IS FALL~紅蓮の剣~   作:しじる

6 / 16
ACT6 ウォーゲームス

VRを知ってるだろうか?

ヴァーチャルリアリティの略であり、仮想現実世界という方がわかりやすいだろうか。

私たちは今、いつもの【エイペックスプレデターズ】戦艦内の【シムポット管理室】にいた。

シムポットとは、先にあげたVR空間にダイブするのに使う施設で、タイタンとのリンクするようにリンクすることで、VR世界に飛び込める。

もちろん、よく昔小説とかで話に聞いていたVRゲームをするためにあるものでは無い。

…出来なくはないが。

これは戦略シュミレーションをするための側面が強い。

そう、何故私が今そんなシムポットに入ってるか見えてきただろうか?

交流戦だ。

IMC傘下の勢力、ヴィンソンダイナミクスとの演習のために、私たちはシムポットで待機していた。

なんでも、ミリシアの数より質に押され始めたIMCは【数で勝ってるんだから、質も勝ってやれば楽勝じゃない?】とようやく思い始めたようで、いくつかの傘下組織で交流戦を始めたらしい。

私たちの交流戦もそのうちの一つであった。

 

「今回の交流戦は、敵味方をランダムで入れ替えてのシャッフル戦だ。俺達にはいつも通りだがな」

 

右隣のシムポットに入ってるブリスクの声が聞こえる。

今回はブリスクも参加し、向こうの代表アッシュも参加するとのこと。

しかしアッシュか…顔を合わせたことはあまりないんだよな。

【タイフォンの戦い】の時、私はカレルと一緒に別の惑星に仕事に行っていて、最後の最後しか参加していないからな。

凄まじい戦いで、ブリスク曰く「最初からいなくて運が良かったな」と言ってたからな。

アッシュも、その戦いで死んだと思われていたらしい。

実際はヴィンソンダイナミクスに体を再生させられたおかげで生きてたようだが。

アンドロイドの肉体故に出来る生存法だな。

そう、アッシュは恐らく人間だった存在。

肉体を機械化してる為、死に戻り、そんな戦法も取れる。

まあ、VRではそれは誰もができるから関係ないか。

 

『では…そろそろ始めましょう?』

 

アッシュから通信が入る。

流石にアッシュたちはヴィンソンダイナミクス分社で、シムポットに入ってる。

宇宙空間故に電波は常に3本立ってる。

途中で回線が切れるなんてオチはないだろう。

 

「リンク、スタート…っ!」

 

私は目を閉じ、シムポットへとリンクを接続し、その意識を少しの間手放した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が色とりどり、夜の街…それとデジタルオブジェクトの融合した混沌世界。

ウォーゲームス、このシムポットの基本戦場。

ここが今回の演習場に選択されたようだ。

懐かしい、パイロット認定試験の最初の方を思い出す。

あの時はのちのち死ぬかもしれないと思うハメになるとは思ってなかったな…

感傷は置いておき、私は周りを見渡す。

今回味方になったのは……

 

「嘘だろ…なんてこった」

 

なんと全員がヴィンソンダイナミクス。

私だけエイペックスプレデターズだ。

なんという酷いミキシング、しかもアッシュがいないところを見ると、アッシュはエイペックスプレデターズ側にいるということ…

 

「へ、ヘヴィだ……」

 

つい最近覚えた横文字を使いつつ、頭を抱える。

なるほどヴィンソンダイナミクス所属のパイロット達、彼らはその中でも最近パイロットになったばかりのものらしい。

よく戦場で共に戦う【傭兵パイロット】ではない。

余計に頭が痛くなる。

こんな素人と共に戦えるか!

ましてや相手は私がよく知ってる、そしてよく知られてる……あぁっ!!

 

「上等だ、やってやる!!」

 

半ばやけくそに叫び、私はマスティフをしっかりと手に持った。

それに合わせて、開戦を告げるベルが響く。

ジャンプキットに火を入れ走り出す。

後ろの普通に走ってる素人なんか知るか!

お互いのコンビネーションなど無いに等しい奴らと組んでも死ぬのが早まるだけだ。

これはシュミレーション、守ってやる必要は無い。

そもそも、シュミレーションなら死んで覚えるということが出来る。

エイペックスプレデターズの、私の、自慢の、ちょっと変な仲間たちにさんざん殺されて、学んでこい!!

だが私はそれはゴメンなんでな。

目に映るデジタル壁を蹴り、ブーストを蒸して走る。

視界が狭まり、世界が素早く変わっていく。

デジタルと街、その境界点。

そこで最初にコンタクト。

私が最初にあったのは…

 

「うっ、スカー!!」

 

「……」

 

相変わらず無言でヘムロックを向け、発砲。

流石に食らってやれない。

パルスブレードを壁に突き刺し、強制的に一時停止して軸をずらす。

だが2度目はうまくいかないのは承知。

ファイアースターを着火しぶん投げ、目眩しを行う。

精密射撃を要求されるヘムロックにこれは厳しいだろう!

マスティフをうち放ち、彼の頭部に炸裂。

間違いなくやっ……てない!

これはホロパイロットか!

ホログラムに引っかかった私の運命など決まってた。

 

「こっちを見ろ…」

 

「っ!?あっ!!」

 

振り向けばスカーのキックが…あれ?

スカーがすり抜けた?

それが何度も繰り返され、これはまたホログラムかと怒りを露わにする前に、その幻覚の蹴りは終わりを告げ…その先に拳銃を私の眉間に構えたスカーがいた…

パンッと乾いた音が響き、私の視界がブラックアウトする。

 

【スカーに殺害されました】

 

「あぁっ!!」

 

苛立ち、不甲斐なさ、それらと共に私は拠点からリスポーンされる。

そうだ、スカーはホロパイロットの達人。

忘れて安直に行動するからこんなことに!!

反省と、実践でホロパイロットに会った時の戦略として今の反省を覚える。

殺されたことに怒るあまり、それを忘れてしまっては、交流戦の意味が無い。

そこはしっかりと区別して、私はまた駆け出す。

すると次に現れたのは名も知らぬヴィンソンダイナミクスパイロット。

そう言えばこちらは5人だが、ヴィンソンダイナミクスパイロットは10人いたな。

ここまで酷いのになるとは思ってなかったが…

さて、肝心のそのパイロットの動き……酷いものだ。

パイロットは壁を疾走できるが故に凶悪な速度で敵の意表をつける。

彼は地面を普通の歩兵のように走っていた、それもジャンプキットのアシストもなしに。

本当になったばかりなんだなと思いつつ、私も昔はああだったと懐かしむ。

だからこそ殺す、学んで強くなってもらうために。

隙だらけな頭上に鉛玉をくれてやった。

パーンと心地良い音とともにパイロットの脳天が弾ける。

 

【ニクマを殺害しました】

 

HUDにテロップが出て、彼をやったことを証明される。

だが止まってられない、また壁を走り出す。

動かないと死んでしまう、戦場は立ち止まった奴から死ぬ。

それを嫌等いうほど見てきたし、実践もしてやってきた。

こんなふうに、立ち止まって狙撃に徹するパイロットの背面にな。

マスティフの弾丸をぶち込む。

 

【ルフランを殺害しました】

 

「次!!」

 

そういき込んで走り出そうとした瞬間、体が飛んだ…

 

【BBに殺害されました】

 

「……どこからだぁー!!」

 

対物ライフル【クレーバー】を貰ったのだろう。

いかにパイロットでも、そんなものを受ければ即死する。

見事に体を粉々にされ、私はリスポーンする訳だが、今回は本当にどうにもならない。

流石はとしか言えない、どこから撃たれたかさっぱり分からない。

だが凹んでいられない、私はいつものように彼を呼び出す。

 

「ローニン!!」

 

『了承しましたパイロット 』

 

私の呼び声につられ、ローニンが現れる。

当然このローニン、私の知ってるローニンではない。

見た目だけ私のローニンなのだ。

流石にこの初心者交流戦で、固有戦闘データが沢山入った固有タイタンは、主に強すぎてまずいとのことらしい。

それで、全員見た目だけのタイタンに乗っている

まあ、例え私のローニン出なくとも、やるだけだ。

ローニンに火を吹かせ、一気走り出す。

 

『悪いが、お前が1番厄介だからな箒。後で奢ってやる』

 

そんな声が一瞬聞こえる…

瞬間ローニンの脚部にダメージ大。

機体が大きく揺れ、体が揺さぶられる。

 

「この声…ブリスク!?」

 

なんてことだ…私の思考を絶望という文字が走る。

せっかくローニンを出して、さあ加速するぞという矢先に、なんとブリスクもタイタンであるリージョンを出していた…

私はブリスクにパイロットでも、ましてやタイタンでも勝てたことは無い。

あの男はなんというか…次元が違う。

そうなればやることは単純、逃げの一手だ。

リージョンは足が遅い、正面から戦うなど愚の骨頂。

ここは逃げて隙を窺う!!

フェーズダッシュとともに、私は狭い通路へと逃げ、同時に何度もブーストを吹かせて離脱する。

 

『……と来ると思ってたんだよ』

 

な、なんでだ!

私の目の前には既にリージョンがいた。

それもブリスクのだ。

 

『何年お前の戦い見てると思ってんだ……まだまだケツが青いな』

 

冷静に考えた、そうだ、私がどんな逃げ方するか、ブリスクは司令官としてずっと見てきた。

知らないわけがない。

私が【あの通路を通って、この場所へ逃げること】を知ってるなら、【足の遅いリージョンでも追いつける】。

先回りされたのだ。

ブーストは既に使い切り、逃げられない。

ソードブロックを使用して、迫るリージョンの弾幕を防ぎはするが、ロックオン警報2つ。

 

『わりぃなモッピー、演習でも勝ちたいわ!』

 

『ゴメン相棒……私も、私のおやつあげる』

 

あぁ、そうだったな。

BBはローニンのデータから私のくせが分かるし、一緒にコンビ組んでよく戦ったカレルが知らないわけないよな!!

 

『『『1番強いやつは先に潰すと、士気をくじきやすいんで!』』』

 

3人の声が同時に響き、携行型追尾ミサイル【アーチャー】2つを受け、ブロードソードをへし折られたローニン。

そこにブリスクのリージョンが迫り…プレデターキャノンを大きく振る。

1、2と鉄を砕く音と一緒に、世界が揺れ、収まれば赤く染まる砲身。

 

「あぁ……本当に、勝てないなぁ…」

 

処刑【圧倒】、その名の通り、私はただその強さに圧倒された…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆して……何故だァ!!」

 

若干やけ酒になりながら、私は叫ぶ。

あのあと集中的に、エイペックスプレデターズのお馴染み面子に狙い打たれ、やりたい放題され、何も出来ないまま演習は終了。

どの道報酬は試合した時点で貰えるから、なんら問題ないのだが…

このフラストレーションを吐き出さずにはいられなかった。

 

「相棒、自由にすると危険すぎる…どんなことしても……止める」

 

それは私の強さを信用してくれてるからだろうか。

カレルがそう言って、私の背を撫でる。

銀の床まで届く長髪に赤の宝石の様な瞳、しかしそれより目立つ鋼の左腕と右足。

相変わらず可愛らしい容姿に似合わない義肢だが、機能性重視の本人は気にしない。

そんな彼女がそうは言うが、やはり腑に落ちない。

 

「せめて…せめてBB位は……ああ!!」

 

接近戦苦手と自称してるが、ナイフを使った格闘は大得意なBB、しかし武器故によればマスティフの方が有利。

それ故に寄りたかったが、寄る前に殺され、寄っても護衛にスカーかカレル、大穴ブリスク。

どうしろというのだ…

 

「まあまあ、モッピーによられたら死ぬし、そりゃなぁ…」

 

「寄れなきゃ殺られる、ショットガンの…哀しき運命……あうあう」

 

「ぬあああ!!今日は飲むぞァ!!」

 

私は、自分の財布の中身など気にせず、久々に飲んだ。

途中意識が消え、何をしてたかわからんが、とにかく飲んだことは覚えていた。

だが、これもたまにはいいだろう。

私だって、常に成功ばかりという訳では無いのだから…




解説コーナ:ミリシア

IMCの恐慌に立ち向かうために、宇宙海賊と手を組んだフロンティアに移り住んだ住民達の集団。
最初こそIMCの圧倒的物量に屈していたが、【デメテルの戦い】以降まきかえしを起こし、【タイフォンの戦い】にて、フォールドウェポンを破壊するなどの大戦果をあげる。
数より質を重視しており、SRSのみが所有するヴァンガード級タイタンはその象徴でもある。
ミリシアには現在協力勢力として6-4、エンジェルシティーエリートが存在する。

次回解説・機械兵
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。