IS FALL~紅蓮の剣~   作:しじる

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ACT2 思い出語り

【篠ノ之束のオマケ】

私は、姉さんがISを開発したその日から、そう呼ばれ始めた。

IS、正式名【インフィニット・ストラトス】。

無限の成空圏の冠するそれは、宇宙へと単独航行を可能とするマルチフォーマルスーツであった。

しかしそれは、白騎士事件によって変わる。

白騎士事件…日本に向けて、何者かにハッキングされたミサイル2000発が放たれ、それを白騎士と呼ばれるISが、鎮圧に向かった自衛隊諸共撃破してしまった事件。

死者0名で幕を閉じたこの事件によって、ISは兵器として見られるようになった。

その事もあってか、姉さんの妹である私は、その身を保護されるようになった。

【要人保護プログラム】だったか?

それのせいで、私の家族は散り散りになり、姉さんは雲隠れ。

私自身も何度も名を偽って、転校を繰り返すことになった。

孤独だった。

誰も友人を作れず、作ることを諦め、そしてそれを相談する相手もいない。

悲しみに明け暮れても、それでも生き続ける。

私には思い人がいたからだ。

その人に、思いを告げるまで、死ぬ訳には行かなかった。

そうやって、心だけは死に、体は生き続けていた頃。

私はあるものを拾うことになる。

それは機械のパーツのようだった。

ISのせいで機械嫌いになってた私だが、それは何故か見とれた。

子供特有の好奇心からの行動だろうか?

そうしてその機械のパーツに触れた途端、辺りが光に包まれ…

 

「そして今に至る……か」

 

自虐的に呟く。

ここは名も無き宇宙空域。

そこを私たち【エイペックスプレデターズ】の戦艦が漂っている。

現在私はタイタン整備室にて、過去に自分が書いた日記を改めて見直していた。

今思うと、子供だったと。

この世界に来た時、私はこの傭兵団に拾われた。

ここの傭兵の1人、ベア=バーゲリンの気まぐれだ。

皆からBBの愛称で知られてる。

当然気まぐれで拾ってきたものだから、団長のブリスクは烈火のごとく怒った。

「ガキを拾っても金にならん、むしろ無駄な浪費だ」って。

私自身、人殺しの世話になんかなるものかと、当時は意地を張ってた。

今思えば、だいぶ無謀だったな。

仮に本当に弾き出されていたら、私はのたれ死んでいただろう。

なんせこの世界に私の戸籍はないのだから。

金もなければ戸籍もない、仕事もつけない。

結果的にBBが自分の給料で養うと言ってくれなかったらどうなってたか。

それからは私はしばらくの間、のうのうと暮らしていた。

人殺しなんてと罵倒しつつ、その金のおかげで暮らせてると考えもせず。

この考えが改まったのは、そばにいる【相棒】のおかげだ。

視線を頭上に向ける。

 

『……パイロット、どうしました?』

 

渋く、いい男性の声が響く。

軽量級タイタン【ローニン】、型式番号はFT2035。

えふてぃーとは言いづらいから、そのままローニンと呼んでるが、本人はえふてぃーと呼んで欲しいとか?

タイタン、全長5~6メートルの鉄の巨人。

重力は40トン近くあり、踏まれようものなら一溜りもない。

元は宇宙空域での作業用ロボットだったそうだが、今では専ら戦闘用となってる。

元宇宙空域用と聞いて、最初はISを思い出して、ますますひどい顔になったことは、今でも鮮明に覚えている。

だけど、こいつはISと違って喋る。

最初はなんとなくだった、こいつと話し出したのは。

暇で、ただ傭兵達の金で暮らす日々に耐えれず、ブリスクの言いつけを破って、この整備室に入り込んだ。

そこで、コアだけのこいつにあったんだ。

正確にはコアと対話インターフェイスか。

初めは、同じ和の雰囲気を感じる奴だと思った。

浪人(ローニン)という名前なんだから当然かもしれないが。

武士のようなやつで、この傭兵団で1番話が合う奴だった。

そうして会話して、こいつが戦場に立ちたがっているのを知った。

ブリスクに大目玉を喰らうのを覚悟で、今でのことを話して、このローニンを戦場に出してくれと頼んだ。

だけれども、意外なことに大目玉は喰らわなかったが、乗るパイロットがいないため無理だと言われた。

 

「なら、私がパイロットになる!」

 

今思えば何を馬鹿なことを言ったのだろう私は。

元の世界に帰って、一夏に会えなくなる可能性が一気に薄れる選択肢だろうに。

それだけローニンを、1人の【友】として感じるようになってたのかもしれない。

ブリスクは勿論、他のみんなも反対した。

エイペックスプレデターズは数少ない女性、しかも一般人と言うこともあって、若干過保護気味な反対の声が多かった。

それでも私の意思は揺るがず、どうせなら高みへと【フルコンバット認定】を取りに行った。

試験者の98%が死亡すると言われる過酷な試験。

今でも覚えてるし、よく生きていたなと思う。

なぜ死ななかったか、疑問に思うことさえある。

そうして、死ぬ思いで取得し、初めて出た実戦。

ミリシアの特殊部隊を殲滅しろという仕事。

暇で簡単で、楽な仕事とブリスクが配慮して選択してくれた。

もっと稼げる仕事を自分がやると言って。

その好意に甘えて、その仕事を受ければまあ酷かった。

騙して悪いが…そう言われる日が来るとは思わなかった。

何が簡単で楽な仕事だ、BBが援助に来なければ死んでいた。

タイタンが4機もいるとは聞いてない。

そんな地獄は、ブリスクが分かって選んだことで。

「傭兵なんだ、こういう罠もあることをよく覚えておけ」と。

獣が自分の子を谷底に落とすようなものだろうが…限度を知って欲しかったな。

そんな思い出に浸っていれば、ローニンが声をかける。

 

『パイロット、先程からその本を読んでいますが…』

 

「あぁ、私の日記だ。昔を思い出してな…」

 

この世界に来てからもう5年もたってる。

仮に元の世界に戻ったら、一夏は私のことを覚えているだろうか?

私は20歳になり、酒も煙草もたしなむ程度だが飲み吸いできるようになってしまった。

あいつは、今何をしてるんだろうか…

 

『お前ら、仕事だ!』

 

唐突に船内に放送が伝わる。

ブリスクの声だ。

彼がそういう時は、全員ブリーフィングルームへ集合が決まってる。

 

「ローニン、行ってくる」

 

『また後で会いましょう、パイロット』

 

ローニンに伝え、私はブリスクの元へと向かった…




用語解説

・タイタンフォールの世界観
タイタンフォールの世界はワープ技術が発展しており、何光年も先の惑星へ移住が可能となっている。
その移住の業務をIMCという企業が独占しており、膨大な資産を築いている。
そしてその惑星へ移住した人々から、資源を搾取していた。
それに怒りを燃やした移住民達と宇宙海賊達が手を組んで生まれたのがミリシア。
IMCとミリシアの戦いは長く、初代タイタンフォールの【デメテルの戦い】、2の【タイフォンの戦い】が有名な大決戦となってる。

次回解説 IMC傘下勢力
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