冒険者兼破壊者の復讐劇。   作:TTY

12 / 40
Ep10 崩壊。

 数日経ったある日、ジョンソンは、家の後ろにある山を見つめるスティーブを見て一言、呟いた。

 

「⋯⋯なぁ、あんた。

山を見つめてどうしたんだ?」

「⋯⋯削れば足りるか?」

「え、削るって⋯⋯あの山をか?」

「そうだ、あれを削って壁に充てられるかと思った。」

「⋯⋯正気か?」

「⋯⋯正気だ。」

 

そんなやり取りをした今日の朝。

ジョンソンは、驚き呆れていた。

ラージチェストが何個あれば足りるのかも、検討がつかない。

そんな先の見えない大きな事を、スティーブはやろうとしているのだ。

 ⋯⋯とまぁ、軽めに振り返って覚悟を決めて、今は昼頃。

で、それを実行に移そうと大量に石のツルハシを用意した。

それから、石レンガを作る過程に石が必要になるのでかまどを12個用意した。

さらにそれを入れるためのチェストもそれなりの数を用意した。

⋯⋯何軒か空き家を壊して得た木材で作ったが、後でもっと良いのに建て替えると思ったのか、ジョンソンからのお咎めは無かった。

どの道家は半壊なので、直すより一から作り直した方が早い気がしなくもない。

準備は出来た、やるか。

 空き地にラージチェストを縦に積み、地道に山を登って頂上から始める事にした。

中途半端な高さから始めると、落ちて重症を負いかねない。

そういうのもあり、頂上を選んだ。

村を一望出来る貴重なスポットだが、万が一ここから襲撃があっても困る上に、壁作りの素材が足りたとしても、作るのが面倒だ。

ここを平らにするという意味も込めて、山を崩す。

 

〜3日目の終わる直前まで時間は飛ぶ。〜

 

 ⋯⋯ひたすらに黙って山を丁寧に削っていく。

歌なんて大したものを知らないので、鼻歌は歌わない。

ダンスなんてそもそもやらない。

読書をしようとも思ったが、長時間やっていたからなのか、視界がボヤけてきて、持参してきた本を読む事さえやれていない。

もっとも、そんな状況で本を理解できる自信が無い。

 さっきは丁寧とは言ったが、集中力も削れてきて、他のものに惹かれては戻るを繰り返している。

気分転換と称したモンスターハントも、最初は軽快に倒せはしたが、最後は四方から矢攻めに遭い、すぐ下を掘って入口を塞ぎ、そこからまた作業を進める事を繰り返していた。

溜まった丸石は、山を降りては家の隣にあるチェストにしまって、また登る。

偶然にも、ベッドに近づくのは昼間なので、寝る事は許されなかった。

⋯⋯正直、夢を見るのは簡単でも、その夢を現実にする事は難しい。

夢は瞼の裏に映っても、その先には映らなかった。

それを山が物語っている。

中途半端に数ブロック低くなっただけだ。

またコンディションが整ったら、この夢を掘り下げてみようとは思うが、長時間はもう二度とやらないと誓おう。

 挫折して曲がった心、それを具現化するように崩れかけた身体、証拠としてインベントリに残った64個の丸石の集団。

それを全て足して山を下る。

幻覚だろうか、空を見上げると何かが飛んでいる。

青い得体の知れない何か。

目が緑に光っている。

今までに見たことがない。

ぼんやり眺めていると、急降下してこちらの肉を啄んできた。

ノックバックで山から墜落する。

頭から村のある高さまで堕ちる。

ニワトリのようにふわりと落ちることは無く、愚かに地面に打ちつけられる。

 

⋯⋯その衝撃で、完全に動かなくなった自分を感じた。

 

ぶつかった衝撃で吹き飛ぶ土に混ざって、ボロくなったツルハシや剣、丸石を横目で眺める。

 

走馬灯が脳裏に焼き付く。

 

ここまでの奮闘の記憶と、出会った新しい仲間、そして⋯⋯誰かもわからない金髪が目立つ緑の服を着た女の後ろ姿⋯⋯。

 

それが脳裏に流れ流れて、そしてついに途絶えた。

 

 

 

⋯⋯⋯⋯。

 

「⋯⋯おい!」

 

「おい、大丈夫かスティーブ!」

 

目が覚めると、ジョンソンの家に置いたベッドの上で寝転がっていた。

⋯⋯作業帰りに空飛ぶ何かにつつかれ、そして落とされた事以外に記憶は無かった。

頭は痛くない、身体を痛めたような証拠は無い、そして所持品も無い。

無事を伝えると、ジョンソンは安堵の表情を浮かべた。

遅れてやってきたモデストも、大丈夫かいと心配をしてくれた。

 

「あんたが倒れてしまった瞬間を窓から見て、俺はもうここで終わりかと思ってしまったが、杞憂で良かった。

⋯⋯俺みたいな例外がいるせいで、余計な事を考えてしまう。」

「クラフターは原因不明の力で復活するのを忘れていた。

だが、もうしばらくこんな思いはごめんだな。」

 

自身も、謎のモンスターに襲われて別の場所にリスポーンしたという例外持ちだったのを思い出した。

それを言ったら、生きていた事をめでたく思ったらしく、ジョンソンは笑い出す。

それにつられて、こちらも笑った。

そんな中で、蚊帳の外にいるモデストは⋯⋯ポカーンとした表情でそれを見つめていた。

 笑いが収まったところで、謎の飛ぶモンスターについて話すことにした。

 

「⋯⋯さて、笑うのはこのぐらいにしておこう。

まだ話が終わっていない。」

「あぁ、まだ途中だったな。」

「そうだな、今回倒された原因でも言っておこう。」

「⋯⋯なんとなく予想はつく、疲労か?」

「いや、山から倒れ、崩れ落ちる程の疲労では無かったからこれは違う。

だが⋯⋯嘘みたいな話に聞こえるかもしれないが聞いてくれ。

⋯⋯見慣れない暗い青色の生き物が空を飛んでいた、それも大量にだ。

そして、実際につつかれて叩き落とされた原因とも言える。

あれは一体⋯⋯?」

 

ジョンソンに簡単に伝えたが、それは疲労からくる幻覚だと一蹴された。

空を飛ぶ敵なんぞ見た事がないと。

だが、モデストは幻覚じゃないと横槍を入れた。

 

「多分それは、ファントムだよ。

緑色の光る目をしていたなら、きっとそれだ。

ちょっと本を取りにいってくる。」

 

しばらくして、モデストは図書館から1冊本を持ってきた。

タイトルは⋯⋯襲撃者の記録?

モデストはページをパラパラとめくり、止まって開いて見せてきた。

 

「スティーブ、君の言っていることはこれかな?」

「⋯⋯それだ、うっすら見えた形と同じだ。」

「なら良かった。

対策は簡単に出来るよ。」

「どうするんだ?」

「3日以上の徹夜を避けるんだ、簡単でしょ?

スティーブ、君はよく頑張っているけど、休憩も大事だよ。」

「あ、あぁ。」

「次からは、倒そうと思わない限りこまめに寝るんだよ?」

 

モデストからの忠告を受けたあと、彼はじゃあと言って教会に戻った。

余程の理由が無ければ、素直に寝る事を心掛けるとするか⋯⋯。

 ジョンソンにベッドを貸してもらった事に礼を言って外に出て、落ちた場所に着いた。

無事、経験値と道具を全て回収出来たので、丸石をチェストに放り込んで、道具も二つをくっつけて修繕した。

山を見つめて、深くため息をついた後、またジョンソンの家に戻った。

ちょうど戻ったタイミングで、雨が降ってきた。

中々の土砂降り、このままここで待機するか⋯⋯。

ジョンソンにしばらくここで雨宿りすると言って、階段ブロックの椅子に腰掛けた。

⋯⋯外は土砂降りで終わらないらしい。

雷も酷くなってきた。

こりゃ、昼間はもう外へ出られないだろうな⋯⋯。

 

~同時期、スロービレッジにて〜

 

「村長さんよぉ、今日は雨足がやべーな。」

「そうだな、俺もこんな天気にゃ水やりはやめとくぜ。

もう花はたらふく水を飲むだろうしよぉ。」

「雨なのにすぐ水をやろうとするんじゃねーって。

花が思いっきし吐くだろうが。」

 

村長とその友人は、雷雨の中、家できのこスープを飲みながら雑談を交わしていた。

しかし、友人は中で雨宿りは長く出来ないらしい。

門限のせいで、自宅に帰らないといけないからだ。

そんな訳で、貧乏ゆすりをしながら出されたスープを飲んでいたものの、とうとう限界が来たようで、ついに雷雨の中に突っ込んでいってしまった。

 

⋯⋯友人は撃たれた、雷に。

そして⋯⋯正気を失った。

彼は瞬きよりも早く、妙なローブと帽子を着込んでいた。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

村長は友人に問いかける。

が、答えは投げ返される。

ポーションという形で。

 

「思いだしたよ。

抑圧的になると、内に秘めた心は黒くなるって。」

「あぁ⋯⋯ぐぐ⋯⋯。」

 

毒に蝕まれ、意識が朦朧する中、村長は人生最大級の大声を出す。

 

「今日は酷い雷だ⋯⋯!!

みんな⋯⋯家に避難しろ⋯⋯!!」

 

赤黒いポーションが体に染み付いた瞬間、村長は煙になった。

それを合図に、雷は勢いを増す。

集中して撃たれる、村人にも、家々にも、次々と。

雨の努力虚しく、撃たれた家から瞬く間に火が上がり、消えるブロックの隙間を縫うように、正確に村人を撃つ。

 

「家の中もダメなのかよちくしょう!!

あぐぁっ!!」

 

鍛冶屋にいた1人の村人は、この惨劇を伝えるべく、これから出すはずだった依頼本に、緊急事態を知らせるべく書き込む。

殴り書きだが、それを直す余裕も無かった。

 

「エンダーチェストは⋯⋯あった!

どうか⋯⋯届いてくれ⋯⋯!!」

 

ダンクシュートを決めるが如く本を入れた瞬間、雷は落ちる。

そして⋯⋯全員が同じ衣装に身を包み、同じ帽子をかぶり、同じ意志を見出す。

 

抑圧から解放され、自由になる⋯⋯!!

 

村長から、クラフターから、支配から逃れる為に⋯⋯!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。