冒険者兼破壊者の復讐劇。   作:TTY

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結局中旬ぐらいの投稿になってしまってごめんなさい。


Ep22 地獄探索の準備。

 目覚めて早速ジョンソンの家まで向かうと、そこには痣だらけになった2人がいた。

インスティー曰く、自分がそのまま深い眠りに落ちた後も、懲りずに喧嘩が続いたそうだ。

原因は前金のダイヤ3つもあるが、上質な素材はダイヤモンドに限るといって、鉄と金に加えてダイヤも全部持っていってしまう事が気に食わなかったそうだ。

持っていく事を繰り返していったある時に、自分の話をきっかけに戻る口実が出来、この派遣村で夜通し喧嘩した⋯⋯。

⋯⋯つまり、インスティーはトコトン利用され、スロービレッジ滅亡の事実にすら気づいていないことになる。

彼の気持ちを考えると可哀想だ⋯⋯。

幸い、ダイヤを加工する勇気が無かったので、渡した3つを除いた全てを取り返したようだ。

⋯⋯ただ、昨日聞こえた3つは、1割にも満たないことを知ってゾッとした。

クレイモアの守銭奴な一面を見る事になるとは⋯⋯。

 全て言い切ってスカッとしたインスティーから、迷惑をかけたと謝罪をもらい、それからクレイモアに釘を刺すように上質な武器を作れと言い放った。

ため息を付きながら彼は答え、今度はこちらへ話題が移った。

右腕の義手についてである。

 

「ほんじゃっそれはそれ、これはこれって事で⋯⋯。

見せてもらうぜ?」

「あぁ、約束は約束だからな。

⋯⋯いつ頃までかかる?」

「ざっと3日だな、もう少しかかりそうなら改めて言いに行くからよ。」

「よろしく頼む。

⋯⋯インスティーも気になるなら見ていくか?」

「あぁ見るよ。

⋯⋯こいつと一緒なのはやだけど。」

「あぁ?」

「なんだよ、喧嘩ふっといてまだやんのか、えぇ!?」

「落ち着け2人とも。」

 

危うく喧嘩の火種が燃え盛りそうな勢いだったが、今回はどうにか鎮火した。

 右腕が調査の旅へ連れていかれたので、またしても暇を持て余してしまう事となった。

やる事が無いので、スミスの矢作りを見学でもしてみようと考えた。

派遣村についてから、彼がどこにいるのかはわからない。

たまたま近場にいたモデストに聞いたところ、ある場所を指さした。

⋯⋯大きな石レンガの建築物だ。

門の存在に圧倒されていたが、この石レンガの⋯⋯巨大な箱みたいな建築物も負けず劣らずと言ったところか。

モデスト曰く、門作りの時に出来た余りで新しく家を作ったとクレイモアが教えてくれたらしい。

その中に、自分の部屋も用意してくれたとも言っていたそうだ。

⋯⋯作ったなら作ったと言って欲しかったものだ。

いつまでもジョンソンの家とモデストの家に居候し続けて、心配になってきた頃だったのでちょうど良かったが⋯⋯。

 実際に建築物のドアの前までやってきた。

真下から見てみると、今まで見てきた村人の家よりも大きかった。

ドアを開けて入ると中も石レンガ造りで、入ってすぐに階段が見えて、右隣には受付らしきものがあったが無人だ。

左側には、木製の椅子と机が埋め合わせ感覚で置かれているだけだ。

階段の各隣には部屋があるが、鉄製のドアでガッチリと閉められていて開けられそうも無く⋯⋯。

この建物は3階建てらしく、2階3階にあがっても階段があり、またあがると屋上に出た。

そこからの景色はいつもとまた違って見えていて、道の上をただ歩いて回るよりも新鮮な気分だ。

ただ、面白そうな光景は何も無いのでまた室内へ戻った。

 改めて建物の中をまわって、部屋は2階と3階に各4部屋ずつ、合計8部屋なのがわかった。

ただ、そのうち6部屋は空き部屋である。

看板が扉の右隣に置かれているのは、3階の階段左隣の自分の部屋(仮)と、その隣の爺さんの部屋だけだ。

勝手に決められるのは困るが、居候してばかりも迷惑をかけていたので丁度いい。

内装も気になったので、自分の部屋に入ろうとするが⋯⋯鉄のドアは重すぎて開かない。

まるで壁と同じぐらい頑丈だ。

開けられる方法が他にないのか見回したところ、看板の下に目立たない石のでっぱりがあるのを見つけた。

今まで見たことないような物だったので叩いてみたところ、でっぱりは奥へ動き、それに合わせて鉄のドアが勢いよく開いた。

それからでっぱりが元の位置へ戻った途端に、ドアは勢いよく閉まった。

なるほど、これが鉄のドアを開ける力を持っているのか。

中々面白い仕組みだが、冒険をしている中では見たことがなかった。

でっぱりについてはひとまず置くとして、部屋を見てみよう。

 鉄のドアの先に踏み入ると、そこには中央に簡素な椅子と机、それから奥には作業台とかまどが備わっていて、右側を向くとすぐ近くにベッドが置かれていた。

最低限の暮らしは出来るよう準備はされているらしい。

部屋を見終わったので、スミス爺さんの所へ久々に会いに行くとしよう。

 爺さんの部屋は自分の部屋の隣にあり、こちらも鉄のドアで塞がれているが、でっぱりを押し込んだら同じようにドアは開いた。

部屋に入って爺さんに挨拶をしたら、久々の再開に嬉しそうな顔をしている。

 

「おぉ、スティーブか。

ちょいと久しぶりだのぅ。」

「そうだな、暇だから来ただけだ。

何か見ているだけでも面白いものを探していてだな⋯⋯。」

「ふむ、義手はあの鍛冶屋の所へいったか。

アレはいいのぅ⋯⋯わしも惚れ惚れする出来じゃった。」

「そんなに⋯⋯いい物だったのか?」

「いい物どころか、最上級品と言っても過言ではないぐらいじゃ。

惜しむらくは、もう二度と会えない事じゃ⋯⋯。」

 

爺さんは、遠くを見るような目で天井を見つめ、涙を落とした。

恐らく、同じ職人として長い付き合いだったのかもしれない。

同情からか、こちらまで泣きそうになる。

 

「⋯⋯すまん、思い出話に浸ってばかりでお主を置いていってしまうな。

義手についてだが、奴の作る物はどれも頑丈に出来ておる。

乱暴に使ってもそうそう壊れるような代物じゃないわい。」

「そうか。

だが貰い物を雑に扱うつもりは無い。

ましてや遺品だ、余計ぞんざいに扱いたくないものだぞ爺さん。」

「うむ、その心意気を忘れぬ限り、お主の未来を支え続けてくれるはずじゃ。

わしもやる気が出てきたぞ、先程良い構想を思いついたのでな。」

「良い構想⋯⋯?」

 

そう言って爺さんは、1枚の紙を広げた。

なんでもその良い構想の設計図(仮)と言うのだ。

 

「お主、義手以外にも良い武器を持ってるんじゃのう⋯⋯?」

「⋯⋯はて、なんの事だ?」

「とぼけるでない、妖しく光る弓じゃよ。」

「⋯⋯??」

 

妖しく光る⋯⋯?

弓⋯⋯??

そんなものがあっただろうか⋯⋯?

 

「まさか忘れたとは言わんじゃろうな?

あんな上質な物を⋯⋯??」

「いやー、まっまさか⋯⋯な。」

「⋯⋯ジョンソンから聞いたぞ、スロービレッジであの娘を連れ帰った時に、大事そうにしまったんじゃと?」

「⋯⋯!!」

「やはり、忘れておったか。」

 

そう言いながら、爺さんはその現物を目の前に突き出した。

そうして姿形全てを見て、スロービレッジの崩壊を思い出した。

雷が激しかった夜が過ぎた翌日、アレージを除いた全ての村人がポーションを作り出し、村を露骨に守り出す異常事態が起きた依頼だ。

 

「お主、大事にして正解じゃった。

これはとんでもないエンチャントを授かっているんじゃぞ。」

「それは⋯⋯どんな?」

「うむ、わしの見た感じじゃと⋯⋯壊れにくく更に強く、恐ろしい事に経験値を吸って自己修復までするようじゃ。」

「⋯⋯???

経験値を吸う⋯⋯?」

「そうじゃ、わしも過去に数回見た感じじゃから1発でわかったわい。

今はボロボロじゃから粗雑には出来んが、お主⋯⋯しばらく手に持っておいた方が良い。」

「持っていれば、勝手に経験値を食べるのか?

⋯⋯生きているのか?」

「生きているとはまた違うんじゃが⋯⋯近いようなものじゃ。

さて、話が逸れたの⋯⋯本題に入らないとな。」

 

 爺さんは設計図を見せながら説明を始めた。

突発的に思いついたこのアイデアは、未検証ながらも出来そうな雰囲気を醸し出している。

あの兄弟の技術力と協力して作る予定らしい。

彼の描いた図によれば、義手にクロスボウを仕組むというものだ。

その素体にあの弓を使うのである。

しかし、ここで問題になってくるのが、義手に仕込んだところで嵩張るのだ。

アレックスを想像してみて欲しい。

彼女がいつも抱えている爺さんお手製のクロスボウは、中々のサイズだ。

彼女の身長の半分よりも少し大きい。

それが義手に組み込まれるというのだ、自身の活動にかなりの支障をきたすのは言うまでもない。

そこで爺さんは、小型化したものを折り畳み式にして組み込むと言うのだ。

威力は素体よりかは落ちるものの、エンチャントの力で攻撃力自体は普通の弓より強い事に変わりはないとの事。

更に出し入れする時間を短縮するべく、独特な機構を盛り込むそうだが、この機構を実現出来る村人がいないらしい。

⋯⋯どうやら、また別の村に住んでいる村人が出来るようだ。

つまり、また依頼か何かで連れてこないといけない話だ。

とどのつまり、机上の空論である。

⋯⋯今現実的に出来そうな事と言えば、この弓と一緒に散歩ぐらいしかないだろう。

 面白い話を聞いた後、爺さんの片隅に置かれていたサングラスから無線が入ってきた。

しばらく爺さんが相槌をうつ様子を眺めながら、時々こちらに顔を向けてしかめっ面を披露し⋯⋯。

無線が終わった後についてこいと言われた。

こちらにも関係しているそうだ。

 爺さんと共に向かったのは、派遣村の隅にある工房である。

兄弟の鍛冶場としての拠点だ。

さて、あのしかめっ面の正体は⋯⋯。

杞憂だった、思ったよりも早く調査が終わってしまったらしい。

機構も殆どが知っているものだったので、やろうと思えばスペアも用意出来るそうだ。

現物を見ただけで設計図まで書き留めてしまった辺り、彼らの腕は本物という事だ。

そして、次に放たれた一言は⋯⋯。

 

「スティーブ、これ改造してもいい?」

「嘘だろ⋯⋯。」

「ダメ?」

「ダメと言うよりも、製作者がもういないからな⋯⋯。

⋯⋯やるなら、スペアの方でやってくれ。」

「へーい⋯⋯。

まぁとりあえず役立ちそうな物は用意しておくから、楽しみにしておいてくれよ?

それから義手は返すし、ついでにこいつも持っていってくれよ。

インスティーから釘を刺されたけど、時間足りなかったわ。

良い物は時間かかるから、こいつを代用品として使ってくれ。

一応そいつも丁寧に研いだから、そっちの持ってる鉄の剣より斬れるぜ?」 

 

こうして、義手が思いのほか早く返ってきて、ついでに良さげな剣まで貰えたので、早速ネザーへの探索の準備も始めよう。

荷物は前回の依頼からそこまで変わらない。

いつものように剣や弓と矢を用意し、防具も着込む。

壊れかけの例の弓も手に持った。

⋯⋯しかし、防具は壊れそうな勢いだ。

ネザーという新天地で果たして持ってくれるだろうか?

食料も少し心もとないので、近くで農耕をしているアレージに声をかけ、またにんじんを大量に貰った。

いつもにんじんをボリボリ齧っているものだから、そろそろうさぎみたいだと言われてもおかしくない。

ここ最近ずっと健康志向な食生活をしていたものだから、肉が恋しくなってきた。

かまどに放り込んでガッツリ焼き込んだそれは、想像するだけでも懐かしく、そして余計に食欲を煽る。

⋯⋯そういった事を考えていると、本題に戻れる気がしなそうなので一旦忘れることにした。

とは言っても、既に外が暗くなっている事に気がついたので、用意してもらった自室へ戻った。

明日に向けての準備そのものは終わったが、ネザーはいったいどんな世界になるのだろうか?

まだ実態を見れていないので、聞かされた情報を頼りに想像する事しか出来ない。

今夜は一旦眠ることにしよう⋯⋯。

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