のろのろペースですが、見てくれる方には本当に頭が上がりません。
ー事件が終わった直後のどこかー
薄暗い石レンガに囲まれた部屋の中に、5人(1人は⋯⋯人?)の人影があった。
どうやら会議中らしい。
スティーブに似た容姿の男と、今回の事件でやつらの被っていた帽子と同じものを被っていて、それとローブを着た男が話し始めた。
ローブの男は、かなり焦っている様子だ。
「⋯⋯あの村に雷を落としたと言ったな?
どうだ、成果は。」
「大変だぜおい、鎮圧されちまった!
あそこに崖とか谷とかねぇのによぉ、誰一人として認識出来ねぇ!!」
「そうか⋯⋯まだクラフターの生き残りがいたか。
次の村を探そう。
俺達の野望にクラフターはいらん。
ニセモノなんぞに負けるつもりは無い。」
また新たに口を開く者が現れた。
3人目は顔色が悪いが、薄暗い部屋の中に溶け込みそうな程に黒いローブを着た男だった。
「そう焦るな。
もっとマズイのはこっちのほうだ。
⋯⋯その雷の落とした村、俺の拠点である洋館の近くだ。
オマケに誰かが近くに家を建てている。
いつ攻められるかわかったもんじゃない。」
「そりゃそうだけどよぉ!
相手はかなり強い!!
それこそポーション如きじゃ勝てねぇぐらいによぉ!!」
「そうか⋯⋯めんどくさいな。」
ため息が出ると同時に、緑の服と茶色のズボンを身につけた金髪の女性が口を開く。
その口調から、自信があるらしい。
「私が足止めをやりましょうか?
狙撃、得意ですし。」
「ほう⋯⋯なら、足止めを頼む。
少しでもニセモノを止められるなら、手段は問わない。」
「わかりました。
では。」
そして、緑衣の女はクロスボウを片手に暗闇へ消えた。
落雷による村人達の騒動は、自らの手で静かにした。
1人は運良く助かったが、落雷だけでこんな恐ろしい結果を生み出せるのだろうか?
帰り道の短い時間の中で聞いてみることにした。
「さて、事件は終わった。
お前も助かった。」
「わ、わざわざありがとうございます⋯⋯。」
「だが、この事件の詳細は落雷から始まった以外に何もわからない。
⋯⋯少し酷だが、お前の見たもの聞いたもの、それを教えてくれるか?
こっちにも目的がある。
それに関する何かが掴めるかもしれない。
⋯⋯話せるか?」
「え、えぇ⋯⋯。
わかりました、お役に立てるのなら⋯⋯。」
彼女は、覚えていた限りの事を話し出す。
その記憶によれば、まず雷に撃たれた者はこちらと似たような服装と顔をした男に、一瞬だがまるで呪文を唱えるかのようにこう言い聞かせるらしい。
偽は悪だ。
悪はクラフターだ。
クラフターは偽だ。
これを何度も何度も瞬間的に植え付け、あっという間に洗脳されてしまうとか。
この一連の流れが終わった後、ノイズ混じりの声でローブの男に早口で言い聞かされるような幻聴を聞き、それ通りに体が動き、あのような事態に陥る事になる。
ポーションの作り方自体は、雷が落ちる前は何一つとして知らなかったそうだ。
一応今も投げていたり、飲んだりしていたタイプは作ろうと思えば作れるらしい。
だが、作る道具が何かは結局わからず、何よりそれらしき道具は見当たらなかった。
あるのは禍々しい煙の出ている大釜ぐらいだ。
「一通り話したけれど、役に立ちますか?」
「今のところはわからない。
だが、その謎の声の正体に繋がるものがあれば、もしかしたら⋯⋯。
ひとまず、村に帰ろうか。」
伸びをしながらゆっくりと歩いて、あっという間に帰宅した。
とても近い距離なので行き来は楽だったが、道を通して村同士の交流を深めるという目標は、残念な事に潰えてしまった。
この無念は、決して忘れてはならない。
ー数日後ー
あの事件から数日。
ジョンソンは新しい村を見つける事に勤しんでいる間、こっちは休みをもらった。
たまには苦労して作った、あのマイホームでゆったりと休息でも取ることにしよう。
ただ、休息と言えどやる事は普段とあまり変わらない。
誰かの命令通りに動くか、自分の本能通りに動くか。
そこぐらいしか違いはわからない。
防具は着込むし、武器も持つ。
食料も尽きない程度には数を揃えた。
しかし、あの光る弓は置いていくことにした。
⋯⋯あの弓は壊れる前に、然るべき人物に一度見せてやりたいものだ。
とてもこれから休息を取るような装備をやっていないが、夜中に現れる敵の対処の為にはこうする他ない。
マイホームは島なので、ボートを使って行く。
⋯⋯飛ばされたばかりの頃はアホみたいに泳いでいたが、しばらくは遠慮しておこう。
普通に疲れる。
早速東へボートを進めていると、ジョンソンから無線が突然入ってきた。
「スティーブ、あんたの家に行くところすまないが、前に俺が訪れた事のある村から、依頼本が来た。
⋯⋯依頼を見たんだが、どうも不穏な空気が漂っている。
⋯⋯何者かによって村人達が次々に狙撃されているそうだ。
場所は、今そっちの位置からちょうど北だ。
余裕があれば、様子を見てくれると助かる。」
「了解。
⋯⋯貴重な休日が潰れちまったが、そんな事を言われたら見殺しにするのも気分が悪い。」
備えあれば憂いなしという言葉を、村で読書していた際に目にした。
意味は、予め準備をしておけばいざと言う時に心配せずに済む、という意味だ。
今まさにその言葉を使うべき時が来るとは考えもしていなかった。
食料の部分が少々不安だが、それ以外に不安な場所は無い。
予定していた目的地から離れて、深い森のそばを走っていく。
そういえば深い森で思い出したが、その中には大きな舘がある。
飛ばされて間もない頃から気になっていて、村から帰ってきたタイミングで訪問しようかと考えていた。
本来なら休息ついでに行きたいところだったが、急用が出来たので諦めた。
地図の通りに北に歩いて村を発見した。
⋯⋯この地図は踏み込んだ所を自動的に更新するらしく、地図を見直すと、何も無い草原だった場所に新しく建物が映し出された。
つまり、ここに描かれたものはジョンソンが歩いた時代のものであり、今はそこに何があるかわからない。
どうりで地図に自宅が写っていないと思ったら、なるほど、そういう事だったのか。
納得したところで、早速事情聴取といこう。
最初に出会った鍛冶屋の村人に話を聞いてみることにした。
「すまない、ここで村人達が狙撃されていると聞いた。
何か情報は無いか?」
「ん? 旅人か?
何年ぶりなんだか、それはともかく⋯⋯。
情報と言えるほどじゃないが、狙撃されている事は本当だ。
俺の友達までやられた。」
「そうか⋯⋯他には?」
「んー⋯⋯。
無い、だがここに長居するな。
お前も狙われるぞ。」
ため息をつきながら、自分たちの無力さを伝えてくれた。
相手は相当に腕利きの狙撃手らしい。
あいにく対抗する為の弓を用意していなかった。
オマケに草原なので、少し歩かないと木を取りにいけない。
「ジョンソン、改めて依頼の内容を読み上げてくれないか?
何が必要かを確定したい。」
「わかった。
今回の依頼はスティーブ、今あんたがいる村だ。
内容は狙撃手の正体及びその始末といったところか。
報酬はエメラルド30個、早めに済ませてくれると助かる。」
「そうか、ありがとう。
⋯⋯弓が必要だったか。」
「どうした?
弓ならあんたでも作れると思っていたが、何かあったのか?」
「⋯⋯あいにく原木が手元にない。
弓は作ったものがそっちにあるはずだが、依頼本を送る形で弓も送れたりしないか?」
「あぁ、試してみよう。
通信は切るが、そっちは矢師を探してくれ。
その矢師は俺の友人だ、もしかしたら頼れるかもしれない。
それと黒い箱も見つけてもらえれば、話は短く済む。
じゃあ切るぞ。」
ジョンソンは無線を切ったので、矢師を探すことにした。
見た目を言ってくれなかったので、自力で見つけなければいけないのが面倒だ。
ちょうど近くに茶色のローブを着た村人がいるので聞いてみる事にした。
「すまない、矢師を探しているんだが⋯⋯。」
「あぁ?
最近耳が遠くなっている気がしてなぁ⋯⋯。
もういっぺん言っておくれ。」
⋯⋯中々歳を重ねた人だ。
もう一度、今度はそれなりに大きな声で言ってみる。
「矢師だ、俺は今矢師を探している!」
「お、おぉ!
矢師はわしじゃよ、旅人よ。
わしは⋯⋯んんと、なんじゃっけかな。
まぁええわ、ジジイとでも呼んで結構じゃ。」
「俺はスティーブだ。
ジョンソンの友人と聞いたが本当なのか⋯⋯?」
「本当じゃよ?
昔は色々と世話になったもんじゃ。
わしに出来ることならなんでも頼んでくれ。
まぁお代はもちろんとるんじゃがな。」
「その時はよろしく頼む。」
矢師を無事見つけられたので、あとは黒い箱を探すだけだ。
その時、ちょうど無線が入ってきた。
「矢師は見つかったか?」
「あぁ、無事に見つけた。
しかし黒い箱はまだ見つからない。」
「そうか⋯⋯。
んん、確かストレートアローの家にあるはずだ。」
「ストレートアロー?」
「あんたが見つけた矢師の肩書きみたいなものだ。
彼の矢はとても真っ直ぐに飛ぶぞ。」
「そうか、資金があれば作ってもらいたいところだ。」
「そう言うと思ってだな、ついでにエメラルドも送った。
有効に活用してくれ。」
「助かる。」
弓と一緒に矢を買うお金も送ってくれるとは、気が利くものだ。
⋯⋯矢があまり無かったのを見かねて送った可能性も否定出来ないが。
実際送られてきた矢は20本。
余裕で無くなりそうだ。
手に抱えた矢を見てため息をついていた所、爺さんに呼び止められた。
「カッカッカ!!
若人よ、そんな粗末な矢で今まで狩りでもしてたのか?」
「あ、あぁ⋯⋯。
どうせ消耗品だ、ある程度ダメージを与えて剣でトドメを刺すのが自己流だ。
1回当たればそれでいい。」
「ダメじゃダメじゃ。
トドメで返り討ちにされちゃあ意味がない。
どれ、わしのリハビリに付き合ってくれんじゃろうか?」
「わかった、付き合おう。」
「矢を見ていたら無性に作りたくなってきたもんでな。
わしの技術、お主に見せてやろうぞ。」
こうして、流れはジョンソンの友人の頼みと見せかけたリハビリに付き合う事となってしまった。
(言うほどガッカリはしていない。)
結局、休日出勤になってしまったか⋯⋯。