛れてもう一度ショットガンを発砲しつつ距離をとってしまった。
あのまま密着していた方が賢いのだろうが、ダメージはなるべく受けたくない癖がついている。
ローニンという軽量級に乗っていた為ついた悪い癖だ。
打鉄は防御の優れた機体、多少打撃を受けたところで何の苦でもない。
ごり押せば良かったのだが、やってしまったものは仕方ない。
距離をとったことで、不利になるのはわかっている。
再度銃を構えられる前に接近する。
銃を構える狙う撃つの3動作が必要だ。
即座に構えることはできても、狙う時間はない。
ショットガンをしまい、ブレードを両手持ちにする。
気分はソードコア、ローニンと共に培ってきた剣術をフル稼働させる。
また取り出した銃を縦に切り伏せ、下がり体制を建て直す暇を与えずに柄尻で胸元に抉るように打撃を与える。
怯んだその隙に首に一閃、体を捻り股下から切り上げ、流れで唐竹にたたっ切る。
「篠ノ之我流、紫電!」
間髪入れず腹に横蹴りを食らわせ、その隙連続で切る。
右袈裟懸け、左薙ぎ払い、受け身をとろうとした方向とは逆から切り潰し、受け身をとらせないで切り続ける。
斬る、切る、キル。
鉄が軋む音と、山田さんの悲鳴が続く。
止めに切り上げを放ち、その身を試験場の壁面へと叩きつける。
それでまだ終わらせない、キル確認を怠れば待つのは死。
後を追うように接近、油断はしない。
壁面に叩きつけられた影響か、土煙が少し上がっていて、確認がしづらい。
それでも、確実にゆっくり近づく。
そうして土煙が晴れれば、結果が見えてくる。
そこには倒れて動かない山田さんがいた。
これは文句なしだろう?
『勝者、篠ノ之箒』
試験場に、私の勝利を告げるコールが響いた。
解説コーナ
・カレル
エイペックスプレデターズ所属の中で最年少の傭兵。
愛用武器はグラップル、コールドウォー、RE45、サンダーボルト、ファイアースター。
焦土の死神の渾名を持ち、テルミット溜まりに写る姿はまさに死神。
デメテルの戦いで左手右足を失い、機械化している。
その治療に興奮剤を薄めたものを使った結果薬物依存症になってしまう。
また薬物の副作用のせいで極度の色欲狂いになり、死姦することで有名。
二重の意味で兵からは恐れられている。
しかし箒の世界へ飛ぶ際、何故か薬物依存が抜けきっていた。
束博士曰く、次元跳躍の副作用らしい。
学問にそれなりに興味を示し、IS学園に入ることをかなり楽しみにしているようである。
次回・女尊男卑