IS FALL~紅蓮の剣~   作:しじる

5 / 16
ACT5 彼らの異名

ミリシア、かつては宇宙海賊が集って生まれた、反IMCゲリラ組織。

その組織は、今IMCのとある主要施設を攻め込んでいた。

IMCの水力発電であり、ここが落ちることで、デメテルの戦いの時のように、IMCの足を止めれると考えたのだろう。

残留艦隊の補給拠点兼惑星間移動の中継点でもあるからだ。

そこは現在、ミリシアの特攻兵団と、フリーランスの傭兵集団【6-4】の混成集団によって攻撃されていた。

戦局はミリシアに傾いており、ほぼ勝ちが確定しているだろう。

IMCの指揮官は逃げる準備までし始め、下の兵士はそれすら分からず混乱する戦線に戸惑うばかり。

ミリシアには確たる思想があり、士気が高い。

数で潰せるとはいえ、烏合の衆とも言えるIMCとは質が違うのだ。

 

「ゲイツ姉さん、やれますよこれなら!」

 

【6-4】部隊のパイロットが、リーダーのゲイツに報告する。

押せ押せ状態だ、IMCはやられ放題だ。

パイロットだけでなく、兵士たちも一気に駆け上がる。

ゲイツは確信に近く思った。

これは間違いなく勝利だろう、しかしなにかあるのではないかと。

いくら何でも、敵の重役の引き際がうますぎる。

IMCお得意の、トカゲの尻尾切りにしてもだ。

罠の可能性を考えるが、それにしても失うものも大きい。

他のことを考えなければ。

その思考が混ざり始めた時だ。

 

「姉さん!?突入部隊全滅、奴ら基地を核自爆(ニュークリア)させやがった!」

 

やはり罠であった、しかしそれにしてもかなり規模の大きいものだったのは流石に戸惑う。

 

「みんな落ち着いて、ミリシアの兵士たちはブリックス司令が何とかする、私たちは私たちの仕事をするのよ」

 

しかしそこは司令官、焦りを見せることなく、皆を導く。

中にいたミリシアの突入部隊だけでなく、IMCの兵士たちも死んだろう。

相変わらず奴らは人の命をなんだと思ってるんだ、そんな怒りが彼女に満ちるが、それさえかき消す驚きが彼女達を襲った。

 

『こちらミリシア歩兵隊、敵タイタン複数フォール!所属は……エイペックスプレデターズ!?』

 

『おいあのペイントとノーズアートは!』

 

『【赤い亡霊】と【焦土の死神】だ、逃げろぉ!!』

 

『こっちには【レッドレーザー】だ!』

 

戦場から混乱した通信が入ってくる。

しかも流れてきた【名】には覚えがあった。

名と言っても、その強さから畏れられ付けられた名。

異名というものだ、それら全てにゲイツは心当たりがあった。

タイフォンの戦いで、タイタン10機を1人で切り倒したローニン。

赤と黒のジラフ迷彩に、亡霊(レイス)のノーズアートが【赤い亡霊】という名を与えた。

その怪物の強さは、戦果を聞くだけで分かるだろう。

【焦土の死神】は、赤と黒のペイントに死神のようなノーズアートを刻んだスコーチ。

戦略的行動が得意で、一瞬の隙を付かれて焼き殺された者は数しれず。

特に強化装甲を愛用してるようで、ばらまかれたテルミット溜まりに映る姿が、【焦土の死神】の名を与えた。

最後に【レッドレーザー】、レーザーストライプを刻んだ赤と黒カラーのイオン。

拡散レンズによる5ウエーブスプリッターによって、多くのタイタンやパイロットが塵と化した。

それだけに終わらず、確実に敵を殺すという意思があるのか、倒れたタイタンにレーザーコアをぶち込み溶解させることも多々あると…

 

「分かってたとはいえ、このタイミング……最悪だわ」

 

やってきた厄災に、ゲイツは頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『パイロット、生身で戦う必要は無い。仕事内容は敵タイタンの殲滅、歩兵をやる必要はないぞ』

 

ブリスクからの仕事内容の確認が伝えられる。

いわゆるタイタンブロール。

しかし仕事を貰った時と状況が違いすぎないか?

だからIMCの仕事は基本割に合わないんだ。

ブリスクが3、4倍額払わせてもらって無かったら撤退してたぞ。

しかも核自爆させた区域に落とすか?

パイロットスーツのおかげで、放射線を気にしなくていいが…

 

『パイロット、始めましょう』

 

「あぁ、ローニン行くぞ」

 

愚痴を言っても始まらない。

今日はBBを除くいつもの面子。

スカーとカレルと一緒に出撃だ。

カレルと通信を行う、すると喘ぎ声が聞こえてくる。

早速キメてるな…カレルはタイタンでの戦いをやる時はいつもキメるからな…

 

「おい、行くぞカレル。私が突っ込むからガス缶を撒け」

 

『あひ、あっ………んっ!了解ぃぃぃぃ!!』

 

それを最後に通信を一旦切る。

お互いここからは言葉なんかなくとも分かる。

伊達に5年間一緒に戦ってない。

スコーチが離されない程度にスピードを出して駆ける。

早速一機、トーンか。

アークウェーブを放ち、痺れさせる。

ちょうど他のものを見てたのか、直撃を受けてくれた。

動けないやつの後に回り込む。

正確には私から見てスコーチが真正面に見えるようにだ。

いわゆる挟み撃ちだ。

奴がアークウェーブを食らってようやく気づくが、もう遅い。

ガス缶がばら撒かれ、逃げられないように私がもう1発アークウェーブを放つ。

それに合わせてカレルがテルミットランチャーを発砲。

そらあっという間に焦土の出来上がりだ。

摂氏3000℃を超える高熱に包まれ、敵トーンが溶解していく。

逃げようにも、逃げ道には私とカレル。

運命は決まってた。

 

『ウハハハ!いただきまぁあぁすぅ!!』

 

カレルのスコーチのボティーブロー2発が、トーンを抉る。

鈍い音と共に倒れ込んだトーンに、トドメと言わんばかりにフレイムコアをぶち込む。

トーンだった鉄塊の出来上がりだ。

 

『んんっ!きもちぃ…あふぁ!』

 

「まだまだいるぞ、まだ果てるな」

 

軽口を叩きながら次の獲物を狙う。

ちょうどスカーが敵のタイタンに裏拳を与えていた。

そしてレーザーコア、そのタイタンが何だったのか確認する暇もなく、溶解した。

もうこの時点で2機やった。

しかしまだ敵タイタンの反応がある。

私はカレルと共に駆け出す。

爆発が続く戦場を走り抜け、敵タイタンを見つけては焼くか切り潰す。

そうしてしばらくすれば、残りタイタン数は指で数えれるほどであった。

 

『お見事ですパイロット、敵タイタン数残り僅か』

 

ローニンから賛辞が述べられ、それと同じく敵タイタンをまた見つける。

これは…ノーススターか。

軽量級タイタン、ノーススターは狙撃特化のタイタンで、唯一大気圏内で飛行できるタイタンだ。

いや、プルートがいるから唯二か?

何にしても、やつの使うレールガンには当たりたくない。

あれはガードしたらブロードソードが折れかねない。

気づく前に近づきたい。

ノーススターはスコーチの天敵だ。

飛行されたら、スコーチの攻撃がほぼ無力化されてしまう。

カレルの援護は期待できない…

私だけでやるしかない。

 

「ローニン!」

 

『了解です』

 

一気に走り出す。

それに合わせてノーススターも音で気づく。

レールガンが向けられた。

砲身が赤に染まり、打ち出されるそれは空気を割く。

 

「フェーズ!」

 

言葉に合わせて、ローニンが一時的にこの世界から消える。

また現れた時にはノーススターは目と鼻の先。

しかし何の対策もしてないノーススターではない。

ガチャンと音が響き、ローニンが拘束された。

ノーススターの防御兵装【拘束トラップ】か!

一瞬動きが止まった瞬間、ローニンに痛烈な衝撃。

レールガンの直撃だ。

体が強く揺さぶられ、ローニンの1部が抉られる。

だがそれで気絶などするものか、冷静にトラップの基盤を撃ち抜く。

トラップは破壊され、ローニンが動けるようになる。

手こずったのが不味かったか、ノーススターは軽量級の長所高機動で遥か彼方。

このまま追うのは得策じゃない。

長距離戦はノーススターの独壇場だ。

一時退却、周辺の障害物に身を隠す。

 

「くっ、どうする…」

 

『フェーズリチャージまで待機を推奨、その後アークウェーブ』

 

ローニンが提案する。

確かにそれが一番だろう。

私はフェーズダッシュのリチャージを待ち、それと同時に飛び出す。

当然ノーススターは待ち構えており、レールガンが飛んでくる。

ローニンに伏せさせ、ギリギリで回避するが、2回目は通用しないだろう。

ブーストを吹かせ、全速でノーススターへ駆ける。

トラップが起動した音が響く、ローニンがまた固まる。

また撒いていたようだが、今度は手間取らない。

2度目のフェーズダッシュを行い、別世界へ。

白と黒の世界に移ればトラップは外れ、また出現した時はノーススターの真後ろ。

アークウェーブをうち放ち、その動きを止める。

 

「これで終わりだぁ!!」

 

隙だらけのその背中に、ブロードソードを突き付ける。

鈍く、だが鋭い音と共に、ノーススターは貫かれた。

 

『お、おのれ傭兵……っ!』

 

それはノーススターに乗ってたパイロットの恨み言だろうか?

しかしそれもすぐにかき消された。

ブロードソードを引き抜き、もう1発アークウェーブを叩き込む。

それにより、莫大な電力負荷に耐えれなかったノーススターは爆散。

その骸を戦場に晒した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、立てないのか?」

 

私はスコーチの中で、いろんな意味でイッてるカレルを引きずり出していた。

今日はだいぶ仕留めたようだ、足腰が立たないらしい。

彼女はタイタンを破壊するたびに、その喜びで達するからな…

逆をいえばそれだけ今回タイタンがいた事になるが…

 

「2人ともよくやった、ほれ」

 

その声とともに、よく冷えた瓶が飛んでくる。

酒か、しかも結構いい銘柄だ。

片手にカレル、残った手に酒。

珍妙な格好だが気にしない。

ところで私に酒を渡したブリスクは…

 

「約束通り払ってもらうぞ、使えねぇクズ」

 

やっぱり怒り心頭で、さっさと逃げたIMC高官から金を搾り取ってた。

まあそうなるな…

 

「2人ともお疲れさんどす!スカーもナイスだぜ!!」

 

BBまで酒を片手に……あれ、もう出来上がってないかこれ?

髭ずらが真っ赤に染まってる。

うん、間違いないな。

 

「今日留守番だったからって、ずっと飲んでたなお前!?」

 

そう言えば機械方面の変態ではあるが、それと同時に酒好きだったなぁお前!

 

「硬いこというなぁモッピー!お前も呑もうえ!」

 

「うえってなんだうえって!あぁ近寄るな、注いでやるし、呑んでもやるからその酒臭い息やめろ!」

 

今日もエイペックスプレデターズの船内は、喧しい。

そして非常に酒臭かった…




解説コーナ

・タイタン
元は宇宙空間での作業用ロボットだったが、その戦闘能力を見出され、戦闘用に作られることになった。
最初期の3タイプ、中量級のアトラス、重量級のオーガ、軽量級のストライダー。
これらから発展し、多くのタイタンが生まれていった。
また初期には、増幅機能としての面が強かったコアも、それぞれ特化したシャーシにすることで、必殺技としての面を持つことになった。

次回解説 ミリシア
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。