ジョンソンから、依頼⋯⋯では無く整備のお願いが来た。
わざわざ本に書かなくても、口頭で済む話だろう⋯⋯。
と一度思ったが、一応依頼の1つとしてカウントをお願いするようだ。
どれどれ⋯⋯。
依頼内容 村の整備
目 的 村の整備を進める。(手段は問わない)
場 所 派遣村
報 酬 エメラルド5個
昨日見た依頼本と一緒だが⋯⋯。
質問したい部分がある。
「なぁ⋯⋯一つ気になるところがある。」
「どうした?
報酬が割にあわないのか?」
「違う、そこじゃない。
⋯⋯手段は問わないってなんだ?」
「あぁ、そこはだな⋯⋯。
あんたのセンスに託そう、という意味だ。」
「そうか。
あんまり期待するんじゃないぞ。」
まだ材料も整っていないのに、もう整備か。
だが、一応考えはある。
この村の周りを柵かなにかで囲う。
ゾンビの襲撃から守るぐらいならこれで十分なのを、前に住んでいた村で証明済みだ。
しかし今回は、木の柵ではないもので作ってみたいと思う。
実は、昨日の夜にこんな事があった。
初仕事が無事に終わり、全速力でジョンソンのもとへ向かった時の事である。
「ぜぇ、はぁ⋯⋯。
ただいま。
仕事は終わったぞ。」
「あぁ、おかえり。
⋯⋯泊まってから帰ってくるでも良かったんだぞ?
そんなに無理をしなくても⋯⋯。」
「わざわざ畑を直すだけに1日もいらない。
そこまで俺はルーズな男じゃない。」
「カッコつけてるつもりかい?
実際カッコイイけどな。」
「褒めなくていい。
当然の事をしただけだ。
エメラルドはそっちに渡そう。」
「わかった、これは俺が預かっておこう。
必要になったら言ってくれ。」
「あぁ。」
⋯⋯ここで一度会話は途切れた。
しかし、ここから今日やる予定に繋がる出来事が起こる。
少し時間が経った頃、ジョンソンは突然悩み始めた。
どうしてかと聞いたところ、この悩みは⋯⋯ここ派遣村に関するものらしい。
「俺は、最近思っている事があるんだ。」
「どうしたんだ?」
「この村は過去にゾンビや、あんたの追っている謎の黒いモンスターの襲撃で壊滅してしまった。
だから、3度目が二度と起きないように、どうしようか考えていたんだ。」
「そうか⋯⋯俺に出来ることは?」
「一応こちらで考えておく。
明日の昼頃にはアイデアが湧くだろう。」
そんなことがあって、今日の昼頃まで待った。
結果は今持っている依頼本が語っている。
⋯⋯これは、間接的にこっちへ丸投げにした。
そう解釈していいだろう。
つまり⋯⋯。
結局何も思いつかなかったじゃないか⋯⋯。
頼る相手がいないが、四の五の言っていられない問題だ。
早速今日の本題に取り掛かろう。
まずは、柵の代わりになるもの。
とりあえず飛び越えられないようにすればいいし、やれるなら敵の視線すら遮ってしまえれば上出来。
⋯⋯少し考えたら、ぱっと思いついた。
壁でも作ろう。
あとは素材、これも視線を遮りつつ硬いものを採用してみるか。
となると、石だな。
よし、まずは壁にしても良さそうな丸石を並べてみよう。
サンプルとして、5×5マスで建ててみる。
⋯⋯⋯⋯。
ダメだ、何となく気に食わない。
自分の目線で見ると、どうしても手を抜いてるように見えて仕方がない。
不採用という事にしよう。
悩んでいるところにジョンソンは来た。
「なあ、丸石の壁を前に何を悩んでいるんだ?」
「デザインが気に食わん、手抜きに見えて仕方がない。」
「なんだ、そんな事か。
⋯⋯そうだ、あんたは知っているかはわからないが、俺の家の隣に、図書館がある。」
「あの窓ガラスで開放感がありそうな家か?」
「そうだ、参考になりそうな本があるかもしれない。
行ってみたらどうだ。」
思いのほか行き詰まっている所に、サッと助太刀。
とてもありがたい。
行く気はまだ無かったが、足を運んでみようか。
図書館の中は、意外と狭い。
最初に作って没にしたマイホームよりかはさすがに広いが。
で、その狭さを、窓ガラスによって開放感で補うと。
そこら辺はまたどこか建築する機会があった時に参考にさせてもらおう。
それはさておいて、6個しか本棚が無いが、果たして良い資料は見つかるだろうか。
図書館の中に入った時点で、ゆっくり読書を楽しんでいたモデストに聞いてみよう。
「ようモデスト、読書は楽しんでるか?」
「あぁ、スティーブ。
楽しんでるよ。
もう何周も読んだ本ばかりで、さすがに飽きてきたけど。」
「そうか。
ところで⋯⋯建築に関する本は無いか?」
「それなら端っこの方にあるよ。
何を作るんだい?」
「この村の周りに石の壁でも作ろうと思っている。
それの資料探しに来たんだ。」
「へえ⋯⋯。
石の建築なら⋯⋯どこだったかな⋯⋯。」
モデストが端の方から本を取り出してはしまう事を繰り返し、次の本棚へ向かうあたりでそれを見つけた。
あったあったと喜ぶ彼が手にする本の名前は⋯⋯。
建築素材全集 石の巻
素材全集と書いてあるぐらいだから、ヒントは掴めるかもしれない。
早速ページを開くと⋯⋯。
おぉ、こいつは凄い。
簡潔ながらわかりやすい内容に、採れる場所から作り方まで網羅されている。
さらに、小さなサンプルまで用意されているから、触り心地も確かめられる。
これは優れた本だ。
過去に襲撃事件があったみたいだが、無事に生きて帰ってこれた事に、非常に感謝すべき内容だ。
素晴らしい。
さて、褒めちぎったところで本題に戻ろう。
ページを読み進めていったところで、ある素材に目が向いた。
石レンガである。
説明によれば、これは丸石と同様の硬さを持ち、一説によると⋯⋯。
その昔、地下の奥深くに、ドラゴンの世界に行ける扉を作った者が、それを守る為に要塞を作ったそうだ。
そこに、石レンガが使われていたらしい。
そのぐらい優秀なら、是非とも壁に採用してみよう。
作り方は至って簡単。
まずは丸石をかまどに入れる。
そして焼きあがった丸石は見慣れた石になるので、これに溝を入れて完成。
たったこれだけである。
コストがそれなりに低く、それでいて強い。
燃料の石炭にも余裕がある。
これならいけるはずだ。
まずは丸石を⋯⋯と、言いたいが、前の依頼の時に既に使い果たしていた。
ツルハシも、サンプルとして置いた丸石の壁を撤去した時点で壊れそうだ。
そして、最大の問題は囲むだけの石を掘らなければならない事。
とにかく大仕事になるのは避けられない。
洞窟に行こうにも、食料が残り少ない。
加えて、この下を掘ってもいいのかがわからない。
悩んでいたところで、モデストが凄い顔をしているけど、どうしたと聞いてきた。
自分は、この考えに至るまでを全て話してみた。
「そっかそっか、石が足らないのか。
うーん⋯⋯別に僕は単に柵で囲ったりするだけでもいいんだけどさぁ。」
「それだと、スケルトンの流れ弾がそっちに当たる危険性がある。
少しでも襲撃される確率を減らしておきたい。
だから壁を作ろうとしているんだ。」
「なるほどなぁ。
見える場所を塞ぐって事だね。」
「そういうことだ。」
悩みから離れていくように雑談をしていたら、ちょうどジョンソンが来たので、また悩み事に戻った。
それについて全てを話したら、別に地下を掘って構わないと言われた。
⋯⋯そのあと、お前は考えすぎだと言われてしまった。
実は、前にいた村で勝手に開拓を続けたら、村長に怒られた事があった。
その事がどうやら自分の心に何かしらブレーキをかけていたのかもしれない。
モデストは、そんな考えすぎな自分をフォローした。
少しは勝手にやっても怒られないでしょって。
その事を言われて、少しホッとしたような気持ちになった。
その夜、自分は今朝ジョンソンから貰った依頼書に手を加えた。
本当はこういった改ざんはよろしくないが、一応関連するものなので、説明はするつもりだ。
手段は問わないと書いてしまった事を後悔させてやろう。
翌日、壊れかけのツルハシを手にジョンソンの家に入った。
随分自信ありげな顔をしていたらしく、ジョンソンは急にどうしたと聞いてきた。
それに答える形で、夜の間に改ざんした依頼書を開いた。
依頼内容 村の整備 とジョンソンの家の工事
目 的 村の整備 に加えて家も⋯⋯。
場 所 派遣村 と今いる所
報 酬 エメラルド5個⋯⋯はいらん、サービスだ!
これを見て、ジョンソンはかなり驚いたようだ。
そりゃ当たり前だ、自分の家を改造されるんだから。
「おいおい、これはいったいどういう意味だ。
俺の家をぶっ壊す気でいるのか?」
「とりあえず落ち着け、理由はしっかりある。」
「これを見て落ち着ける訳がないだろうが!
家をどうするつもりだ!!」
「別に家自体を改造する訳ではない。
あくまでやるのは今俺達がいるここの下、地下だ。
どうしてもここが窮屈に見えて仕方がない。」
「つまり⋯⋯地下室でも作るのか?」
「そうだ。
とはいっても、これはついでだ。
本当にやるべきなのは壁作りだが⋯⋯どうも材料が足らない。
それに、ここも中々窮屈に思える。
もっと広い部屋を用意したいと思った。
で、それをいっぺんに解決するのが今回の仕事だ。」
ジョンソンは、一応やりたい事を理解したらしく、あまり家に手をつけない事を条件に、許してくれた。
ジョンソンがわかるやつで良かった。
頭の固いやつだったら、こんな事は最初から諦めて、外に採掘場でも作っていた。
どうせ穴をあけるんだ、そういう所を有効活用した方がいいだろう。
さぁ、2日もかかってさらに目的物まで遠回りになったが、仕事開始だ。