IS FALL~紅蓮の剣~   作:しじる

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ACT7 篠ノ之箒の1日

私、篠ノ之箒の朝は休日でも早い。

朝5時に起床し、顔を洗い、歯を磨き、うがいを済ませたら栄養ドリンクを片手に両手両足に重りをつけた状態で船内を20週走り、腕立て腹筋スクワットそれぞれ100回数十セットを済ませ、シャワーを浴びたら朝食を作り、そして食べる。

そうしていれば時間はあっという間に8時になり、大半の奴らが起きてくる。

私達傭兵は、生活リズムがみんなバラバラだから、早く起きるやつもいれば遅い奴もいる。

私のように日々鍛える奴もいれば、何もしない奴もいるしな。

いい例がスカーとカレルだ。

スカーはだいたい私と同じ時間に起きてきて、私と同じメニューのトレーニングをする。

逆にカレルは休日ならば昼過ぎまで寝てる。

トレーニングもほとんどしない。

まあ左腕右足が義肢の彼女には、トレーニングはあまり必要ないのかもしれないが、残った方はトレーニングした方がいいと思うのだかな…

とと、それは置いておこう。

そうして朝食が終われば、次に私が向かうのはローニンのもとだ。

基本ローニンはタイタン保管庫で、他のタイタンと共に収容されていて、稀にBBがメンテナンスか魔改造かしている。

きょうは…魔改造のようだな。

油と硝煙の匂いがしみわたる倉庫で、マーヴィン達が忙しなく弾薬や装甲板、塗装スプレーやリペアキットなどを手に持ち作業している。

その中で、BBは楽しそうに自身のタイタン、トーンこと【PH-5076(愛称ピー娘)】に何やらとんでもないものを持たせていた。

見た感じはブルートの4連装ミサイルランチャーのようだが、先端に鉄杭が見えていて、先は鋭利なものであった。

直感的に私は感じた、あれは射出型4連装パイルバンカーだと。

弾薬費は安く火力はタイタンを一撃で戦闘不能に追いやるものだが、打ち出す杭が10~12メートル前後とそこまで飛ばない、弾速も遅いし本体が重い、ヴォーデックスシールドで返されると大惨事など、あまりにもピーキーすぎる故にお蔵入りとなったIMCの試作兵器。

それをどこから仕入れたのかは知らないが、彼はそれを……私のローニンに積もうと…おい?

 

「何やってるんだお前はまた!?」

 

「お、モッピーこれ付けちゃだめ?」

 

「ダメに決まってるだろ!ローニンが重くなる!!」

 

軽装甲かつ、そこまで重いものを載せること想定していないローニンに、そんな重いのを載せたら重量過多で転倒する!

大慌てで私はBBに停止を呼びかける。

 

「いやーそこはブースター増設して、こう、吹っ飛ぶように加速させればー」

 

「私がGで死ぬだろうが!?」

 

タダでさえローニンの加速性能は、ソードコアを発動させると私にはかなりキツいんだ。

その状態なのにさらに増設でもされたらソードコア時に死ぬ未来が見える。

 

「えー、それじゃあこれはどう?」

 

そう言って、BBは非常に残念そうにトーンにパイルバンカーを置かせると、別のものを見せつけた。

それは刀だ、ブレードだ。

鋭利で長く、だが軽量化を狙ってるのだろうか所々に穴が開けられて肉抜きされていた。

長さはブロードソードと同じくらいか、いや、ローニンのブロードソードをさらに鋭利にすればあんな感じになるだろうか。

 

「もう1本つけて二刀流とか!」

 

そう嬉嬉として言ってくるBB。

なるほど二刀流か、それは悪くないかもしれない。

片手でガードしつつ、もう片手で攻撃とかも出来るようになるかもしれない。

ソードコア時には手数も増えて、大火力をさらに叩きつけられるようにもなる。

こっちは良いだろうか。

 

「そうだな、そっちは良いだろう」

 

そう言うとBBはそれじゃ早速といって、ローニンの背にあるハンガーを増設し始めた。

 

「あ、ついでにフェーズのリキャスト時間を短縮して、効果時間伸ばしておくなー」

 

……おい?

なんか余計なことまで改造し始めてる気がするが、私の気の所為だろうか。

気の所為だと思いたいのだが。

 

『パイロット、心中察します』

 

ローニンの憐れむ声が聞こえたした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイタン保管庫でトラブルがあったものの、ローニンと会った私が次にするのは昼食、それが終わったら鍛錬だ。

と言っても、夕食までだがな。

夕食が出来るまでひたすら朝と同じように鍛錬を繰り返して、自身の練度を上げておく。

こうしておくことで、戦場で不測の事態が起きても対処できるようになっていくというわけだ。

千里の道も一歩から、初めから天才などどこにもいない…私の姉さんもそうだったのだろうか?

そんな懐かしい顔が浮かぶ中、鍛錬を終わらせて、次には夕食、それが終わればいつもの大仕事だ。

それはカレルの世話だ。

カレルは年齢だけ見ればまだ高校一年生だ。

座学を教える必要がある。

と言っても私もBBに教えて貰った口だからあまり偉そうに言えないが。

そうしてカレルの部屋に行き、扉を開ける。

ノックは必要ない、いつもこの時間には私が来るのを向こうも知っているからだ。

案の定カレルは勉強机の上に座って、私を待っていた。

カレルは勉強が案外好きのようだ。

自身の見地を広めることは面白いと、前に言ってたような気がする。

 

「それじゃ始めるぞ、まずは前の数学の復習だな」

 

そう言って早速私達は取り掛かった。

カレルは勉強とか真面目なことは普通に受ける良い奴だ。

戦闘にはヤク打つし、副作用のせいで色々とボロボロになってるが、そこを機械化で補っている。

1番驚いたのは脳の半分を機械化していると聞いた時だな。

副作用で脳萎縮が酷く、まともに動くことも出来なくなり、喋ることすら困難になった時もあったらしい。

それでも機械化して戦いたいと思う心、カレルは何故そこまで戦いたいのだろうか。

5年間共に戦ってるが、分からないことはまだあるものだ。

まあそうそう分かるのもあれかもしれないが。

人というのは分かりにくいものがあると、私も学んだからな。

癇癪起こして木刀振り回していた頃が懐かしい。

絶対に戻りたくはないが…あ。

 

「この問はこれが答えだ、惜しかったな」

 

ニアミスを指摘して、どうすればいいか考えさせる。

機械化してるからすぐ導き出そうとすれば出せるのだが、それじゃあ残された脳が活性化できない。

だから機械で解を出さないように指摘しながら、続きを教えていく。

しかし人に物を教えるというのは、案外楽しいな。

傭兵じゃなかったら、教師の道も悪くなかったかもしれない。

……と言っても、私自身BBに注意されて始めてまともな教え方ができるようになった訳だが。

前は酷かったな…擬音まみれだ。

よくあんな抽象的に教えようとできたな昔の私。

そんなこんなを考えながら、私は教えることを続投した。

途中、船内放送が鳴り出したが、それは私を呼ぶものだったらしく。

カレルの授業が終わったらこいとの通達だった。

放送者はブリスク、仕事の依頼だろうか?

今日は休暇だし、来たら来たらでどうしようか。

そんなことを考えながら、私は授業を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリスクに呼びたされた後、私は話を聞いた。

なんでも数日後、この辺りの宙域でミリシアの大規模補給艦隊がやってくるらしい。

それを叩いてくれとのIMCからの依頼だ。

まあどうせIMCだ、途中で余計なことをしてくれそうな予感がするが、今日でないなら別にいい。

さて、カレルの授業が終わったあとは、私は特にやることがない。

鍛錬でもいいが、ローニンにまた会いたいな。

いくら鍛錬が大切でも、やりまくればいいという訳では無いしな。

晩御飯も近いし、やはりローニンにあってこようか。

そう思い、私は再び保管庫へ向かった。

そうして保管庫へたどり着けば、BBはいなかった。

既にローニンの魔改造を終えたようだ。

…本当にブレード以外付けられていないだろうな?

不安になったため、実際にローニンに聞いてみることにした。

 

「ローニン、BBに変なことされてないか?」

 

『いいえパイロット、彼は私を強化すれど弱体化をさせることはありません』

 

至極真っ当な返答が飛んでくる。

そういう意味じゃないんだ、強化は強化でも、あいつの強化は狂化と言ってもいいからな。

しっかりと舐めるようにローニンを見つめる。

……うん、変にブースターが追加されたりしてないな。

 

「それならいいんだ、それなら」

 

ひとりボソリと呟いて、ローニンの側に体を寄せる。

硬く冷たい鉄の肌が、私にヒヤリと伝わる。

油と火薬の匂いがほんのりと漂うが、それさえも少し心地よい。

 

『パイロットの心拍数及び血圧低下、リラックス出来ていますか』

 

自分に触れることでリラックス出来たことが疑問なのだろうか、ローニンはそんなことを聞いてきた。

当然だ、5年も一緒に戦った相棒だ、側にいて安心できないわけない。

私はローニンには絶対の信頼を置いてる。

性別どころか種族?さえも違うが、私はローニン以外に乗るつもりは毛頭なかった。

彼の頭、つまりバッテリー付近に座る。

それをローニンは特に抵抗することなく、むしろ落ちないように座らせてくれる。

タイタンにとっては弱点とも言っていいバッテリー挿入口、そこに座らせるということは、信頼されてるという証。

つまりローニンもまた私を信頼してくれているんだ。

それを嬉しく思い、彼に会話を続ける。

 

「なあローニン、今日はな……」

 

そうしてローニンと話し続けることで、いつの間にか残った1日が過ぎていく。

これが私の一日だ。

決してまともな日々ではないし、殺し合いをしている時の方が時間の割合は多いが、それでも私にとっては掛け替えのない、愛しい時間だった。




解説コーナ:機械兵

主にIMCが使用する、人ならざる無人兵器。
主なものとしてはスペクターが多い。
人間には走破出来ない環境を軽々とこえ、人体を容易く破壊するパワーに、どんな状況でも常に冷静に対処できる。
まさに理想の兵士のような存在。
事実、パイロット以外では、スペクターに対抗出来る人間はかなり少ない。
IMCが主に使ってはいるが、ミリシアも使っている。
スペクターの弱点、ハッキング耐性が脆弱。
これによりハッキングされたらスペクターがミリシアへと回収されているわけである。
尚新型スペクターことストーカーでは、この脆弱性が改善され、さらに凶悪な性能とかしている。
他にも機械兵にはリーパーなどが存在し、タイタンの次に戦場の花形となりつつある。
次回ではこれらを順に解説していく。

次回解説・ストーカー
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